姫君の平行世界流浪譚   作:白宇宙

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どうも、白宇宙です。
今回とある作品を見た影響で、なんとなくオリジナル作品を書いてみました!

なおこの作品では他作者様のキャラクターをお借りして物語を進めていきます!

ちなみに僕のオリジナルキャラクターも出ます。

そして、このお話は一人の少女の旅の様子を記した作品です、どうぞ生温かな目で見守ってあげてください…。

それではどうぞ!


~旅の姫君~

 

世界というのは一つという形に固定はされない。

世界という存在はまるで枝分かれした木のように様々な方向性に広がっている、そしてその広がって枝分かれした世界はそれぞれに同じ形にはなりはしない。

自然に生まれた存在が決して同じ形をしていないのと同じだ、同じ様に見えてそれは違う、それぞれの特徴を秘めているということ……。

 

 

“多次元宇宙”、“パラレルワールド”、“異世界”。

 

 

呼び方は多々あるものの、それは同じ意味を示している……。

 

つまり、何が言いたいのかというと………。

 

 

“世界は無数に存在する”、ということだ。

 

 

そして、今からここに記す物語に登場するのは……その様々な世界を渡り歩き、ある物を探す一向たちの道中を記した旅路の記録である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無数の緑に覆われた場所、太い蔦や地面から生えた気がいくつにも絡み、まるで何かを覆うようにして形成されたその場所はしんと静まり返り、独特な静寂とどこか神聖な空気に満ち溢れていた。

辺り一面に広がるこの自然が作り出した独特な空間、それは限られた場所ではない……なにせそれはまるでこの世界総てを覆うかのように大きく広がっていたのだから……。

 

………そう、ここは他の世界線にはない、この世界が辿った道筋の結果………その一つの結果の形ともいえる場所だ。

無数に存在する世界の中で、たった一つだけ存在する世界、ここ以外に似た世界があったとしてもそこにはまた違った特徴が存在するだろう。

 

そして、それを“ある人物”は認知している。

 

無数の世界が存在し、その無数の世界がそれぞれ違っていること……その世界にしかない物がたくさんあるということ……。

それを知っているのは………その世界の中を彷徨う、一人の“少女”だった。

 

 

 

「………静か………」

 

 

 

少女は緑に覆われた大地を歩いていた。

透き通るような、まるで真珠を溶かし一本一本を繊細な糸に仕立てたかのような白髪をした年端もいかない、年齢はまだ14ほどをした少女だ。

フードが付いた薄い青色をしたローブを着た少女はあたりを見回しながら歩を進める、ローブのフードを目深に被り、静かに歩き続ける彼女は自分が今見ている光景をまじまじと見つめている。

 

そんな時、ふと少女が足を止めた。

少女は近くに生えている気に近づくと、被っていたローブのフードを脱ぎ、その木をじっと見つめ始めた。

 

「………」

 

彼女が見ているのは垂直に生えている普通の木とは違う、まるでなにかに絡みつくかのようにして生えている木だった。

彼女はそっとその木の幹に触れる。

手の平から感じる木の幹の分厚く、しっかりとした存在感のある木皮のざらざらとした感触、そしてその中に脈動する命の流れ……。

 

「………生きてるんだね………」

 

彼女はその幹に触れたままそう呟くと微笑む、だがすぐにその顔はどこか悲しげな表情を浮かべた。

そして、その視線はやがて木の幹ではなくその木の幹が絡んでいる“何か”に向けられる。

 

 

 

………そこにあったのは、あきらかに自然の物ではない、固く、無骨なもの………鉄で出来た乗り物だった………。

 

 

 

「………これ………誰かが作ったもの、だよね………あなたは、これを知ってるの?」

 

 

 

太く、長いシルエットに左右に広がる大きな板のような物、先端と思われるところにはかなり古ぼけてはいるものの風車を思わせるものが付いていた。

少女はそれを見た後、答えてくれるかと言えば応えてくれるはずもないのはわかってはいるがそれを木の幹に問いかけた。

 

少女は、その乗り物を知らなかったから……。

 

帰ってくるはずもない返事、代わりに聞こえてくるのは自然で出来たこの場所を吹き抜ける風の音だけ……。

その風の音と頬を撫で、髪を揺らす風の感覚を受けながら少女は思った…。

 

 

 

この世界は、どんな世界だったのだろうと……。

 

 

 

―――………がさっ………

 

 

 

「っ!」

 

不意に近くの草むらが揺れた、その音に気付いた少女はその方向に目を向ける。

確かに聞こえた草が揺れる音、間違いなくそこに何かがいるのを彼女は感じ取っていた。

 

警戒、そして不安げな表情を浮かべたままその音が聞こえた方向へと目を向ける………。

 

すると、やがてその草むらを掻き分けるようにして………彼女に近づいていた存在が姿を現した。

 

「………あ」

 

