IS-Lost Boy-   作:reizen

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推奨BGM

嵐の予感(機動戦士ガンダムSEED)
イグジスト(蒼穹のファフナーEXODUS)

なお、BGMは曲調で選んでいますので、悪しからず



ep.35 風は荒れ、少年は羽ばたく

 ―――二次移行(セカンドシフト)

 

 それは稼働時間と戦闘経験が蓄積されることでISコアや機体その物との同調が高まったことによって起こる現象であり、少なくとも短時間で起こりうる事象ではない。だからこそ4人は警戒せず、また起こったことに驚き、呆然としていた。

 各ISが操縦者に警告を発し、離脱を要請する。全員が正気に戻った時には既に遅かった。

 奇声をあげ、襲い掛かる福音。まず最初のターゲットに選ばれたのはシャルロットだった。エネルギーの翼で覆われた彼女が解放された時は彼女は力なく落とされてしまった。

 

「シャルロット! この―――」

「鈴! 待て!」

 

 箒は止めるが鈴音は聞かず、彼女は衝撃砲弾を浴びせるも福音は回避して鈴音に迫る。瞬間、福音は薙刀のようなものを呼び出し、砲撃を続ける鈴音の腹部に刺した。

 ISは絶対防御を含めて確かに操縦者を守ってくれる。しかし衝撃からも守れることはなく、鈴音はその一撃で意識を飛ばされたのだ。

 

「な、何ですの!? この性能……軍用とはいえ、あまりに異常な―――」

 

 セシリアは代表候補生であるからか、過去に一度軍用ISというものを見たことがある。その性能は福音に多少劣るもかなり凄いものだった。だが、今の福音は明らかにその常識を逸脱していた。

 接近を許してしまったセシリアはすぐに回避。だが福音の機動力で接近を許してしまい、薙刀による連続攻撃を浴びる光の翼を鉈のように振るわれ、直撃を食らった。

 

「セシリア!! ……私の仲間を…よくも!!」

 

 瞬間、福音は姿を消す―――いや、箒が捉えるよりも早く後ろに回ったのだ。しかし箒と紅椿も負けておらず、すぐにその場から離脱。至近距離からの光の砲弾を回避し、もう一度回転して踵落としを食らわせようとした―――が、福音に足を掴まれた。

 

「くっ、この―――!」

 

 だが、福音は箒を容赦なく薙刀の柄で叩きつけながら上昇し、意趣返しとばかりに海へと放った。しかし攻撃はそれで終わらなかった。福音の頭上にエネルギーが集束し、箒に向かって放たれた。

 

「まだだ、まだ終わってたまるか!!」

 

 箒はその攻撃を回避し、《空裂》を弾幕を張りつつ接近した。

 

「落ちろ!」

 

 今度は《雨月》を上段に構え、福音の喉元を突こうとした―――瞬間、連戦による効果がここで出てしまった。

 

「なっ!? またエネルギーが―――」

 

 瞬間、福音は箒の身体に連続で突きを放ち、至近距離から集束されたエネルギーが放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事態は急変した。

 福音の突然な二次移行、さらには独断専行を行った専用機持ちが撃墜され、福音は進路を変えて進み始めた。その先には訓練機を纏った教員らとラウラが、そしてさらに向こうには―――花月荘があった。

 

「出撃済みの教員はただちに防衛を始めろ! ラウラ! お前が現場の指揮を執れ!」

『わかりました! 全機、射撃武器を展開! 弾幕を張れ! 福音をここで撃墜させろ!』

 

 6月の行動を一先ず水に流したのか、ラウラの指示に誰も不平を言わず武装を展開して攻撃を始める。AICの圏内に入るとすぐに行っていた砲撃を止めたラウラは福音の動きを止める。

 その様子を見ていた千冬はすぐに智久の部屋に連絡を繋ぐ。

 

「布仏本音、すぐに作戦本部に出頭を命じる」

 

 するとほとんどすぐに本音が引き戸を開けた。

 

「何ですか?」

「仔細は聞いているか?」

 

 千冬からの質問に本音はすぐに頷く。千冬は内心「やはりな」と思いつつもジャージの上ポケットに隠してあるメモリーカートリッジを本音に渡した。

 

「これは?」

「中にはいざという時のために渡された機動力を上げるものが入っている。それを打鉄に装備して準備を始めてもらいたい。この通りだ」

 

 千冬は本音に頭を下げた。そのことで周りが騒然とするが、千冬はただ頭を下げ続けた。

 

「……わかりました。ですが、準備に時間はかかります」

「わかっている。だが、おそらくあまり時間はない。できるだけ早く急いでくれ」

「はい」

 

 本音はすぐに部屋を出て浴衣を脱ぎ、作業服の状態になり、作業に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 千冬の予想通り、しかし福音はそれ以上に教員を次々と撃墜させていく。

 そもそも、相手は軍用機でありながら二次移行を果たしたISであり、いくら数だけは圧倒していようがまともに武装を準備していない状態で挑むこと自体が無謀というものだった。だが、それでも彼女らはこれより先に行かせるわけにはいかなかった。

