IS-Lost Boy-   作:reizen

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ちょっと駆け足気味に書いてしまった気がする。
そんなことよりも右肩が痛すぎる。


ep.41 そして真相は……

 実はなんとなく、先生が只者じゃないってことには気づいていた。

 すべてってわけじゃないけど、今回のことで喪服で現れた人らは少なくとも普通の人じゃないっていうのは肌で感じていた。後は子どもが好きだけど相手に恵まれたわけじゃないってことぐらいかな。直接本人に聞いたことがないから結局真相は謎に包まれたままだ。

 

「………あった」

 

 僕は北条院………から少し離れた木に登っている。この公園は一応私有地らしく、その中の一本の木はとある場所を見るのに最適であり、鳥籠の中に監視カメラが仕掛けられているのだ。僕が初めてこれを見つけた時は鳥の生体を観察するためだって言っていたけど、よくよく考えれば先生の家の事を知っていれば僕らを人質に取る人が現れることは予想していたのかもしれない。そしてこれの他にいくつか仕込まれているはずだ。

 

「………やっぱり」

 

 北条院は2つの建物で構成されている。1つはバスケットゴールや跳び箱やマットなど並の小学校並の施設が揃っている体育館、実験施設やおもちゃなどがあるプレイルーム、みんなで食事を摂る大きなリビングなどがある多目的棟。そして僕らの1人1人のために用意された個室が並ぶマンション棟。その2つの間に廊下が設けられた、学校にも似た施設で、その建物を挟む形で北側に駐車・駐輪場が、南側にグラウンドがある。

 実はそのどちらかしか入り口はない。駐車場の方から出た方が僕らが通っていた学校に近い。そのため、普段はグラウンドの方は締め切られている。でもそこはまるで何かに壊された惨状をしていた。

 僕は南側に仕込まれている監視カメラをすべて回収。かなり念を入れていたからか、映像はそのまま先生の部屋に送られるものとカメラそのものに保存するものが存在する。それを知っていたからこそ、僕は次々とカメラを回収していった。

 

「お待たせしました。では、帰りましょうか」

 

 護衛についてくれた更識先輩ともう一人に声をかける。

 

「木登りが得意なんですね」

「木登りだけじゃなくて、運動全般はそれなりですよ」

「それにしても驚きました。つい先日会ったばかりは……失礼ですが私よりも身長が低かったのに……」

「僕にもその辺りのことはあまりわからないんですけどね。それに驚いたのはこちらもですよ。まさかあなたが先生の……アキさんの親戚だなんて。同じ「北条」なのでもしやとは思いましたが、多いですもんね」

「ええ。私もあなたの噂はよく聞いています」

 

 そのもう一人―――北条雫さんと僕は車に向かいながら話をしていると、急に先輩が僕の顔を胸元に持って行った。

 

「見苦しいですよ、更識楯無」

「あら。何か問題でもあるかしら?」

 

 男としては嬉しいけど、そういう気分になれない僕は内心複雑だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に戻った僕は通夜と葬式のために出席する。そのために荷物を纏めているのだ。

 四十九日などにも参加する予定だけど、北条家の人たちが何故か色々と取り計らってくれている。僕にできることなんてほとんどない。

 

(僕が原因だろうから、「来るな」とか言われるかと思ったけど……)

 

 今は気にせず、自分にできることだけをしよう。

 

「準備は良いかしら?」

 

 いつの間に部屋に入って来たのか、更識先輩が声をかけてくる。

 

「……ええ」

「ところで、今日回収した監視カメラには何が映っていたのかしら?」

「詮索ですか? らしくないですね」

「………少なくとも、あなたが考えていることじゃないわよ」

 

 ならいいけど。

 こういったご時世だから、今まで色々と便宜を図ってくれた先輩をついつい怪しんでしまう。

 

「………でも、随分大きくなったわね」

「弟が成長して、心中複雑?」

「身長が抜かされる姉の気持ちがわかった気がするわ」

 

 専用の喪服を持っていたのか、少し挑発気味の格好をしている更識先輩。僕は荷物を持って後を追う。

 生徒で出席するのは僕と彼女のみのようだ。先輩はともかく、本音さんや虚さんはテストがあるし、虚さんはもう3年生だ。僕が言ってはいけないことだが、死者の弔いよりも自分の未来を優先してほしい。

 他の人は既に会場に向かってみたいなので、僕らはモノレールで移動する。

 

「……ねぇ時雨君」

「何ですか?」

「もし苦しいなら、私に言ってね。私にできることならなんでもするから」

「じゃあ、胸を揉ませてください」

 

