IS-Lost Boy-   作:reizen

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ep.28 男女間の意識の違い

 明日は校外学習が始まる。その初日は完全自由行動だけど、僕は新しい機体のアイデアを纏めるために部屋にこもるつもりだったけど、それを話したら更識先輩に怒られ、何故かレゾナンスというショッピングモールに連れ出されていた。さらに言えば、何故か手を繋がれている。

 

「………ところで先輩」

「二人っきりの時はお姉ちゃんでもいいのよ?」

「白髪に色黒になったら考えてあげましょう。それよりも先輩、あそこにいる2人って少し問題ありません?」

 

 そう言って僕は自動販売機に隠れている代表候補生2人を指差す。

 

「そうね。少し隠れましょうか」

 

 先輩も、目の前の2人が危険人物だということは十分に理解しているみたいだ。

 僕らは彼女らを観察するために近くの壁に隠れ、ISを展開して集音性を高める。

 

「あのさあ」

「何ですの?」

「あれ、手、握ってない?」

「握ってますわね」

 

 ハイパーセンサーが、前にいる織斑君とデュノアさんを捉える。2人は確かに手を握っていた。

 

「そっか。やっぱりそうか。アタシの見間違いでもなく、白昼夢でもなく、やっぱりそっか―――よし、殺そう!」

「こらこら、そんなことをしちゃダメでしょ」

 

 部分展開とはいえ、ISを展開したからか更識先輩が声をかけた。

 

「あ、あなたは……」

「誰?」

「知らないんですの!? この方はロシアの国家代表ですわ!?」

「……あまり大声を出さない方が良いんじゃないかしら?」

 

 そう指摘され、オルコットさんはハッとなって自分の口を塞いだ。後ろを見ると、2人は気付いた様子はないので安心してみたいだけど。

 

「そ、それで他国の代表が何か用?」

「あの、鈴さん。この方はIS学園の生徒会長でもありまして……」

「つまり、今の君を裁けるってわけ」

 

 その言葉を聞いた凰さんは顔を青くする。ホント、何でちょっとした気の迷いですぐにISを展開するんだろうか。……まぁ、ハイパーセンサーを展開した僕もあまり人のことを言えないけどね。

 

「全く、そんなに取られたくないのなら少しは強硬策を取ったらどう? 例えば、こんな風に―――」

 

 そう言って更識先輩は近くで隠れている僕の首根っこを掴んで僕を自分の谷間に押し込んだ。

 

「なっ!?」

「そ、それは……」

 

 うん。なんというか……とても良い形かつ気持ちが良い。弾力やハリも申し訳ない。前は嫌だったけど今は周りにも認められつつあるからこうした余裕もできるんだろうけど、できるならもう少し感触を味わいたい。

 

(まぁ、そろそろ文句の1つは言っておこう)

 

 僕は胸から離れて一言言った。

 

「先輩、僕だって男なんですからみだりに自分の胸に押し付けるのは止めてください」

「でも、気持ち良かったでしょ?」

「そうですね。脂肪の塊と聞いていましたが、衣類の質も相まってかなりのボリュームを感じました。これが年上の余裕というものですね。脈拍も特に変わりなかったようですし、適度な癒しがあったかと」

「…………あ、うん」

 

 どうしたんだろう。今のは感想を求められたと思ったから述べたんだけど、違っただろうか?

 そんな疑問を抱いていると、更識先輩は何故か顔を赤らめていた。

 

「時雨、アンタ……」

「結論から言うと、凰さんだとまず無理な境地かな」

「殺す!」

 

 殺気立ったからか、彼女のサイドアップテールが逆立ち始める。僕は1度咳払いして彼女に言った。

 

「落ち着いて凰さん。女は胸だけじゃないよ」

「さっきまで長々と感想を述べていたくせに、よくもぬけぬけと!!」

「…………………はぁ。これだから非オタは屑なんだ。大体、普通に考えて胸が大きすぎると老後では乳房が垂れて裸なんて見れるものじゃないし、今と言う時期を乗り越えれば重視されるのは性格だけ。その性格が屑ならばもはや救いようがな―――」

