「ハッサク…!ハッサクーー‼︎」
カボスが神機を投げ捨て、一目散にハッサクの元へ駆け寄り嗚咽を漏らす。
一方、ゲンは地面から剣を抜き取り、悠々と構えて彼女に歩み寄っていく。。
『残ったのはこの女だけか…
まあ、女なぞいたぶっても仕方ないがな。。
だがこれほど活きが良ければ、まあまあの味だろう』
顔を上げ、キッと睨みつけるカボス。
だがゲンはその顔を見てほくそ笑む。。
『その眼…実にいいぞ。
先日俺に皆殺しにされた連中も、最初はそうやって俺の顔を睨みつけてきた。
だが所詮、最期は取るに足らん情け無い表情で死んでいったがな。。
貴様は…どうかな?』
炎の剣を振りかぶり、カボス目掛けて振り抜くゲン。
その軌道上には確かに彼女がいたのだが…
カボスには傷一つ付いていなかった。
そして、攻撃をした側のゲンの腕が…無くなっていたのだ。。
『何ッ⁉︎これは…一体、、』
カボスとゲンから少し離れた場所で、何者かが巨大な板状のものを肩に担いでいるのが見えた。
「た、隊長、か…?
いや、違う…隊長じゃ、ない…あの人の神機は、あんなに、でかくない…
だ、誰、だ…?」
必死に記憶を辿り、目の前にいる人物を認知しようとするハッサク。
激しい痛みの中で懸命に目を凝らし見ようとするが、その気持ちとは裏腹に、次第に視界が霞んでくる。
「く…そ…、意識が、無くなり、はじ…めた…」
虫の息のハッサクを尻目に、ずんずんと歩み寄ってくる謎の人物。その行く先は、もちろんゲンである。
近くまで来てからようやく神機の形を認識したカボスは絶句した。
それは普通のものとは比べ物にならない程、分厚く長いバスターブレードだった。
銃部分が無い旧型なのだが、この神機にはなんと装甲すらも無かったのだ。。
男はバスターブレードを肩から上げ、ゲンに向かって突き付ける。
だがゲンは怯むどころか、ニヤリと笑い…
逆に近付いて来た。
『何者かは知らんが…《たまたま》俺の腕を斬り落としただけで、いい気になっているな⁇
言っておくが、貴様如き片手だけでも十分片付けられるのだぞ…』
ゲンがそう言うと…男の方もニヤリと笑う。
「たまたま、か。フン!
…かかってこい。さっきのがたまたまではなく、《必然》だったという事を証明してやる。。」
『ほざけ、ヒヨっ子がぁ‼︎』
ゲンが怒号と共に残った腕の剣で、疾風の如き斬撃を繰り出す。
だが、その攻撃は男には届かず…
ゲンの腕は胴体から離れ、明後日の方向へ飛んでいった。
『な…に…バ、バカなぁッッ!』
男はゲンより遅く攻撃を出しているのに、ゲンより先に攻撃を命中させている。
あまりの一瞬の攻防に、半ば放心状態のカボス。ハッサクは既に気を失っている。。
「くははっ!なんとまあ滑稽な姿になったな、ゲンさんよ。
もう両腕はねえ、尻尾もねえ。ずいぶんと制限がかかってしまったな。さあ、どうする?
思い切って頭突きでもしてみるか?」
笑いながら言い放つ男に対し、ゲンは姿勢を低くして頭を突き出す。本当に頭突きをする、わけでもなさそうだが…
『グハハハハ‼︎笑っていられるのも今のうちだ‼︎
俺が今から吐き出す炎は、今までとは比較にならん程の大火力だ!こんな廃墟なぞ容易く吹き飛ばせる程のな‼︎
逃げても無駄だぞ…この炎はどこまでも貴様を追いかける‼︎』
口中に灼熱の業火を発生させるゲンに対し、男は溜め息を吐いて首を横に振る。
「わかったから、さっさとやったらどうだ…」
『諦めて開き直ったか…いいだろう!
