インフィニット・ストラトス Re:IMAGINE   作:如月十嵐

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七話「クラス代表決定戦!」

 早朝、剣道場。剣道部に所属しているという箒のツテを使って、頼みこむ事でこの時間を貸してもらい、一夏はセシリア戦の前のウォーミングアップを行なっていた。練習相手は箒だ。

「はぁっ!」

 箒が木刀を以って一夏に連続で打突を行う。今は剣道部の防具を一部借りてるので、死にはしないだろうがそれでも当たればどれもが致命となりえる痛みとなるだろう。

「シャッ!」

 一夏はそれらを2尺6寸。約八十センチの棍でいなしていく。そして脇腹に一際深く突かれた一撃を薙いで躱すと、棍を箒に振り突く。箒はそれをまるで軽く浮いてるかのように後ろに摺り足。紙一重で射程外へと退くが瞬間、一夏の棍が突如伸びて彼女の眉間を襲う。チェーンが伸びてその勢いで射出したのだ。

 だが、箒はそれを最小限の動きで避け、更に両手で握っていた木刀を手放すと、素早く一夏の右腕を掴み、捻るように投げ飛ばす。柔よく剛を制す。その体現のような柔の技だ。

 

 一夏は投げ飛ばされながら、しかし逆に投げ飛ばされる方向にむしろ体を向け無闇に体を痛める事を回避。それを逆に利用して空中から身を翻し上空からのかかと落としを箒に繰り出す。箒はそれを、投げた時の軽い違和感で察知していたため、即座に投げを諦めると、足元の木刀を器用に足ですくい取ると上に弾き飛ばす。上空へと舞い上がった木刀を箒は両手で掴むと、一夏のかかと落としをそれで受ける。

 かかとの最も硬い部分で攻撃した一夏だったので逆にダメージを受ける事はなかったが、当然体勢は崩れる。箒の追撃が来る前に、一夏は飛ぶように空中で回転して後ろに退いた。箒が木刀を構え直すが一夏がそれを止める。

「これくらいにしとこう。実戦前に倒れそうだ」

「……そうだな。準備運動としては十分だろう」

 二人は武器を下ろすと軽く礼。防具を外して元あった場所に置いておく。道着だった箒は更衣室へと着替えに行ったので、一夏は上の制服を小脇に抱えたままシャツ一枚で外に出る。まだ4月の初め。少々肌寒いが、それが彼のかいた汗を乾かす。

 

(愉快なくらい強くなりやがって……)

 この一週間、箒とは何気ない世間話程度しかしていない。いろいろ積もる話がないわけでもなかったが、彼女の家庭環境は一夏と同じくらい複雑だ。プライベートな話をすれば、必ずそれに突き当たる。それが一夏に思い出話を躊躇わせた。

 だが、剣を、拳を交えれば語らずとも少しは分かる。彼女がどのような六年間を過ごしてきたのか。どのような思いで過ごしてきたのか。想いの断片が、刃に、拳に混ざって飛ぶ。一夏はそれを拳で返す。さっきもそうだったが、そうしている時が、一番二人の時間を感じる事が出来た。

「因果な関係だな。俺も、お前も」

 誰に言うでもなく、一夏は一人つぶやいた。

 

 

 一方、箒は更衣室で着替えながら未だに胸の高なりを抑えられないでいた。何せ六年前、強く格好良かった一夏が六年経ってもそのままにそれ以上に強く……そして格好良くなっていたから。

(キュン死にしそうになった……)

 心中で恥ずかしい事を呟いてブンブンと首を振る。だが無理もなかった。実際、彼女はこの六年間で織斑一夏という男を美化しすぎているのではないかと考えていた時があった。幼馴染にはいかんせん高すぎる理想を持ってしまってるきらいが少し、箒にはあった。その高いハードルを全てとは言えずとも超えられてしまうと、やはりこう、グっとくるものがあるというものだ。

(私のために。なのだろうか……)

 彼がここまで強くなったのは。それとも他の誰かがいたからか……悲しいし、認めたくないが後者だろう。一人であそこまで強くなれない。人は、一人で戦う事は出来る。一人でも力は振るえる。だが、そうなるためには、一人ではなれない。箒が転校してから、誰かがいたのだ。強さを更に研鑽しようと思える誰かが。共に刃と拳を交え、強敵と言うに相応しい者が。

(羨ましい……)

 一夏と一緒に強くなれたその誰かが。そして、そんな強者と巡り会えた一夏が、羨ましい。箒にだって、いないでもなかった。だがそれはあくまで強敵以上にはならなかった。

「……贅沢、だな」

 またこうして、かつての幼馴染に会えたのだから。そしてきっと、ここにいれば出会えるはずだ。ある意味、箒にとって一夏という存在以上に、恋焦がれたものが。

 

 心から許しあえ、心から理解しあえ……心から共に強さを認められる親友が。

 

 