その存在を見て、少女は警戒を緩め、僅かに安堵した。

草むらを掻き分けて出てきたそれは、とても小さな小動物だったからだ。

少女はこの小動物に近しい生き物のことは知っている、故に少女は安堵の息を漏らすとその場に座り込み、そっとその小動物に向けて手を差し出した。

 

「……怖くないよ………おいで?」

 

すると、草むらを掻き分けて出てきた小動物は一瞬だけ、少女を見て警戒しているかのようにじっと見つめたがすぐにその警戒を解いたのか軽やかな動きで少女の元に近づくと差し出された腕を駆け上がり少女の肩に乗った。

 

「………はじめまして………あなたは、ここに住んでるの?」

 

その小動物に語り掛け、少女は静かにその場に座った。

無骨な鉄で出来た乗り物に体重を預けるようにして凭れ掛かり、肩に乗っている小動物の頭を撫でる。

 

「………あなたは、リス………かな? わたしが知ってるのとちょっと違うけど……」

 

人差し指の先で頭をちょんちょんと突きながら呟く、すると小動物はそれがくすぐったかのように頭を数回くしくしと小さな手で撫でた。

それを見て少女は楽し気に微笑みを見せると、その小動物を肩に乗せたまま空を見上げた。

 

空は青く、どこまでも透き通っている………空の遥か先にあるのであろう、“大きくて丸い物”がうっすらと見えるくらいに………。

 

「……わたし、ここに初めて来たんだ……でも、ここにはわたしと同じような人がいなかったの……あなたは、ここがどんなところなのか、知ってる?」

 

空を見上げたままリスに似た小動物に問いかける。

だが、小動物は代わりに耳をひょこひょこと動かしながらただただ少女を見つめるだけだった。

 

「………あなたにとってはわたしが初めて見る物なんだね………」

 

ただ、少女はその目が何を訴えているのかが何となくわかったのか、そんなことを呟いた。

 

少女は何となくなのだが、この世界がどんな場所なのかわかっていた。

自然に覆われたこの場所、どこまでも広がる緑、ところどころに落ちている鉄で出来た大きな乗り物………そして………“人間がいない”………。

 

おそらくこの場所は………きっと、もう………“終わっている”のだろうと………。

 

 

 

「………?」

 

 

 

その時だった、少女の肩に乗っている小動物が突然あたりを忙しなく見回したかと思ったら、また森の奥へと一目散に逃げてしまった。

それを見て何かあったのかと不思議な表情を浮かべる少女、だがやがて少女もあることを感じ取った。

 

何かが、こちらに近づいていると………。

 

「………っ!」

 

そして、それは突然に彼女に襲い掛かってきた。

 

どこからともなく少女に飛び掛かってきたそれは少女のような人間とはあまりにも違う、獰猛な姿をした、まさに獣ともいえる生き物だった。

 

鋭い爪を携えた四足の脚で地面に立ち、鋭く輝かせる眼光が少女を見据える。

その口元は大きく割れ、大きな牙を覗かせている。

ギラリと光るその牙を持った口からは恐ろし気な唸り声をあげ、存在感をこれでもかと与えて来る毛を生やしたその体が少女の真上から飛び掛かってきた。

 

「きゃっ!」

 

咄嗟にその気配を感じ取った少女は慌てて、その獣から離れようと地面を蹴った。

だが、いきなりの事に体がついていかず少女はすぐにその場に倒れ込んでしまった。

 

「あ………あぁ……ぅ……ひぅ………」

 

その獣は地面に倒れた少女に狙いを定めて、一歩、また一歩と近づいてくる。

その目は明らかに普通の目ではない、それは獲物を見つけた時の捕食者の目………狩りをする獣の目だった……。

 

威圧感を与えて来る唸り声を上げながら着実に少女に近づいてくるけもの、対する少女は怯えてしまったまともに動くことが出来ない……。

逃げ出そうにも今の事で腰が抜けてしまったのか、ぷるぷると体を小刻みに震わせながら少しずつ後ずさりをすることしかできない。

だが、やがてそれをも許されなくなる、なぜなら少女の背中に先程の鉄の乗り物の一部と思われる塊があったからだ。

 

退路すらも断たれてしまった少女、彼女はその場で身をすくめ近づいてくる獣に怯える事しかできない……。

 

「い……いや……いやぁ……!」

 

恐怖のあまりに目元に涙を浮かべて目を反らす少女、するとその瞬間、獣が機は熟したと言わんばかりにその牙と爪を少女へと向けて、思い切り飛び掛かった。

 

静寂が保たれていたその空間に獰猛な獣の猛りが木霊する………。

 

 

 

「姫!!」

 

 

 

だが、それを上書きするかのように何者かの声があたりに響き渡り、少女と獣の間に割っうてはいる様に飛び出したかと思うと、続けざまに辺りに鈍い音が響き渡った。

 

「………ふえ………あ」

 