「……時雨さん、隣をどうぞ」

 

 そう言われて僕は隣を向くと、足を振るえさせて壁を支えにして立っている先輩の姿があった。

 

「…………胸なんて、いずれ痩せるから大丈夫なのよ」

 

 少し涙目な先輩が可愛く見えた。

 とりあえず、先輩を「今は今なんですから気にしなくていいですよ」と慰め、僕らは流れるように2人から離れようとすると、何故か2人に体を掴まれた。

 

「あの、お二人には興味がないのですが」

「そうじゃないわよ!? このまま先に行かせるもんですか!」

「だってあなた、一夏さんと合流してこのことを知らせるでしょう!?」

「…………僕はあんな何も考えていない能天気な奴と会話するつもりはないんだけど?」

 

 ―――パシッパシッ

 

 先輩が流れるような動きで手を弾き、僕を抱きかかえてそのまま華麗に移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして、僕らは水着売り場に着いた。

 

「……ところで、先輩って水着はいるんですか?」

「そうね。最近買ってないから買おうかしら。たぶん前のはもう入らないでしょうから」

「腹部でも大きくなったんですか?」

「胸部が大きくなったんです」

 

 そう言いながらアイアンクローはちょっと辛いです。

 と、ここで僕らは一度別行動をする。男女では水着売り場が別だからだ。

 

(……って、言ってもあんまり種類ないんだけどね)

 

 女尊男卑の影響か、男物の水着は種類が少ない。まぁそれでも一通りの種類は揃っているので別に良いかって思っている。……種類が多くても売れなければ意味がないからね。

 

「ところで、シャルも水着を買うのか?」

「そ、そうだね……あの、一夏はさ、その……僕の水着姿、見たい?」

 

 そんな会話が聞こえてきたので、僕は適当な物を選んでレジに向かった。資金が増えてくれるのは素直に嬉しいね。

 

(……女の買い物は長いって聞くし、適当なベンチで休も)

 

 買った袋を持って空いているベンチに座る。場慣れしている男なら同伴者が女だろうと入っていくかもしれないけど、生憎僕はそろそろ16歳になる童貞だ。そんな勇気はありません。それに何かあれば向こうから連絡はあるだろう。

 そう考えてボーっとしていると、さっきまで僕がいた店で口論がされていた。ハイパーセンサーを起動して確認すると、どうやら織斑君が問題を起こしているみたい。

 

(事情は知らないけれど、災難だね)

 

 デュノアさんが諫めているのを確認した僕はまたしばらくボーっとしていると、さっき織斑君に文句を言っていた女性が僕に声をかけてきた。

 

「そこのあなた、今すぐそこから退きなさい」

「………どう見ても空いていますよね?」

 

 僕が座っているベンチは成人男性が寝ていても問題程広いものだ。だからテリトリーが広い人でもそこまで気にしない程なんだけど。

 

「私はね、男と一緒に座りたくないの」

「……だったら別の場所に座ればいいじゃないですか」

「そこが良いのよ。いいから退きなさい」

 

 いくら何でも横暴すぎるでしょ。

 ため息を吐くと、気に障ったのか急に殴られた。

 

「随分と生意気ね。ちゃんと躾されていない証拠だわ」

 

 そう言ってその女性はもう一度拳を作って僕に殴りかかってくる。瞬間、何かが過ぎった気がして、弾かれるように拳に手を添えて動いた。

 

「この―――」

 

 女性は背後に回った僕を蹴ろうと瞬間、僕は無理やり引っ張られた。

 

「助けに入るのが遅くなってごめんね」

「……いえ」

 

 それよりも、かなり軽々と持たれたことに少し泣きそうになっている。

 

「あなたは、更識楯無。国を捨てた女が邪魔をするな!」

「国を捨てたなんて失礼ね。私がロシアで代表をしているのは期間限定なんです!」

 

 その間にも僕の後頭部は更識生徒の胸と密着している。

 

