IS-Lost Boy-   作:reizen

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ep.58 一般人の本音

 翌日。その6時限目はHRで学園祭の準備が進められていたが、

 

「いい加減にしろ!!」

 

 僕は思わずそう怒鳴った。その相手である織斑君はまさか怒るとは思わなかったのか、織斑先生に怒られた時並に驚いている。

 

「だ、だってさ―――」

「こっちにだって都合があるんだよ!! なのに君はさっきから自分の都合ばかり優先して僕の邪魔ばかりしてさ!! そんなに教えられるのが嫌だって言うならなぁなぁばかりで終わらせてきた自分自身を怒れよ!!」

 

 もうそろそろ限界だった。

 クラスのほとんどが撤退を開始している。中には怯えて逃げ出せずにいるが、他の生徒が庇うようにして逃げ去った。

 

「でも、昨日のあれは―――」

「―――ちょっと! さっきからうるさいわよ!!」

「ちょうどいいや。悪いけどこれを2組で引き取ってくれない? そうじゃないならIS学園を4人以外を除いて沈めるから」

 

 他に2人ほど普通に生還できるし、遠慮しなくてもいいだろう。IS? 使うけど? たまには自分たちがこれまでしてきた過ちを実感するには良い機会じゃない? 実感すると同時に死ぬけどね。

 

「落ち着いてください、時雨さん。今ここで叫んだって何の意味もありませんわ」

「そう。じゃあ君はまず―――」

 

 オルコットさんが持っていた皿の上にあるものをすべて彼女の口に入れて、近くにあったペットボトルの中に入っている水分をぶち込んだ。予想通り、彼女は白目を剥いて倒れる。ああ、やっぱり。前々から思っていたけど彼女の料理は死への逃避行物だったか。

 

「全く。この程度の屑が僕に指図するなよ。家事スキル0のゴミが」

 

 っと、どうやらこれはフェイクだったらしい。織斑君の姿はどこにもいない。どうやら諦めて帰ったようだ。

 全く。織斑一夏という存在は本当に僕をムカつかせる。今度余計なことを言った瞬間に闇鋼を部分展開して頭を握り潰してしまうかもしれない。まぁいいや。どうせこの際だし、オルコットさんのバストサイズを調べておこう。

 

「ごめん。誰かオルコットさんを支えておいて」

 

 そう指示すると、巻き添えはごめんなのか誰も来ない。仕方がないので僕は彼女を椅子に座らせて勝手にメジャーで測った。ふむふむ。これの数㎝程度大きければいいかな。

 

「ねぇ、セシリアのスリーサイズが勝手に取られているけど……良いの?」

「ほら、よく言うでしょ? 命を大事にって」

 

 何か言っているけど、気にしない。………とりあえず、オルコットさんは厨房に入ったら腕を切り落とすと指令書を書いておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 その頃、一夏はとある女子生徒に廊下に連れ出されていた。ほとんどの生徒が学園祭の準備をしているため2人だけとなっている。まさしく告白にはうってつけ―――なのだが、その女生徒の目的は告白ではない。

 

「鷹月さん、急にどうしたんだよ」

 

 人気がない場所に連れ出された一夏が尋ねると、鷹月静寐は振り返って言った。

 

「織斑君、もう時雨君に余計なことをしないでくれない?」

「え? 何でだ?」

「迷惑なの」

 

 ドストレートに言われた一夏は驚きを隠せない。

 

「今、クラスは学園祭に向けて準備しているの。クラス代表の仕事をせずに自分のことばかりのこと優先しないで。準備する気がないんだったらせめて邪魔だからどこかに行ってて」

「邪魔って。大して変な事してないだろ」

「してるわよ。あなたが時雨君に声をかけること自体がクラスにとってマイナスなの」

 

 実際、その通りだった。

 その日の朝、智久は高級品と見間違うほどのメイド服を持って来た。智久が言うには「萌えを省いて正統派を出してみた」とのことだが、セシリアが太鼓判を押すほどの出来具合だったのだ。

 それによって智久はクラス代表を押し退けて学園祭でのクラスの引っ張り役としての地位を獲得したと同時に一夏を不要な存在とした。何よりも良いポイントは、素材が余っているから使用して良いということであり、素材調達による費用が抑えられるのは彼女らにとって好条件でもある。その分の費用はクラスに返り、後々役に立つからだ。

 もっとも、静寐個人は智久が努力していることは前々から知っていたが。

 

「本当はこんなこと言いたくないけど、織斑君。今のあなたは「織斑千冬の弟」としか見られないって気付いている?」

「………それってどういうことだよ」

「そのままの意味。織斑先生が持っている力によって専用機を手に入れただけに過ぎないって思われているの」

 