少女はそれを感じ取り、恐る恐ると目を開けると、そこには獣ではなく一人の人物の背中があった。

飛び掛かってくる獣から少女を守る様に前に立っているのは高々と足を振り抜いた体制で制止する一人の青年だった。

 

黒髪に黒い瞳、まっすぐな瞳に似合う誠実な印象を与える顔立ちをした彼は独特な作りを下ジャケットに身を包み、少女の着ているローブとはまた違った印象を受ける風貌をしていた。

両手には指が出ている革の手袋をしており、耳には翅の形をしたピアスをしている。

 

「……怪我はないか?」

 

「う……うん……」

 

「……ならよかった……下がってて、とりあえずこいつは追っ払うからよ」

 

少女の様子を確認した青年は安堵した表情を浮かべるが、またすぐに気を引き締めると先程青年が蹴り飛ばした獣に目を向けて再び身構えた。

獣は横合いから受けた不意打ちに体勢を崩しながらも再び立ち上がると、今度は割り込んできた青年の方へと狙いを定めた。

あたりに再び緊張が走る……。

 

「たくっ、めんどくせぇな……!」

 

すると、今度はまた別の声が聞こえ黒髪の青年が飛んできた方向からは別の方向から何かの破裂するような音と共に獣の足元に向けて何かが撃ち込まれた。

その攻撃に獣もさすがに動揺したのか大きく後ろに跳び退る。

 

「今の……遅いぞ! 何してたんだよ“メテオ”!」

 

「うるせぇな、こっちもこっちであたりを探してたんだよ、それよか“宗谷”、勝手に飛び出していったお前もお前だろ」

 

「そ、それは……姫がいなくなったんだから仕方ねぇだろ!」

 

「勝手に飛び出したのを追いかけて探してた俺達の身にもなれよ………まあ、見つけたみたいだけどな」

 

何かが獣に向けて放たれた方向からまた別の声が聞こえる、先に少女の前に現れた黒髪の青年はその攻撃を放った人物と思われる、もう一人の青年にそういうがそこに現れた青年は気だるげにそう言うとちらりと黒髪の青年の後ろに座り込む少女へと目をやった。

 

茶髪の癖っ毛が特徴のその青年はフードのついた白の衣服、所謂パーカーという物を身に纏っていて茶色のズボンを履いた下半身には二つのホルスターが装備されていた、そしてそのホルスターに納めていたのであろう白色をした二つの銃を両手にそれぞれ持っている。

首元に掛けているゴーグルのレンズが日の光を返し、きらりと輝くと青年は持っていた銃の照準と中性的な顔立ちに秘めた鋭い白の瞳の眼差しを再び獣へと向けた。

 

「ならさっさと片付けるぞ、このあたりはどうやらあんな感じの獣がうようよいるみたいだからな」

 

「……ああ、みたいだな……メテオ、お前は姫を……俺が前に出る」

 

二人並んでそうやり取りを交わす黒髪の青年、“宗谷”と茶髪の銃使い“メテオ”、二人はアイコンタクトを交わすと宗谷は前衛に、メテオは後衛に周るような陣形を組んだ。

対する獣もまだ戦意は失っていないのか、牙をむき出しにして再び身構えている。

 

 

 

「………二人とも、焦りすぎだって………ここで余計な体力消耗してちゃ、今後に響く」

 

 

 

だがその時、不意に獣の目の前に、ゴウ! と音を立てて突然赤々と燃え上がる炎が燃え上がった。

地面ではなく、何もない空間に突如として燃え上がった炎、それを見て獣はさすがに驚いたのか、獣としての本能が炎を恐れたのか、一目散に森の奥の方へと逃げ出していった。

この現象を目にして、迎え撃つ気満々でいた二人の青年はまた別の方向へと目を向ける。

 

「“影人”か……ナイスフォロー、正直助かった」

 

「……はあ、余計なことをしなくても何とかなったのによ」

 

「でも、こうするのが一番早いよ……獣は火を恐れるからさ」

 

宗谷とメテオが目を向けた先にいたのは二人とはまた別の青年だった。

黒色の布地に所々、赤やオレンジの花の紋様があしらわれた袖の広い作りになっている着物と袴を身に纏い、その袖から覗く手には一枚の札を持っている。

宗谷よりも長めの黒髪に、太陽を模したような額宛てをしている青年はどこか穏やかな微笑みを浮かべるながらそういうと手に持っていた札を着物の懐に仕舞った。

 

「それよりも……姫様は?」

 

「あ、そうだ、どうなんだよ宗谷、まさかあいつに怪我でもさせたりしたわけじゃねぇだろうな?」

 

「それは大丈夫、姫は………“シンシア姫”は無事だ………です、よね?」

 

「う、うん……本当に大丈夫……」

 

目の前で自分の心配をしてか、そう問いかけられ、少女はその場で立ち上がると、むん、と細く華奢な腕を体の前でまげてアピールをして見せた。

それを見ると一番心配そうな目を向けていた宗谷はほっと安心したような表情を見せた。

 

