僕は笑っていた。
次第に目が慣れた。そんなものじゃない。僕はただ嬉しいんだ―――姉を倒すための力を付けれることが。
「笑っているけど、意外だね。今の君にそんな余裕があるなんて」
「………楽しいんだ。IS学園にはこうして戦える相手がいないから」
轡木夫婦は忙しいから簡単に会えないしね。だから―――
「でもいいの? 確か更識楯無に布仏虚だっけ? さっきIS学園から連絡があったみたいだけど、ピンチみたいだよ」
「………」
大丈夫だ。あの2人なら早々負けることは―――
「本当に大丈夫かな。相手は何でも零落白夜と同等の兵器を持っているって話だけど―――」
それを聞いた僕はすぐにIS学園に向かおうとするけど、相手が僕の前を阻む。
「悪いけど、今の君を行かせるわけにはいかないかな。死ぬよ」
「…………」
―――脳裏に、嫌なことが過ぎった
すると僕の思考はクリアになり、今でも僕よりも早い相手が次にどう動くがわかった気がした。
■■■
織斑一夏は唖然としていた。
見せられているのは、自分の姉がIS委員会の人間に掴みかかっているところだった。
―――優勝は、智久のものだ
そう、言われた気がした。一夏は無意識の内に拳を作る。
そして場面が変わる。場所は7月に行事の1つである臨海学校の際に利用した花月荘の近く。そこでラファール・リヴァイヴと福音が戦闘を繰り広げていた。
(……なんだよ、これ……)
ラファール・リヴァイヴ―――それが行う戦闘はまさしく異常だった。見たことない装備が現れ、零落白夜を使い、挙句には千冬の援護を完璧に行っていた。
―――これは、7月の記録
それが一夏に現実として知らせてくるが、内心信じられない気持ちでいっぱいだ。
「………嘘……だろ……」
「―――嘘じゃないわ」
突然した声に一夏は振り返る。
「……君は?」
「誰でも良いでしょ。そしてあなたの現状も」
映像にひびが入り、崩れていく。突然のことに驚く一夏だが、姿を見せた少女は言葉を続けた。
「それで、正しい世界を見せられてどう思った?」
「………正しい?」
「そう。あなたは専用機を持っていても大したことはしなかったら弱くて、訓練機でも智久は色々としていたから強いの。それはあなたのお姉さんも知っているわ」
語り、歩く少女。そして姿は消え、一夏の左肩に手を置いた。
「え? 浮かんで―――」
「だって私、ISだもの。言うなれば深層意識というものね。あなたも会ったことあるでしょ」
「まぁ、どうだっていいわ」と言葉を続ける少女はさらに言った。
「織斑一夏、知っていて? あなたには才能があるわ。成長が早いという才能が。でもその代わり、上限値が低いのよ」
「それって……」
「でも大丈夫。常人クラスでは遥かに高い方だから。でも、あなたもあなたのお姉さんもこれから起こる事象についていけない。―――あなたたち姉弟は確かに凄いわ。でもその凄さは、智久の前ではただの燃えカスそのものなの。だからあなたたちはどれだけどれだけ努力しても智久に勝てない」
―――手遅れなの、すべて
そう言って少女は一夏の腹部に剣を突き刺した。
「………え?」
「あなたは現状を理解できなかった。故にあなたはIS学園をただのちょっと特殊程度の学校だと思ってしまった。可哀そうに。どれだけ努力をし、結果を示しても「流石は織斑千冬の弟だ」としか賞賛されず、結果を残せなかったら「織斑千冬の弟といっても所詮は男か」と否定されるだけの存在。でも、それを取ればその現状は変えられる」
一夏は剣を取ろうとしたが、言われて手を止めた。
「………………」
「何を迷っているの、織斑一夏」
「………そんなこと、できない。それをしたら、俺が千冬姉を裏切ることになる」
優しい口調でそう告げる一夏。だから少女は―――
「―――何か問題でも?」
「え?」
「仮にあなたが織斑千冬を裏切ったところで何か問題でもあるのかしら? 申し訳ない? 今まで養ってもらったから? 馬鹿ね。織斑千冬はあなたを守ったんじゃない。あなたという身代わりを立てることによって敢えて人格者を気取った悪魔よ」
言われたことが理解できない一夏は疑問符を浮かべた。
「それに知っていた? あなたに近づいてくる女はすべて、姉に近づくことが目的なのよ」
「………どういう―――」
「そのままの意味よ。あなたのことだってどうでもいいの。要は織斑千冬に近づけて、国とのパイプを持てれば良いのだから。そう、手遅れなの」
―――すべてが、ね
一夏に刺さっていた剣はいつの間にかなく、彼は握っていた。そして今いる世界から強制的に消えた一夏は、そのまま地下室から出ていく。
