IS-Lost Boy-   作:reizen

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ep.47 6年ぶりの帰宅

 僕が知る轟家はかなり大きな屋敷だ。だけどここ6年ほど人は入らなかったようで、かつての栄光はどこに行ったのか、今は荒れ果てている。正面から入ろうとすると、強力な電磁波によって妨害された―――のはほんの一瞬で、僕はすんなりと入ることができた。

 

(……しかし、凄い荒廃っぷりだ)

 

 そもそも、一家消滅の原因が放火による焼死であり、ほとんどが燃えてしまっているから財宝とかの期待はしていない……あわよくば、完全に思い出す手がかりがあればと思ってきてみたが、期待できることもなさそうだ。

 などと思いながら下に降りていく。完全に暗いけど、予め持ってきていた懐中電灯とハイパーセンサーによる補佐で辺りはばっちりだ。……まぁ、もしかしたら電気系統の人間なんだから自力で探査したりできると思うけど、僕はその力に気付いたのはつい最近だ。そんな状態で行使したら、下手すれば屋敷そのものが壊れてしまう。恐れもあるからだ。そうなると色々と面倒である。

 

(死体の処理はされているみたいだ。腐った死体の臭いはしない………嗅いだことがないけど)

 

 所々残っているのもある。たぶん……いや、ここが大座敷なんだろう。入ったことは1度だけある。それは……姉さんが……。

 

(………あれ?)

 

 ………ああ、そうだ。思い出した。

 僕はここで、姉さんがみんなを殺しているのを目撃した。

 

 

 

 

 

 あれは、確か更識さん……いや、かんちゃんと別れて家に帰った時のことだ。

 夜遅くなったこともあり、僕は急いで運転手を呼んでもらった。帰ってみれば火の手が上がっていて、僕は急いで中に入った。奥に行けば行くほど死体があるけど、構わず進んだ。この時僕は、まだ中に人がいるってことがわかっていたからだ。

 僕が大座敷の中に入った時、お父様が力なく倒れたところだった。

 

「おかえりなさい。あなたを待っていたわ、智久」

「姉さん……これは一体どういうことなの……?」

「謀反。その言葉は小学生のあなたでもわかるでしょう?」

 

 意味はわかる。でも何で姉からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。

 わけがわからなかった僕は尋ねる。

 

「………何を考えているの、姉さん」

「この世界は自滅の道を進んでいるわ」

「……え?」

「女の無差別な優遇は、男に対して無駄な差別を行うことに繋がってしまった。女の元々の行動から考えて、それはよくない事。だから、壊すの」

「…………じゃあ、何でみんなを殺したの?」

「邪魔だから」

 

 たった一言だった。でも一言には妙な力があり、僕は怯んだ。

 

「あなたはまだ知らないでしょうけど、この家の教育方針として、人を殺すことを教えられるわ。あなたにもその基礎は既に植え付けられているはず」

「………わかった」

 

 僕は砂鉄を集め、ナイフを作った。

 

「驚いたわ。あなた、そこまでのことを普通にできるようになっていたのね。将来有望よ」

「………今の姉さんに褒められたって嬉しくないよ」

「…時間が流れるのはあまり好きじゃないわね。ついこの間まで懐いてくれた子がそう言うなんて」

 

 少し悲しそうに言う姉さんは僕に接近して掌打を放つ。僕は壁に叩きつけられてしまった。

 

「私は亡国機業という所に行くわ」

「……亡国……?」

「ええ。だからもう、会うことがないわ。でも1つ。ISには気を付けなさい。この家は隠しているけど、父はISに触れて起動させる事が出来た。おそらく、私たちの一族なら男でも動かせるのでしょうよ。だから―――間違っても、関わりを持たないで」

 

 僕が覚えているのは、そこまでだった。そして……僕は周りを信じられなくなり、襲ってきた女性を半殺しにした。電気を使える自分の力を、殺されると悟った瞬間に行使したからだ。

 

 

 

 

 

(……亡国機業……とりあえずメモっておかないと)

 