「はあ………よかったぁ……」

 

「心配性だな、宗谷は……まあ、でも怪我がなかったことは良い事だね」

 

「………まあ、死なれても困るしな………」

 

そしてほかの二人も反応はそれぞれだが、緊張感が解けたような反応を返してきた。

少女にとって、この三人は大切な仲間であり、“旅”の友……余計な心配をかけてしまった申し訳なさを感じつつも、助けてくれたことに……嬉しさを感じずにはいられなかった。

 

故に、少女は………“シンシア”は微笑み、三人にこう告げた……。

 

 

 

「………助けてくれて、ありがとう………」

 

 

 

少女の感謝の意の言葉に彼女の前に立つ三人の青年はそれぞれの表情を浮かべる。

一人は曲がった意志など微塵も見せないまっすぐな明るい笑みを、一人は素っ気ない態度を見せながらも照れているような表情を、一人は空を舞う柔らかな羽のような安らかな微笑みを……。

 

「そんなこと気にしなくてもいいんだよ、姫、あんたを守るのが俺達の役目なんだから」

 

「まあ、雇われたって感じだけどな……仕方なくだからな……」

 

「とか言って、何気に姫様を探しているとき一番頑張っていたようにも見えたけどな、メテオは」

 

「影人……お前、鉛玉を直接胴体にプレゼントされる経験、してみるか?」

 

「おいメテオ! 姫の前でそんな物騒なことするな!」

 

「そうそう、もっと素直になればいいと思うのにな~」

 

「………ちっ、うっせぇな」

 

そんなやり取りを交わす三人の青年たち、彼らは三人ともシンシアと共に旅をする仲間であり、同時に今のシンシアに仕える者…。

彼らがシンシアをなぜ“姫”と呼ぶのか、それは彼女がどういう存在なのかに由来するのだ……。

彼らにとって自分がどういう存在として映っているのかはわからない、だが今のシンシアにとっては三人はこの旅をするにあたっての頼りになる、頼もしい仲間に他ならなかった……。

 

 

 

「ともかく、シンシアが見つかったんならキャンプに戻るぞ、火が落ちる前に晩飯の支度をぅ!?」

 

 

 

……頼もしい仲間……なのだが……。

 

 

 

「………前見て歩かないからコケるんだぞ、メテオ」

 

「足元注意しないとね、このあたり変に太い蔦とか根っこが多いから」

 

「うっせぇな! 誰だってコケるくらいあるっての!!」

 

一足先にこの場から離れようとしたメテオが転倒したのを見て、やれやれと呆れ気味な様子を見せる宗谷と冷静に周囲を見てそう呟く影人、二人のその反応に小恥ずかしい一面を見られたと感じて慌てて取り繕おうとするメテオだったが、転倒してしまった事実を自分で認める形になってしまっている。

 

「あ、あの……メテオ、大丈夫……?」

 

「っ! こ、このくらいなんともねぇよ……やめろよ、気に掛けんの……空気を読めっつーの」

 

果てには先程助けに来たシンシアにさえも心配される形にもなってしまい、いたたまれなくなったのか、メテオは目を反らし立ち上がろうとする。

しかし、どういうことか彼の脚が何かに阻まれてうまく立ち上がることが出来なかった。

 

「なんだよ、この蔦! 一体どこから伸びてんだ! 邪魔なんだ………よ………」

 

その足に絡まる蔦をどうにかしようとメテオがその蔦を目にしたとき、その蔦が伸びてきている方向へと目を向け、やがて伽トンとした表情を浮かべた。

 

「ん? どうしたメテオ、そんなきょとんとした顔をして」

 

「………なあ、宗谷、メテオの脚に絡まってる蔦………これって、あれに繋がってるんじゃないかな?」

 

「………あれって?」

 

その様子が気になったのか、宗谷がメテオに問いかけるがそれを遮るようにして隣にいる影人がある方向へと向けて指をさす。

それに導かれるような形で宗谷がその方向に目を向けると………。

 

 

 

―――………キシャアアアアア………!

 

 

 

「………なあ、影人………なにあれ」

 

「………巨大な口を開けて獲物を捕食しようとしている獣のような形をした巨大植物って所かな………」

 

「………なあ、そうなるとその獲物ってさ………俺の事?」

 

「………」

 

 

 

………数十秒の四人の沈黙………そして………。

 

 

 

「うぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!?」

 

 

 

断末魔にも似たメテオの叫びが森の中に木霊した瞬間、メテオは足に絡められた蔦に引っ張られるようにしてその巨大な禍々しい花を咲かせる明らかに異様な巨大植物に引き寄せられてしまった。

突然の事に気が動転してしまったのか、まともに動くことが出来ないまま、メテオは持ち前の武器である銃を使う暇もなく……。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!! ………あ」

 

 

 

―――ごくん………。

 