 

 ―――La♪

 

 突然だった。福音は上昇し、それを追うようにラウラと教員らは上昇していくが―――一気に数人が戦闘不能に陥った。

 電子戦でISが無効化されたわけではない。先程箒が食らった集束されたエネルギーが5本も教員らに襲い掛かった。元々、8クラス平等に行わせるために10機のISの内9機で出撃していて、その状態になるまでに3機も墜とされていた。さらにその光線によって落とされ、残ったのはラウラを含めて3機である。

 

「クソッ! 何でこんな―――キャアッ!?」

「落ちろ! ―――ダメ、もう持たない―――」

 

 さらに2機墜とされ、残るはラウラのみとなった。

 

「あの馬鹿共……許さん……」

 

 無断出撃してこの惨状を招いた4人に内心毒を吐くラウラ。その間にAICで展開するも早すぎて捉えることができなかった。

 

「なんという速さだ………クソがッ!!」

 

 砲戦パッケージ『ブリッツ』を解除したラウラ。同時に左目に付けられている眼帯を無理やり取ったことでオーディンの瞳(ヴォ―ダン・オージェ)を解放した。それによって脳への視覚信号の伝達速度の飛躍的な高速化と、超高速戦闘下での動体反射を向上させることができるが、ラウラは適合しなかったので時間制限がある。

 

「逃がさんぞ!」

 

 AICで福音を拘束したラウラは大型レールカノンを当て続ける。しかし福音は停止したが砲撃機能までは奪っていないため、エネルギーが集束し始めた。そのため、ラウラはAICを解除し、瞬時加速で距離を詰めて攻撃をキャンセルさせる。だがそれが、福音の狙いだった。

 ラウラは首を掴まれ、力いっぱい握られる。抗うためにレールカノンを至近距離で放とうとするが薙刀で斬られて破壊され、光の翼で覆われ、解放されて海に落とす―――が、

 

 ―――ガシッ!!

 

 ラウラは福音の脚部を掴んだ。

 

「……これ以上は……行かせてなるものか……!!」

 

 しかし福音は無慈悲にエネルギーを集束させ、ラウラにぶつけた。

 これにより、福音は自由になり再度目標に向かわせる。

 

 

 

 

 

 そしてとうとう、花月荘の前に姿を現した。この間、約20秒足らずであり、千冬が今にも迫り来ることを知らせようとスイッチを入れるように指示したところである。

 

「布仏!」

「まだ無理ですよ! そんな数分で同期が終わるほどシステム容量が少なくないんです!」

 

 そう叫び返す本音。福音はそんなことを知るかと主張するかのようにエネルギーを集束していく。

 千冬はダメだとわかっていながら開放通信全スピーカーに伝わるように素早く設定した。

 

「―――止めろぉおおおおおおッ!!」

 

 しかし、福音からそれが放たれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然の爆発が起こり、旅館に待機していた生徒は何事かと外を見る。そこには二次移行を果たした福音と―――

 

「…………はぁ。助かった」

 

 円形ではなく、二等辺三角形に近い菱形のシールドを展開した智久がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、織斑先生」

『………時雨』

「すみませんが、そろそろあなたの弟さんをたたき起こしてきてくれませんか。フライパンで」

『待て。その前に状況を―――』

「それに関しては問題ありません」

 

 簡単に言えば、現段階で戦えるのが僕しかいないと言う状況だ。

 

『………頼む、時雨。時間を―――』

 

 僕は通信を切って瞬時加速を行う。福音は僕の方に光弾を飛ばしてきたのでそれを盾で塞いだ―――と思ったら、今ので接近されていた。

 

「デストラクション!」

 

 咄嗟に叫んで大型ブレードを展開して襲い掛かる斬撃を切り結んで防ぐ。

 

 ―――La♪

 

 電子音が鳴る。僕はシールドを収納し、もう一本の《デストラクション》を展開して相手の頭部に柄を叩きつけた。

 

「まだまだ!!」

 

 腹部に何発も蹴り込む。すると福音はその場からの離脱を始め、僕はその後を追う。

 

(……何故襲ってこない……?)

 

 位置的に襲われても後ろに被害を出さない位置にいるけど、もしかして誘われたのか?

 すると反転してこっちに光弾を連続で放って来た。咄嗟に僕は回避したけど、少し安易だったか。

 

(なんて考えている暇は、ないってね!)