 懐からメモを出して「ぼうこくきぎょう」と書いておく。片付けてから僕は自分の部屋の中に入った。……どれもこれも懐かしい。……っていうか、ここ辺りは焼けてないんだね。

 埃を追い出しながら場所を開放していく。まぁ、6年も放置なら仕方がない気がするけど、流石にこの汚れはどうにかしたい。となれば、掃除しかないかな。……でも、たぶん井戸とかも見たことなかったから難しいかもしれない。一度、ここを建て直すべきかな。たぶん老朽化も酷いし虫も湧いているから大変なことになっているだろうし。

 

(……さて、稼がないとな)

 

 幸い、ドイツとはいい関係が結ばれているのか定期的に追加発注をしてくれているし、収入としては悪くない額が僕らに支払われている。もう今後は暗部として活動するつもりはないけど、ちゃんと僕の戦闘スタイルを確立させて、またこの周囲を発展させたい。10年間は暮らしていたし、もうほとんど薄れているけど愛着はまだ持っているつもりだ。先祖はどう考えるかわからないけど、そんなものは僕の勝手だ。

 

(……いつか、元に戻ればいいな)

 

 そんな淡い期待を持ちながら、僕は探索を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕と姉さんは織斑姉弟とほとんど同じくらい歳が離れている。

 僕は織斑君と同い年だけど、姉さんと織斑先生は2歳違う。姉さんが13歳の頃に白騎士事件が起こったから、今は23歳。そして6年前は17歳だから、下着などはすべてなくなっている。姉弟だからってすべてを知っているわけじゃないけど、確か姉さんは当時は日本の代表候補生で轟家だということもあってそれなりに優遇されていたはずだ。適性値もかなり高く、専用機持ちになるという話は聞いていたけど、そんなタイミングで逃亡するのはやっぱりおかしい。それに、姉さんは僕よりも優秀だったし、本気を出せばとっくの昔にIS委員会なんて制圧できたはずだ。……なのに、どうしてかそんなことがされていなかった。

 

(……家族を殺すほどなのに……何かあったのかな?)

 

 少し考えたけど、結局考えたところでどうにもならないのですぐに止めて少し奥に進むことにした。

 子どもの頃、いくつか禁止されていた場所に入る。いざとなればISの力が必要かもしれない……というか、頼るしかない。

 そう思わせる雰囲気が辺りに漂う。奥に進んでいくと、両開きのドアがあった。

 

(……まるでなんちゃらクエストみたいだ。……仲間もなしにダンジョンに挑むなんて正気じゃないけど)

 

 冗談で気を紛らわせつつ、ドアを開けてさらに奥へと進んでいく……と、

 

「…………あ、IS!?」

 

 信じられなかった。形状は以前の無人機とは違うけれど、たぶんこれは……ISだと思う。

 轟家は超が付くほどの帯電体質とはいえ、これはあまりにもおかしい。この家は一体なんだと言うんだ。…なんて思っていると、

 

【轟の血を受け継ぐ存在を確認しました。これより、試練を行います】

 

 そんなアナウンスが聞こえてくる。……たぶんこれ、少し前に変えられてる……じゃない。

 ISと思われる機体が動き始める。動きからして人に近いけど―――って、そんなことを考えている場合じゃないや。

 僕はすぐに闇鋼を展開して迫ってくるブレードを切断した。

 闇鋼の武装はビーム兵器が主体だ。出力は調節済みだからそこまでじゃないけど、下手すれば零落白夜を超える出力だったから最初は驚いた。

 

(試練って……ああ、そういえば僕って轟家の継承者だっけ?)

 

 少しばかり今更なことを考えながら、完全に破壊した。壊してから残せば良かったと思う。

 

(……まぁ、まだ次はある―――!?)

 

 ―――ガンッ!!

 

 いつの間に後ろにいたのだろうか、僕は思いっきり殴られてしまった。

 大して広くもない空間ですぐに壁に叩きつけられる。操縦者保護機能がなければ即死だというのはあながち間違いではないだろう。

 迫ってくるブレードを僕は回避して右腕の隠し爪を展開して抉って破壊する。

 

(全く。いくら何でも最先端すぎるよ!)