 

 

「ひっ!?」

 

「メテオが食われた!!」

 

「この人でなしー! ってか……それにしても食人植物とは、物騒だな」

 

「冷静なことを言ってる場合か!? ひ、姫! とりあえずここを離れて!!」

 

目の前で起きた一瞬の出来事に戸惑う宗谷と冷静に植物を見て分析している影人、そしてその植物に引き寄せられるようにしてすっぽりとその口のような花びらに頭から飲み込まれたメテオは身動きができないのかそのまま微動だにしていない……。

 

それを見て危険と感じたのか、宗谷もまたシンシアをこの場から離そうと促すが……。

 

「………ところで宗谷、ちょっといいかな」

 

「何だよこんな時に! とりあえず影人、お前の術であの植物を焼き払って」

 

「いや、それよりも………今俺達が踏んでるものさ………メテオの脚に絡まってたのと一緒な気が………」

 

「………え?」

 

それを聞いて宗谷はふと足元へと目を向けると………そこには、先程見たばっかりで見覚え以前の問題でしっかりと覚えのある植物の蔦があった………。

しかも、その蔦を宗谷と影人の二人はバッチリと踏んでしまっている………。

 

 

 

「「………あぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!?」」

 

 

 

―――ごくん………ごくん………。

 

 

 

………何が起きたのかは察していただきたい、だがわかりやすく言うなら今まさに犠牲者が三人になってしまったということだ………。

 

「あ………ぅ………あぅ………」

 

一難去ってまた一難、獣の次は食人植物に遭遇してしまい、しかも頼りの仲間が真っ先にその餌食となってしまったせいで気が動転したシンシアはその場で腰を抜かすようにして座り込んでしまった。

シンシアには三人のような卓越した戦える能力のような物はない、そのため彼女はどうしていいかわからずただただ戸惑うばかり………。

 

………そんな時、ふと自分が尻餅をついた瞬間に………ぐに、と何かを踏んだような気がしたような………と、シンシアが地面についている自分のお尻の方へと目を向けると……。

そこには、ばっちりと太くて立派な、今先程も宗谷達三人を飲み込もうとしている植物が彼らを巻き取ったのとまったく同じ蔦が………そこにはあった。

 

 

 

「………ひっ!? ふやぁぁぁぁあああああああああああ!?」

 

 

 

………気付いたときには、時すでに遅し………。

 

森の中に少女の叫びが響き渡り………。

 

 

 

―――………ごっくん………。

 

 

 

………頼りになる仲間が、いたはずなのに………たまにこんなことも起きてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女、シンシアという名の少女と三人の青年はともに旅をする仲間である。

ただ、その旅はとても長くいつ終わるとも知れない旅だった。

ここに立ち寄ったのも、その旅の道中であり、まあ、半分ほどは迷い込んだともいえるのだが……ともかく四人はとある目的のためにともに旅をしているのだった。

 

 

………あの後、どうにかこうにか食人植物から逃れられることはできた………ぬるぬるねばねばとした粘液にまみれながらではあるが………全員無事である。

 

 

日が沈み、緑に覆われたこの大地に夜が来ようとしている。

 

四人は夜を迎え、一夜を明かすことにしたのか一つの場所に集まるとたき火を焚いて弾を取り始めた。

寝床を確保し、後は明日に備える準備をするだけ、三人の青年はそれぞれの役割に分かれて行動している。

残されたシンシアはしばらくたき火の前に座っていたが、ふと立ち上がると近場にいた一人の青年の元へと向かった。

 

「………影人」

 

「あ、姫様……ちょっと待ってて、もう少しで晩御飯の準備できるから」

 

「………ぅ」

 

着物に身を包んだ、どこか優し気な微笑みをシンシアに向ける青年、影人。

ともに旅をする仲間であるシンシアは彼がどんな人物なのかも一応は知りえている。

 

彼はなんでも、“術師”と呼ばれる存在らしく、不思議な札を使って魔法にも似た不思議な現象を引き起こすことが出来るのだ。

先程、獣を追い払ったあの炎も影人の物によるものだ。

そして、同時に……料理が得意ということ。

旅をするにあたり、料理を作るときは大抵が影人ともう一人に任せられるほど、今日はどうやら彼が当番らしい。

 

「たき火に使えるいい木の枝がたくさんとれたから、火も起こしやすかったし、そんなに時間は掛からないと思うけどね……ほら、さっき宗谷とメテオが取ってきた魚」

 

「………魚?」

 

「うん、ここから少し離れたところに湖があってね、綺麗な水らしいよ」

 

他の二人が取ってきたらしい複数の魚をシンシアに見せた。

どれも先程まで生きていたという質感を感じ取れるほどに鮮度があるのが見て取れる、シンシアが先程まで歩き回っていた地点では湖のような物は見受けられなかったが、まさかそのようなものがあるとは思わなかったと、シンシアはその魚たちをまじまじと見つめる。

