IS-Lost Boy-   作:reizen

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今回で同居人が判明


ep.5 マイペースな同居人

 部屋についた僕は、その広さに唖然としていた。パンフレットではどんな風なのかはわかっていたけど、広さが想像以上にあったからだ。

 

「ベッドが高い。アメリカのベッドって日本よりも高いらしいけど、その人たち用かな?」

 

 誰もいないので、独り言を呟いた。

 それにしても随分と豪華だ。こんなことに税金を使うなら、孤児院にも回してくれればいいのに。

 

 ―――コンコン

 

 ドアがノックされる。荷物を手前側のベッド近くに置き、僕はドアの方に移動した。そしてゆっくりドアノブに手をかけると、もう一度ドアをノックされる。

 

 ―――ガチャ

 

 ドアを開くと、僕と同じくらいの身長をした女の子が立っていた。見た目からして、動作がゆっくりとしていると思う。

 

「あ、しぐしぐだー」

 

 誰、その人。

 そう思ったけど、改めて考える。もしかしたらそれは僕のあだ名というものかもしれない。

 それにしても何で女子が? ……明らかに彼女の荷物は多いし、遊びに来ただけならスーツケースはいらない。

 

「えっと、君が同居人なの?」

 

 どこかで見たことがあるような無いような……思い出せない。もしかしたら、会ったのは最近かもしれない。

 

「ねぇ、しぐしぐ」

「何?」

「もしかして、今日会話したの忘れてる~?」

 

 ……………あ。

 もしかして、織斑君がシノノノさんに連れて行かれた後の事を言っているのかな? ……いや、たぶんそうだろう。……つまり、

 

「僕は君を殴りたいから殴っていい?」

「満面な笑みを浮かべて怖いことを言わないでよ~」

「だって、僕の貴重な安眠の邪魔をしてきたし。それに大丈夫。僕は生来まともに他人を殴ったことがないから威力とかはそんなにないと思うよ?」

「それってつまり加減ができないとも取れるよね!?」

「そうとも言う」

 

 部屋の前で震えあがる女の子。そこで僕は流石にやり過ぎたことに気付いたので声をかける。

 

「ともかく、中に入りなよ。流石にそろそろドアを閉めたいし」

「…殴らない?」

「うん。でも、これからは寝かせてね」

 

 頷く女の子を僕は満足そうに見て、中に入れてドアを閉める。

 

「………そういえば、君の名前って?」

「布仏本音だよ。よろしくね、しぐしぐ」

「……慣れないな、その呼び方は」

 

 聞き覚えがあるような無いような、そんな彼女の名前に密かに「ヘンテコ」と思っておく。

 

「でも、まさか女子と同居なんてね。部屋を間違えているとか?」

「じゃあ、部屋の鍵を見せ合いっこしようよ~」

 

 その提案に賛成した僕は布仏さんに鍵を見せると、番号が一致していた。ちなみに部屋の番号は「1055」。

 

「一緒だね」

「一緒だね~」

 

 認めたくない現実だった。……でも正直、あのお馬鹿な織斑君と同居するよりもマシかもしれない。

 とりあえず僕は荷解きをして私物を机やベッドの端に設置していく。どれくらい時間が経ったのかわからないけど、その日は持ってきていた冷凍チャーハンを美味しくいただくことにした。

 

「ねぇねぇ、今度の試合はどうするの~?」

「試合? ああ、あれね。ボイコットするけど?」

「…………」

 

 僕は平然と答えてシャワーの準備をする。今日は色々あって疲れたから先に入らせてもらうことにした。シャワーの時間とか決めていないけど、シャンプー類もタオルも別々だから問題ないだろう。

 それを終えた僕は、早速今日の復習と予習を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 習慣というものは辛い。

 朝早く目を覚ました僕は、いつも通りジャージに着替えて外に出る。眠気は既にないのは、いつも4時前に起きていたからだろう。

 新聞配達はないし、これからは体力が必要になるからどっちにしろ毎朝トレーニングは必要だろう。そう判断した僕は二度寝は止めて外に繰り出したのだ。ちなみに僕の左手には地図があり、今日からしばらくはどこまで走ればいいか確認するつもりだ。