「まぁいいわ。その男を返しなさい。その反逆者は調教する必要があるわ」

「―――言っておくが、その男はクラスの中だとマシな部類に入るぞ」

 

 声がした方を向くと、突っかかってきた女性の後ろから織斑先生と山田先生が現れた。……それよりも、緊急事態が発生した。

 僕は更識先輩の手を軽く叩いて離してもらい、すぐに椅子を使って迫ってくる何かの前に出る。

 

「ストップ、幸那」

「退いてトモ君! そいつ殺せない!」

 

 一体どこに仕組んでいたのか、鉄製の演武昆を持った幸那が殺気丸出しで現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少し遡る。

 

「中3の夏は特別なのよ!」

「………ああ、まぁそれはともかくだな、いくら買い込みすぎだろ。ったく、何で家族はこう蘭には甘いんだよ」

 

 定食屋を営む祖父を持つ五反田兄妹が夏に備えてレゾナンスに繰り出していた。

 

「2人も悪いな、あの馬鹿妹に付き合わせてしまって」

「……いえ、お気になさらず」

「そうですよ。私たちもそろそろ水着を新調したいと思っていましたから」

 

 兄の弾は随伴してくれている2人―――北条雫と藤原幸那にそう言うと、どちらも好反応を示す。

 

「でも蘭、あなたも少しは持ちなよ。お兄さんだって今日はこっちに買い物があるから来ているんだし」

「いいのいいの。どうせお兄の手持ちなんて少ないから高いものなんて買えないしね」

 

 妹の欄の言葉に幸那はため息を吐いた。

 

(……悪い子ではないんだけどね)

 

 少し女尊男卑のきらいがある。特に兄に対する態度は明確だった。これで好きな人がいると聞いた時は幸那は本気で驚いたことがある。

 

「あれ? 弾! それに蘭も!」

 

 唐突に聞こえた男の声に蘭は一度固まり、すぐに満面な笑みでそっちを向いた。

 

「一夏さん!? どうしてここに?!」

「買い物だよ。もしかして2人も?」

「そうなんです!」

 

 突然現れた一夏に、幸那と雫は少し顔が暗くなった。

 

「2人は蘭の友達?」

「はい。目がぱっちりしている黒い髪の方が藤原幸那で、目が青い方が北条雫です」

 

 あっさりと名前をバラす蘭に内心ため息を吐く2人。

 

「俺は織斑一夏、よろしくな」

「はい。お噂はよく聞いてます」

 

 雫はそう答え、一夏が握手しようと手を伸ばした時、雫の前に荷物が放られる。

 

「……何? ああ、そういうこと」

 

 すべてを察した雫は、幸那に合流しようと移動した。弾はそれを行き場を無くした一夏の手を見て少し噴いた。

 余談だが、蘭は雫が日本の代表候補生であることを知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いた?」

「はい」

 

 なんとか幸那を宥める。さっきの女性は既に暴行罪で既に警察に引き渡されいる。その時に「その女も捕まえなさいよ!」と叫んでいたけど、僕が被害者で届け出ないことを言うと警察はあっさり引いた。

 

「ダメじゃないか。いくら僕が襲われているからってあんなことをしたら」

「………だって」

 

 僕は見ない間に背が伸びた幸那の頭を撫でる。こうしたら幸那は落ちつくからだ。

 

「久しぶりだな、弾」

「千冬さんこそお変わりなく………ところで、何でスーツなんですか?」

「それは聞くな」

 

 恥ずかしそうに顔を赤らめる織斑先生。もしファンの子が見たら写真を撮るだろう。

 

「ところで、トモ君はどうしてあの女と一緒にいるんですか?」

「あら、私がいたら不満?」

「そうですね。いっそのこと胸部の脂肪がなくなってくれればいいのにと思います」

「兄妹揃って怖いことを言うわね」

 

 どうやらさっきのことを引きずっているようだ。

 ちなみに、さっきまでいた織斑君はどこかに消えてしまっている。ここにいるのは幸那が同行している人たちと、僕と更識先輩、それに1組担当教員の2人だ。

 