 

「ふふ、珍しい?」

 

「………ちょっと違う………」

 

「そっか……待っている間暇だろうから、シンシアは湖の方に行くといいよ、水は綺麗だし水浴びでもしてきたらどうかな?」

 

「え? ………でも、わたしだけなんて………」

 

影人の提案を受けたシンシアは自分だけがそんなことをしていていいのだろうかと戸惑いを感じた。

影人はこうして料理を担当してくれているのに、自分がそんな贅沢にも似たことをしていいのだろうかと……。

 

そんな彼女の心中を察したのか、影人は優しげな微笑みを浮かべるとそっとシンシアの頭を撫でた。

フードを外し、夜の月の光と焚火の火の光に照らされている白髪が彼の手によって撫でられる、その感覚にシンシアはどこかこそばゆそうな表情を浮かべた。

 

 

「気にしなくていいんだよ、俺達は男だけどシンシア様は女の子だし、何より……俺達にとっての“姫様”なんだから」

 

「………でも………」

 

「でもじゃないよ、女の子は身だしなみは特に気を使わないと……それに、思い出したくないけど……あんな目にも合ったしね」

 

「う………うぅ……」

 

 

先程の食人植物事件のせいでひどい目に合ったことを思い出したのか、どこか悪寒が走るかのような感覚に襲われた。

今は何とかなったが、食人植物に飲み込まれた際に体についた粘液の感触や匂いなどは嫌が応にも覚えている、出来ることなら早く風呂に入りたいと思うほどだ。

 

影人は他の二人に比べるとどことなく洞察力が強い、そのためかたまにこうしてシンシアのためを思ってのさりげない気遣いを見せる時がある。

というのも、今先程の影人の発言、自分の事を“姫様”と呼んだことが深く関係する。

 

 

そう、シンシアは………“とある国を治める王家の姫君”………“らしい”。

 

 

それ故なのか、安らかな微笑みを浮かべる影人は彼女への気遣いを見せた後、頭を撫でていたその手を放すと森の奥の方へと指を指し示した。

 

「湖はあっちだよ、シンシア様が水浴びをしている間に支度は済ませておくから、気にしなくていいからね」

 

「………ありがとう………」

 

………その言葉に、シンシアは何も言えずに申し訳なさそうな表情を浮かべたまま俯くと、先程影人が示した森の奥の方へと向けて足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

焚火を焚いている場所から少し離れた森の中、シンシアは先程影人に言われたことをふと思い浮かべていた。

自分が今置かれている状況、自分がどういう存在で、なぜ旅をしているのか……旅をしている理由は認知している。

だが、その中でもシンシアにはどうしても知ることのできない物があった。

 

それは彼女にとってのこの旅の目的、その物と言っても過言ではない。

 

実際、自分もその目的を早く達成したいという焦りもある……なにせ、それは今の彼女にとっての大事な物、何よりも大切な……無くてはならない物なのだから。

 

そんなことを思い返しながら森の中を歩いていると、不意にシンシアの鼻腔をどこかで嗅いだことのある様な匂いがくすぐった。

何処か煙たいように感じ、お世辞にもいい匂いとは言えないが……この匂いをシンシアは知っていた。

その匂いに誘われるようにその方向へと歩いていくと、そこには先程も見た不愛想な表情を浮かべた銃使いがいた。

 

「………はぁ、ったく………えらい目に合ったぜ」

 

口から煙を吐き出しているのは手元に持って火をつけている煙草によるものなのだろう、火が落ちる前の事を言っているのか、愚痴を呟きながら煙草をふかしているメテオがそこにはいた。

地面から垂直に生えた木に背中を預けたメテオは地面に先程も使用していた彼の武器である白色の拳銃を二丁置いている。

 

「………メテオ」

 

「あ? ……なんだ、シンシアか……俺を笑いにでも来たのか?」

 

「………そんなことしない」

 

シンシアを見るなり皮肉気にそう言ったメテオに彼女はそういうと彼に近づいた、煙草の匂いはあまり好きではない彼女だがそんなことに構っている場合ではなかった。

 

………彼、メテオは所謂“傭兵”らしく、この旅を始めるにあたりシンシアの警護を任され、雇われたということらしい。

素直ではなく、ぶっきらぼうな性格のため他の仲間にはどことなくきつい口調になりがちなのではあるが、シンシアは知っている………本当は彼がどういう人物なのかを………。

彼が仕事のためと身に着けている身軽な動きも、手にしている拳銃の扱いも……ただ、戦うだけのものではないということを……知っている。

 

「………ただ、お礼を言いたくて」

 

「………おかしな奴だな、お前………あんな目に合ったのに」

 

「………それでも、結局は助けてくれたから」

 

シンシアはそういうと、メテオの隣に座る。

 

「………俺は仕事でこうしてるだけだ………それ以外の何物でもない」

 

「でも、頼りにしてる……仲間だもん……」

 

