今回ちょっとバトルあり…自信ないけど
ホウエン地方、りゅうせいの滝。よく隕石が落下してくる事で有名だが、基本的にほとんど誰も立ち入らない洞窟である。
そんな場所の最奥、広い空洞となっているところで、二人の青年が離れて向かい合い、その間では三つ首のドラゴンポケモン「サザンドラ」-『ドラス』と鋼の体を持ったとりポケモン「エアームド」が空中戦を繰り広げていた。
「エアームド!「はがねのつばさ」だっ!!」
「待ってました、ドラス!真正面から「だいもんじ」!」
「しまっ!」
エアームドに指示を出した青年は己のミスを悟るが時既に遅し。翼を硬化させて突っ込んだエアームドの体をドラスの三つ首から噴き出た巨大な炎が包む。その溜めと範囲の狭さゆえ他の炎技より命中精度の低い「だいもんじ」であるが、真正面から突っ込んできた相手に当てるだけならば造作もない。
無論エアームドも並みの炎で参るほど軟ではないのだが、いかんせん相手が悪かった。どんな虫タイプ、氷タイプでも一撃で撃破できるよう訓練を重ねたドラスの「だいもんじ」は、かのホウオウの「せいなるほのお」にも匹敵する威力を誇る。エアームドは耐え切れず失速し、「だいもんじ」の効果範囲から抜け出す。
「エアームド!」
思わず声をだす青年―ダイゴの視線の先には、炎で焼かれ、鋼の体躯のあちこちを赤く発熱させたエアームドがいた。間違いなく「やけど」状態になっている。かろうじて飛ぶ体力は残っているものの、あのままではやけどのダメージで力尽きてしまうだろう。しかし、ダイゴも並みのトレーナーではなかった。
「っそうだ!エアームド!「ドリルくちばし」だ!当てる必要はない!とにかく回転して飛び回れ!」
主の一見意味不明な命令に、思わず戸惑った視線を向けるエアームドだったが、主の迷いのない目をみて、すぐに行動に移す。体を回転させ、壁にだけはぶつからないようしっちゃかめっちゃかに飛び回る。
「…成程な。考えたな」
それをみてもう一人の青年―ツカサはその意図を察する。
1<おい、あいつはなにしてるんだ?>
「なーに、すぐにわかる」
1<?どういう意味2<ああっ、あれをみろ!>どうしたんだお前……あっ!!>
意図を掴めなかったドラスは事実を見て、ようやく理解した。
真っ赤だったエアームドの体が元の色に戻っていく。「ドリルくちばし」の回転は攻撃のためでなく、周囲に気流を作り出して洞窟内の冷たい空気で体を冷まし、やけどの進行を抑えるためだったのである。
そうこうしている内にすっかり冷えたエアームドが回転をやめる。が、それでもダメージは大きく、加えて回転による体力の消費もあったからか、遂に地に足を着けてしまう。
「そいつはもう無理だな」
「…ああ、ご苦労さんエアームド。ゆっくり休んでくれ」
そういいダイゴはエアームドをボールに戻す。しかし彼の眼からはいまだに闘志は消えていなかった。それをみてツカサもドラスにねぎらいの言葉をかけ、ボールに戻す。
「使用ポケモンは二体、だからもう一体だね」
「ああ。じゃあ、やっぱりあいつ等か?」
「もちろんだとも」
そういい、ダイゴとツカサは新たなボールに手をかけ、同時に投げ、名を呼ぶ。
「行って来いメタグロス!」
「ショウタイムだ『ベルーグ!』」
繰り出したのは互いにメタグロス。違いがあるとすれば、ツカサの『ベルーグ』は通常のメタグロス種にあるX型の金属板が十字の形になっていることだろう。二体のメタグロスは向かい合いと穏やかな眼差しで何やらテレパシーのようなもので交信し合ったのち、目つきを変えてにらみ合う。そしてベルーグがテレパシーでツカサに指示を求める。
<主よ!我が主、ツカサ・シルフよ!命令(オーダー)を!>
二人も慣れたのものでそれを待ったのち、互いにうなずいて指示をだす。
「「メタグロス(ベルーグ)!コメットパンチ!」」
そして二体のメタグロスの拳がぶつかり合った―
ツカサとダイゴ、シルフコーポレーションの御曹司とデボンコーポレーションの御曹司。二人は何も親の関係だけで仲良くなったわけではない。
家から飛び出したツカサは当時モノズであったドラスと各地を転々としていたが、子供の小遣い程度で行ける範囲は限られ、金も底を尽きかけたツカサが身を寄せたのが当時提携関係を結んだばかりのデボン社であった。
門前払い、下手をすれば親父にも迷惑をかけると覚悟して向かったが、意外なほどすんなりと受け入れられ、さらには部屋と食事まで用意されていた。なんでも、親父の方から以前行ったことのあるそちらに顔を出すかもしれないからその時は面倒を見てもらえるようお願いがあったらしい。
父親に筒抜けだったことへの恥ずかしさとその優しさで、あの時は親父にお礼の電話を入れるのも気恥ずかしかったものである。
その滞在期間中、一番よく遊んだのが少し年下のデボン社長の息子、ダイゴであった。当時のダイゴも冒険に興味深々であり、まだ浅いながらも各地を巡った冒険譚を語ると、目を輝かせて聞いていたものだ。(この時「進化の石」の話をすると目つきが変わったのが印象的だった)
そして去り際、ダイゴのお気に入りだというポケモンのタマゴまでもらってしまい、感謝尽くしでデボン社を後にした。そしてその時、ダイゴと約束をした。
いつかお互い強くなって、必ずポケモンバトルをしよう―
それから十数年、何度目になるかわからない約束のバトルを終え、滝の前で二人と二体のメタグロスは寝そべっていた。
「やっぱり強いなあ兄さんは。まだ敵わないよ」
「その兄さんって呼び方いい加減やめてくれよ。んなでかくなった元ホウエンチャンピオンに言われてもむず痒くなるだけだからよ」
そんな本物の兄弟のような二人のやり取りを、本物の双子の兄弟であるメタグロスたちは微笑ましげに眺めていた。
「お前のほうが立派なんだから俺の前でくらいえばってもいいんだぜ」
「ハハ…、ありがとう、兄さん」
(でも、やっぱり兄さんは僕にとっての永遠の憧れなんですよ)
気恥ずかしくて、とても口に出しては言えないような言葉を、ダイゴはしっかりと心の中で反芻した。いつか追いつくために。いつか追い抜くために。
「ところで兄さん、バトルの後なんか約束あるって言ってませんでしたっけ?」
「あー、確かシロナとなんかそんな話したような……ま、いっか」
(………これさえなければなあ)
女心に疎いところだけは絶対に真似しないと誓いながら。
翌日、デートの約束をすっぽかしたツカサを待っていたのはこれでもかと言わんばかりの罵倒と埋め合わせのための多額の出費であった。
今回ここまで。