IS-Lost Boy-   作:reizen

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第6章 特訓! 高速! ヘルアクション!!
ep.63 改革者、夜塚透


 誰もがその光景を理解することができなかった。

 入学してきたばかりの新入生が、その部のエースである織斑千冬を倒したのである。それも―――一瞬の事だった。

 千冬の様子見の上段からの攻撃諸共小手を打ち、竹刀が天井にぶつかって落下してくる。

 

「…………1年で全国優勝で、今年度で未踏の3連覇と名高いって聞いたけど………」

 

 蓋を開けてみればその1年生の圧勝であり、彼女は装備を外して丸々近くにいた上級生に渡した。

 

「待って! 剣道部に入ってくれない!?」

「ごめんなさい。正直、私は雑魚に興味ないの。やるならあなたたちだけでやって頂戴」

 

 先輩が相手であるにも関わらず、構わず外に出ようとしたが足を止める。

 

「ただ、あなたが少しでも成長したなら、その時はまた教えてあげるわ。あなたが私に勝つことはないってことをね」

 

 そう宣言し、彼女は未だ呆然とする千冬を放置して道場を出ていく。

 

 そして、その6年後。2人は再会することになる。

 

「……何故、お前がここにいる……?」

 

 千冬はその女性に声をかける。その女性はあの時、千冬を一撃で倒した相手だった。

 

「知りませんでした? 私も日本の代表候補生だったんですよ。………まぁ、もっとも手を抜いておいたしバレないように変装していましたが」

 

 第一世代の最大の特徴である「ISの完成」―――その状況からに装甲を纏い、球体のような状態になる。さらに、周囲には5つの雷球が漂い、それらが千冬に向かって飛んだ。

 

「くっ!? 退いてくれ! その先に一夏が―――」

「知っていますよ。何故ならあなたの弟をさらったのは我々亡国機業なので」

 

 濃密な弾幕。それらが千冬を襲うが千冬は零落白夜で消失させ、回避していく。

 

(……もう……エネルギーが……)

 

 自身の負けが徐々に近づいてくるのを感じる千冬だったが、その時彼女は言った。

 

「もう良いですよ、織斑千冬」

「何?」

 

 装甲は未だに装着していたままだったが、彼女は道を譲るように移動した。

 

「……何を企んでいる?」

「お気になさらず。ただ上の命令ですよ。…………それとも、1から10まで説明しないといけないですか? 常識にすら染まれない自称天才(笑)と慣れ合いすぎて頭が劣化しましたか?」

「…………まぁいい」

 

 今は一夏が大切―――そう断じた千冬はすぐにその場を離脱する。

 

 ―――それで、どうでした? 愚かな思い上がりで弟を裏の世界に引き入れた感想は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、千冬は気配を感じて飛び上がる。

 近くにいた何者かはすぐに受け流すと、その相手を視認した千冬は少し離れて謝った。

 

「………すまん」

「いや、気にするな。こちらこそ急に近付いて悪かったな。お詫びと言っては何だが、男目線と女目線のどっちがいい?」

 

 そう言ってその()は2つのゲームソフトを提示した。

 

「………何故それなんだ?」

「お前たち非オタはゲームを軽視している。ただでさえ女性優遇制度から復帰したばかりだと言うのに、どっちも奥手だからな。………少しは北条家の跡取りを見習ってもらいたいな」

「………何かしたのか?」

「IS学園の教員をデートに誘っていたな。そして相手は2つ返事でOKしていた。まぁ、その跡取りはお前の弟並みに容姿端麗、さらに将来有望と来た。狙うのは当然だろうな」

 

 そう説明する男はため息を吐いた。

 

「そう言うお前はどうなのだ? 一応、ここにいる教師も生徒もレベルは高いはずだぞ?」

「………ちなみに俺に与えられた部屋には既に女が2人いる」

「何?」

「そう言うのは不必要だ。ある意味従順だしな………性格に問題があるという点を除けば」

 

 そう言いながらその男―――夜塚透は窓の外に視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜塚透の家庭は日本の大臣一族の中でもかなり優遇された立場である。日本が女性優遇制度を施行し、女権団を味方に付けてのし上がった朝間家の専属暗部であり、また能力によっては養子になることもある。

 だが透はそれを良しとせず、常にその話を蹴ってきた。曰く、「自分は周りを引っ張るような器ではない」とのことであり、朝間家もまたそれを受け入れていた。だが、透は史上最低最悪の私立高として名の知れた「黒葉高校」に入学したことで周りの対応は大きく変わった。

 

 ―――だが、透はそれすらもわかっていた

 

 すべてを受け入れ、罵倒を浴びる。妹からも浴びせられ、親類からは存在そのものが無いものとして扱われる日々―――だがそれはある出来事によって完全に変わったのである。

 

