IS-Lost Boy-   作:reizen

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書く時間が欲しい。でもFGOが面白い。

というか書ける時間が圧倒的に少ない。


ep.52 盛る心情-憎悪と欲望-

 凰鈴音、そしてセシリア・オルコットは本来ならこんなにも早く帰れることはなかった。しかし、とある事情から早期の帰国を専用機を所持した状態で認められたのである。

 その事情とは、福音の討伐を参加し、アメリカ並びにイスラエルが開発した新型軍用ISの戦闘データを持ち帰ったこと、そして新たに確認された機体「闇鋼」の操縦者である時雨智久と接する機会が比較的多いためである。

 今、智久が北条カンパニーからの誘いを断ったことにより闇鋼の所属は紅椿同様無いものとされている。さらに紅椿は福音での生徒殺人未遂問題について、特にアメリカは立場を失い始めていた。中国やイギリス、そしてフランスはあの発表より打撃を受けたことは確かだが、専用機を没収とまではせず、その他の面で厳しい処分を下したこと、並びに織斑一夏との接触を9割方しないことを言い渡された。つまり、国から「諦めろ」と言われているのだ。そこまでして、国は二次移行したISを欲しているのだ。その他にもイギリスの場合、セシリア以上のBT適性を持っている操縦者がいないということもあるが。

 

(………だからって、このまま引き下がるわけにもいかないわよね)

 

 どうにかして闇鋼の戦闘データを得ようと考える鈴音。それで黙らせて一夏にも行動しようと考えていた。となれば、今はどうにかして近付くしかないと思考を巡らし、作戦を立てる。すると、彼女らの前に本音と智久が横切り、受付の方へと足を運んでいた。

 

(……もしかして、これはチャンスなんじゃ……)

 

 そう思った鈴音はセシリアを無理やり巻き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ! 第1回ウォーターワールド水上ペアタッグ障害物レース、開催です!』

 

 司会者が叫ぶと同時にジャンプをすると、放漫な胸が大きく揺れた。そのせいか観客席からは主に男性の歓声が起こったが、1人に視線が行って全員が沈黙する。それもそうだろう。参加者のほとんどが女性だというのに、1人だけ男が混じっているのだから。他の男性も参加しようとしたが、全員が無言の笑みに気圧されてしまった。その中で智久は裏に呼ばれてプレッシャーで襲ったが、全然屈しなかったこともあり仕方なく会場側がサクラを紛らわせることにしたのである。

 ちなみにこの大会の主催者でオーナーでも向島光一郎氏は直々に追い返そうとしたが、今は怯えていた。

 

『皆さん! 参加者に今一度大きな拍手を!』

 

 司会者の声にブーイングが巻き起こる。中には「男はひっこめ!」という声もあるが唯一の男である智久は司会者を見て、少ししてから参加者の方へと視線を移す。その隣で内心本音は泣きそうになっているが、智久はそのことに全然気づいていなかった。

 

『優勝賞品は南の南国・沖縄5泊6日の旅! みなさん、頑張ってください!』

 

 智久はまた司会者に視線を戻した。

 

『では! 再度ルールの説明です! この50×50メートルの巨大プール! その中央の島へと渡り、フラッグを取ったペアが優勝です! なお、コースはご覧の通り円を描くようにして中央の島へと続いています。その途中途中に設置された障害は、基本的にペアでなければ抜けられないようになっています。ペアの協力が必須な以上、2人の相性と優勝が試されるということですね!』

(………どこが)

 

 呆れながらも智久は内心宙吊りになっている島を観察すると、周りにバリアが張られているのが見えた。

 

「しぐしぐ」

「ん? どうしたの?」

「今、「あの程度なら余裕で壊せる」って思ったでしょ」

 

 そう指摘されたこともあって冷や汗を流し始める智久。

 

「な、何言ってるの? そんなわけないじゃん」

「IS使っちゃダメだよ?」

「使わないよ! あそこのデコボコ粗大ゴミコンビならともかく!」

「お待ちなさいな! わたくしを粗大ゴミだなんてふざけるのも大概にしてくださいまし!」

「そうよ! いくら何でも酷いわよ!」

 

 その言葉に智久と本音は無表情になって2人にプレッシャーを与えた。その間にいる参加者は震え始めるものもいたが、気を取り直して構える。

 

『さあ! いよいよレース開始です! 位置について、よーい……』

 

 スターターが競技用ピストルの音を鳴らす。同時に本音は智久の肩に乗って避難した。

 

 ―――ガッ‼

 

 智久に迫った拳を自身で受け止め、そのまま本音側から仕掛けてきた女の足を払って倒すと同時に水着を掴んだ。

 

『おおっと! ここで唯一男の参加者を沈めにかかった! と思ったら大胆にも水着を掴む! エロいぞ! あの男はケダモノか⁉』

「え? 何で僕、こんな色気のない家畜を掴んだだけでケダモノ扱いされてる―――の!?」

 