 そして放課後。第三アリーナAピット。つまるところ、一夏側の控え室なのだが。

「何も先生まで俺の方に来なくても」

 男専用のISインナーに着替えた一夏の前にいたのは、箒、千冬姉、そして山田先生だった。他の女子生徒はおそらく、アリーナの観覧席だろう。

「応援ではない。貴様のISが秘匿情報扱いされているのでな。教師として間近でみておく必要がある」

 千冬姉がクールに言うと、山田先生が補足する。

「本当は結構心配していたんですよ」

「……山田先生?」

「は、はひい。なんでもないです」

 言葉が物理的圧力でのしかかるので山田先生が消え入りそうな悲鳴をあげる。

 

「それじゃあ、ISを展開します。離れて」

 三人がある程度距離をおいたのを確認して、一夏は待機状態ドライバーを腰に装着すると、心中で暗示のように変身と叫ぶ。すぐさま、光の粒子が一夏の周りを纏い、粒子は鋼色をしたパーツとなり、一夏の各部位に展開装着されていく。強固かつ大型な脚部装甲、ガントレットタイプ腕部装甲。そして銀鋼は男系技術者による製作の影響か、本来のISには無い場所にも装甲がつけられていく。

 シールドエネルギーの防御性能を任せているISに物理的装甲は必要ないのだが、銀鋼には緊急時用の防御手段。また、本来のパーツ構成でまかないきれてないセンサー類をそれらの装甲に搭載されいるため、一夏の胴体部分は簡素な強化アーマーを装着しような形になる。あくまで動きを阻害しない程度であるが、一応これでも見た目相応の防御力はあるらしい。

 

 頭部には補助アンテナブレードと黒いハイパーセンサー用バイザーがつく。バイザー型は旧式なのだが、男がつけるならこちらの方が格好が立つというのと、機動安定性を重視してこちらが採用された。

 最後に、銀鋼の外見上最大の特徴といえる、アーム保持式四連大型武装コンテナ「戦の棺」が背部アーマーのアームから4つ、リボルビング回転をしながら現れた。これも確実な稼働を求めての物理的なアーム保持式ではあるが、これら自体が浮いているのでアームが破壊されても運用は可能であり、また後ろにアンバランスな武装コンテナを装備してるからと言ってバランスが崩れる訳でもない。更にこれらの武装コンテナは加速用可変ブースターも兼ねているため、後部にはノズルが見える。

 元々ISは宇宙運用を主として作られている事もあるので、装備やスラスター、ウィングは皆基本浮いているのだ。

 これらを以って、男性用インフィニットスーツ試作壱号機「銀鋼」は展開を完了する。完全展開に必要な時間は約一秒。本当はもう少し早くする必要があるのだが、これが限度だったらしい。

 

「これが初の男用ISか。なるほど旧式兵器の名残が多く見えるな」

「コンテナやスラスターが完全に独立浮遊じゃなくてアーム接続なのが特徴的ですね」

「スーツというより、まるで鎧だ」

 千冬姉、山田先生、箒が各々言う。確かにそうかもしれない。この銀鋼のデザインコンセプトの一つに鎧はあったはずだ。お披露目的な意味も含めて、この銀鋼は見た目を重視して作られている。

 

 一夏がハイパーセンサーのバイザーを降ろすと、視界の解像度が一気にあがり、感覚の全てが鋭敏化される。目線で示されている数値を追うと、今回の敵データが表示された。

 戦闘待機状態のIS一機を確認中。操縦登録者名セシリア・オルコット。搭乗ISの種別・カスタム機。ISネーム「ブルー・ティアーズ」。正式登録機体である事をデータベースより問い合わせて確認済み。戦闘タイプ・中遠距離射撃型。特殊兵装は不明ながら、レーザー兵装を多く武装している事を事前検索済み。

 

「一夏、ハイパーセンサーは正常に稼働しているな?」

「大丈夫だ。いける」

「そうか」

 ほんのわずか、ホっと安心したような声に聞こえる。あのクールな千冬姉の表情の機敏を読み取れるのだからさすがである。

「一夏」

 後ろから箒の声がかかったので、一夏は後ろに意識を向ける。目を向ける必要はない。何せ今の一夏は全方位に目がついてるようなものだ。

「何だ」

「情けない戦いはするなよ」

 勝て。とは言われなかった。それは不確定なもので、戦いに赴く者には荷物になると考えたからだろう。反面、情けない戦いをするな。というのは心構えのようなものだ。それは、どんな状況でも約束できる。

「おう」

   

 一夏がピットゲートに進むと、銀鋼はふわりと浮いて動く。大丈夫だ。基礎動作は何度もやっている。戦いの勘も箒との戦いで研ぎ澄まされた。後必要なのは、勝利するのに必要な力というリソースだけ。

 ゲートが開いていく。出撃だ、目の前には、「敵」がいる。

 




本作品主人公機体「銀鋼」お披露目回です。原作主人公機とは真逆の汎用機体でありますが、特性や元との関係性も後々という感じで扱って行きたいと思います。

また箒の性格の方向性も少しずつ原作とはシフトしていく感じで進めて行きたいです。次回よりバトル回ですが、何と足掛け三話に渡って戦います。ご容赦を。
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