「…………なぁんだ。やっぱり女って大したことないな」

 

 校舎の一部が破壊され、校長室では2人の男女が……と言うよりも制服の一部が引き裂かれ、高そうな家具が破壊された状況。破壊跡に女生徒が震えながら男子生徒を見上げていた。

 女生徒は黒葉高校のボスであり、女性優遇制度を盾に男から上納金を巻き上げていた。1か月1万円と高い額だが、ただ1人透だけは払っていなかったのである。

 最初は下っ端に行かせていたが、中々払わない透に痺れを切らしたのかとうとうボスである彼女が現れ、今この状況である。

 

「ISを装着できるから女が強いなんて、随分とふざけていると思わない? 実際、それって―――人に核爆弾を撃っているようなものだってわかってる? その覚悟、お前は持ってんの?」

 

 だが透はその答えを聞く前に暴れ、ギリギリ生きれる程度の怪我をさせた。

 流石にその件をひた隠しにすることは黒葉高校にもできず、透は退学させられる。当然、朝間家は怒り透を追放することを選んだ。

 

「用件はそれだけだ。二度とその馬鹿面を見せるな」

「へいへい。精々、何の価値もないメスのご機嫌取りでもやってろよ。そんなクソな仕事に一体何の価値があるかわからないがな」

 

 そう言い残し、透は朝間家並びに夜塚家から姿を消した―――のだが、残念ながら彼はまたすぐにぶつかることになる。何故なら―――朝間家は裏でクローンや遺伝子強化素体などの私兵を量産していたからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、ざっくり言うとこんなところかねぇ」

「いやいやいやいやいや! 何だその壮大な物語は!? そもそもISもなしにそんなことなど不可能だろ?!」

「それができるんだよなぁ。確かここの生徒会長はアクア・クリスタルを持っていただろ? 俺はそういうタイプの兵器を複数持っていて、状況に合わせて瞬時に使い分けて違法施設を襲ってたんだよ」

「……何でまた―――」

「実は裏で取引されている奴の方が素材が良い」

「………………」

 

 千冬は頭を抱えるが、透は千冬のその姿を見て笑っていた。

 

「それで、どうして北条カンパニーにいた?」

「まぁ単純に、取引だな。北条カンパニーに一部技術提供をする見返りとして子供たちの世話をするって言う。あそこの社長はみなしごには優しくて随分と優遇してくれた。慈善活動をしているというアピールにも使えるしな」

 

 所謂大人の都合だと透は付け足して話を進める。

 

「それに、向こうも向こうで急遽別の孤児院が必要とかって話だったらしいからな。本来なら大量に受け入れる予定だったが………どこかの組織が余計なことをしてくれたからな」

 

 その余計なことをした組織に心当たりがあった千冬は頬を引き攣らせた。

 

「そういえば、女権団の待遇とかは今はどうなっている?」

「やっぱり同性だから心配か?」

「………まぁ、それはないとは言えないがな……」

 

 と言うよりも、千冬はいずれ自分の生徒が同じ道を歩むのではないかと心配していた。智久の行動に対して今も何人かの生徒は不満を持っているからである。

 

「そうだな。やっぱりまだ男たちは女に対して不信を抱いているし、過激派の中には「女性の徹底管理」なんてものを掲げているからな。下手すれば男女間の戦争にまで行きそうだが………それは問題ないか」

「ほう。随分な自信だな」

「「黒葉の魔王」の名前は伊達ではないってね」

「………うん? 確かお前は退学したのではないのか?」

「ああ。それなんだけどな―――北条カンパニーが理事会を牛耳っていたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜塚透です。この学校のボスを倒したら次のボスになれると聞いたので早速狩ってきました」

 

 クラスメイト全員が唖然とする。透が持ってきていた女生徒は以前の校舎破壊の件以降に実力で牛耳っていた女生徒だからだ。

 透はどこからかマイクを取り出し、スイッチを入れる。それによって校舎内すべてのスピーカーに繋がった。

 

「はっきり申し上げますと、この学校程度の勉強なんてテストを受けていれば問題ないものです。なので私は―――この学校を自分好みに染め上げるためにここに来ました。これからはここを俺が牛耳る。ボスの言う事は絶対だ」

 

 その後、透は黒葉高校で大改革を起こし、偏差値を38から55オーバーへと上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、その過程は色々と大変だったけどな。近隣の不良校が攻めてくるわ、話をしても聞いてくれないわで結局物理的に封じる羽目になってさ」

「……物理的に?」

「言うなれば拳……がまだ可愛い方かな?」

 

 そのほかにも様々な鎮圧方法を使って透は生徒会長としての任を全うし、卒業したわけだが、

 

「結局は最後まで攻めてくるから、最後の最後で完全にキレてさぁ。全員を校庭に移動させてから入院させた」

 

