楯無さんの本名を知り、婚約者にもなれました。
段々と普通の高校生から逸脱しているけど、それでも少し嬉しいのはある。だってあんなにおっぱいが大きい人が婚約者なんだから……うん。そろそろ僕のやっていることが「おかしい」という事ぐらいは自覚している。
そもそも、電気を自在に操れようが実は暗部の長男だとかでも、結局僕は限りなく普通なんだから、婚約者とかいるのはあくまでも成り行きで、会うたびに妙に気まずくなったりとかがおかしいから。
「……待った?」
最も、今おかしいのは可愛い人とデートすることなんだけどね?
どこで僕の人生の選択を間違えたんだろ……?
今日は久々の簪さんの休みということで、僕らは神社で催されている夏祭りに来ていた。露天がたくさん出ていて、神楽舞がどうこうとか騒いでいるけど、となりでお団子を食べている簪さんの方が可愛いんだけどなぁ。
というかお祭りとかあまり言ったことがないから、何をすれば良いのかわからない。でも、こういう楽しいことは好きだ。
………まぁ、名前呼びなのはさ、なんていうか婚約者になったからってことで。あの時の2人はちょっと怖かった。
「そういえば簪さんはこういうお祭りって来たことあったっけ?」
「……………誰かさんにボイコットされた時はあったけど?」
と、言われたのでたぶんそれは僕なのだろう。
「本当にごめんなさい」
「………冗談。気にしないで。事情はわかってるから」
そう言って簪さんは僕の手を取って露店を回ることにした。
―――射撃場
「あ、ネンテンドーの最新機がある」
「………任せて」
「いや、ここは僕が頑張るよ」
そう言っておじちゃんに500円を渡してエアガンを借りる。
壊れないように力を込めて銃弾を射出。狙った獲物は逃さない。
「あー、ダメだよぉ。こういうのは端を狙うのがセオリーでねぇ」
「いえ。心配なのはどっちかって言うと―――製品が無事かどうかですから」
賞品が落ちる。そして僕は、残っている大型の品を次々と奪っていった。
「………アウト」
「バレていないし、重石が仕込まれていたからセーフ」
フォーリアの好意で量子変換が終わったし。僕らは次の獲物を探すことにした。もちろん転売するためだ。
―――神楽舞
「へぇ、あれって篠ノ之さんがやってるんだ」
「………キレイ」
「うん。僕もそう思うよ………でも、普段の行いが行いだからアウトかな」
そんな勝手なことで盛り上がっていた。途中で僕らに気付いたようだけど、流石はプロ。僕らのことは無視することに徹して舞っていた。………モテるかどうかは胸の大きさじゃないと思うけどね。だって、
「あの野郎、羨ましい」
「俺たちロリコン同盟に対する当てつけとしか思えん」
「殺す……殺してやる!!」
簪さんと一緒にいただけでこれなんだから。確かに簪さん、普通にしていると本当に美少女だからこの人気は頷ける。
僕は世界から嫌われる運命にあるかもしれないけど、美人や美少女が愛でてくれるから結果はオーライだ。
……ところで、織斑君の姿を見た気がするけど、気のせいだったかな?
―――金魚すくい
殺気に揉まれつつ、僕らは金魚すくいを思い出にやっていた。
そう。あくまでも思い出だ。というか金魚を飼うスペースがないし魚類の飼育は基本的に飼育されているからである。
どちらもモナカが壊れたので大人しく撤退。そして、僕はとうとう見てしまった。
―――篠ノ之さんと織斑君が食べさせ合いっこをしているところを
正しくは織斑君が篠ノ之さんにしているところだけど、一体どういうことだろうか? あの織斑君が「はい、アーン」を女子にするなんて、下手すれば血の雨が降るかもしれない。
(………って言うか、今までどこにいたんだろう?)
強くなるためだって言うならそれなら別に良いけれど。って言うか、何でこんなところで遊んでいるの?
まぁいいや。僕も何もせずに遊んでいるし、ここは無視して簪さんと遊ぶことにし―――あ、ヤバい。
向こうから、見覚えのある生徒がこっちに歩いてきている。それが誰だかわかった僕は簪を連れてそこから離れた。
―――ん? 今、とても居心地の良い気配がしたような………もしやこの近くに智久様がいるのでは!?
