インフィニット・ストラトス Re:IMAGINE   作:如月十嵐

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エピローグ「真実の先にいる者」

 

 

 

 学園の地下五十メートル。そこは学園でもレベル4権限。つまり最高機密保持者とそれに準ずる者しか入れない隠された区画である。

 件の異形はすぐさまこの区画へと運び込まれ、解析されていた。織斑千冬はアリーナでの戦闘映像を見ながら、その解析結果を待っていた。

「……」

 それを見る千冬の目は、険しい物があった。すると、ウィンドウが開く。彼女は声紋認証を行う。

「どうぞ」

「失礼します」

 入ってきたのは、端末を持った真耶が入ってくる。その表情はいつもの柔らかい彼女とは違い、冷静かつ落ち着いていた。

「あれの解析結果が出ました……やはり、ISとは似て非なるものという事です」

 案の定。とも言うべきだった。ISは人無しでは動かない。もしもそのような技術があるとすれば、その技術の本丸たる篠ノ之束くらいだろう。だが、ISではないISに匹敵する何か。それは存在そのものが許されるものではない。その事実は、すぐさま学園関係者に箝口令が敷かれた。

「ISと同じくコアが存在して、その類似率は92%。ですが、残りの8%はISコアにすらない何かで構成されていると思われています」

「そうか」

 

「それと、あれの侵入経路ですが……やはり『最初からそこにいた』と考えられます」

 やはりか。と千冬は思う。目を背けようとも、運命はやってくる。そして一夏は、それを見続けている。弟にだけ重荷を背負わせるのは、千冬には出来ない事だった。

「何か、心当たりはありますか?」

「いや、無い。今はまだな」

 千冬はディスプレイに視線を戻す。化現する白いIS。それは、彼女なりの回答なのだろう。千冬は戦士の顔となる。

 いつまでも、逃げ続ける訳にはいかないな。

 かつて世界最高位の存在であった伝説の操縦者は、その拳を強く握り直した。

 

 

「……うーん」

 薄暗い部屋だった。樹海のように広がるケーブルの床。あちこちに機械の備品が転がっており、その人間の脳内を現すように乱雑だ。そこは、篠ノ之束の秘密ラボ。その一つだった。彼女は今、彼女自身を包むような椅子に座り、量子変換移動で送られてきた異形の破片を見つめる。前のモニターには奇しくも千冬が見ていたのと同じ映像が流れていた。

「まさか、初戦で雪片折れちゃうなんてねえ」 

 やはり劣化模造品では、駄目か。まあ、その分いくらでも量産はきく。後で白式には雪片四式を突っ込んでおこう。

「で、これかあ。やっぱりそういうことなのかねえ」

 

 コトン、と破片を置いて、束は映像を見る。映るのはISとその祖を同じくすると思われる兵器。超越兵器、EXAM。

「『スピネルの鎧』の技術なのは間違い無いんだけど、それにしたってこれはおかしいよねえ」

 明らかに、使われてる技術にこの世界の理を超越する何かが使われている。故に束は超越兵器と名付けたのだ。そしてもう一つ、彼女には疑問点があった。

「なんで私の『ゴーレムⅠ』と似てるんだろうねえ」

 その部屋の隅には、一つの異形があった。極端に腕の長い、全身装甲の怪物。束が開発していた「無人ISゴーレムⅠ」は、主に起動されるその時を待っていた。

 そしてその見た目は、目の前の映像の異形とほぼ同じだった。

 

 彼女がこの疑念をわくのは、今が初めてではない。どうにも束の仮想敵は束の行動と思惑を全て読んで行動しているようにしか見えなかった。白騎士事件にしても、第二回モンド・グロッソ時のあの事件にしても。そして今回。向こうは確実に、こちらが何をするのか、わかっている。

「亡国機業に、誰かがいる。未来を読めて、魔法と科学と融合し、魔法と科学を超越した何かが使える、超常的な誰かが」

 亡国機業。束の仮想敵。だが件の組織は確かに第二次大戦期より続くテロ組織であるが、文字通り次元を超常するような力を持つような組織ではなかった。この、篠ノ之束を手玉に取るには不足に過ぎる相手であるはずだった。しかし違う。今あの組織には束に匹敵する。もしくはそれを遥かに超える何かがいる。

 この摩訶不思議な現象。束はそれに対して、一つの仮説を立てていた。しかしそれは、異端の天才である彼女でさえも馬鹿なと笑いたくなるような仮説であった。だから彼女はこの仮説をまだ己の心中に留めている。今この話を信じるのは、束の思考がわかる賢者ではない。ただの馬鹿だ。束自身ですら懐疑的な。

 

 この世界の行く末を知る異世界。おそらくこの世界より上位の世界から、何らかの超常的力を神と形容できるような何かより力を授かり、この世界に生まれ落ちた、超人が存在すると思われる仮説。束はこの仮説により存在すると思われる超人を、こう呼んでいる。

 

 「転生者……」




エピローグ。この作品のオリ設定の根幹に迫るものです。どこまでこの設定に踏み込むか、未だその踏み込み具合を測りかねていますが、娯楽性溢れる作品にしていきたいと思います。

後更新二回はオリジナル設定のメモ。そして一回は二巻分の内容のダイジェスト予告というオマケ的内容となっています。この間は更新頻度早めに。また、読まなくても本編を問題なく読めるようにしていますので、オマケの読み物としてお楽しみください。

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