 

 僕を誘ったとか、この際はどうでもいい。今は目の前の敵を倒すことが先決なのだから。

 超大型ブレードを呼び出し、光弾を撃ち出している福音を攪乱させる。僕はその隙に接近し、こっちに向かって飛んできたブレードを受け止めて叩きつける。福音が薙刀で受け止めようとするけど、そのまま破壊した。

 

 ―――力を、使って

 

 ルキアの声が聞こえるも、今は構っていられない。

 

「吹き飛べええええ!!」

 

 刀身が左右に開き、ビームブレードとなる。僕は一度引いて再度叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だこれは……!」

 

 画面に表示されたものを見て千冬は驚愕した。智久が超大型ブレードと呼ぶ巨大な刀剣を使ってしばらくした頃に表示されたのである。

 

【単一仕様能力『零落白夜』を確認】

 

 千冬も真耶も智久が訓練機としての「形態変化を行う機能」という制限を解除していないことは知っていた。だからこそ2人は驚愕していたのだ。

 すると引き戸が開かれ、本音が叫ぶ。

 

「織斑先生………できました!」

「!! わかった。すぐに行く」

 

 訓練にいつも着用しているジャージを脱ぎ、真耶に「頼んだぞ」と言いながら渡す。中から現役時代の頃から使われていたISスーツが露わになり、千冬はすぐに外に出る。

 準備された打鉄は簪が持っていた簡易ハンガーのカートリッジを使用したカタパルト機能を出し、数時間前にラウラを射出した時と同じように準備されていた。

 

「すまない布仏。助かった」

「……勘違いしないでください。IS学園の生徒を守るため、ですから」

 

 本音は最近、周りの生徒が嫌いになりつつあった。入学時とは違って騒ぐことが少なくなったが、未だに一夏を持ち上げる生徒が多いからである。それがいくら、千冬に対する媚びであるということを知っていてもだ。

 

『織斑先生、時雨君と福音がいる地点の座標データです』

「ありがとう、山田君」

『いえ、そんな………』

 

 顔を一瞬だけ赤らめる真耶も、すぐに元に戻して応対する。

 

『進路上には何もありません。織斑先生、発進してください』

「了解した。織斑千冬、打鉄特式、出るぞ!」

 

 発射機構が作動し、千冬は彼方へと消えていく。

 それを真耶と本音が見送っていた頃、旅館内にいるあの男が目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天候が荒れ始めている。

 上を眺め、それから下を眺めるという動作をしたその存在に通信が入った。

 

『………どうなると思う?』

「そうだな。時雨智久は落とされる」

『………そう? あの人は成長していると思うけど?』

 

 相手のその言葉にその存在は肯定したが、

 

「確かにな。だが所詮は機体も本人も付け焼刃でしかない。発想力は以前と比べたらかなり上がったようだが、最後は実力が物を言う。それに―――おままごとで優勝したところで何の価値もないだろう?」

『………おままごと、ね。それは私に対する嫌味かしら?』

「気のせいだ」

 

 笑いながらその存在はもう一度上を向いた。

 

「……荒れるな」

『……肌が?』

「天気が、だ。だがそれはアイツにとって都合がいいものになるだろうな。もっとも、それは()()()が復活していたらの話だが」

 

 そう意味深な言葉を言ったその存在は、天才にすらも察知されることもなく静かにその場から移動。戦いの様子を傍観し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予想外。その言葉が一番しっくりくるかもしれない。

 その戦闘を見ていたとある天才は、舌打ちをした。

 

(………色々と目障りだから消そうと思っただけなのに……とっとと落ちろよ)

 

 自らの能力が周りから逸脱していることは昔から理解しているその女性―――篠ノ之束は叫びたいと言う衝動をこらえつつ、画面の中にいる智久に毒を吐く。

 彼女の作戦は智久が現れるまでは順調だった。自分の妹が好きな人までも殺しかねない攻撃を敢えて選び、敢えて当たらない場所を選んで撃ち、智久を誘き出した時は「ここがお前の死に場所だ」と内心笑った。何事もなかったかのようにその場から福音を移動させたのも、友人のキャリアを思ってのことだ。

 だと言うのに、とっくに落ちて後は回収するだけだというのに、何故か今も抗っていることがムカつく。

 

「……とっとと死ねよ」

 

 束は敢えて福音に隙を作らせて嵌めるように指示を送る。そして福音もそれを行い、あわよくばというところで回避した。

 

(!? 何で………)

 

 あり得ない。隙と言ってもそこまで大きいものではなく、素人ではわからないものの程度だったのに。

 

『………一つ試すか』

 

 スピーカーからそんな声が聞こえてくる。

 

「浅知恵如きに引っかかるわけが―――」

 

 そう呟いた瞬間、智久は言った。

 

『これで僕が勝ったら、紅椿は所詮「第四世代機(笑)(かっこわらい)」になるね。いや、操縦者がポンコツすぎるのか』

 

 小ばかにするような態度。辛うじて、辛うじて我慢する束だったが、次の言葉でその我慢というダムは崩壊した。

 

『まぁ、天才とか言いながら妹のIS操縦者としての実力を見抜けないあの見た目は大人だけど精神年齢が2ケタにすら達していない間抜けが作った奴だから、仕方ないか』

 

 瞬間、束は福音のあらゆる制限を解除した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 智久は、このままだとただ時間が過ぎていくだけだと予感していた。だが、同時にそれが最善であることも頭の中では理解していた。

 

(………もういいや)

 

 ―――捨て去ろう

 

 そう、頭と心に命令する。そして迫り来る凶刃をいなしながら瞳を閉じ、開ける。

 

 ―――すると、彼の瞳の色が金色に変わった 




マークフィアー降臨≦マークザイン降臨

ファフナー界の安心感


智久の登場はまだそれに満たされないな。
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