IS-Lost Boy-   作:reizen

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45話、はいドーン!(イリヤ風に)

今日はエイプリルフールですが、嘘はついてはいけませんよ(笑)


ep.45 家族を思う心

 あの騒ぎから数日が経過した。

 状態が安定し、昨日から一般病棟に移されている千冬は自分の胸を触る。

 

『まさしく君は化け物だね。まさかあんな危険な状態から息を吹き返すとは思わなかった』

 

 そう月城薫から伝えられた時、千冬は息を吐く。

 

(………私みたいなのが、生きていて良いのだろうか?)

 

 両親の不在。それは織斑家にとって周りと比べてかなりのハンデになっている。周りの手をあまり借りたくなかったのは、そのせいで一夏を惨めな人生を歩んでほしくないと思ったからだ。そのせいで、自分は弟にまともな教育を施せなかった。

 

(………いや、普通は難しいか)

 

 だがこれだけは確実だ。自分のせいで一夏は軽々と専用機を手に入れた。あまり知らない内に専用機を渡してしまったのが大きな原因だろう……と、千冬は内心思う。

 そこまで考えていると、タイミングよくドアがノックされ、千冬は入室を許可した。

 

「失礼します。言われた通り、織斑君と篠ノ之さんを連れてきました」

「そうか。ありがとう、山田先生」

 

 山田真耶が入室し、その後ろに一夏と箒がいる。真耶に従うように2人は入室した。

 真耶は一足先に外に出る。

 

「千冬姉、無事だったんだな」

「……おかげさまでな。ところで一夏、箒、お前たち2人を呼んだ理由を早速入らせてもらうが………お前たちは専用機が必要だと思うか?」

 

 その質問にすぐさま答えたのは一夏だった。

 

「もちろんだ。俺はみんなを守りたい。そのために力がいる」

「……私は、そんな一夏を支えたい。そう思います」

「…………そうか」

 

 千冬はため息をこぼした。以前から箒の気持ちには気づいていた千冬だが、思いの外まともな意見が返ってきたために言い方を迷っている。

 

「………はっきりと言うが、私はお前たち2人に専用機は必要ないと思っている」

「何でだよ千冬姉!?」

「2人はまだその技量に達していない。少なくとも、状況を把握できず、自制すらできないお前らではな」

 

 「まぁ、それはほかの専用機持ちにも言えるが」と千冬は補足し、さらに言葉を続けた。

 

「それに、お前たち2人だけじゃない。そもそもあの2機は素人向けではないのは確かだ。おそらく現時点でまともに動かせる者、もしくは動けるように努力するのは時雨ぐらいだと私は思っている」

 

 智久の名前が出たことで、2人の顔は暗くなった。

 

「………今回の騒動はすべて聞いた。そして私は時雨に殺されかけたが、私は時雨を許そうと思う」

「何でだよ!? 智久は千冬姉を殺そうとしたのに―――」

「だが、私の弱さが、そしてお前たち専用機持ちの認識の甘さが時雨の家族を殺した、としてもか?」

 

 その言葉に箒は質問した。

 

「……そのことなのですが、何故時雨は私たちを目の敵にするのですか? 確かに時雨の家族は死にましたが、あれは女権団の人間がしたことで、我々がそこまで否定される謂れはないはずです!」

「だが、それに至る過程を作り出したのは誰だ?」

「それは………」

 

 箒は目を伏せる。その反応に千冬は一夏の方を向いた。

 

「一夏、お前は何故密漁船を庇ったんだ? あいつらは犯罪者であり、あの時点では我々にとって障害であり、作戦を阻害するだけの存在だ。ましてやあの場にはボーデヴィッヒにもいた。お前は福音を狙うべきだ」

「何を言ってんだよ、千冬姉。あそこで見捨てたらあの場にいた人たちは死ぬじゃないか! そんなこと言うなんてらしくない」

「……らしくない、か」

 

 千冬は立ち上がり、一夏に近づいて殴った。

 

「いっつつ………何をする―――」

「この際だからはっきり言ってやる。ISがスポーツだという認識を完全に捨てろ。ISは兵器だ! 戦闘機や戦艦でミサイルを人に向けて飛ばしたらその人間が死ぬように、ISで人を攻撃すればその人間は死ぬ! 確かにあの場でお前が救ったからあの人たちは生きていたかもしれない。だがそれは結果論だ。たまたま福音は停止し、受けたダメージを回復することに専念してくれたから日本に被害はなかったこともな。だが、お前はたった数人の命のために大勢の人間を殺すところだったんだぞ!」

 

 一夏の主張は決して間違ってはいない。確かにあの場で人を助けること自体は尊重されるべきことだ。

 だがあの場面で見捨てなければいけないという視点が存在するのも確かである。

 

「その分別ができない限り、お前に専用機は渡せん」

「………じゃあ、何であの時、俺を助けに来てくれたんだよ! 俺なんて放っておけばよかったじゃねえか!」

「…あの時と福音の暴走は状況が違う。それに、あの時は家族を守っただけだ。そして私はお前か箒を助けるとしたら、迷わず箒を捨てる。そんな人間だ」

 