 

 これ絶対、姉さんが仕組んでるよ!? そうじゃなかったら説明が付かない!!

 今度会ったら絶対に色々と聞き出そうと心に誓いながら僕は肩まである大型のエネルギーライフルを展開しかけて回避した。

 

(ダメだ。いくら制御したって言ってもライフルだとどこに当たるかわかったものじゃない!!)

 

 誘爆とかもあり得るのに、そんなものを使ったらこの家が消し飛んでしまう。……今更かもしれないけどさ。

 そう思った瞬間、敵はライフルを展開して僕に撃って来た。

 癖というものは本当に凄い。身体で覚えているなら特にそうだ。

 僕はいつもの癖で攻撃を回避してしまい、後ろで爆発が起こった。

 

【緊急事態発生! 緊急事態発生! 襲撃の恐れアリ! 戦闘員は直ちに迎撃を開始しろ。繰り返す。戦闘員は―――】

「何で防衛システムは生きてるのさ!?」

 

 ここって自分で言うのもなんだけど廃墟だよね!? 何であの時は防衛システムが動かなかったの!?

 ……とりあえず落ち着こう。落ち着いて深呼吸―――はしている暇がない。今はできるだけ家を破壊しないようにしよう。それに、闇鋼ならではの戦い方がある。

 

「お願い、スレイブ!」

 

 背部から6本のフィンビットが現れて1機にすべて突き刺さり、爆発を起こした―――けど、瞬時に展開されたバリアによって被害は最小限に抑えられている。

 今展開したのは《マルチスレイブ》。闇鋼専用のビット兵器だ。様々な機構が搭載されていて、斬る、突くはもちろん。バリアを張ったり、撃ったりもできる。今のところ、アニメの影響か6本くらいしか展開できない。―――でも、自分が動いた状態だ。もしビットが動きを止めていれば、別の場所に動かせることぐらいできる。

 同じように破壊していく。ハイパーセンサーから警報があり、それに従ってその場から下がると、さっきまでいた場所が爆発した。

 

 ―――正義を……執行しろ……

 

 今の……何……?

 

 突然変な声が頭に聞こえた。正義を執行しろって言われてもな……。そうなると軽く日本には沈んでもらわないといけないんだけ―――ど!

 

「ああもう! 切りがない!」

 

 もう我慢なんて……していられるか!!

 僕は左手の甲からビームを伸ばして向かって来る敵機を真っ二つにした。そして同時に屋根を破壊して上へと飛ぶ。ISを使って文句を言われたくはないけど、だからと言ってここで待つだけの人間お人よしにはできていない。

 

「僕の邪魔を……するなぁああああ!!」

 

 《マルチスレイブ》を飛ばして次々と破壊していく。残った1機の真ん中を撃ち抜いて撃破した。

 

(……一体、何なんだ……)

 

 すると急に雨が降りはじめる。下の方で家が少し燃えているけど、それも次第に小さくなっていった。

 そんな動きを確認した僕は、とりあえず下に降りていく。ゲームと同じと思うつもりはないけど、こういった試練をクリアしたら大抵褒美がもらえるからだ。

 少し楽しみに思いながら穴の開いた屋根から入ると、そこには予想通り宝箱みたいなものが入っていた。

 僕はそれを開けると、中からは……黒い手袋?

 

「………もしかして、これが賞品……?」

 

 かなり装飾が好み……なんだけど、まさかこれが僕に対する賞品? いきなり攻撃してきて? そんな馬鹿な。

 まさしく骨折り損のくたびれ儲けな状態に、僕は大きなため息を吐いて回収すると何かが音を立てて停止した。

 

(………鍵?)