えっと、北条家は特別な訓練を受けているのかな? 軽く60mぐらい離れているのに気配が感じられているって人として色々とおかしいと思うんだけど……。
■■■
箒は焦っていた。
突然消えた一夏。それが急に目の前に現れて祭りに誘う、という形になった。
一応、箒は千冬には連絡しておいたが「今は祭りを楽しんで来い」という返答が帰ってきたのだ。
言われた通り箒は今は祭りを楽しんでいるが、とはいえ腑に落ちないことがある。それは―――一夏が今までどこにいたのかだ。
「………一夏」
「ん? どうした箒?」
「……お前は、今までどこにいたんだ?」
箒はもちろん、全員が一度は一夏の端末に連絡している。
しかし一夏が出ることはまずなく、全員がその状況に焦っていた。
「ごめん。ちょっとそれは言えないんだ」
「………何?」
「言えないんだ。ある人との約束でさ」
一夏にとって何でもないつもりのその言葉だが、箒にとってはとてもショックだった。
幼馴染にも言えないこと。箒はあり得ないとは思ったが、一夏は夏休みの前に智久に大敗している。それがきっかけで非行に走ってしまったのではないか―――そう思ってしまった。
「一夏、その、何だ。もし何かあるなら相談に―――」
「―――いちか……さん?」
唐突に別の声がした。
せっかくのムードが壊され、良い顔をしない箒。一夏が振り抜くと、そこにはまた顔なじみがいた。
「おー、蘭か」
(………だ、誰だ?)
見たことがない人物。だが直感的にわかった―――ライバルだ、と。
蘭も一夏と会話しながら箒の方をチラチラと見る。特に胸が蘭にしてみれば異様に大きく、少し泣きそうだった。
「へぇ、蘭の浴衣姿って初めて見たな。洋服の印象しかなかったけど、和服も似合うんだな」
「そ、そうですか? あ、ありがとうございます………」
それもそのはず、今日は一夏と会う予定はなかったが着物を着るのは久々だったので中学生らしく気合を入れてみたのだ。
蘭の後ろからいつもとは様子が違うからか、弄り始める。
「あー、会長が照れてるー。めずらしー」
「そっかぁ。他校の男子はもちろん同校の女子になびかない理由はこれかぁ」
「会長、ふぁいとっ!」
蘭は振り向いて起ころうとした時、ある人物がいないことに気付いた。
「あれ、雫は?」
「あぁ、北条さんなら「近くにご主人様の気配がします!」ってどこかに行きましたよ?」
普段はしっかりしている友人が暴走することに珍しく思いながらも「あの子なら大丈夫」と思って気にしないようにした。
■■■
僕は少し戸惑っていた。
いくら何でも振り切れる自信があったけど、逃げた先には―――北条さんがいた。
「ご主人様!」
「その呼び方は本当にやめて!」
「………」
簪さんがしゃべらなくなった。もしかして僕のこの状況に殺意を持ってしまった―――とかだったら物凄く困るんだけど。
「………好物は?」
「ご主人様を舐め―――」
「OK! わかった! わかったからそれ以上周りの視線を集めるのは止めて欲しいな! 女性優遇制度がなくなったからってこんなことを公共の場で言わせたら流石にアウトなんだけど?!」
「気にしないでください、ご主人様。後で家の者を呼んでご主人様専用の部屋に移動しますので」
これあれかなぁ? 織斑君のせいかなぁ? 織斑君の女難の相が僕に移ったとか……。
と、人のせいにていると、妙な気配を感じて僕は歩いている足を止める。
「……2人共」
「……ISならある」
「申し訳ございません。私は―――」
「仕方ないよ。それは」
だけどその妙な気配はどういうことか通り過ぎた。
「……簪さん、北条さんを送ってあげて」
「……わかった」
簪は北条さんの手を取ってそのままどこかに消える。
僕は怪しい気配を追って移動を開始する―――と、先には織斑君と篠ノ之さんがいた。
(ちょっと待って!? 考えてみればどちらもISを持ってないよね!?)