「ちっ………調子狂うんだよ」

 

先程のシンシアの言葉に対しての反論なのか、メテオはそういうと軽く舌打ちをして口に咥えていた煙草の火を消した。

そして、地面においてあった銃を手に取るとその銃を眺めた後下半身に装備していたホルスターの中に納めた。

一瞬だが、その銃がどことなく綺麗になっていたことからおそらく手入れをしていたのだろう。

 

「で、お前は何しにここに来たんだよ、煙草はお前みたいな子供には毒だぞ」

 

「……影人が湖の場所を教えてくれて……水浴びに行こうとしたら……メテオの煙草のにおいがしたから」

 

「犬かお前は……」

 

煙草の匂いで自分の位置を知られたことからシンシアにそういうと、メテオはもう一つの銃もホルスターに収めた。

 

すると………。

 

 

―――……くぅぅぅ……。

 

 

「っ! ……はうぅ……」

 

不意にシンシアのお腹から小さな音が鳴った。

どうやら、我慢はしていても体は正直、ということらしい……それにシンシアくらいの年頃になると育ち盛りということでよく食べるともいう。

自分自身、結構小食な方なのだと思うのだが、空くものは空くらしい。

 

「………はあ………しかたねぇな」

 

すると、その音を聞いていたメテオはパーカーのポケットに手を突っ込むと、そこから何やら小さな袋を取り出し、それをシンシアに差し出した。

 

「………これは?」

 

「前の場所で買っておいたチョコだ、それで食い繋いどけ」

 

メテオはそういうと小さな袋入りの一粒のチョコをシンシアに渡す、だが、それを受け取ったシンシアは悪いと言いたげに小さく首を左右に振った。

 

「………これ、メテオの………」

 

「俺のは俺ので確保してある………それ喰ってさっさと水浴びして来いよ………その間に飯食えるようにしとくから」

 

そういうとメテオは立ち上がり、影人のいる焚火の方へと歩いていった。

先程まで不機嫌そうにしていたのに、この反応……やはり、彼は……ただ素直ではないだけなのかもしれない。

シンシアはそんなことを想いながらその背中を見送る。

 

「………てか、お前が早く水浴び済ませてくれないと俺達が水浴びできないんだよ………少しでも遅かったらお前が入ってても構わず入るからな」

 

その場から動かないシンシアを急かすように言った言葉、これも単なる照れ隠し……なのだとは思う……。

とりあえず今の言葉に返答するならばと、シンシアは呟いた。

 

「………えっち」

 

 

 

 

 

メテオから受け取ったチョコを食べながら湖の方へと進むシンシア、受け取ったチョコは甘く、舌に乗せてじんわりと溶けていき広がる甘さがとても心地よく、甘美な味だった。

そして、歩くことしばらく、やがてシンシアは森の間を抜けて開けた場所に出た。

 

「………ここが………」

 

そこには夜になり、空に浮かび上がる月の光を跳ね返すように光る湖が広がっていた。

夜でもわかるその透き通った水の透明度、月明かりのおかげでしっかりと目で見ることが出来るその光景はまさしく幻想的という言葉が相応しかった。

シンシアはその湖に近づき、手ごろな場所がないか探し始める。

彼女も年相応の少女、さすがに隠すものがない場所で衣服を脱ぐのには抵抗はあるのだ。

 

「あれ、姫……どうしてここに?」

 

「え………あ、宗谷」

 

ふと湖の畔で今日、真っ先に獣から自分を助けてくれた青年、宗谷がいたことにシンシアは彼に声を掛けられたことで気付いた。

彼は何やら湖の水を使って何かをしている様だった。

気になったシンシアは彼の方へと近づくと、宗谷はどうやらその湖の水で何かを洗っている様だった。

 

「………何をしてるの?」

 

「このあたりで拾ったものを洗ってたんだ、人工物の様だから何かわかるかと思って」

 

「………あ」

 

それを聞いてシンシアはこの森の中で見た光景の事を思い出した。

森が覆うようにしていたこの大地、そこに点々と存在する明らかに人の手によって作られたかのような物、シンシアが獣に襲われた時に見つけた鉄の乗り物もそれに含まれる。

そして、この場所を捜索したが一向に自分たちと同じような知性を持つ存在に出会うことはなかった……。

 

「姫も何となく察してるかと思うけど、たぶん……この世界にはもう……」

 

「………人はいないんだね」

 

「………ああ………こういうこともあるんだろうな」

 

………彼らが立ち寄ったこの場所、というよりも………この世界そのものは、もう既に“終わり”を迎えた世界だったのかもしれない。

 

この自然豊かな世界だが、その前にどんなことがあったのか、何があったのかは想像できない……ただなんとなくわかるのは、この世界が何らかの形で長い時間をかけた静寂に辿り着いたということ……こうなる前はきっと知能を持った生き物がこの世界で生きていたのだろう。

 

