IS-Lost Boy-   作:reizen

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これ以降は、書き上げ次第投稿となります。
もしかすると、話数が飛んでいるかもしれませんのであらかじめ見直すことをお勧めします。


ep.15 昔流行ったゲームがそんな色だった

「あ、そうそう。私、明日からいないから」

「……はい?」

 

 翌日。子どもたちの相手をして疲れたこともあってモノレールの中で揺られていると、更識さんはそんなことを言った。

 

「私、国家代表の補欠だから一応は国の強化合宿に出ないといけないのよ。8月頭にモンド・グロッソがあるから」

「へー………補欠?」

「そ。補欠」

 

 「国家代表」と聞けば凄いけど、「補欠」と聞けば凄いのか凄くないのかわからない。

 

『あまり大っぴらにできる情報じゃないけど、私が元々日本人なのはわかるわよね?』

『髪と目が異質ですが、アクセントといい日本で過ごしてきたってのは。それに日本の暗部の長ですし』

『私が生徒会長になった時ってさ、日本の代表候補生でもなかったのよ。それだと学園最強が簡単に入れ替わるし都合が悪いってことでIS委員会が適性者に困っているロシアの国籍を取らせたってわけ。最初は候補生からってことにしたけど、実力が認められて代表になったのよ。ただし、本当の代表じゃないから補欠扱いとしてだけどね』

 

 なるほどね。そりゃあ、日本の重要機密を抱えるであろう暗部の長なのにロシアの国家代表になるわけだよ。

 

「じゃあ、平穏無事に過ごせるように祈っておきます。あのクラスだとそれが難しいかもしれませんが」

「………織斑君のせいで?」

「ええ。主にその人のせいで」

 

 でもこの時、心のどこかでわかっていたんだ。どうせすべては僕に来るってことは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつも通り布仏さんを起こして登校すると、クラスメイト達は騒いでいた。いつも通りとも言えなくないけど、今回に至ってはかなり騒がしい。

 ちなみに今日から夏服で、僕らの制服も一新されている。女生徒の中には織斑君に見てもらおうと露出を多くしている人がいるため、視線を向けるのは困る。……そういう点で布仏さんはある意味癒しだ。だって夏服なのに露出少ないもん。

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいなぁ」

「え? そう? ハヅキのってデザインだけって感じしない?」

「そのデザインがいいの!」

「私は性能的に見てミューレイのがいいかなぁ。特にスムーズモデル」

「あー、あれねー。モノはいいけど、高いじゃん」

 

 席に着くまでそんな会話が聞こえてきた。僕の場合はそもそも男用のISスーツが特注品だからいずれ研磨を重ねて最適な材質を選別して作り出すと言う話は聞いている。

 前の方で山田先生があだ名で弄られているのを見ながら、僕はお気に入りのBGMを聞いてだらーんとしていた。

 

「諸君、おはよう」

「お、おはようございます!」

 

 織斑先生の降臨である。できればずっと昇天しておいてほしかった。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定の物を使うので忘れないようにな。忘れた者は代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらうことになるが、それも忘れた場合は下着でやってもらう」

 

 するとほとんど全員がさっと体をずらした。内心、某人型兵器のコックピットに乗る時に服が破れるわけではないのだから、制服でも良いのではないかと思ったけど口に出した負けだろう。

 ちなみに、僕は健全な男子高校生のために多少とも女の身体に興味はあるけど、その時は昔見た幸那の裸を思い出すことにする。

 

「では山田先生、ホームルームを」

「はい」

 

 入れ変わるように山田先生が教壇に立って爆弾発言をした。

 

「今日はなんと転校生を紹介します! しかも2名です」

 

 普通、クラスを別にするんじゃないのだろうか?

 そんな疑問を当たり前のように思い浮かばせて、入ってくるのを待つ。1人は何故か男子用の制服を着ていた。

 教壇の端の方に立った2人。その内の男子制服を着た女の子(のはず)が自己紹介を始めた。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

 シャルル……まるで男の名前だ。というかとある反逆系主人公の父親がそんな名前をしていた。

 

「お、男……?」

 

 誰が呟いたのか知らないけど、静寂に満ちた教室では大きく聞こえた。

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を―――」

 

 僕はすぐに耳を塞ぐ。織斑君の位置の方が辛いだろうけど、何故か僕の方にも来るからだ。……あ、織斑君が死んだ。

 たぶん周りは新たに男が来たことを喜んでいるけど、僕はある違和感を持っていた。

 

(どうして、男が転校してくる情報がなかったんだろ?)