 

「うん? 時雨じゃないか。随分と早いんだな」

「……織斑先生」

 

 まさかこんな時間に会うとは思わなかった。

 

「おはようございます。こんな朝早くからレズプレイの妨害ないし混ざろうとするなんてご苦労ですね」

「おい待て。貴様は私のことを何だと思っている」

「女尊男卑で片っ端から生徒を食べて歩いている重度のレズですよね?」

「私はノーマルだ。それに女尊男卑ならば織斑はここにいないはずだが?」

「自分の価値を高めるため利用したとも考えられますよね。むしろ、自分の弟を売ると体裁が悪いから敢えてIS学園に入学させたとも取れますし」

「………貴様は要らぬ方向に頭が悪いな」

 

 呆れるようにそう言った織斑先生に僕は反論する。

 

「そうでもしないとこの学園では生き残れないことくらい、容易に想像できるからですよ」

「知り過ぎれば、己の身を滅ぼすことになるぞ?」

「例えば、この学園が各国の思惑が渦巻いているのにも関わらずにまともな支援金を送ってこないとかですか?」

 

 適当に言うと、織斑先生の表情は険しくなる。

 

「何をそんなに驚いているんですか。最初の方に書かれていることを少し考えれば誰だってわかることですよ……と言いたいですが、そうでもないかもしれませんね。そうじゃなければ女尊男卑なんて存在しませんし。……まぁ、あなたを中心にどっちみち起こりそうですが」

「……何度も言うが、私は女尊男卑ではない」

「どちらにしろ、男にとってあなたのような存在は目障りかと思いますが?」

 

 そう言って僕は少し早く走る。引き離そうと思ったけど、普通についてこられるから彼女の基礎体力はかなり高いと思う。

 

「………目障り、か」

「ええ。理解者がいるならともかく、今みたいになるとそれも難しいでしょうね。どうです? 自分が収まるべきところに場所に収まろうと思うなら今の世界をぶち壊してみては」

「…何でそう平然と出てくるんだ」

「今の世界に少なからず不満があるからですよ」

 

 僕はさらにスピードを上げようとしたけど、これ以上は僕の体力が限界を迎える。普通に走り続けていると織斑先生が感心しながら僕に言った。

 

「しかし、随分と体力が持つな。そこは誇っていいと思うぞ」

「そうですね。自転車ではなく敢えて走って新聞配達したことがこんなところで目が出るとは思いませんでした」

「……貴様もしていたのか。最近の男子生徒はそういうのが趣味なのか?」

「僕の場合は仕方なくですよ。孤児院暮らしだとハングリー精神は鍛えられますから」

 

 ……言いながらそうでもなかったことを思い出したのは秘密である。

 それから感心してかなり絡んでくる織斑先生をどうにか振り切ろうと考えていると、気が付けば寮に戻っていた。

 部屋に戻ってシャワーを浴びようとすると、

 

「しぐしぐ~私のお菓子食べないで~」

 

 6時過ぎたというのに、同居人はまだ夢の中だった。シャワーを浴びてまだ寝ていたら起こすことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく時間が経ち、僕は寝惚け眼の同居人を連れて食堂へと移動している。周りからは何故か僕らを見て温かい目を向けられているけど、どうしてだろう。

 

(ともかく、早く行かないと遅刻しちゃうよ)

 

 大体、何で僕が顔を洗っている時に早く着替えてくれないんだろう。女の子の用意は無駄に長いし、もう少しで放置していくところだった。

 

「しぐしぐー、早いよぉ」

「君が遅すぎるんだよ。大体、待ってほしいなら待ってほしいで早く起きて準備してよ」

「だってぇ」

「だっても何もないでしょ! 時間厳守は人間の基本!」

 

