野良犬の矜持   作:陰毛樽ないん?

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紅蓮

スピアの神機を地面に突き立て、息を切らしながら半ば凭れかかるように立つフォア。

その眼前には肉塊となったハンニバルが倒れ伏す。

 

「ハア、ハア…思ったよりタフな奴だった。。

だが、所詮私の敵ではなかったな」

 

ハンニバルからコアを抜き取った後、ポケットから敵と味方の位置がわかるレーダーを取り出す。

そして現在の状況を確認した瞬間、フォアの顔が引きつった。

 

「バカな…須逹らが交戦している個体のオラクル反応が一気に上昇している⁉︎

まさか、ゲンはあっちの方か⁉︎…マズイぞ…‼︎」

 

すぐに自らも救援に向かおうとするが、もう一度レーダーを見た瞬間、彼の足は止まった。

ーー フォアのいる位置を囲むように、多数のオラクル反応が出現していたのだ。もちろん味方のものではない。。

 

「ク、こんな時に…‼︎

このまま行けば須逹らも巻き添えを食ってしまう…

此奴らを先に片付けるしか無さそうだ。。」

 

再び神機を構え、応戦の姿勢をとるフォア。

取り囲むアラガミの群れが彼に一斉に襲いかかる…!

 

 

 

 

「うおぉぉおお…!」

 

カボスからのアラガミ弾受け渡しの力を得て、通常の捕食だけではなれないバーストレベル2段階目、《リンクバースト》状態になったハッサク。

 

「久々の感覚だ…!力が湧いてくるぜッッ」

 

通常のバーストよりも身体がより光り輝き、オラクル濃度も一気に上昇した。

不意にハッサクがカボスの方を振り向く。

 

「カボス、もうお前は前衛に参加しなくていい。

サポートに徹してくれ。オラクルも回復用に温存しておくんだ」

 

「わ…わかったわ」

 

カボスが頷いて了承したのを確認し、再び目線をゲンに戻した時には…

既に目前に迫り、右手の鋭利な爪を突き立てて来ていた。

だがハッサクは素早くゲンの右半身側に踏み込んでそれをいなし、その際に鎌による横薙ぎを脇腹に浴びせかけた。

 

リンクバースト前には全く切れなかった外皮が面白いほどあっさり裂け、血飛沫が噴き出す。

 

「うぉりゃあ‼︎」

 

その勢いを利用してその場で横に1回転。

柄を伸ばして刃を増やす咬刃展開モードに変形させる。

そして遠心力を利用し、裂いた脇腹目掛けて叩き込んだ。

 

鎌の刃先がゲンの脇腹に深々と突き刺さる。

しかしゲンは痛がる素振りも見せず、身の丈程もある尻尾をハッサク目掛けて振る。

 

「食らうかよっ」

 

だがハッサクは跳躍して尻尾攻撃をかわし、そのまま左半身側へと回り込んだ。

鎌部分は右脇腹に刺さったままなので、伸びた柄がゲンの背中に覆い被さった状態になっている。。

 

「お次は、こちらの番だなっっと‼︎」

 

ハッサクが神機に力を込めて、鎌を引き戻し始める。

すると、鎌部分だけでなく柄についた刃も、ゲンの背中を引き裂きながらハッサクの手元に戻っていく。

鎌部分が背中の突起《逆鱗》に差し掛かった時だった。

 

「今だッッ」

 

神機の向きを変え、鎌部分を捻り逆鱗に引っ掛ける。

またもや跳び上がり、背中の真上に躍り出た時だった。

 

「もらった‼︎」

 

跳び上がった際、抜き取った鎌にオラクルエネルギーを注いで巨大化、大きく振りかぶる。

そして放たれた一撃が逆鱗に命中。

逆鱗はみるみるひび割れが発生し…粉々に砕け散った。。

 

「やった!ハッサク‼︎」

 

大声を出し喜び勇むカボスだが、連続攻撃を終えて着地したハッサクの顔は以前厳しいままだった。。

 

「いや…確かに大ダメージは与えたが、倒すまでには至らねえな。。

それに逆鱗を破壊したんだ。本当にヤベえのはむしろこっからだぜ…!」

 

ハッサクの言葉通りだった。

しばらく動きを止めていたゲンがむくりと上半身を起こした瞬間、逆鱗があった部分から輪っか状の炎が出現。炎はそのままゲンの背中の上に滞留した。

外見の変化はそれだけに留まらない。両眼は紅く輝き、角は長く伸び、腕と脚は太くなり、外皮の白い部分が剥がれ落ちて真っ黒な肌が露出した。

無論、オラクル濃度も跳ね上がり、ハッサクとカボスにかつてない戦慄を与えた。。

 