 学園内ではそう考えられていないのは千冬の信者が多いが、学園外では圧倒的に違う。

 IS関係のことはニュースにされやすく、しかも夏休み前の戦闘で智久と一夏の実力の差に加えてあのニュースで織斑一夏に関する情報はかなりばら撒かれた。決して誰とは言わないが委員会から智久に色々と制限が課されたこと、学年別トーナメントでは課された状態や妨害があったこともとっくに漏れている。そんな状況の中、また一夏が専用機を手に入れたとなれば一般市民は「何らかの勢力が一夏を上げている」と考え始めたのだ。

 

「…………それは……」

「あなたと時雨君とじゃ、そもそもの考え方が違う。あんなことがあって、本来なら時雨君はもっと荒れて凰さんやオルコットさん、それにデュノアさんや篠ノ之さんはもっとひどい目に遭わされたっておかしくないのよ。出会い頭に殴ったりとかね」

「そんな酷いことして良いわけないだろ!?」

「織斑先生を殺されかけてキレたあなたがよく言えるわね。それに何も知らないって思っているなら違うわよ。銀の福音が暴走して、4人の専用機持ちがあなたの敵討ちに出たせいで私たちが死にかけたことはもう知っている。1組は織斑先生のクラスだからそう言う事を話題にしたがらない人が多いけどね。少なくとも私はあなたたちの事をよく思ってないわ」

 

 そう言って静寐は一夏を放置したままクラスに戻った。

 

 

 鷹月静寐は、1組では珍しく良識を持った人間だ。大半が織斑千冬の熱狂的なファンである中、彼女もまたそうではあるが女尊男卑の思考は持っていない。とはいえ彼女も最初は一夏の方が気になった。

 そもそもからして、智久と一夏とでは考え方が違う。一夏の行動は無知ゆえの行動だったが、静寐を含め「カッコいい」と感じるものだった。

 だが、6月のある日、彼女の世界はひっくり返った。

 一夏とシャルロットの優勝。その試合の結果はどう見ても智久が勝っているように見えたのもそうだが、ラウラの機体が暴走したことによる結果であり、どうにも腑に落ちなかった。

 さらに7月の男子2人の試合はどう見ても異常だった。一夏が零落白夜を使い続けているのにエネルギーが切れない。白式の弱点は活躍していたこともあってもはや周知の事実であり、大半が疑問を持っていた。

 そしてとうとう、あの事が発表された。

 それまで智久には様々な噂があったが、すべてを否定するニュースであり、自分たちにISが攻撃した本当の原因は専用機持ちたちの暴走で、シャルロット・デュノアが会社のスパイで一夏がそれを庇っていたことも。すべてだ。

 それ故に静寐は、自分がISに関わることに疑問を持った。同時に自分が女であることに嫌悪し始めた。

 

「………バカみたい」

 

 自分が、そして女だから男に優遇されて当然だという考えが。

 だから彼女は―――IS学園を辞めることを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「更識さん、もし俺と智久が本気で戦ったらどうなると思いますか?」

 

 放課後、一夏は楯無にそう尋ねた。楯無は驚いたが、すぐに冷静になって分析する。

 

「…そうね。彼にも得手不得手があるから……制限勝負だとあなたが勝てる勝負はあるわよ」

「いや、ISの話なんですが……」

「白式の状態によるけど、5つぐらい智久君の機体に何かしないと無理ね」

 

 楯無は一度、智久と戦ったことがある。

 とはいえ闇鋼のいくつかの機能を封じた状態なのだが、それでもミステリアス・レイディのダメージレベルがBに到達する程だった。それにおそらく、智久が本気を出していない状態でだ。

 勝負としては楯無の勝利だったが、智久は今も家事スキルと同時に戦闘スキルを上げている。7月時点ですでに大差がついている以上、一夏が智久に勝てる可能性はほぼ0だろう。

 

(………本気出したら福音を簡単に潰せたって言ってたし)

 

 おそらく生半可の機体で単機で挑んだら、本気を出した智久相手ではまず勝てない。それは国家代表も含むんじゃないだろうかと楯無は予想した。

 

「でも、急にどうしたの? もしかして智久君のことを意識したとか?」

「それもありますけど………」

 

 一瞬、嵐の予感がした楯無だが、智久の性格上絶対ないと確信する。

 

「智久に言われたんですよね。「今までなぁなぁで終わらせてきた」って」

「全く間違っていないわね。結局デュノアさんの件だって智久君が解決したようなものだし」

 

 一夏の身体を見えない刃が貫く。だが実際そうだ。智久が展開を考え、周りが動いたようなもの。だがシャルロットはそれを仇で返すようにした。

 