 怒鳴ってからため息を吐いて食堂の中に入る。そして素早く食券を二人分購入して渡し、来るのを待った。

 

「はい、朝のフレンチセットお待ち」

「ありがとうございます。はい、これ持って」

「うーん」

「今すぐ起きないと夢みたいに君のお菓子を食べるよ」

「それはダメ!」

 

 さっきとは打って変わって布仏さんが本気で拒否をした。どうやらそれが彼女の弱点のようだ。

 

「……ねぇ、どうして私が見ていた夢のことを知ってるの?」

「君が寝惚けて言ってたんだよ」

 

 じゃないと、わかるわけがないだろうに。……まぁ、他人が見ている夢を確認できる装置があれば話が別だけど、僕はそんなものは持っていない。

 周りを見回して空いている席を探す。だけどある一点を除いてはほとんど女生徒が占領しているので僕は仕方なく織斑君がいる席に向かった。

 

「おはよう、織斑君」

「おはよう智久。俺のことは一夏でいいぜ。同じ男子だし、仲良くしないとな」

「そう? そんなことはどうでもいいけど、君は早速ハーレムを作ったみたいだね」

 

 彼の正面に座り、両手を合わせて早速食事を始める。

 

「は、ハーレムって……彼女らはさっき合流しただけだよ」

「まぁ、そんなことはどうでもいいんだけどね」

「ど……どうでもいいって……」

「だって今の僕らには彼女とか作っている暇なんてないでしょ。それに、クラスメイトの名前なんて覚える暇があるなら僕はISのことに力を入れるかな。………ところで、さっきから僕を睨んでいるポニーテールの子は誰?」

「え? 昨日話しただろ?」

 

 本気で驚かれる。僕が昨日話した生徒は織斑君にオルコットさん。そして布仏さんに……ああ。

 

「もしかして「の」が三つある「シノノノ」さん?」

「覚え方が独特だな……」

「覚え方なんて人それぞれだしね。まさかそんなに背が高くて胸が大きい人だとは思わなかったよ」

「む、胸だと。貴様、どこを見ている!?」

 

 指摘された場所はどうやら彼女にとってマズいようだった。

 

「相手の特徴を覚えるには必要なことだよ。でも、僕は君ほど大きい胸を持った女性は見たことないかな。間違っても保母さんにはならない方がいいかもね。最近の子どもって結構積極的だから平気で君の胸を弄りに行くだろうから。でも、好きな男がいるならその人の好みによるけど有利になるんじゃないかな?」

「……き、貴様は恥じらいを知らないのか!?」

「………恥じらったところで僕に何の得があるんだい? それとも君は好きでもない異性のウィークポイントを見て発情してしまう変態さんなのかな?」

 

 コーンスープを飲んでからそう答えると、篠ノ之さんは顔を真っ赤にして立ち上がった。

 

「一夏、私は先に行くぞ!」

「……お、おう……」

 

 そう言って彼女は食器類を返して食堂を出て行く。その姿は背筋が伸びていて綺麗……だと思うけど、怒りで歩き方が乱れていた。

 

「智久、今のは言い過ぎだぞ」

「そうだよ~、おりむーの言う通りだよ~」

「そう? まぁ、どっちにしてもあれなら負け確だから下手に夢を見せるよりも良いんじゃない?」

 

 そう言うと女三人は苦笑いをする。どうやら彼女たちもなんとなく察しているようだ。

 唯一織斑君だけが気付いていないようだけど、教えるほど流石に僕は鬼じゃない。

 すると食堂内に手を叩く音が響いた。

 

「―――いつまで食べている! 食事は迅速に効率よく取れ! 遅刻したらグラウンドを10周させるぞ!」

 

 その声に周囲は急ぎ始める。僕も少し急き気味に食事を取る。まぁ、遅れると言っても時間はまだあるし問題はない。

 

(明日は放置しよう)

 