そこまで死にたいなら、今すぐ殺してやる‼︎』
ゲンが大きく口を開き、特大の火炎放射が男に降り注ぐ。
が、男は防ぐでも避けるでもなく、その場で神機を構えてプレデターを起動した。
そのサイズは、普通の神機のそれとは段違いの大きさを誇り…
迫り来る炎を、余すことなく飲み込んでいった。。
『な…な、な、何故だ…!』
自信満々で放った最高の攻撃のはずが、全て飲み込まれてしまい、焦りの色を露わにするゲン。
今度は男の方が、炎を飲み込みさらに巨大化したプレデターをゲンに向かって突き出す。
「今度はこっちの番だ…覚悟はいいな?」
『なにぃ…、、一体、どうするつもりだ…⁉︎⁉︎』
「フン…!こうするんだ…‼︎」
男が神機に力を込めると同時に、プレデターの口が開く。開いた口からはゲンが吐いた炎よりも数倍でかいオラクル波が放たれて、奴をあっという間に包み込み…
跡形もなく、消滅させてしまった。。
「あ…ああ…ぁ…」
あまりの衝撃の連続に度肝を抜かれ、ただただ座り続けるカボス。
そんな彼女に向かって、男が回復錠Sを投げ渡す。
「おい、女。いつまでもへたってねえで、さっさとその男にリンクエイドを施してやれ。死んでしまうぞ…
あと、向こうで黒焦げになってる奴もな」
「え、ええ…‼︎」
カボスは言われた通りに、ハッサクの身体に手を置いて力を込める。
すると、止めどなく続いていた出血がピタリと収まり、傷穴も塞がっていった。
やがて意識を取り戻したハッサクが、起き上がって男の方を見る。
男は、こちらに背を向け立ち去ろうとしていた。
「お…おい!アンタ、何者なんだ⁉︎」
ハッサクの呼び掛けに、男は動きを止める。
「…悪いが、名乗るのはどうも苦手なんでな。
そこの女なら知ってるだろう、訊いてみろ」
予想外の返答に唖然とするハッサク。
男はさらに続ける。
「それと、勘違いはするなよ。お前らを助けたわけではないからな。。
俺は常に強いアラガミを追い求めているだけだ。
もっとも、今の奴はその中にも入らなかったがな…」
言い終わると同時に、男は去っていった。
何も言い返せず俯くハッサクの所へ、ヒロヒデの治療を終えたカボスが歩み寄る。
「相変わらずイヤな奴ね…でもそのおかげで全滅は免れたし、文句は言えないわ」
「カボス…あいつ、誰なんだ?お前なら知ってるとか言ってたが。。」
ハッサクの衣服についた砂泥をはたきながらカボスは答える。
「そっか…ハッサクが入隊した時には、あいつは既にいなかったから。。
吉居カゲマサ。名前くらいは聞いたことあるでしょ?」
「吉居…カゲマサ⁉︎」
それを聞いた途端、顔面蒼白になるハッサク。
どうやら名前だけは知ってたようだ。
「顔は知らなかったが…噂は聞いたことがある。。
何でも、並の神機使いは交戦すら許されない接触禁忌種のアラガミしか相手にしない奴だって。
トルキスの前隊長を務めてたらしいが、部隊員との折り合いが悪く、ある事をきっかけに他の支部へ飛ばされたとか…」
「そうよ、よく知ってるわね。
でもこの廃神社エリアは、あの男が移籍した支部の管轄ではなかったはず…
なんでここに現れたのかしら…?」
首を傾げ、思案するカボスの元へやってきたのは…リンクエイドを受けて復活した、ヒロヒデ。
「なあ、隊長はどこへ行ったんだ?
あの人だろ?俺達を助けてくれたのは?」
「いいわね…何も知らないってのは…。。
本当に羨ましいわ…‼︎」
「へ⁇」
キョトンとするヒロヒデに、カボスが血相を変えて近付くと。。
「隊長だったら黙って立ち去ったりしないわよ‼︎
リンクエイドだって他人任せにしたりしないし‼︎」
「そんな大声で言わなくたっていいだろ〜…
てか、何で俺に対してそんなに風当たり強いんだ?」
耳元で怒鳴り散らすカボスと、思わずタジるヒロヒデ。
そんな二人の元へハッサクが歩み寄る。
「まあ確かに考えてみれば…
俺達が救援信号を送ってから、かなりの時間が経つしな。
もう到着してても問題ないのだが。。」
「まさか…隊長の身に何かあったんじゃないかしら⁉︎」
「それか、急用を思い出して帰ったとか⁉︎」
最後に発言したヒロヒデを、冷めた目で見つめるハッサクとカボス。
「ヒロヒデ…それって、いつもアンタが逃げ出す時に使う謳い文句じゃないの‼︎
隊長とアンタを一緒にするなッッ‼︎」
「ひぃ‼︎わりぃわりぃ…取り消すって〜〜‼︎」
またもや始まった《三文漫才》に、呆れ顔で溜め息を吐くハッサク。
「まあとにかく…ここも片付いたことだし、隊長の元へ向かおう。
反応がある場所は…摂社付近か。最初の交戦地点だな」
それぞれがフォアの身を案じ、走るスピードも次第に速くなっていく。
しかし目的地が近づくにつれ、ハッサクの脳裏には様々な疑念が浮かんできた。
(強いオラクル反応が2つ、互いにぶつかり合っている…
だが、どちらもアラガミのものではない。。
片方は隊長のものだろうが、もう片方の正体がわからない。カゲマサって奴ではなさそうだが…
チクショウ、一体どうなってるんだ⁉︎妙な胸騒ぎがするぜ…‼︎)
考えれば考えるほど、悪い方にばかり思考が向いてしまうものである。それではいかんと、首を横に振るい懸命に走り続けるハッサク。
そうこうしている間に、反応がある摂社に辿り着いた。
そして…悪い予感は当たってしまった。。
衣服の至るところが裂け、血を滲ませながら神機を構えているのは…紛れもなくクオーツの隊長、フォア・グロフォード。
彼と向かい合うように、同じく神機を構えて立つ男。
その男の姿を確認した3人は…唖然とした。
「そ…そんな…⁉︎」
「何でアイツがここに⁉︎しかも何でウチの隊長と対峙してるんだ⁉︎」
カボスとヒロヒデが驚愕の声をあげる中、一人歯を食いしばっていたハッサクが静かに声を漏らす。。
「セマ、ノブ…!」