「初めまして、時雨智久さん。私は北条雫と言います。以後、お見知りおきを」

「時雨智久です。いつも幸那と仲良くしてくださり、ありがとうございます」

「いえ。私も彼女にいつも助けてもらっているので」

 

 髪が黒いのに目が青いけれど、何かの遺伝かな? 中二病だったら話が盛り上がるかもしれない。

 なんて下らないことを考えるのを止め、僕らは軽く自己紹介を終えてそれぞれの店に行くために分かれることにした。……幸那は凄く名残惜しそうにしていたけど。

 

(………僕も別の場所に移動しようかな)

 

 鞄以外何も持っていない物を見るに、多分更識先輩は何も買っていないのだろう。まだかかるだろうし別の場所で時間を潰した方が建設的かもしれない。そう思って場所を移動しようとすると、更識先輩に肩を掴まれた。

 

「ちょっといいかしら、時雨君」

「説教なら聞きませんよ」

「そうじゃないわ。水着を選んでほしいのよ」

「僕にあそこのダークマターに入れと言いたいのですか?」

「むしろ光じゃないの?」

 

 冗談じゃない。僕は犯罪者になるつもりはない。………いや、ならないけど。

 

「大丈夫よ。いざとなれば私がいるし、次は裏で潰すから」

「さりげなく物騒なことを言わないでくださいよ………わかりましたよ。いざとなれば僕もISを展開します」

「してもいいけど、バリアだけだからね」

 

 それはテロを想定してのことだろうか?

 仕方なく中に入ると、何故か織斑君とデュノアさんが怒られていた。

 

「………本当に、彼は問題児ですね」

「帰って来た時は本当に驚いたわ」

 

 聞こえないような声量で僕らは会話をする。全く、少しは大人しくならないのかな。

 

「で、先輩が選んでほしいって水着はどれなんですか?」

「そうね。これと、これなんだけど」

 

 そう言って先輩は2つのビキニタイプを見せてきた。

 1つは先輩の髪の色に近い水色。もう一つは青い水着だ。

 

「じゃあ、水色の水着で、後はこの灰色の長袖パーカーに、これもありですね」

 

 僕はオプションで麦わら帽子も取って被せてみる。うん、似合う。

 

「じゃあ、一度試着を―――」

「ともかく、出ましょうか」

 

 さっきは無理やり連れてこられたから、今度はこっちの番。

 僕は先輩の腕を引っ張って、すぐさま退散しようと試みる。

 

「そんなに焦らなくても大丈夫よ。すぐに会計を終わらせて来るから」

「え? 僕がしますけど……」

「もう、お・ま・せ・さ・ん」

 

 それ、耳の近くで言う必要あります?

 突っ込みそうになったけど、今はこの場からすぐに退散することを選ぶ。そう思ってできるだけ人気がない場所を通ろうとすると、誰かに腕を掴まれた。

 

「あれ? 更識さん?」

「……ちょっと来て」

 

 さっきとは違って少しホッとした。たぶん彼女とは話が合うからかもしれない。

 なされるがまま移動していると、また2つの水着を出された。

 

「……どっちがいいと、思う?」

「………更識さんは黒の方かな」

「……ありがとう。試着してくる」

「…じゃあ、僕は外に出るから」

 

 今度はすぐに外に出ようとすると、近くで何かが開かれる音がし―――

 

「見て見てかんちゃん、これ―――」

 

 聞き覚えのある声がしたなぁ……って思って振り向くと、顔を赤くした布仏さんがいた。

 

「……うん。似合ってるよ、布仏さん。じゃあ、僕は行くから」

 

 先に外に出た僕は冷静に地図のアプリを開いて、近くに中古屋を探す。あ、ここから数mか。ついでにトイレも探そう。そろそろ、僕の血流がとんでもないことになってきているからね。




女性の買い物って、本当に長いんだよね。本当……。

※26話、少し修正を加えました
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