 

 更識さんのことだから、多分知っているはずなんだけど。もしくは布仏先輩で止めているのかな? あの人たちならそんなことをする可能性は低くないかもしれないけど。

 

(もしかして、これは学園側の試練かな?)

 

 シャルル・デュノアの性別を確かめろっていう難題を押し付けてきたかもしれない。それを知っていたから更識さんが僕に教えなかったのも合点が行く。………裏切る可能性は、僕に対しては低いかな。裏切ったところでメリットないだろうし。

 

「皆さんお静かに! まだ自己紹介が終わってませんから!」

 

 考え事をしていたからか、少し指が耳から離れていたようで山田先生の声が聞こえてきた。

 ちなみにそのもう一人を見ていると、漢字で書くと「王血零」となる大総統を思い出してしまう。できればそんなに強くない人だといいな。

 

「………挨拶をしろ、ボーデヴィッヒ」

 

 見かねた織斑先生がそう指示すると、ある意味では予想できた返事を返した。

 

「はい、教官」

 

 ガチの敬礼に僕は少し恐怖した。

 

「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。私のことは先生と呼べ」

「了解しました」

 

 止めて! その人を「一般生徒」のくくりに入れないで! 僕らとは明らかに異種の人だから!

 心の中でそう叫んでいると、その生徒はようやく名前を名乗った。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 何だろう。声からして「リア充は死ね!」と言わせれば間違いなくそう聞こえる声が聞こえてきた。そういえばオルコットさんも「ホワイトサンダー!」って叫ばせたらしっくりきそう。

 

「あ、あの以上ですか?」

「以上だ」

 

 そういえば似たような自己紹介をしていた人がいたな~。って前にいる織斑君を見る。

 するとボーデヴィッヒさんは織斑君と視線が合うと彼に近付いてビンタした。

 全員が呆然とする。それほど唐突かつ綺麗なビンタだったのである。

 

「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」

 

 何のことだからわからないけど、彼女もまた織斑君に敵対する人間のようだ。

 

「いきなり何しやがる!」

 

 織斑君の言葉を無視してボーデヴィッヒさんはそのまま僕の隣に座った。ところで織斑先生、注意しないの? 頭を抱えないで注意しようよ。旧知の仲か知らないけどさ。

 

「少し問題は起こったが、これでHRを終わる。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合しろ。では、解散だ!」

 

 僕はすぐに荷物を持って教室に出ると、織斑先生に呼び止められた。

 

「時雨、少し待て」

「何ですか? 今僕急いでいるんですが……」

「織斑、そして時雨。お前たちでデュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

 

 こっちに近付いてきた織斑君とデュノア……君。怪しいからぜひ織斑君に任せたい。

 

「君が時雨君だね。初めまして、僕は―――」

「自己紹介なんてしている暇はないよ。詳細は織斑君に聞くこと。それじゃ」

 

 僕はデュノア君にそう言って先に行く。こんなところで女たちの妨害に合うなんて絶対に嫌だからだ。

 

「待てよ智久。新しい男子なんだし、改めて仲良く―――」

「簡単に説明すると、彼がスケコマ織斑君。いつも女をナンパして部屋に連れ込んでは篠ノ之さんと一緒に襲っている鬼畜野郎」

「え? 織斑君ってそんな―――」

「誤解だ!」

 

 後ろで走らず騒ぐ織斑君らを放っておいて僕はさっさと走って行った。

 

(金髪男子と銀髪女子の転校か……そういえば昔流行ったゲームってそういう色のがあったね)

 

 なんて思っても足だけは緩めない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、もう智久の奴がいない!?」

 

 一夏はそう叫びながら移動を続ける。その後ろではシャルルが一夏に手を繋がれる形で追走していた。

 

「ホントだ。時雨君って俊敏だね。もしかして背が低いのも関連して―――」

「それ、本人の前で言うなよ。身長のことを言ったら攻撃されるからな」

 