そう。今まで少女はほとんどが嘘だ。確かに中には一夏経由で千冬に―――引いては束に近づこうとする存在は確かに存在する。だがそれはとても難しく、束の人格を知ったほとんどが鳴りを潜ませた。
少女の目的は未だに白であり続けようとする一夏を「黒」に変えること。それ故にあえて白式からアクセスして一夏自身を暴走させた。
「知りなさい、織斑一夏。そして認めなさい。あなたは本当はISという力に魅入られていて、気付かない振りをしていた愚者だってこと」
今回の暴走で一夏がどうなろうか知ったことではない。それに―――どうせ一夏が消えたら困る存在が奮闘してくれるだろうし、もし対応が追い付かないできなくて消えても自分の操縦者は一切困らない。
「果たして彼はわかるのかしら? 自分が傀儡でしかないってことに」
少女―――フォーリアは邪悪な笑みを浮かべた。
地下室から爆発が起こる。透はレアを守るためにバリアを張り、様子を伺う。
巻き上がる煙から現れた人影を見つけたが、その人影が一夏だと認識したころにはすでに姿を消していた。
「………レア、上に行くぞ。何かが来る」
透らは上に行くと、黒いオーラを纏った何かが現れる。
「………いち……か……?」
近くにいた箒が驚いてその姿を見る。だが黒いオーラを纏った何かは箒に目をくれず透に一直線に向かって移動し、蹴り飛ばした。
「よくもまぁ、勝手なことをしてくれたな」
透は吹き飛び、校舎に穴が開いた。鈴音も、シャルロットもその惨状に唖然とする。休みだが校舎内にいた人間が外に出てきた。全員が血相を抱えており、我先と逃げ出す。
(………人間共が)
そう吐き捨てる透を蹴った人物は箒に近付く。
「大丈夫か、箒」
「い、一夏なのか?」
「ああ、そうだ。俺は―――」
―――織斑一夏だ
そう名乗ろうとした瞬間、今度はそいつの股間が蹴られた。
「知っているか? イケメン系リア充には負うべき責任を」
「…………」
蹴られたことで何とも言えない顔をするその存在に透は容赦なく言う。
「って言うか、よくもまぁ俺を蹴り飛ばしたな。雑種風情が」
「……っめぇ……」
「そう睨むなよ。まぁ、俺はどこぞの金ぴかとは違ってまだマシなんでな。今回の件、弁明があるなら聞くぞ?」
「黙れよ」
完全に回復した一夏のような何かが刀で透を刺す。突然のことにその場に残り、2人のやり取りを見ていた全員が恐怖した。
―――何故なら、一夏らしき頭部が宙を舞ったからだ
透によって蹴り飛ばされた頭部は地面に落ちるが、未だ倒れない身体が頭部に触れて吸収し、元に戻す。
「テメェ、何してくれてんだ。つうかいつわかった」
「最初の蹴りから違和感があったからな。たぶん普通の人間じゃないってことぐらいは。だから―――」
透は一夏のような何かに手を置いて爽やかな笑顔を見せつつ言った。
「ちょっと行って来る。別に攻めてきた相手を潰してしまっても構わんだろう?」
そう言い残して消えた2人。ISができても異常すぎる現象の連続にIS学園組が唖然とした。
「さて、片づけを始めましょうか。あ、皆さんは特訓の続きです」
「いや、待て! 他にも突っ込むところがあるだろう?!」
「そ、そうだよ!! って言うか今の何!? 2人はどこ行ったの!?」
「説明しなさいよ! いくら何でもこの状況で置いてきぼりは―――」
「単に周りに被害が出ないところに移動しただけですよ」
「あの笑顔っぷりだと、おそらく海上だろうな」
平然と答えるアクアとバーサーカーの2人。その会話に3人が唖然とした。
「か、海上?! って海の上よね!? どこかの施設とかじゃないわよね?!」
「ああ。そっちだ」
「ってんなわけないでしょうが!! 人間がISを持たずに飛ぶなんて―――」
突如、爆発音が聞こえてくる。
黒葉高校は近くに海があり、どうやらそこで戦闘をしているらしい。
「あー………俺は比較的古株だから見たことあるが、あの方はIS相手でも生身で勝てる人間だぞ」
「というか普通に凍らせて相手を拷問しますからね。アニメで見た女軍人のように」
「度合いは向こうの方がまだマシじゃないのか?」
「どっちもどっちかと思います」
そんな会話が繰り広げられている中、3人は戦慄する。すると、定時連絡をしていたラウラが戻ってくる。
「どうした? 何があったか?」
「あ……ラウラ……」
「ん? さっき見かけたが、夜塚透はどこに消えた? 少し話があるのだが……」
「ああ、それなら―――」