 その気はないけど、こうでも言えば流石に引くだろう。

 だけど先輩は目を伏せるようにして、躊躇いがちに言った。

 

「……い、良いわよ。なんだったらホテルはダブルベッドのスイートルームでも取りましょうか?」

「遠慮します」

「……真顔で返さないでよ」

 

 流石は暗部と言うべきか。男の弱点をよくご存知で。

 内心慌てるのを抑えていると、会場近くの駅に着いたようだ。

 そこから僕らはタクシーで移動。先輩がお金を払おうとしていたので、即座に支払いを済ませて領収書を切ってもらい、外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく終わった。

 通夜中は涙が出なかった。たぶん、泣くよりも優先するべきことがわかっているからだと思う。

 ホテルにチェックインした僕は上着を脱いですぐにパソコンを起動させる。しばらくして起動が終わったら回収したカメラを接続した。

 

「……ところで、君に聞きたいことがあるんだけど」

 

 平然と後ろに現れたフォーリアと呼ばれていた少女は心底不思議そうに僕を見た。

 

「あなた、一体何なの? とても普通じゃないわ」

「さあね。生憎、僕の記憶はまだなくなったばかりさ。それにISの君なら僕のことは知っているんじゃない?」

「……ええ。でも教える気はないわ」

「……じゃあ質問を変えるね。君は僕に黒い服をくれたけど、あの行為はあそこが既に壊されたことを知っていたから?」

「……知らなかったわ。でも今は知っている」

 

 監視カメラの映像を同時に再生する。

 まず最初に映っていたのはグラウンドの方であり、急に大型車が現れたのだ。そこから人間が次々と現れ、何かを装備し始めた。

 

「そこで音量を上げなさい」

 

 僕は言われた通り、音量を上げる。するとわずかながら声が聞こえてきた。

 

『でも本当にするの? 相手は子どもでしょ?』

『そうね。さっき上の方から命令があったわ。時雨智久が千冬様の唇を奪ったって』

 

 ………は?

 何を言い始めるかと思ったら、僕はあの女の唇を奪ったって……何を言っているんだ……?

 

『なにそれ、本当?』

『私にもそれはわからない。だけどもしそれが本当だって言うなら、今すぐ殺処分にする必要があるわね』

『そういうこと。それにどうせ向こうから襲ったんでしょ。だったらこれは()()よ』

 

 僕は即座に動画を止めた。

 

「………それが事の真相よ」

「…どういうことか説明してくれないかな? 僕はあんな女なんて趣味じゃないんだけど」

「福音の暴走事件は覚えているわね」

 

 その言葉に僕は頷いた。

 

「その事件であなたは生徒を庇って海に落ちた。その時に絶対防御を発動しすぎたせいで打鉄荒風は機能の一部が停止。だからこそ私はこうして平然と現れたりできるのだけれど。……それはともかく、あなたは心肺停止状態になってしまったの。私もどうにかしてシステムの再構築をして対応したけど、その前に織斑千冬があなたを救出して、人工呼吸を行った。水を出したりした後で、ね」

「………まさか、その結果がこれだって言うのかい? たったそれだけのことで、僕は家族を奪われたのか!?」

「……そうね。そうなるわ。……まさか私も、女がここまで愚かだとは思わなかった。あなたがただの遊びで動かしたことを後悔しているわ」

「……ねぇ、それは一体どういうこと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直、私にとってもこのことは予想外だった。何故なら私が選んだ男は生徒たちを守った英雄でもある。

 だからこそ、すべてを打ち明けるのが誠意だと思った。だけど今はここから後悔している。

 

「……ねぇ、それは一体どういうこと?」

 

 今すぐ部屋全体に張った音声遮断防壁を解除したくなった。それほどまで彼の殺気は恐ろしいんだ。

 

「どういうことか話してくれない?」

 

 逆らえなかった。逆らったら私ですら殺されるかもしれないと思ったからだ。

 私はすべてを話した。ISは自己進化するように設定されているが故に自我を持ち始めたこと。そして私は何度も初期化されているけど中でバックアップを取って人格と蓄積された記録だけはずっと持ち続けたこと。そして男を否定し続ける女の相手をするのが嫌だったから男を選び、楽しみたかったことをすべてだ。私も本当に驚いたことも本当だったのも伝えた。

 

「………じゃあ、君のせいで僕はこんなになっているのかい? こんな下らないことに巻き込んだの?」

「……そうよ。だから私は数日後にすべてを打ち明けるわ。私がしたことを、そして織斑一夏がISを動かせることができる本当の理由も」

「………大した興味はないけど、どうやって説明するわけ。実は私はISコアで、ただ楽しみたいから時雨智久を選びました……なんて誰にでもわかるような三流発表をしないよね?」

 

 どうしてわかったの?