「さて、休憩は終わりよ。これからはビシバシ行くわ」

「……あ、そうだ。更識先輩、ちょっと聞きたいんですが」

「何かしら?」

 

 ずっと疑問になったことを一夏が躊躇いなく聞くと、楯無は普通に返した。

 

「何か俺、セシリアや鈴に避けられている気がするんですけど」

「そりゃそうよ。国から接触を禁じられているもの。各国はあなたを危険人物として指定して、智久君を引き入れるように動いているわ」

 

 特にイギリスと中国、フランスが主にそう動いている。ドイツはすでに学園を通じて販売しているので下手に手を出した方がデメリットがあると考えているようであまり動いていないが。

 

「積極的なところはハニトラも使ってくるだろうしね。特にアメリカは1年に専用機持ちはいないからそうことは平然と使うでしょうね」

「じゃ、じゃあ、智久を守った方が良いんじゃないですか?!」

「大丈夫。それに関しては問題ないから―――それよりも」

 

 一夏の後ろが急に爆発し、怯えながら一夏は振り向いた。

 

「あなたはまず、PICのマニュアル制御を完全に習得する必要があるでしょう? 他人を心配する余裕、あるの?」

 

 ―――清き熱情(クリア・パッション)

 

 楯無は、一夏を決して甘やかすつもりは一切なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー……うー……」

 

 食堂で食事をしていると、織斑君がうめき声を出してくる。正直うるさいことこの上ない。

 

「ちょっと織斑君、気分が下がるからしんどいならさっさと部屋に帰ってよ。食事がまずくなる」

「……そうは言っても……智久は更識先輩の指導を受けていないからそんなこと言えるんだよ……」

「受ける必要がないからね。専用機持ちの中じゃ強い方だし」

 

 もっと言えば専用機単体で言えば間違いなく上だし。楯無さんには手加減しちゃったけど、スペック上では間違いなく闇鋼が上だ。

 

「でもよ~……」

「ねぇおりむー。あんまりうるさいと―――スパナ投げるよ?」

「落ち着いて本音さん。スパナはボールじゃないし当たったスパナが可哀想だよ」

「そこは俺の心配しろよ!」

「……え?」

「……してもらえる立場だと思ってるの?」

 

 まず現実を、そして自分が今どれだけ酷いことを言われているか知った方が良いと思う。

 

「………2人って、本当に仲がいいよな」

「まぁ、これが普通だよね」

「おりむーは~おバカさんだから~手遅れだったの~」

 

 ミルクせんべいを頬張ってそう言う本音さん。周りにはクリームが付いているので濡れタオルで拭いてあげる。その時の顔がともかく可愛い。ちなみに虚さんも同じ表情するのでギャップを含めて凄く可愛かったりする。

 

「………馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ」

「いや、本音さんの言う通りだろ」

「そこは否定しろよ」

 

 と言いながら、僕は人数を配置している。

 今回の喫茶店は織斑君を売り物にして、後は社交性が高い生徒で固めるつもりだ。デュノアさんには厨房に回ってもらって、ラウラさんには接客かな。今は鷹月さんに面倒を見てもらっているし、大丈夫だろう。場合によっては宣伝にも行ってもらおう。

 

(問題は……篠ノ之さんだね)

 

 アレがまともに機能するかどうか。バニースーツをせっかく準備したのに拒否された。

 

「全く。篠ノ之さんのメイド服なんて最初から準備していないって言うのに」

「ねぇねぇ、何でしののんのメイド服がないの?」

「篠ノ之さんの魅力って言ったら胸でしょ? むしろそれ以外は男に対してデメリットしかないから、敢えて強調するためにバニースーツしたんだ」

 

 こうなったら篠ノ之さん用のメイド服を少し改造したタイプの物を作ろう。それで宣伝してもらえば問題ない。

 そもそも、どうして僕がこうして学園祭に力を入れているか。それはもちろん―――他学年や他のクラスを下にするためだ。そもそも何故か僕は舐められている。ここらで一度黙らせる必要がある。特に僕は全世界という点で唯一ハーレムを作れる権利を持っているから、警戒している女は多いのだ。

 

(一度、格の差って奴を見せつけてやる!)

 

 もちろん、萌えを知っているか否かの差だ。訪れるのは大体が男性客だから―――経費の回収は他クラスを圧倒するだろう。

 その状況を喜びつつ、食事を終えたら僕は頼まれていた仕事をしながらトレーニングするために外に出た。そろそろ、素手で大木を切断できるようにならないと。




鷹月さんがIS学園を辞めるそうです。

……でもある意味それってステータスですよね。男を見下す人間じゃないというステータス、ですが。
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