インフィニット・ストラトス Re:IMAGINE   作:如月十嵐

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三話「代表候補」

「ちょっと、よろしいかしら?」

「ん?」

 

 二限目が終わった休憩時間。相変わらずの珍獣状態に、次の来訪者が来た。話しかけてきたのは金髪が美しい、碧眼の少女だった。IS学園は美人が多いが、彼女もその例に漏れず、なかなか整った顔をしている。雰囲気はいかにも最近の「女性」らしい女性の優位性をそのまま雰囲気にだしたような少女だった。それとなぜか、肩には細長い布袋を担いでいる。何だろうか。

 しかし、それが不思議と下品には見えなかった。彼女には高貴さがある。相応な家柄と見た。最も、一夏は彼女とは初対面だが、彼女の事を知っている。というより、さっき知った。

 

「セシリア・オルコット嬢だな?」

「私の名前を覚えるくらいには常識ある方のようね」

「同じクラスの代表候補くらいは、さすがにな」

  

 イギリスの代表候補生。セシリア・オルコット。この情報を一夏は授業中に情報を必要時のみかける眼鏡型端末から取得していた。イギリスの第三世代型試験兵装を導入したカスタム機に乗っているらしい。あくまでカスタム機だ。ワンオフ機ではない。これは一夏に関しても同様であるが。

 実は、専用機体を持っている人間は厳密には相当少ない。ISのコアは正式計上数的には645個。そこに同盟に特別提供されたり、諸々の非公開コアを足してもおそらく700いかないくらいだろう。圧倒的に数の少ない兵器なのだ。その内、実験用や量産機で半数以上がとられる。そして残りが個人用の専用機となるわけだが、その内本当の意味での専用機体。その者のためだけに一から製作されたISは本当にわずかだ。それこそ、その国の代表。国家代表くらいであろう。

 

 では眼の前のセシリアのような候補生には何が与えられるのか。それがカスタム機だ。自国量産機に専用の武装(多くは実験兵装)と本人に合わせたカスタマイズとリカラーを施す準専用機とも言える機体である。一夏の銀鋼もこれに相当する。かなりのカスタマイズが施されているものの、銀鋼も打鉄のカスタム機であるからだ。厳密には、打鉄の次期後継機のテストフレームが元なのだが、どちらにせよワンオフ機ではない。

 

 そしてこのセシリアだ。準専用機でもそれを持てるのはごく一部の限られた人間には違いないのだ。ある程度上からの目線になるのは仕方ないところもある。

「仮にも代表候補相当。と自称されていたので、私自ら挨拶をしてあげた次第ですわ」

「それはありがたい。改めて名乗ろう。織斑一夏だ」

 一夏は手を差し出して、思い直すように手を見る。この手の女性は、偏見で男の手を汚らしいと感じ触るのを嫌う傾向にあるからだ。一夏は彼女に問う。

「無礼でなければ、応じて頂きたい」

「ご心配なく。礼に非礼で答えるよう教育を受けた覚えはありません。それが例え男性であってもね」

 セシリアは高慢そうな言い方だが、しかし素直に握手に応じた。一夏は驚く。思ってたより聡明な女性なのかもしれない。

 

「貴方とは是非とも、一戦交えておきたいものですわ。出来れば早くに」

「そうだな。俺も同じ意見だ」

 握手を解いて、二人は視線を交差させる。軽く散る火花。しかし一夏は、最初に声をかけられた時ほどの嫌悪感はなかった。

(想像以上に柔軟な娘だ。だとすれば強敵だ)

 エリート意識の高いだけにしても、代表候補である以上相応の強さを持っているのは当たり前だというのにあの柔軟な姿勢と高貴さ。戦えば苦戦は必至だろう。

 

 三時間のチャイムが鳴る。この時間はどうやら山田先生ではなく、千冬姉自らが教鞭をとるようだ。

「この時間では実戦用に使う各種装備の説明を行うが……その前に、クラス代表の選出を行いたいと思う」

 クラス代表。その言葉に皆がざわつく。

「クラス代表者の役割は皆知ってるな? 通常学級におけるクラス長的なものだ。実戦的な意味ではそれに加え、再来週のクラス対抗戦の代表選手になることも意味する。クラス代表戦は初期の実力を測るものなのでデータ的な意味は無いが、向上心を生む。一年固定なので、代表者は責任を以って遂行するように。誰か立候補者はいるか?」