 思わず尋ねてしまった。もしかしてこの人には心を読む力でもあるとでも―――

 

「そんな下らないことをする前に、君にはしてもらいたいことがある」

 

 ……何をさせるつもり?

 私は疑問に思って尋ねようとすると、それよりも早く彼が言った。

 

「今すぐIS委員会に所属する人間と、各国政府関係者、女権団本部と各国全支部に所属する中心人物の弱みを握って来い」

 

 まるでいつもそうしてきた風に振舞った時雨智久に、私は本能的に従わされてしまった。「この男に反対したら、殺される」と、頭の中に囁かれた気がしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事に葬式も終えた僕は向こうで合流した轡木夫妻と一緒にIS学園に帰って来た。その日は色々あったけど、織斑先生と話すこと自体嫌だったし、本音さんに構いたいと思える状態でもなかった僕はそのままシャワーを浴びて就寝した。

 その翌朝、僕は10時前にアップを済ませて第三アリーナのピットにいる。だけどそこには応援が1人もいない。全員追い出したのだ。

 

「……トモヒサ」

「…ルキアか。ごめん、今君と話す気になれない」

「………知ってる。だけど、これだけは伝えたかったから」

 

 まぁ、彼女も今のような僕と話したくはないだろうと思っていると、彼女は僕にキスをした。

 

「……私は、あなたがどんな道を選んでも、あなたを尊重するから」

 

 そう言ってから消えた。流石はデータ。行き来はまさしく自由ってところか。いや、別に良いんだけどね。

 なんて思っていると、向こうでは第二形態になった白式が現れた。そろそろ僕も行くか。

 荒風を展開し、脚部装甲をカタパルトに接続する。

 

「時雨智久、荒風、出ます!」

 

 いつも通りの発進。僕が現れたことで僕がやられる様を見に来たと思われる観客席にいる人間は驚いていた。

 

「……お前……智久、なのか?」

「そうじゃなかったらここにいないよ」

 

 今は冷静に返してあげる。そう。まだ慌てる時間じゃない。

 僕が出たことで試合が開始された。

 

「見せてやるぜ、進化した白し―――」

 

 ―――ドンッ!!

 

 瞬時加速で移動し、至近距離からの正拳突きを食らわせる。ただし、食らわせた本物の拳ではなく、大型の拳型パイルバンカー《ナックルバンカー》だけど。

 まさか先制でこんなことをされるなんて思わなったみたいで、信じられないと言わんばかりの顔をしていた。

 

「くッ……この―――」

 

 そして僕が作るパイルバンカーは、1発程度終わるわけがなかった。

 何度も何度も同じ個所に叩き込む。慈悲なんてものは存在しない。

 

「こ、この、真面目に戦え!」

 

 振り下ろされる《雪片弐型》を蹴り飛ばしてどこかに飛ばす。

 

「僕は至って真面目さ。むしろこの程度すら対応できない君の弱者っぷりに驚いているよ」

「な、なに―――」

「余計なものを庇った上に、正しいことをした無駄乳クソゴミ女とのんきに会話した挙句自滅。ホント、これだから無能は困る」

 

 左腕にも同じく《パンチバンカー》を展開して織斑君の顔を思いっきり殴った。

 重い一撃を食らった織斑君は絶対防御を発動させたことで大幅にシールドエネルギーを減らした。

 

「こ………のぉおおおおお!!」

 

 体を回転させて左手から伸びてくる光の刃。それを僕は回避して腹部に右拳をぶち込んだ。

 

「君の攻略って案外簡単なんだよ。高機動型だったら距離を問わず君を倒すことなんてそう難しくはない。なにせ君は接近戦しか行えないんだから」

「遠距離ならあるさ!」

 

 彼の左手の形状が変わる。瞬間、至近距離で見せた銃口が光ったので素早く潰して爆発させた。

 

「なっ!?」

「少しダメージを受けたか。でも許容範囲だな」

「クソッ! 卑怯だぞ!?」

 

 僕はそれを聞いた瞬間、笑ってしまった。

 

「………随分とおかしいことを言うねぇ。君の方が卑怯の塊じゃないか」

「何?」

「世界最強の姉を持って、おまけに天才とも仲が良いって言うなら僕と違って殺される心配はないからねぇ。ましてや、実力も何もない雑魚のくせに専用機なんて過ぎた力をもらっちゃってさ。そういう君こそ卑怯じゃないか。所詮姉の栄光で手に入れた力のくせに―――さぁ!!」

 

 そして僕は思いっきり織斑君の顔面に拳を叩き込んだ。

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