ここはイッシュ地方、サザナミタウン。リゾート地として有名な街である。
が、それは夏の話。冬は流氷が押し寄せ、海に出るものなどほぼ皆無になる場所でもある。
そんな冬のサザナミの海に、無謀にも防寒着なしで立っている青年がいる。正確には、足元のトドゼルガの上に、であるが。
「うーん、ここんとこタマザラシやトドクラーが減ってきてんだよなー」
そう呟いたのは先の青年である。この寒空の下、誰もいないはずなのに彼の言葉は誰かに話しかけているようであった。
<また違法ハンターの乱獲かなあ。同族としては今すぐ見敵必殺(サーチアンドデストロイ)したいんだけど>
そう返ってきた返事-無論ほかに人などいない-に青年は苦笑して答える。
「ダメだって、勝手に暴れて理事やポケモン協会に怒られんの俺なんだから」
そう言う青年の視線は下-足元のトドゼルガに注がれていた。
よく見ればトドゼルガの体には至る所に生傷があり、自慢の牙は通常の個体より長く、太く発達していて、それが彼が歴戦の戦いを潜り抜けた猛者であることを象徴していた。そして、
<ちぇ、んじゃ早いとこ報告してよー。こうみえて故郷で勝手されてかなりキテんだよ俺>
その言葉は確かにトドゼルガの口から放たれていた。
「はいはい、んじゃとりあえずセキエイ行こうか。飛んでいくからボール戻ってよ『タスク』」
<合点!>
そういって青年はトドゼルガをボールに戻し-同時に空中に一体のポケモンを放ち、その背に乗る。
1<おう、セキエイまでだな。>
2<早いとこ行こうぜ>
3<ドラゴンタイプに冬のサザナミはきっついかんねぇー>
そう言葉を発したのは三つ首のドラゴンポケモン、サザンドラ-1が真ん中、2が右、3が左の首の言である。彼もまた、体に凍傷跡、火傷跡、打撃痕を刻みつけ、そののんきな言葉とは裏腹に、合計六つ、三対の眼も『きょうぼうポケモン』の名に恥じないものがあった。
「だらしねえなあ『ドラス』、まあいいから頼むわ」
そう応えた青年を乗せたサザンドラは飛び上がり、カイリューもかくやというスピードで一路セキエイを目指す。
-数日後、サザナミ付近で違法にポケモンを乱獲していたハンターがとあるトレーナーと一頭のトドゼルガに率いられたトドゼルガやトドクラーの大群の襲撃を受け、半分氷漬けで一斉検挙されたのはいうまでもない。
これは、とある物好きな職を生業としている青年と、そのパートナーたちののどかでちょっと不思議な物語である
短いですけど、一旦ここまでです。ありがとうございました