「バイキンマン市長!」
「「バイキンマン様!!!」」
「「あれがバイキンマン市長か!?」」
沢山の歓声…私はバイキンマン。
この町の市長、今日は市長の就任式…かつてこの町の平和を脅かした私が、今では平和の為に従事することになるとはなぁ。
…なぁアンパンマン…今の私を見たらお前は驚くだろうな…
…時は巻き戻る
「なに!?アンパンマンが死んだだって!?」
俺様は驚くべきことをどきんちゃんから聞かされる…
「うん、ジャムおじさんもばたこさんが殺されてて、アンパンマンも死んでたって…食パンマン様から…多分…アンパンマンが二人を…」
そんな…どうして…何故アンパンマンが?
俺様には理解できない…奴は誰にでも優しく、そう…敵である俺様にもその手を差し伸べてきて…
正義感溢れる皆のヒーローで…なのにどうして…
「…どうするの?バイキンマン?」
どきんちゃんは俺様にそう尋ねるが
「…しばらく一人にしてくれなのだ…」
俺様にはそう応えることしか出来なかったのだ。
それから俺様はずっと家に引きこもってたのだ…何日も…何ヵ月も…何年も…
アイツが死んでから、悪事のことなどどうでもよくなってしまったのだ…俺様にとって今のこの世界はつまらないものになってしまったから…
そんな俺様のことなどどきんちゃんは愛想を尽かしたのだろう…
ある日、荷物を纏めて出ていったのだ…
なんでも今は食パンマンと一緒に違う星に移住したらしい…
この星は食材と細菌の夫婦には風当たりが悪いからだとどきんちゃんから送られてきた手紙に書いてあった…
二人は…いや…他の人々もアンパンマンが死んでからそれぞれの人生を歩んでる。
皆…強いな…それに比べて俺様は…
「もう許さないぞ!?バイキンマン!!」
お…お前は!?
「生きていたのか…!?アンパンマン!!」
俺様は驚く…もう会えないはずの宿敵と対峙したのだから…
「うん?当たり前だろ?」
アンパンマンは不思議そうにそう応えた…そうか…今までのはすべて夢だったのか!?なら…!?
「勝負だ!アンパンマン!!今度こそ俺様が勝つのだ!!」
「望むところだ!バイキンマン!!」
「「行くぞ!!」」
「ハッ!?」
辺りを見回すとそこは俺様の寝室だった…
そうかあれは夢だったのか…
ハハッ!そうだよな…アイツは死んだのだから…
俺様のせいなのか?…奴をあそこまで追い詰めたのは…
すまない…
俺様はずっと引き出しにしまっていたワクチンを取り出す…
今まで俺様はずっとこのことから逃げていた…これでやっと罪を償うことができる。
俺様はワクチンを口に含み、コップにいれた水を流し込もうとする…今まですまなかった…アンパンマン…これで俺様も…
「そんなことをしちゃダメだよ…バイキンマン…」
ふとそんな声が聞こえ、思わず声がしたほうに振り向く…
「君がそんなことをしても誰も喜ばないよ…もちろん僕も…」
そんな…アイツは…確かに…
俺様は驚き、コップを落とす…
「なんで、なんでお前がいるんだ…アンパンマン!?」
俺様は思わず叫んだ…口に含んだワクチンもそのときに口からこぼれ落ちて、何処かへいってしまった。
「バイキンマンのことが心配でおもわず来ちゃった」
いつもの口調で…奴はそう語ったのだ…
「なんで…止めるのだ…俺様は…お前を…!?」
殺したも同然じゃないか!?そう言葉を続けようとするとアンパンマンが首を横に振る。
「バイキンマンのせいじゃないよ」
「僕は…もういくよ…バイキンマン、生きるんだ…誰のためでもない、君自身の為に…」
アンパンマンは俺様にそう言い背を向ける…
まっ…待つのだ!アンパンマン!!
「待つのだ!!アンパンマ…ぁ!?」
俺様がそう言い手を伸ばしたとき、奴はもうどこにもいなかったのだ…
俺様は…どうすれば…今さらみんなに合わせる顔もない…こんな俺様にどう生きろと…
そうだ…俺様は奴の遺志を継ぐのだ…形は違えど奴が望んだ優しい世界に…!
次の日、俺様は久々町を出た…俺様をみる町の皆の目は驚き、哀れみ、憎しみ、無関心とさまざまな色をしていた。
当然だろうな…何年も見なかった俺様が急に町を歩いているのだから…
俺様をアンパンマンの仇と見ている者もいるだろう…だが俺様はもう決めたのだ!この命を人々の為に使うことを!そのためにまだ俺様は死ぬわけにはいかないのだ!
そう決意を固めた次の日から俺様は町の為にさまざまな発明をした。
最初は俺様に不信感を抱く者、人殺しと石をなげる者、罵倒する者がほとんどだった。
それでも俺様は諦めず、何日、何ヵ月、何年も人々の為に働き続けたのだ…
そして時は流れ…
私は人々から認められ市長となった…
最初は贖罪の為に働いた…人々の為に…
次第に私を認める者が一人…二人と増えていった。
私へ笑顔を見せる者が増えていった…まぶしい笑顔を…
その笑顔を守りたいと思った…
そうした日々を過ごすうちに私は贖罪ではなく私自身のために働くようになっていった…
やがて私は全員に認められ市長となった…
かつてこの町にあった差別意識ももうない。
今では、妖精も、食材も、細菌も皆仲良く平和に暮らしてる。
アンパンマン…私が実現させた世界はお前が目指し、求めていた理想と同じか…?
私もいつかはそちらへ逝くだろう…
もしそこでお前と会えたなら私を殴ってくれ…
そしたらお互いを理解するために語り合おう…
今度は宿敵としてではなく、仲のいい友人として…
Fin
以上で終了です♪
ありがとうございました♪