 

 その鍵は見たことがあった。確か、昔何度も入らせてほしいと頼んだのにお父様に入れてもらえなかった蔵の鍵だ。

 僕はあまりの嬉しさに思わず笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟家はある意味、狂っている。それを知ったのは今から6年前のことだ。

 彼女は最初から家を出て、国を潰すという目的もあって家のことを弟に譲る(というよりも押し付ける)つもりだったのだが、ある日父親からの命令で無理やりその試練を受けさせられた。襲って来るのは強敵……そして、謎の声。

 何度も続くその声に精神すら乗っ取られそうになった彼女は、そのシステムを破壊することを決意した。不要だと心から思ったからである。

 

(……とはいえ、皮肉なことね。もう一度作り直して弟の成長に使うことになるなんて……)

 

 驚いたのは、何よりもその弟が容易に世界のシステムを破壊したことだ。そう、それだけである。確かにISを使えばシステムの破壊のみは彼女にだって簡単に行えた……が、肝心なのはその後のことだ。

 一体誰が壊れたシステムを地盤として再生を、創造を行うか。彼女がこの6年の間に何の行動も起こさなかったのはその「地盤」を作る人間を選んでいたからだ。だが、弟が―――智久が半端に壊したことでその予定は大幅に狂った。根源であるISは未だ存在し、修正されつつはあるが未だに女は権力を維持しようと躍起になっている。少なくとも、その動きをしようとする人間はまだいるのだ。だから―――

 

(………これから、世界が本当の意味で巻き込まれて再び破壊は行われる。……その時、あなたがどう動くはとても楽しみだわ)

 

 笑みを浮かべたその女性は静かにその場所を去った。その後ろでかなりの高級車が迫ってくるのを感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付けば、夜になっていた。

 いくら自分の家といっても流石に半壊だし、使える物だけは回収した。意外と設備は揃っているけど、それでもあまり使えそうにないのは確かだ。

 

(……この際、すべて買い取ってもらうか)

 

 使える物はリサイクル。そうでないものは手順を踏んで処分してもらった方がいい。6年分の埃を溜めている機械を動かす気には流石になれなかった。

 収穫はそれと用途不明な手袋。そして蔵の中にあった指南書だった。しかも戦闘用のアレである。

 

(………問題は、どこに泊まるか、だね)

 

 轟家の周囲には建物らしきものは存在しない。あるのは精々、石造りの見張り台ぐらいだ。

 最悪そこで寝ようと思いながら階段を降りていると、何故か明かりが射した。

 僕はすぐさま闇鋼を展開しようとしたけど、すぐに見えた存在が知っている人だったので驚いた。……でも、驚きはそこで終わらなかった。

 

「お待ちしておりました、ご主人様」

 

 1つはその言葉、そして彼女―――北条雫の服装だ。何故か彼女はメイド服を着ていて、暗い背景や一目見てわかる高級車に映えるロングスカートで胸部分の露出が多いタイプで母性を強調させている。……幸いなことに更識先輩や虚さん並に大きくないけど。

 

「……確か、北条さんだったよね。一体何の用?」

「あなたをお迎えに上がったのです、智久様」

「………じゃあ、どうして僕が主人なの……? 北条って姓は多いからまさかとは思ったけど、その立ち振る舞いからして、君は北条カンパニーのお嬢様だったりするの?」

「はい。そして我々北条カンパニーの人間は、かつて轟家の資金を握って支配を試みた馬鹿な一族です」

「…………えっと、つまり…」

「言うなれば、我々はあなた様の下僕ということです」

 

 ………幸那は、もしかしてそれを知ってた? …いや、あの子は僕と違ってその可能性はとても高い。だって記憶はあったんだから。

 だけどここは警戒するべきところだ。北条カンパニーの力は伊達ではない。今や世界的な大企業に成長しているその会社は、赤ちゃん用品はもちろん、戦艦などの殺しの道具すらも開発している企業だ。銃メーカーでも「HOUJOH」の名前を聞くしね。

 

「悪いけど、君と共に行くことはできないよ。君が「北条カンパニー」の人間として来るならね」

「………「「北条院」を破壊した実行犯と指示した人間を捕えた」っと言ってもですか?」

「………それは本当かい?」

「自供したものをすべて保存してあります。もちろん、疑うのならその人たちが入った所かすべてお見ましょう。……ただし、データは会社にありますが」

 

 ………是が非でも、僕を会社に一度でも入れたいみたいだね。そして僕は悔しいことにそこからの打開策を持っていない。

 僕は内心楽しみながら、彼女に付いて行くことにした。

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