 一夏が本気でシャルルにそう注意すると彼は本気で冷汗を垂らした。

 

「ところで、二人って仲が悪いの?」

「いや、そういうわけじゃないっていうか。何故か智久が俺を敬遠してくるんだよ」

 

 それを聞いたシャルルは少し顔を暗くして小さく「そう」と返す。

 

「どうした? もしかして気分が悪いのか?」

「ううん。大丈夫だよ。ちょっと急に運動したから疲れちゃっただけで」

 

 実際、そういうわけではない。シャルルにとってそれはとても都合が悪いだけだ。

 だが一夏はそれを察しておらず、「まあいいや」と感じた程度で先に進む。

 

「よーし、到着! ……って時間がヤバい! すぐ着替えた方がいいぜ」

「う、うん」

 

 2人はほとんど同時にロッカーのドアを開けて荷物を置く。シャルルは服を脱ぎながら一夏に質問した。

 

「そういえば時雨君って足が速いけど、何か部活でもしてるの?」

「いや、そんなことは聞いてないけど、そういえば前に体育の時に持久走をしたんだけどさ。智久だけ1周早く終わってたな」

「え? 確か1組にはオルコットさんもいたよね? 代表候補生って体力面もかなり重視されるから、クラスじゃ織斑君か彼女のどちらかと思ってたんだけど」

「うん。相手になってなかったな。しかも智久、鼻歌を歌いながらペースを下げるどころか最後辺りに凄く早くなってんだよ。しかも身体能力も高くしてさ、前に妨害していた人たちがいたけど体を飛び越えて乗り越えてたし」

 

 思わずシャルルは動きを止めた。

 

「……それ、ホント?」

「うん。ってヤバい。早く……って、もう着替え終わったのか?」

「僕は中に着ていたんだ。織斑君もそうしたら? そっちの方が便利だし、時間のロスも少ないよ」

「今度からそうするよ。とにかく今は―――」

 

 しかし、一夏の奮闘空しく遅刻となり、千冬から怒られるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……馬鹿はまだか。時雨、2人はどうした」

「女生徒に剥かれていると思います」

「………あの馬鹿共が」

 

 それは誰に言っているのかぜひ聞いてみたい。

 

「では先に言っておく。これから貴様には5人の専用機持ちをリーダーにして班に分かれてもらうが、織斑には相川というように、一組の一番から順番にわかれてもらう。ただし時雨、お前はボーデヴィッヒの班だ」

「……わかりました」

 

 ええっと、つまり僕にボーデヴィッヒさんのフォローをしろってことかな? 確かに他の人たちだと難しいね。

 

「すみません、遅れました」

「遅い!」

 

 ちなみに授業開始から既に5分経過している。僕は2分前に着いたからギリギリセーフ。正規ルートで向かったから遅いけど、もう少し早く着くことも可能だ。

 ところで、織斑君たちが並んだ後に英中の代表候補生がおしゃべりを始めて織斑先生に睨まれているけど、気付ている……わけないよね。

 

「―――安心しろ。馬鹿は私の目の前にも2名いる」

 

 僕は耳を塞いで音を遮断する。2名は無様にも叩かれたのでひっそりと笑っておく。

 

「では本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」

「「「はい!」」」

 

 にしても、僕の記憶が正しければ1クラス30人程度で今日は2クラス合同だから軽く見積もって60人計算。僕、デュノア君、ボーデヴィッヒさん、凰さんを入れて64人という大人数の合同授業は新鮮だ。そしてうるさい。

 

「今日は戦闘を実演してもらおう。ちょうど活力が溢れんばかりの十代女子もいることだしな。凰! オルコット! それと時雨!」

「何故わたくしまで!?」

「先生! 僕は男です!」

「細かいことは気にするな」

「気にしますよ!」

 

 まぁ、女だったら合法的に布仏さんのおっぱいにありつけ……いや、なんでもない。

 

「専用機持ちはすぐに始められるからだ。いいから前に出ろ」

「だからってどうしてわたくしが……」

「一夏のせいなのに何でアタシが……」

「これじゃあ僕が問題児じゃないか」

 

 事実を言いながら前に出ると、2人からブーイングが飛んできた。

 