 そう言いながらも器用に片手で水着を掴んで2人を動けなくし、本音が丸くなったので予め着せていたパーカー部分を持って思いっきり投げた。

 

「司会者さん、訂正してください。この2人に人として価値はありません」

「ちょっと! それってどういうことよ!?」

『いや、まさか初回でそうやって意見されると思いませんでしたよ!?』

 

 そんなやり取りをしている間に本音は着地した。

 

「の、布仏さん!? このやり方はあんまりではなくて! わたくしを足蹴にするなんて許しませんわ!」

 

 セシリアが怒りを露わにするが、本音に襲うよりも前に後ろからの攻撃でプールに叩き込まれた。

 

「ちょっ、バカ! 何やって―――ってぇええええええ!?」

 

 慌ててしゃがむ鈴音。それもそのはず、高速回転した女性が鈴音めがけて飛んできたからである。

 

「チッ。外れたか」

「ちょっと時雨! いくら何でもこれはやり過ぎよ!」

「凰さん。胸がないんだから少しくらい賢くてもいいんじゃない?」

「殺すわ」

 

 殺気を全開にする鈴音。だが司会者に注意されて渋々引き下がる。

 

「覚えてなさい! アンタは絶対にアタシが倒す!」

「倒す? 君が僕を? 下らない冗談はそこまでにしてよ」

「はい?」

「だから―――蛆虫風情が何で対等気取ってるの?」

 

 すると智久はスタート地点にまで片手で鈴音を吹き飛ばし、ギリギリ着地したのを見るとすぐに本音を追う。

 

『な、なんて跳躍でしょうか!? 唯一男の参加者は島を3つも超えてジャンプしました!?』

 

 会場が一気にお通夜状態になる。なにせ智久は50m前後の距離を軽く飛び越えたのだから仕方ないだろう。

 

『今大会は4人もの高校生が参加し、その内の1人ではありますが何か特別な訓練を積んだのでしょうか!?』

(これくらい、できて当然でしょ)

 

 視界に対して呆れる表情を見せる。

 これまで智久の上には1年生だけでも100人以上の上の存在がいた。そのため、「自分はそれほど強くない」という認識が強くなり、その思考はなくなっていない。そのため長距離跳躍を「程度」と思っているが、実のところそんなことができる人間は智久の他に1人を除いてもうこの世に存在していない。

 一気に最後の島に到達した智久。そして素早く本音を回収して1つ前の島の方に戻る。

 

「しぐしぐ、ごめん。行けなかった」

「………いいよ別に。それよりも先にすることができたから」

 

 そう言って智久は本音を阻んでいた2人の女性に笑みを向けた。

 

「くっ、この男……」

「見た目とは違ってただのモヤシじゃないようね」

 

 そう判断する2人の女性は去年のオリンピックで金メダルと銀メダルを獲得している実力者だ。ちなみに木崎がレスリングで金を、岸本が柔道で銀メダルを取っている。

 そのことを知らない智久は本音を抱えながら戦力を図っていると、後ろから追い上げてきた鈴音とセシリアが合流した。

 

「追いつきましたわよ、時雨さん」

「覚悟しなさい」

 

 明らかに普通の女性とは体型が違う2人と、代表候補生の2人に囲まれた智久と本音。瞬間、智久は本音をバスケットボールをシュートするようなフォームで撃った。

 鮮やかなフォーム。綺麗なそのフォームで本音を1人でゴールの島に届けたのだ。

 

『す、凄い! というか1人の女性があそこまで長時間浮くことができるのだろうか!?』

 

 本音が10秒くらい宙にいることもあって司会者がそう叫ぶ。

 

「僕も身長が伸びてやれることが出来たってだけだよ」

「くっ、私が行く!」

 

 木崎が叫び、岸本はすぐに構えて上に飛ぼうとするが、タイミングを見計らって木崎を片手でプールに投げ飛ばした。

 

「き、きーちゃ―――」

 

 木崎に気を取られたからか、岸本も智久に吹き飛ばされる。ちなみにプールではなく、壁にだ。

 

「セシリア! 今すぐアタシを―――」

 

 ―――ドンッ!! ダンッッ!!

 

 観客席を超えて壁に叩きつけられた。

 

「し、時雨さん、いくら何でもやり過ぎじゃ―――」

「やだなぁ、オルコットさん。僕は押しただけだよ。ただ周りが貧弱すぎて吹き飛んだだけさ」

「で、ですが、これはあまりにも異常―――」

 

 まるで背中を撫でられる感覚に襲われるセシリアは、智久の口から紡がれる言葉を聞いていた。

 

「にしても面白いよね。僕が軽く押しただけでこんなに吹き飛ぶなんて。この程度の人間が今まで実権握ってるんだから、本気出したら全滅も軽く終わらせ―――」

 

 ―――ドゴンッ!!