 隣に座る布仏さんを見ながら僕はそう決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、操縦者の全身を特殊なエネルギーバリアで包んでいます。また、生体機能も補助する役割があり、ISは常に操縦者の肉体を安定した状態へと保ちます。これには心拍数、脈拍数、呼吸量、発汗量、脳内エンドルフィンなどが挙げられ―――」

 

 三時間目、山田先生によって授業が進められているが途中で疑問に思った生徒が質問を飛ばす。

 

「先生、それって大丈夫なんですか? なんか、体の中を弄られているみたいでちょっと怖いんですけども……」

 

 確かに、様々なものをモニターされるなんていい気分ではないのは確かだ。なんか、段々乗りたくなくなってきたんだけど。

 

「そんなに難しく考えることはありませんよ。そうですね、例えばみなさんはブラジャーはしていますね。あれはサポートこそすれ人体に悪影響が出ると言うことはないわけです。もちろん、自分にあったサイズのものを選ばないと型崩れします……が………」

 

 説明途中で織斑君とバッタリ視線があった山田先生は言葉を切る。そして何故か僕の方も見て乾いた笑いを漏らした。

 

「え、えっと、いや、その……男の子はそんなものをしていませんよね。わ、わからないですよね……この例え。あは、あははは……」

「山田先生、質問良いですか?」

「え? 何でしょう……」

 

 まさかこのタイミングで質問されるとは思わなかったらしい山田先生。しかし、僕には正直関係上どうでもいいので遠慮なく飛ばした。

 

「つまりISを装備してれば、理論上は大気圏突入を単機でできるってことですか?」

「え? あ、はい。理論上ではISによるバリアで温度なども突入可能です。しかしこれまでそのようなことをした人は一人もいないので、あくまでも理論上なんですが……」

「そうですか。ちょっとつまらないですね」

「ど、どうしてですか? そもそも今は宇宙での運用は行っていないのでそのような危険なことをする必要はないと思いますが………」

 

 やっぱり、僕としてはそう言う体験は一度と言わず何度もしたいわけだ。ISでできるならしたみたいけど、流石にすぐには難しいかな。………まぁ、もっと希望するならどこかの自由天使みたいに戦場に舞い降りて古巣が壊される寸前に助けてみたいけど。

 

「要はアレです。男のロマンって奴です」

「……は、はぁ……」

 

 でも、公表されている範囲で調べてみたけど僕が欲しいって思うISが無いんだよね。ラファール・リヴァイヴっていうのを少し改造すればそれなりにはらしくなると思うけど。

 

「そ、それともう一つ大事なことは、ISにも意識に似たようなものがあり、お互いの対話……つまり、一緒に過ごした時間でわかりあう…というか、ええっと、操縦時間に比例してIS側も操縦者の特性を理解しようとしてます」

 

 …つまりそれはISに話しかければ対話が可能なのだろうか? そんなことできたら最終的にはメタル化しそうだけど。

 

「それによって相互的に理解し、より性能を引き出せることになるわけです。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」

 

 パートナー……か。

 もしかして、乗り続ければロボットに対して愛着がわくけど似たようなものなんだろうか?

 

「先生、それって彼氏彼女のような感じですかー?」

「そ、それは……その…どうでしょうか。私には経験がないのでわかりませんが……」

 

 絶対に違うでしょ。つまり何? 君たちはISなんかと結婚するつもり? 生産性がないなぁ。

 ため息を吐ていると聞きなれたチャイムが鳴り響く。今は授業中だからようやく休憩に入ったのだ。

 

「あ、えっと、次の授業は空中におけるIS基本制動をやりますからね」

 

 授業も終わったので僕は机に突っ伏す。ふと、前の方を見ると織斑君の方に女の子が雪崩れているから僕の所に来ることはないだろう。やっぱり、朝に篠ノ之さんを弄ったのが原因だろう。アレで僕に「変態」辺りの称号が与えられているはずだ。近付いたらエロいことをされると思っているのだろう。

 

(じゃあ、おやすみ~)

 

 僕は織斑君が犠牲になっているのを見ながら寝ることにした。

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