「海の上だ」とバーサーカーが教えようとした瞬間、屋上の方で爆発が起こり、大きな鳥がどこかに飛んでいく。その場にいたIS学園勢4人は唖然とするが、こういったことは主に透のせいで慣れている2人は「終わったのか」と思い、屋上にいる人物に連絡する―――前に、向こうからかかってきた。
『あー……ヤバい。死ぬかと思った』
「どうした、瞬。まさか足を捥がれたとか言わないよな?」
『五体満足で臓器ポロリもないよ。たださぁ、通信を傍受したからそれ伝えたら成長したんだぁ。邪魔しても一瞬だったよ』
「そうか。それはご苦労。それで、傍受した通信って?」
瞬と呼ばれた人物は他人ごとに告げた。
現れたそれは異質だった。
たまたま近くにいた楯無は虚と共に接敵、捕縛を試みたが相手がこれまでない見せたことがない動きに戸惑い、反応が遅れた。さらに恐ろしいことに、その存在は普段なら使わないガトリング砲すら使ってくる。
「一体、これはどういうこと?」
「さぁ。わかるとしたら………白式が反転したとしか……」
ISのハイパーセンサーにはどちらにも「黒式」と表示されている。操縦者は織斑一夏のままであり、《バイル・ゲヴェール》を展開した。
さらに背部からビットを展開し、2人を攻撃する。
「ともかく、応戦するわ。援護を!」
「わかりました」
虚は大型の斧を展開して一夏に突っ込む。その後ろから楯無が虚に当たらないように《蒼流旋》の先端に備わっているガトリングを放ちつつ四方から水のドリルで攻撃を仕掛けるが一夏はそれらをすべて見切り、回避した。さらにはその間にビットで楯無を攻撃する。
「な、なんてでたらめなの……」
「これまでにない動き……一体彼に何が―――」
ラファール・リヴァイヴの背部スラスターがすべて切断された。いつの間にか虚の背部に回っており、一夏は剣を刺そうとした。だが―――それは彼が良く知る人物によって阻まれた。
「すまない。遅れた」
千冬が一夏を蹴り飛ばし、距離を取る。
「大丈夫です。それよりも、生徒は―――」
「山田先生が中心になって避難させている。だが今は手が足りない。これ以上の増援は―――」
「……わかりました」
そう返事する楯無だが、内心焦っていた。
今の一夏の行動は明らかに異常だ。ISも、本人も。さらに戦闘パターンもこれまでとは大きく違う。
「織斑、今すぐ降伏しろ」
「………アンタがいなければ…………俺は……俺はぁあああああああああッッ!!!」
千冬が声をかけるが、それがきっかけに声を荒げて一夏が仕掛ける。だが千冬も流石はブリュンヒルデと言うべきか、一夏の猛撃を捌く。
一本では不利と思ったのか、一夏は左手に白いブレードを握る。一夏はこれまで二刀流をしたことはないが、高レベルの技を発揮した。さらにビットも追加され、千冬が圧され始める。
「止めだ!!」
一夏は千冬を蹴り飛ばす。同時に手から2本のブレードが離れ、千冬に突き刺さった。
「織斑先生!!」
楯無は驚きを露わにした―――が、感傷に浸る余裕はなかった。
千冬から飛び出すように一夏の両手に戻ったブレード。それを握った一夏はすかさず楯無と虚に迫る。
「死ねぇえええ!!」
2本のブレードが光りを帯びる。同時に黒式が早くなり、楯無は咄嗟に虚を押した。
一夏がブレードを振り上げ、それが楯無に振り下ろされる―――
(ごめん…簪ちゃん……)
千冬が負った傷。それを思い出し楯無が死を覚悟をしたその時だった。
―――まるでそれは隕石のようだった
一夏が楯無に迫るよりも早く、一夏が何かに激突して攻撃が逸れる。校舎に突っ込み壊しつつスピードが遅くなって放り出される形で一夏と何かが宙に浮いた。
「―――一体どういう了見で……常人風情が僕のモノに手を出そうとしているんだい?」
楯無と虚は―――そして遠く離れている生徒たちすらもその異質な威圧を感じ取った。
そこから2つの電気の球が生成され、一夏にぶつかった少年は叫んだ。
―――ボルテッカァアアアアアアアアアアアッッッ!!!
2つの球体から放たれるビーム。それが混ざり合い螺旋を生み出して一夏に直撃した。
黒一夏と黒鋼がログインしました。もとい、闇に落とされた一夏が暴走しました。
言うなれば洗脳です。本当にありがとうございました。
……まぁ、一応緋弾のアリアAA withBOSというタイトルで、施設帰りの例のあの子がとある少女との恋物語を書こうかなとは思ったことはありますが。もちろん書きませんよ?
そして「ボルテッカ」は電気系でやってみたかったんです。ポケモンでは電気タイプですが、テッカマンだとどうなんでしょ。