 ―――信じられない

 

 恐怖を顔に浮かべた一夏は、千冬が怪我人であることを忘れて突き飛ばす。箒は咄嗟に千冬を庇ったが、一夏はそれにすら構わず病室を出て行った。

 

「………千冬さん」

「いや、大丈夫だ。私自身、一度一夏にはしっかりと言っておきたかった。だが私は―――」

「……正直、反応に困りましたが……でも、考えてみれば人っていうのはそういうものなんですよね」

 

 箒がそう言ったことが、千冬は何よりも驚いた。

 

「………箒、お前はどうしてあの時無断出撃したんだ? 今のお前を見ていると、とてもそれをする奴には見えん」

「…………あの時は、悔しかったんです」

 

 無意識か、拳を握りしめる箒。

 

「あの時、私は一夏に諭されて気付いたんです。自分がただ暴力を振るっているだけに過ぎないと。そんな私のせいで落とされて、一夏を巻き込んで……そのせいで嫌われるんじゃないかって……」

「………結果として、私はあの場面ではお前の言うことが正しいと思っていたがな。おそらく、時雨もそうだろう」

「……あの、千冬さん」

 

 少し遠慮気味に箒は尋ねる。

 

「もしかして、千冬さんは時雨が好きなんですか?」

「は? 何を言っている。そんなことあるわけが―――」

「ですが今の千冬さんは、どう見ても自分の好きな人を自慢げに語る人そのものですよ。顔も赤いですし」

 

 そう指摘された千冬はますます自分の顔を赤くする。

 

「ば、馬鹿者が! 大人をからかうな!」

「す、すみません……」

「………まったく。………それでだ、箒。お前は福音の暴走をどう見る」

「え? どう見るって……」

 

 千冬は少し驚くが、一人で納得して箒に告げた。

 

「……VTシステムを除くこれまでの問題。あの犯人はすべて束が仕組んだことだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は用事を終えて家に帰ると、どうしたことか家は燃えていた。

 本来なら引くのが得策なんだろうけど、僕は家の中に入ると死体がたくさんあった。

 

「……坊ちゃま」

「な、何があったの!?」

「…お嬢様が……謀反を……」

 

 それだけ言ったその人は息絶えてしまった。

 僕はすぐさま奥に行くと、たくさんある死体の中心に返り血を浴びたお姉さんを見る。

 

「………姉さん」

「…智久、ちょうどよかったわ」

 

 そう言って姉さんは僕に手を差し伸ばす。

 

「この日本にはもう、未来はないわ。だから私と行きましょう?」

「待ってよ姉さん! どうしてこんなことを―――」

「私は家族に、滅びゆく国を守って死んでほしくなかった。……だからここで終わらせてあげたの」

 

 そう言って姉さんは僕に接近して腹部に衝撃を与える。

 

「……あなたにはまだ早かったわね。もし時期になったら迎えに行くわ。その時にはすでにあなたも世界を嫌っているだろうから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ました僕の目に入ってきたのは、知らない天井だった。

 軽く体を動かすと拘束されていることがわかったので枷を破壊する。……とか言っているけど、実は本気で壊れるなんて思っていなかった。

 

(……っていうか、ここってどこだろ?)

 

 見覚えもない場所に疑問を持っている。地下牢っていう割にはまだお洒落の方だし、過去の経験から考えると重病患者を扱う施設……みたいだな。

 とりあえず部屋を脱出しようと考えていると、いきなりドアが開かれて次々と重装備者がアサルトライフルを装備して入ってくる。

 

「………動くな。動けば、発砲することになる」

「……これは一体どういうことですか?」

「お前は今、第一級危険人物として扱われている。その疑いを晴らしたいのならば、こちらの言うことを聞いてもらう」

 

 隊長と思われる人がそう告げる。どうしてそうなっているのかわからないけど、心当たりはものすごくあった。

 

「……わかりました」

「…そうか。では歩け」

 

 促され、僕は歩き始める。銃口を向けられるのはとても気分が良いものではないけど、専用機を5機も大破させているから、おそらくはそのことが問題に上がっていると思われる。

 やがて僕はIS学園に案内され、そこの学園長室前に移動させられた。

 

「失礼します。時雨智久を連れてきました」

『どうぞ』

 

 ドアが開かれ、僕は従うように入ってくる。目的を達したのか、彼らは退場していった。

 中には学園長、そして轡木十蔵さんがいる。

 

「おはようございます。よく眠れましたか?」

「……ええ。場所は少々驚きましたが。……それよりも本題に入っていただけませんか? さっきからあの後のこと、そして僕のこれからのことが知りたくてウズウズしているんです」

「………わかりました。結論から言いますと、あなたはIS委員会からの申し出を受けるのならば、所属や今後のことを一切関知しない、と通達がされました」

 

 ………意外と破格の対応である。てっきり銃殺も覚悟したからちょっと意外だ。

 

「意外な対応、ですね。で、その申し出というのは?」

「あなたが持つ「闇鋼」を委員会に提供するというものです。その代わり、白式を使うようにと通達がありました」

「………それは、随分と面白い冗談ですね」

 