 

 そう言われたので、一夏は手を挙げる。

「自薦は可能ですか?」

「もちろんだ」

「では立候補します」

 おおっ、と、クラスがどよめく。まさかいきなりこのような大胆な事する人間とは思われなかったのだろうか。しかし一夏からすればクラス代表戦に出れるというだけでも立候補の価値がある。貴重な実戦データの収集機会であるし、IS技研からは学園生活を通して人脈を築くことも任務の内に入っている。どうせやるなら代表だ。

 それに、運が良ければあの約束も果たせるだろう。

「私も一夏君がいいと思います!」「私も一夏君を推薦します!」

 ちょうどよく、自分に賛同意見を持つものも出てくれた。まあ、他の者からすれば話題のある人間を選出するに越した事はないのだから当然そうなるのだろう。だが、現状ではまだ一夏にとってベストな状況ではない。

 

 そこで、一人の少女が同じように立ち上がる。

「ちょっと待ってください。私も立候補しますわ」

 一夏が立ち上がってみると、それは当然、かのセシリア・オルコットだった。ベストの条件が揃った。

「立候補は二人か? なら適当に話し合って決めろ」

 千冬姉が言う。しかしそれはだめだ。話し合いでは駄目なのだ。

 

 何せ、実戦をしたいのだから。

 

 しかし話し合いで決めろと言われたのに今更実戦での選出を提案するのは却下される可能性がある。ならば必要なのは火種だ。一夏はチラリとセシリアに目配せする。彼女はすぐに気づくと、少し大仰に言った。

「納得いきませんわ。そもそも男がクラス代表などとおかしな話とは思いませんか? 実力から言っても私がなるのは当然の話ですわ!」

 なかなか良い感じだ。だがもう少し欲しい。

「大体、このような貴賎の足らぬ庶民の男に物珍しいからという情けない理由で代表を選ばれるなんて侮辱の極みですわ!」

 頃合いだ。反撃しよう。

「さすがに、それ以上は怒るぞ」

「あら、言われるだけ言われてすごすご引き下がると思いましたわ」

「こうまで言われて黙ってられるか。マズい飯を食うと口まで悪くなるのか?」

 ハッ! とセシリアは笑ってしまいそうになるのをこらえて、怒り心頭な顔を作り一夏を指差す。

 

「よくもまあ私の国を侮辱しましたね! 貴方と話し合いの余地なぞ欠片もありません!」

 この娘。演劇の才能あるな。

「決闘ですわ!」

 バンと彼女が机を叩く。見事。御見事。

「そこまで言われたら引き下がらんぞ。受けて立つ!」

「言っておきますが、手加減なんて認めませんわよ」

「当たり前だ。そっちこそしたら張っ倒すぞ」

 売り言葉に買い言葉だ。それを見ていた隣の女子が小さい声で言う。

「一夏君、ハンデとかつけてもらったほうがいいんじゃ……」

「このような男に、そんなヌルいモノは必要一切無し!」

 地獄耳のように聞いたセシリアが返す。そりゃハンデは、彼女にとっても不必要なものだろう。

「当然だ。最初からハンデなんて必要ない。俺だって仮にも代表候補相当だ」

 

 それを聞いた千冬姉がやれやれと首をふる。どうやら三文芝居は通用したらしい。

「……どうやら、お互いに方針は決まったようだな。それでは、勝負は一週間後の月曜だ。時刻は放課後。場所は第三アリーナ。お互い、肝に銘じておくように」

 目論見通り、一夏とセシリアの実戦は実施されることとなった。




セシリア登場回です。早く書けてきてるので早めの更新。主にキャラの性格の変わりようがメイン変更点になるでしょうか。セシリアには全体的にお嬢様であることを強調した高潔な、しかし少し世間とはズレた人間。を目指した性格付けを行なっています。

またISの根幹設定にも変更があります。具体的にはコアが増えてたり、逆に専用機というのが減っています。この作品ではカスタムによる準専用機が原作での専用機に相当し、専用機は更なる上位機体という位置づけです。

次回は執筆状況には倍ほどの量となる予定です。
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