 

 上から降ってきた本音に思いっきり殴られて智久はバランスを崩す。

 

「痛いよ本音さん! いくら何でも鈍器は酷いよ!」

「しぐしぐが馬鹿なことを言い始めたからだもん。私には暴走したしぐしぐを止める義務があるからねぇ」

「だからって思いっきり殴らないで! 結構痛いんだから!」

 

 涙を流しながら叫ぶように訴える智久を軽くあしらうようにした本音はセシリアを連れて少し距離を取って言った。

 

「私もあなたたちが戻ってくることに対して喜んでいるわけじゃない。もし以前のように勝手な行動を繰り返すなら、わかってるよね?」

 

 冷たいものを急に当てられたセシリアは、それがどういうものか理解した瞬間に冷汗を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「疲れた~」

「私も~」

 

 ぐったりとしてウォーターワールドから少し離れた喫茶店で僕と本音さんは机に突っ伏す。

 

「そりゃそうでしょ。あんなことばっかりやったんだから」

「………何で君たちがここにいるの?」

「ごめんしぐしぐー、撒けなかったよー」

「それじゃあ仕方ないね」

 

 僕は本音さんの頭を撫でてあげる。すると本音さんは笑みを見せてくれたので僕は癒されることにした。

 

「っていうか、大体やり過ぎなのよ! っていうか何なのよあの力は!?」

「ふぁー。眠いや」

「聞きなさいよ!」

 

 だって話す義理ないし。というか、

 

「何で平然と話せるのか疑問が尽きないね。それとも君たちの国の諜報能力ってその程度なの?」

「………喧嘩売ってるの?」

「純粋な疑問だよ。ま、国も君たちに気で遣ったのかね。役立たずな上に盾にすら使えないかもしれない愚図を送ってくるなんて脳が腐ってると思っちゃうね」

「………ホント、言いたい放題言ってくれるわね」

「事実じゃん。それとも自分はもっと戦えるとか自分に酔ってるのかな? だとしたら止めてほしいな。目障りだから」

 

 はっきりと言うとどちらも言葉を失い始めてるけど、僕は残念ながら小さい人間なんだよね。

 

「それにしても、一体どうやって戻ってきたの? 僕は本気で数年はIS学園に帰ってこない、もしくは永遠かと思ったらそうでもないし」

「………時雨さんはどうしてわたくしたちが戻ってこないと思っていましたの」

 

 ……え? それ聞く?

 

「君たちの行いを考えたらわかるでしょ。たぶん割とマジで強制的に結婚から妊娠は行ってたと思う。「セシリア・オルコットは思考は屑だったけど、数少ない適性Aだから遺伝子だけは残しておいた方が良い」なんて上からは思われているし、何よりも君たちとシャルロット・デュノアはそうなってほしかったという願望はあったかな。ま、オルコットさんの遺伝子だと下手に実力付けさせたら相手を見下して素人を潰しているだろうから、本当に残す価値があるかどうかと聞かれたら「生かすにしても心を殺した方が良いと思います」と堂々と宣言できるね」

「………アンタ、そんなことしてたの」

「そ、それはその……色々とありまして―――」

「それに比べて本音さんは最初から僕にも普通に接してくれていたし、まさに女としてのレベルも含めて雲泥の差だよね~。片や未だに男1人落とすことができない自称エリートのチョロイ女。片や男に対しても普通に接することができて、いつも他人を癒せる固有スキル持ち。雲泥どころか太陽とゴミじゃなかろうか」

 

 自分でもかなり恥ずかしいほど褒め称えているけど、向こうからは反応がない……っていうか、寝てた。

 

「……じゃあ僕、帰るね。彼女を連れて帰らないといけないし」

 

 そう言って僕は本音さんを抱き上げて席を立つ。後ろの2人も元から疲れている上に僕に叫んだりしているから特に反論はない。……まぁ、凰さんは壁に当たる時にギリギリIS使って耐えていたみたいだからそれなりには余裕あったみたいだけど。

 

 誰もいない道。たまたまその道自体が人通りが少ないのか人っ子一人通らない。その道を歩きながら本音さんの寝顔を堪能していた。

 

(………本当に、可愛いな)

 

 時間がある時に沖縄に行くことを約束したけど、一体いつにしようか………でも、そうなると何日も2人だけなんだよね。……もしそうなったら、本当にどうなるんだろ。

 僕だって男だ。本音さんがどれだけ魅力的か十分理解している。………幸い、虚さんや更識さんも可愛い部類にいたから、そこまで意識することはなかったけど。というかたぶん、これまで背が低かったからこんな感情は抱いていない可能性が高い。伸びたのはいいけど、こればかりは少し嫌だった。「もし独占できたらどんなにいいか」そんな思考がここ数日は巡っているのだ。……どれだけ独占欲強いんだよ。

 

(落ち着け智久。ここは誰もいない………じゃなくて―――)

 

 湧いてくる欲情を抑えつけようとしていると、下に意識が向いていなかったために石に躓いた。

 慌てて本音さんを抱きしめる。すると、ハプニングが起きてしまった。

 

 ―――キスという、ハプニングである

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