ポケットモンスター~ポケモンウォッチャー~   作:マイン

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本編スタートです。しばらくはシリアス無しです


ツカサ・シルフという人間

 

 

シンオウ地方、テンガン山。ハクタイシティとカンナギタウンの間、シンオウのほぼ中央に位置する巨大な山である。

その山のふもとで、二つの人影が飛び回って時にぶつかっていた。一人は黒髪をたなびかせ、両腕にお手製らしいトンファーを持った青年、ツカサ・シルフ。もう一人はすらっとしたボディに鋭い眼光を光らせ、鋭く発達した刃物のような両腕をふるうポケモン、エルレイドだ。

やがて二人は飛び回るのをやめ、次の瞬間飛び出して衝突した。土煙が舞い、二人を隠す。やがて煙が晴れると、エルレイドがツカサの喉元に刃を突き立てていた。

しかし、両者の表情は真逆であった。エルレイドが苦い表情を浮かべ、ツカサは薄く笑んでいた。よく見ればツカサのトンファーがエルレイドの肩口をとらえ、それ以上動かないようにしていた。無理に動かせば肩が外れてしまうだろう。

勝っていたのはツカサだったのである。

 

「はーい、しゅーりょー。俺の勝ちー」

<むうう、まだツカサ殿には届きませぬか。無念>

そういって両者は武器を収める。あれだけ殺気立った戦いをしていたにも拘らず、その言葉は朗らかなものであった。

「いやいや『マサムネ』、お前も相当強くなったよ。こう見えてガキのころ流行ってた「テッカニンとり競争」では負け知らずだった俺のスピードについてきてんだから。たぶん全エルレイド中で最速だぜお前」

そういってツカサはトンファーをしまうと、カバンから「おいしい水」のボトルを二本出し、一本をエルレイドに放る。

<ツカサ殿にそう言ってもらえると拙者も嬉しいんでござるが、…やっぱり悔しいでござるよ>

ボトルを受け取ったマサムネは器用にキャップを外すと、胡坐をかいて口に流し込む。

(やっぱ立ち回りの参考になるからっていって時代劇見せすぎたな)

そんな人間くさい、というか古臭い仕草と言葉遣いをするマサムネに、ツカサはそんな拉致のあかないことを思った。

 

 

ツカサ・シルフという人間は傍目から見てもかなり恵まれた環境にいた。カントーの大手企業シルフカンパニー社長の次男として生まれ、何不自由ない生活を送っていた。が、外の世界への強い憧れを抱いていたツカサにとってそれはとても退屈なものであった。

幼いころ視察について行って訪れたカンナギタウンにて、ツカサはこっそり宿を抜け出し、テンガン山を登った。そこでとある少女と出会うのだが、それはまた別のお話。

帰ってからこってり絞られたツカサは、反省しながらも外の世界へのより強い思いを抱いたのであった。

しかし、それから数か月して訪れたイッシュ地方、カゴメタウン。夜中に再び宿を抜け出したツカサを待っていたのは、のちに彼が「悪魔」と呼んだほどの恐ろしいポケモンであった。朝になり、体に大きな爪痕と凍傷を刻んで倒れていたのを発見されたツカサには、様々な感情が渦巻いていた恐怖、痛み、後悔、そして、果てしなく強いリベンジ精神。ツカサは折れそうな心を、そのポケモンへの対抗心でつなぎ留め、自分を保っていた。ここで折れていれば、彼の生き方は大きく変わっていたであろう。

それから数年後、彼は家を飛び出した。まだ見ぬ世界を見るために、あの日のリベンジを果たすために。

 

 

そして現在、リベンジを果たし、世界でもトップクラスのトレーナーへと成長した彼は、

「おーい、そんなとこにおったんか」

「あ、ジンダイのとっつあん、おかえりー」

多くのトップトレーナー達のなかでのほほんとした生活を送っていた。

「どうだったー?やりのはしら。アルセウスに会えた?」

「いんや、やっぱ伝承どうり「天の笛」がないと駄目らしい。せっかくおまえから「こんごうだま」「しらたま」「はっきんだま」借りたのになあ。悪かったなあ、付き合わせて」

「まあいいよ、いい訓練になったし。んじゃフロンティア帰ろうかー。送ってくよ」

「おう、済まんな」

そういってツカサは相棒たるドラスを出しジンダイとともに飛び上がる。

ジンダイとは遺跡発掘が元で知り合い、意気投合してちょくちょく一緒に遺跡に赴いたりしているが、まさかアルセウスに会ってみたい、と言い出すとは思わなかった。

(まあ、今度シント遺跡連れてってやれば何とかなるかねえ)

アルセウスに会えず、不満たらたらなジンダイを横目に、そんなことを思いながらツカサは彼の職場-バトルフロンティアへと帰路についた。




今回こんなもんで。「悪魔」の正体、皆さんなら分かりますよね?
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