 

「……今までの旅でいろんな世界を周って、いろんなものを見て来たけど、こういう世界もあるんだな……」

 

「……寄り道、しちゃったのかな」

 

 

余計な時間に付きあわせてしまったのではないか、ふと不安になったシンシアは申し訳なさそうにそう呟くと湖の湖面を見つめるように俯いた。

この旅をしているのは自分、それに付き合ってもらっている宗谷、メテオ、影人の三人に余計な時間を取らせてしまったと……。

 

だが、そんな雰囲気を見せるシンシアを見て宗谷は何を思ったのか、静かに湖の水で洗っていた物を出すとそれを月明かりに照らすようにして空に向けた。

 

「………この器、前はどんな人が使ってたんだろうな」

 

「………?」

 

宗谷の言葉にシンシアは気になり、顔を上げて今彼が持っているものを見つめた。

それはどうやら、何かの器だったらしく所々に汚れや亀裂が付いているがうっすらと見える装飾は華やかな物だった。

 

「いろんなものを見て、旅をして……いつ終わるかもしれない旅だけど、俺はこういうことがあってもいいとも思う」

 

「……次の場所も、こんなところかもしれないよ?」

 

「それもそれでいいさ、その時はまたみんなで寄り道しようぜ」

 

宗谷はそういうとシンシアに屈託のない、純粋な笑顔を向けた。

 

「責任感じて旅をする必要なんてないんだ、何ならいっそ楽しんだ方が得だろ?」

 

その笑顔にシンシアはどこか呆気にとられたような表情を浮かべる。

あんな目にも合って、いつ終わるとも知れないたびに付きあわせて……それでもなお、彼はこの状況を楽しんでいる。

どうして、そこまで楽しめるのか……不思議だった。

 

「それに目的に関してもそうだ………楽しんで旅をして、その目的を果たせたら一石二鳥だろ?」

 

「………そう、かな………その目的がいい事とは限らないけど………」

 

「いいや、間違いなくいいことだ、なにせ………姫の大事なものを見つけるたびなんだからさ……」

 

そういうと宗谷は洗っていた器を持ったまま立ち上がると、シンシアに背を向けて焚火のある方へと向かって歩き出した。

 

「俺達の旅の水先案内人は姫なんだ……どこに辿り着こうが、俺はついていくよ」

 

そう言って宗谷は森の中へと入って行った、その姿を見送ったシンシアは再び湖面をのぞき込み、その湖面に月明かりが照らされたことで浮かび上がった自分の姿を見つめた。

そこに写る自分の顔、旅をしている自分の姿……それを見つめるシンシアの表情はどこか不安げで、それでもどこか決意に満ち溢れている目をしていた。

 

「……この旅の行先……」

 

そうだ、不安に感じていても仕方のないことだ。

 

この旅を始めた時から、そんなことはわかっていた。

 

何せこの旅は自分にとっては大事な物を見つけるため……取り戻すための旅……。

 

 

 

「………わたしの………“記憶”を見つけるまでの旅………」

 

 

 

………そう、彼女には記憶がない………この旅を始める前の記憶が、一切合切欠落しているのだ。

そして、それを見つけるためにはこの旅が必要なのだ……。

 

各世界を巡り、自分の記憶に関連する“鍵”を見つけるために………。

 

そのために、自分の力も存在する………。

 

 

 

ふと、シンシアは近くにそれなりに大きな岩を見つけた。

そこの影なら目隠しとなって水浴びが出来そうだと感じた彼女は畔にあるその岩陰へと向かう。

岩陰に身を隠したシンシアは身に着けていた衣服を脱ぎ始めた、ローブ、その下に身に着けていた彼女の衣類、下着も…。

生まれたままの姿となったシンシアは恐る恐ると湖にその足をつけ、水に体を浸からせた。

 

ひんやりとした感覚と、水の感覚が心地いい、今日受けた疲れやその他もろもろが洗い流されて行くようである。

これなら次の旅も頑張れそうだ……。

 

 

月夜に照らされ、シンシアの身体が夜の闇の中でぼんやりと浮かび上がる。

そして、その時……彼女の背中にしかない、“特別な力の証”もまた浮かび上がった。

 

 

背中にあるのは、まるで大輪の花のように広がる独特な“刻印”とも呼べるものだった。

背中に刻まれたこの刻印は自分が自分の記憶を見つけるために旅をすると決めた印………。

 

 

 

………どこかの“平行世界”にあるはずの自分の記憶を開く“鍵”を見つける旅をするという………証だ。

 

 

 

「………次は、人がいる世界に行けたらいいな………」

 




いかがでしたか?
この作品はかなりの不定期更新になりますが、ちょくちょく続けていけたらなと思います…。
それでは、また次回……

キャラをご提供いただいた作者様

『メテオ』

白銀の嵐Mk.2様(ID:163495)

『影人』

狼の騎神ガロ様(ID:73133)

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