 同時に少しばかり納得したけど。確かにその条件ならISを提供する人も現れるだろう。

 

「あなた方2人には申し訳ないですが、私はその申し出を断らせていただきます」

「………だと思いました。なのでこちらはあらかじめ断らせていただきました」

「……もし受け入れたらどうするつもりだったんですか?」

「9割くらいはないと思っていましたからね。それに、今まで勝手に制限を課して、自分たちがこちらに勝手に指令を出した上での損害を無視して話を進めるような人達にその程度の報酬でなびく人ではないと思いましたから」

 

 それに関しては否定しない。

 

「そう言っていただくと素直に嬉しいですね」

「なので、実は我々はあまりこれに関しては知らないのです」

「そうなんですか」

 

 僕は2人の配慮に泣きそうになった。あんなことをしでかしたというのに、2人はまだ僕を生徒として扱ってくれることに。

 感傷に浸っていると、唐突に後ろから声が聞こえた。

 

「―――それは困る。大いに困りますよ」

 

 その声に僕は振り返る。

 

「あなたは、誰ですか?」

「何の用だ、チェスター・バンクス」

 

 十蔵さんが聞いたことがないほど低い声を出した。僕は思わず震え上がってしまった。

 

「いえいえ、先ほど少し問題のある声が聞こえたのでね。なんでも、時雨智久にあのISを調べさせるとか」

「だったら何か問題でもあるのか?」

「大有りですよ、大有り。こちらは今日、返事を聞かせてもらえると思ってわざわざ来たというのに、まさか拒否した挙句に我々に許可なく彼にISの研究をさせるなんてね」

 

 チェスター・バンクスと呼ばれた男性は今度は僕の方を見る。

 

「さて、時雨智久君。あなたは今すぐIS委員会傘下の研究所に入りなさい。それが嫌だというのなら―――あなたのご友人が酷い目に合いますよ」

 

 ……僕の、友人?

 脳裏に幾人か浮かび上がらせる。その人たちが酷い目に合うなんて―――なんて考えている間に、少し肥満気味の体型のバンクスさんが言った。

 

「それともあなたの場合は「サチナ フジワラ」をどうにかしたほうが効果的でしたかな」

 

 サチナ フジワラ……幸那のこと?

 今、入院中なのに、殺されそうだったのに、まだ酷いことをしようって言うの? この人は―――この、男は。

 

 ―――フザケルナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チェスター・バンクスは笑みを浮かべている。勝ちを確信しているのだ。

 今、智久の手元には闇鋼も白式もなく、完全に丸腰だ。周りには完全武装した男たちを配置している。

 

(どれだけ強かろうと、所詮は子どもだしな)

 

 チェスターにとって智久の評価は「どれだけ粋がろうとも所詮は従うことしか知らないイエローモンキーのガキ」という程度の認識だった。知識はかなり持っているというのが学園に放っているスパイからの報告だが、少なくともこの状況で生身での戦闘を仕掛ければ勝機はあると考えている。つい最近、家族を失ったと聞いているがそんなことはどうでもいいと思っている。

 

「君は知識は豊富と聞いています。ここで私にどうすればいいか、わかりますね?」

 

 生徒会に日本の暗部が所属していることは知っているが、同じ施設にいた方を人質にとれば容易く掌握できる。そう思い、動いていた。轡木十蔵に関しても、妻がいるからそっちを庇うだろうと思っている。

 

 ―――容易い

 

 中々動かない智久を従おうと近づいた瞬間、チェスターは後ろに控えていた護衛に無理体勢を変えられた。

 

「な、何をするんですか―――」

 

 勢いよく、チェスターの顔に水分がかかる。見るとISの攻撃すら耐えれる特殊スーツを易々と貫いて黒い何かが見えていた。

 

 ―――ドサッ

 

 その何かが消えて自分の駒が力もなく倒れた。動いているところを見るに、どうやらまだ息はあるらしい。

 

「………は?」

 

 チェスターは間抜けの声を出す。それもそのはず、智久の目が金色になっていたから。

 すぐに別の戦闘員が智久を抑えようと現れるが、智久はまるで慣れているように立ち回り、素手で戦闘員を気絶させた。

 

「……邪魔だ」

 

 次々と現れる戦闘員。チェスターは他の戦闘員に引きずらつつ、智久が戦闘員をかわして自分に迫ってくるのを眺める。

 

 ―――ズドンッ!!

 

 チェスターを潰そうと迫った5本の指が床を貫く。

 

「い、今すぐ応援を呼べ!」

「無理です! 通信機器が原因不明の使用不可能になっているのですから!」

 

 智久の後ろから戦闘員が襲い掛かる。

 

「―――どけ」

 

 そう一喝し、智久は戦闘員を蹴り伏せた。

 

「……幸那を……僕の友人を酷い目に合わせるなんて……そんなことは、させない!!」

 

 智久がそう叫んだ瞬間、IS学園内は全電子機器が使用不可能になった。




今話のタイトルは千冬と智久の心情からそういったタイトルです。
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