「待ちなさいな! どうしてわたくしが問題児扱いされないといけないのですか!?」

「そうよ! 撤回を要求するわ!」

「授業中にも関わらず話をしている上に、片方が素人に喧嘩を売る代表候補生なんだから十分問題児じゃないか!」

 

 こんな2人より僕はまともだと自負している。

 

「お前ら、少しはやる気を出せ。織斑や布仏に良いところを見せられるぞ」

 

 するとさっきとは打って変わってオルコットさんと凰さんがやる気を出した。

 

「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」

「まあ、実力の違いを見せるいい機会よね! 専用機持ちの!」

「………やっぱりIS操縦者って馬鹿ばっかりだ」

 

 今ので本気を出すって、そこまで織斑君に魅力があるのかな?

 

「……ふむ。山田先生にも良いところを見せられるぞ?」

「やっだなぁ、織斑先生ったらもうボケました? 老人ホームに入るにはあと倍+10は必要かと思いましたが?」

「予想外だな。あの2人のどちらかの名前を挙げればやる気を出すと思ったが……」

「アホとは違うんですよ、アホとは」

 

 山田先生に質問を多くするけど、それはわかりやすいから。布仏さんとは同居人ってだけだ。ただしおっぱいは凄い。

 

「それで、相手はどちらに? わたくしは鈴さんと時雨さんのタッグが相手でも構いませんが?」

「ふふん。それはこっちのセリフよ。アンタと時雨で組みなさい」

「慌てるな馬鹿共。対戦相手は時雨と―――」

 

 するとハイパーセンサーが起動して上から何かが来ることを知らせてくれた。

 

「ああああーっ! ど、どいてください~っ!」

 

 織斑君に向かって一直線に落ちてくる山田先生。全員は一目散に逃げたというのに、何故か織斑君だけ取り残されてぶつかった。

 織斑君と山田先生はどうしてか抱き着いた形で転がり、何とも言えない体勢になる。

 

「ふう……白式の展開がギリギリ間に合ったな。しかし一体何事……」

 

 素晴らしきその体勢。織斑君は万死に値すると思う。

 そういえば、中学の頃は幸那と一緒に帰っているだけで殺されかけたな。その後に僕の危機を知った幸那が僕を助けてくれたっけ。

 改めて僕は今の織斑君と山田先生の体勢を見る。織斑君が山田先生を押し倒している状態になっているので、僕は携帯電話を取り出した。

 

「とりあえず警察警察っと」

「落ち着け時雨」

「たぶん僕の方が落ち着いていると思いますよ。ほら」

 

 山田先生の胸をダイレクトに揉んでいる織斑君に、2人の代表候補生が殺意を向けていた。っていうかオルコットさんがライフルを展開して撃ったんだけど。間一髪回避した織斑君だが、今度は凰さんが青龍刀を連結させて投擲した。一度回避するも、その時に仰向けになったので戻ってくる青龍刀ブーメランに顔を青くする織斑君。しかし、彼の首が飛ぶことはなかった。

 山田先生が少し上体を起こした体勢でクラウス社製のアサルトライフル《レッドバレット》で軌道を逸らしたのである。

 

「山田先生は元代表候補生だからな。今くらいの射撃は造作もない」

「む、昔の話ですよ。それに候補生止まりでしたし……」

 

 僕はもちろん、普段の山田先生を知る1組の生徒は唖然としていた。

 

「さて、お前ら。いつまで呆けているつもりだ? さっさと始めるぞ」

「え? あの。3対1で?」

「いや、流石にそれは……」

「何を言っている。ちゃんと2対2だ。もっとも、時雨はハンデの代わりだがな」

 

 うわぁ。今ので彼女らの敵愾心を煽っちゃったよ。

 

「ほら、さっさと向こうに行け。ここでは危険すぎる」

 

 そう言われて僕は打鉄を展開。3人は先に上に行ったので僕も慌てて向かう。

 

「では、はじめ!」

 

 その号令と共に僕らは動いた。




毎度のことながら、シャルルとラウラが転校してくると大体某モンスター育成RPGを思い出すんですよね。
ところで、ラウラのところで表した漢字の意味はわかりましたか? 知っている人は知っていると思いますよ。あの大総統のことか。というかあの人の相手は千冬や束ですら止められないと思うに1票。
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