「あ…ああ、あ…」

 

「いよいよ、奴が…本気になるぞ…‼︎」

 

ゲンが屈んだ直後、さらに鋭くなった踏み込みでハッサクとの距離を一気に詰め左拳で殴りかかってきた。

それを跳躍してかわすハッサクだが。

 

「うぉあッ⁉︎」

 

ゲンがその場で顔を上げ、空中のハッサクに向かって火球を吐き出してきたのだ。

直径が大人の身長程もある巨大な火球を、海老反りになって避けたハッサクだが…

 

「ハッサク!後ろーーッ‼︎」

 

カボスの叫び声を聞き振り向いた時。

既に背後に回り込んでいたゲンが、両拳を組んでハッサクに叩きつけた。

 

鈍い音を響かせて地面に打ち付けられたハッサク。

続いてゲンも着地し、ゆっくりとハッサクに歩み寄る。

 

『この程度でダメージを受けるんじゃないぞ…

お楽しみはこれからなんだからな。。』

 

「な、何がお楽しみよ…!

ふざけてんじゃないわよ‼︎」

 

いきなりのカボスの叫びに、ハッサクは驚き彼女の方を見る。だがカボスの目線はハッサクの方を向いてはいなかった。

 

「カボス、お前誰と喋ってんだ⁇」

 

「誰って…今アイツが喋ったから、それに向かって言い放ったんだけど…」

 

「喋った⁉︎ゲンが⁉︎」

 

驚きを隠せないハッサク。彼の耳にはゲンの声など聞こえなかった。。

だが今はそんなことはどうでもよかった。痛みを堪えて立ち上がったハッサクはある事に気付く。

 

(マズイな。。バーストがもうすぐ終わっちまう)

 

神機からプレデターを発生させ、ゲンに向かって打ち放った。

長く伸びたプレデターの《顎》がゲンを挟むように左右から襲いかかる。

 

「う、受け止めやがった⁉︎」

 

しかしゲンは左右それぞれの手で顎を掴み、捕食を阻止。

そして口に炎を溜め込み始める。

 

『死ね、小僧!』

 

先程と同じ火球を吐き出してきた。ハッサクは神機がプレデタースタイルになっている為に装甲が使えない。

神機自体も押さえつけられているので身動きも取れない。

絶体絶命か、と思った瞬間だった。

 

「⁉︎」

 

『⁉︎』

 

火球が今にもハッサクに届かんとしたところで、脇から飛んできたオラクル弾が火球に激突、相殺した。

ハッサクが、弾が飛んできた方を見ると…神機を銃形態にして構えているカボスの姿が映った。

 

「へ…カボスの奴、少ねえオラクルで無理しやがって」

 

だがピンチの状況に変わりはない。プレデターはゲンに掴まれたまま、圧倒的な握力で振り払うこともままならない。。

 

『悪運の強いガキめ…次はそうはいかんぞ』

 

ハッサクの耳には、ゲンが何やら唸り声を上げているだけに聞こえているのだが、もう次の攻撃の準備をしているのはわかった。

再び口中に燃え盛る炎を蓄積させるゲン。そして口をハッサクに向かって突き出した ーー

 

「どりゃあぁぁああ‼︎」

 

怒声と共にゲンの頭部に迸る衝撃。

バスターブレードの刃がゲンの後頭部に食い込んでいたのだ。。

もちろんやったのは、他でもないヒロヒデである。

 

「ヒロ…!やるじゃねえか、助かったぜ」

 

「いいってことよ。。

しかし、さっきはよくもやってくれたな。俺としたことが、気を失っちまってたぜ…

さて、反撃開始と行くか‼︎」

 

ゲンの頭からブレードを抜き取り、今度は横に振りかぶるヒロヒデ。神機に力を込めて力強く踏み込む。

 

「その首貰ったッッ‼︎」

 

唸りを上げながらゲンの首根っこを襲うバスターブレード、だが。

当たりこそしたが、食い込むどころか1ミリたりとも刃は通っていなかった。。

 

「そ、そんな…」

 

『…さっきは不意を突かれたからな。だが攻撃が来ると分かっていれば、その程度のものなど屁のツッパリにもならん』

 

ニヤリとした笑みを浮かべ、ブレードを片手で軽くつまむゲン。

ヒロヒデは必死に振り払おうとするが、まるで固まったように微動だにしない。

 

『さて、どう料理してやろうか…

おい貴様、焼き加減はどれがお好みだ⁇』

 

「なんだコイツ、さっきからモゴモゴ呻きやがって。。

気持ち悪いな…!」

 

ヒロヒデもハッサクと同様、ゲンの言葉は理解出来ない。

どうやら認識出来ているのはカボスだけのようだ。

 