見ると男たちは銃を構えている。確かあればアサルトライフルの類だ。
僕はISを展開して2人の前に躍り出る。
「貴様は―――」
「神聖な場所でドンパチ騒ぎは流石にシャレにならないと思いますけど?」
そう言って僕はビットを展開して黒い戦闘服に身を固めている。
「………撤退だ」
全員が大人しく撤退してくれた。良かった。戦いにならずに済んだ。
何か言われそうだと思ったけど、2人から特に何もない。僕はその場から何も言わずに去っていく。学園に戻ったら何か言われそうだけど、その時は篠ノ之さんに証言してもらおう。
■■■
一夏は箒と別れ、そのまま移動をする。移動先はさっき智久の乱入によって撤退した男たちの所だった。施設に堂々と近付いていき、入り口の前に立っている見張りを容赦なく切り殺した。
「おい、一体何―――」
騒ぎを聞いて中にいた男が外を見たが、その瞬間に首を刎ねる一夏。他の面々はその光景に驚くが流石はプロというべきかすぐに銃を構えて引き金を引く。しかし一夏は持っている刀ですべて弾いて次々に斬って行った。
「………織斑一夏……お前は……一般人じゃないのか?」
「一般人だぜ、俺は。全く、せっかくあの女を襲ってやろうと思ったのによぉ。三下の分際で余計な事をしやがって」
そう言って男の心臓を刀で抉る。
「テメェらどう責任取れんだよ。取れるわけねえよなぁ、クズが」
満足するまで心臓を抉った一夏は最後に首を刎ね、銃を何個か回収して外に出る。周りからは特殊部隊に所属してそうな兵士たちがおり、一夏は躊躇いなく発砲して銃撃戦が始まった。
その折、何発かが一夏に直撃する。しかし一夏は気にした様子もなくその場から移動してヘルメットの隙間に銃口を入れて引き金を引いて中の人間の顔をミンチにした。
「………全く。これだから人殺しは止められないぜ。どいつもこいつも日和っているとしか言えねえな」
次々と現れる兵士たち。一夏は笑みを浮かべて奴らに喧嘩を売った。
日本から少し離れた場所。そこにはいつの間にか面積があまりない施設があり、その中では1つの培養器が用意されていた。中には男が入れられており、手足を拘束されてマスクを着けられている以外は服すらも着ていない―――所謂裸の状態だった。研究員に女がいるのか、一部の部分だけ隠されている。
「ただいま」
そこに全身ボロボロになった一夏が現れ、自分の首からメモリースティックを出してコンソールの左上部分に設けられている差込口に挿す。
「お帰りなさいませ」
「おう。それよりクロエ、仕事が終わったんだから俺の相手をしろよ」
一夏らしからぬ言葉を吐いたそれが伸ばした手を、クロエと呼ばれた少女は払った。
「申し訳ございませんが、束様からはそういうことは仰せつかってないので。それにあなたには不要でしょう?」
「ああ。でも俺はオリジナルがちゃんと自覚を持つようにそう言う設計が施されているんでな。ついでに経験しとけば後から女たちを容易に落とせるんだから別に良いんじゃねえの?」
「それに私自身、あなたと寝たいなどとは思いませんので」
「え? まさかお前、男に夢見るタイプ? うっわ、引くわぁ」
するとクナイのようなものが数本飛んできて、一夏みたいな存在の顔を通りすぎる。
「おい束ぇ、今俺はメモリースティック抜いてんだぞ?」
「知らないよ。それに、ならくーちゃんと寝たとしても意味ないよねぇ?」
殺気を飛ばす束に対してため息を吐く一夏のようなものは、大人しくすることが先決と思ったのか両手を上げて言った。
「おぉ、怖い怖い。あ、そうそう。アンタの妹にはあったぞ」
「……何か余計なことをした?」
「別に? ただそのメモリーも足しとけよ。後からややこしいことになるから」
そう言って一夏のようなものは形を変え、ゼリーのような存在になってどこかに行った。
「………反吐が出る」
いなくなったことを確認した束はそう吐き捨てた。
何故一夏が束と一緒にいるのか―――それは謎の勢力から逃げた束と一夏がバッタリ会ったからだ。
苦しそうな顔をしている一夏を束は自分のラボであるこの場所に連れてきて、成績が振るわないから眠らせて強くしているのである。一夏は親友の弟でもあり妹の思い人という事も含めてこれから強くなってもらわないと束の都合的にも悪い。そう思った彼女はあの面倒な性格をしたスライムを作ったが、一夏の性格を考慮して少し性欲が強くしたのが仇になったようで、定期的に人間のメスを犯さないと満足しないという性格のモンスターが生まれてしまった。なので束はそれ専用の人間を作り、欲求不満を吐き出させるために飼っている。
(……ま、いっくんが強くなっているのは間違いないし、あんまり食費もかからないからいっか)
と、毎度同じことを考えてスライムに関して考えるのは止めた。
次回から第5章です。
たぶん予定調和になるかと思います。