 「今も大半が動けないんじゃないかなぁ」と呟く透に本当に1年専用機持ちたちを任せて良いのかと疑問に思った千冬。そう。透はIS委員会から現在所属している専用機持ちを強くするように命令されているのだ。

 本来なら智久のみのはずだったが、それだと北条グループが圧倒的に有利だと反論があったからで仕方なくそれを受け入れたのである。

 

「しかし良かったのか? お前は時雨以外には興味がないと聞いていたが?」

「構わねえよ。これから強くなろうが戦争が起ころうが勝つのは常に俺だからな」

 

 そう宣言した透。彼は―――ある意味最悪な特訓を用意していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕ら専用機持ちは今、数人の教師の付き添いと共にバスで学校外に出ていた。

 専用機持ちって言っても重傷を負ったオルコットさんは不参加だけど、順調に回復しているようだ。………別にいなくても良いんだけどね。援護なら僕もいるし、ボーデヴィッヒさんもいるしね。

 なお、その代わり本音さんとデュノアさんが参加している。一応彼女も改造機は所持しているし、デュノアさんは学園の部隊に入隊したという話だし、参加する権利はあるだろう。

 

「だが、一体どこに向かっているんだ? さっきから少し物騒な輩がいるようだが」

「ああ。まぁ仕方ないだろ」

 

 しばらくしてバスは校門の前に停まった。なんともボロボロな校門だ。

 

「こ……ここは……」

「言っておくが、これでもまだマシになった方だぞ」

 

 ……黒葉……高校……。そうか。ここ、黒葉高校なんだ。

 黒葉高校とは、超高校級の不良たちが好んで在籍するところだ。

 僕らは警戒しながら降りて、校門をくぐる。すると案の定と言うか武装をしている。おそらく頭に当たればマズいタイプの物がたくさんある。

 

「ちょっ、アンタたち! やる気!」

「良いだろう! 相手になってやる!」

「落ち着け。まぁ後で戦うことになるけど」

 

 ISを展開しようとする篠ノ之さんと凰さん。身を守るという観点では正しいけど、ISを使わずに鎮圧する方法を考えるべきじゃないかな?

 

「それで、これは一体どういう特訓ですか?」

「単純な話、お前たちはここにいる奴らと戦ってもらう。だが、あくまで1人でだ。もし修行中に居合わせたら、同じ学校だろうが遠慮なく潰せ」

 

 そう指示され、僕ら全員戦慄した。

 

「な、何でだよ!?」

 

 流石は織斑君だ。いの一番に反応した。

 

「言っただろ。これは修行だ。それに忠誠を誓いそうにない女を生かしておいて得はないからな。抱く予定もない奴ならなおさらだ」

「…………そ……それは………」

 

 ……織斑君ってそういうことは全く考えてないんだ。それなら確かに誰にもなびかないよ。

 というかそれに反応して3人程殺気だっているし。

 

「安心しろ。もちろん武器は用意してある」

「そういう問題じゃないだろ!? って言うか、中に女だって混じってるし!!」

「あー、別に問題ない。そいつらは俺の指導によって改心した、本当に強い女たちだからだ。お前レベルじゃ歯が立たない」

 

 そう言われて織斑君は本気になった。

 

「女だけじゃない。男もだ。校門や校舎は見た目はどう見ても不良校のそれだが、黒葉高校は大きく変わった。生徒1人1人の戦闘力はIS学園の生徒相手に病院送りにできるレベルだろう。教育カリキュラムも独自の方針で行い、主に格闘技を中心に1年でも地区優勝を納めることだってできるレベルになっている。他校に遠征し、戦うこともあるしな。お前らみたいにおままごとみたいな戦いはしない。なんなら、今からIS学園に遠征して本気で暴れるように指示しようか?」

 

 それを聞いた黒葉高校の生徒はニヤニヤと笑みを浮かべる。

 

「そして敗者にはペナルティがある」

「なんだそれは?」

「女ならば、倒れた場合は妊娠させられるまでセックスだな」

 

 僕はすぐさま攻撃を仕掛けようとするが、視界外から攻められて回避に徹する。

 全身を電気で刺激しようとしたその時、僕はバランスを崩した。立ち上がろうとすると、僕の手首や足首に鉄のバンドが付けられていることに気付いた。

 

「それはお前の電気操作全般を封じるアクセサリだ。首にも付いている」

「………さっきのか」

「ご名答。とはいえ、この修業はお前は免除だ」

「……どういうことですか?」

「周りが弱すぎるからこれまでお前1人に負担が行き過ぎた。それに急成長による筋肉が付いて行っていない。故にお前の修行は休養だ」

 

 その言葉を最後に僕は何かを刺される感覚を味わい、意識を失った。




最近、漫画を大人買いしようかと考えている。
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