「ヒロヒデ‼︎神機は諦めて奴から早く離れて‼︎

何かとてもヤバい気がするわ‼︎」

 

大声で警告をするカボスに従い、神機から手を離して距離を取ろうとするヒロヒデだったが。。

 

『もう遅い!貴様はもう、《鉄板》の上だッッ‼︎』

 

ゲンが片手の掌を地面に当てがった次の瞬間、ヒロヒデの足元が真っ赤に染まり…

束状の火柱が噴出。火柱の炎はあっという間にヒロヒデの体を包み込み、焼き尽くす。

炎が消え去ったあとは、大火傷を負ったヒロヒデが転がるのみだった。

 

「ヒロ!ヒローーーーッッ‼︎」

 

「ひ、ひどい…‼︎」

 

絶叫するハッサク、両手で顔を抑えるカボス。

だが、ヒロヒデの返事はない。。

 

『ミディアム程度にしておきたかったが、少し焼き過ぎてしまったかな?ククク…』

 

「き…貴様ァァアア‼︎」

 

我を忘れ、怒涛の勢いでゲンに斬りかかるハッサク。

ヒロヒデの時と同様、素手で受け止めようとするゲンだが。

 

『何ッッ⁉︎』

 

ハッサクの攻撃はゲンが思っていたよりも速く、次々と胴体を斬り裂かれていった。

攻撃スピードの上昇の要因は体内オラクルの高速循環、アラガミでいうところの怒り活性化と同じ現象が起きていたのだ。

 

「このままブッ殺してやる…‼︎」

 

高速で舞う鎌の刃がゲンの喉元に差し掛かった時。

金縛りに遭ったかのようにハッサクが動かなくなる。

 

「ぐうぅ…は、離せッッ」

 

ゲンが鎌をがっしりと掴んで、またもや攻撃を止められてしまった。

 

『驚いたぞ、中々のスピードだ。しかし、私を殺すまでには到底至らないな…

そら、お望み通り離してやるぞッッ‼︎』

 

勢いをつけ、鎌ごとハッサクを投げ飛ばすゲン。

ライナーの軌道で数十mほど飛ばされたハッサクは、地面に全身を強打した。

 

『終わりか?…貴様も先程のマヌケ同様、香ばしく炙ってやろう。。』

 

ゲンが掌を上に向け、そこから火炎を発生させる…

そしてゆっくりと歩み寄ってきた。

ハッサクは急いで立ち上がり、神機を構え直す。

 

「クソ!こうなったら…‼︎

カボス、もう一度俺にアラガミ弾を撃ち込めッッ‼︎」

 

「え⁉︎それって、バーストレベルを3に上げるって事⁉︎

でもそれって、レベル2以上に身体に負担がかかるし、熟練の神機使いでもかなりキツいって聞いたわ…

ホントに大丈夫なの⁉︎」

 

まごまごし続けるカボスに痺れを切らしたハッサクが振り向き、彼女を全力で睨みつけた。

 

「何やってんだ‼︎

俺が奴にやられたら、次はお前が狙われるのはわかりきってるだろう⁉︎やるしかねーんだよ‼︎」

 

「わかった、わかったわよ‼︎もう、どうなっても知らないからッッ‼︎」

 

銃口をハッサクに向け、先と同じく受け渡し弾を放つカボス。

弾はハッサクの身体に吸い込まれるように着弾すると、全身が赤みを帯び、発していた光がさらに大きくなった。

 

「これがレベル3か…‼︎すげえ、すげえ力だぜ…

…イケる‼︎」

 

『そんな事をしても無駄だぞ、俺には勝てん。

さっさと死んでラクになれ‼︎』

 

ゲンが炎を溜めた右手を振りかぶり、ハッサク目掛けて思い切り振り抜く。

 

『…⁉︎消え、た?』

 

すんでのところでハッサクは忽然と姿を消す。

どこに逃げたのかと上下左右を見渡すゲンが、突如背後に違和感を覚えた。

 

咄嗟に振り向いたゲンの視界に入ったのは、神機を肩に担ぐハッサクと、そして…

己の肉体から切り離された尻尾だった。。

 

『なにぃ…いつの間に…⁉︎

おのれ、生意気な…‼︎』

 

ゲンはハッサクに向かって体を向き直し、顔を真上に上げてけたたましい咆哮を発する。

 

『殺してやる…殺してやるぞ、クソガキッッ‼︎』

 

「へ…とことんやってやろうじゃねえか…‼︎」

 

怒り活性モードになり、さらにオラクル濃度が高まるゲン。

両眼を激しく血走らせ、ハッサクに向かって突撃を開始した。

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