緊急出動。
新設された機動六課のモットーが迅速解決ならば、その任務は時を選
んではくれない。まだ新人達の訓練も始まったばかりだからといって臆
することもまた、ありえない。
「新人達は訓練で忙しくて自己紹介がまだだったな」
ヴァイスが操る輸送ヘリ上、表情には緊張が浮かぶ新人四名。フロン
トガードの拳闘少女スバル・ナカジマ。センターガードの委員長風ティ
アナ・ランスター。ガードウイングの鉄砲少年エリオ・モンディアル。
フルバック、小動物系キャロ・ル・ルシエ。
「ファントム分隊隊長の久我隼人。近代ベルカ式空戦AAランク魔道師だ
。他の隊長達とは幼馴染で歳も同じで身長は180弱。趣味は読書と旅、
好きなものは文化とそして『速さ』だ」
「え、えぇっと……」
「何か質問があるか?」
「は、速すぎてちょっと……」
ふむ、まだまだ新人達ではついてこれないか……。
「すまない、お前たちにはまだ早かったか……」
「いや、それニュアンスが違うんじゃ?」
「ほらほら、遊んでる場合じゃないよ詳しいことは後でゆっくり、ね」
俺の様子を見ていたなのはが隊長らしく場を窘める。そういえばなの
はも、しばらく見ないあいだに随分大人っぽくなったものだ。俺のスピ
ードについてこれずに目を回していた頃が懐かしい。
「は、はい」
委員長(仮)ティアナが手を挙げてこちらを見ている。
「ファントム部隊とは具体的にどのような部隊なんですか? 初めて聞
きましたが」
「部隊とは名だけで、隊員は俺しかいない。だが、行動権限を持つため
に隊長扱いになっているし、その分の魔力制限リミッターも掛かってる
」
魔力制限リミッターは機動六課全体の持つ戦力を制限するリミッター
で、有事の際上司の判断以外では外すことができない。当然他の隊長陣
にもかけられている。
「……どうして例外扱い何ですか?」
「いずれ分かるさ、いずれ、な」
説明するのも面倒になったので、そう言って誤魔化したらランスター
が目に見えて不機嫌そうになった。どうやらきちんと納得できないと気
がすまないタイプらしい。
「ま、しばらくは不都合しないさ。お前らと共同戦線張ることもしばら
くは無い。文字通り『速すぎる』からな」
なんとかティアナを宥めたところで、司令部より追加情報。魔道機械
兵器ガジェットドローンの飛行型が多数観測されたとの報告を受けた。
「ヴァイス君、私も出るよ。フェイト隊長と空を抑えるよ」
「俺も行こう。その方が速く片付く」
俺が新人達に着いて言っても、フォローに回れる程器用ではない。さ
っさと片付けてなのは達を向かわせたほうが得策だろう。
「うっす、なのはさん、ハヤトさん。お願いします」
『メインハッチ、オープン』
ヘリの後部ハッチが解放され、風が機内に舞い込む。
「じゃあ、サクッと終わらせてサクッと帰るか」
「うん。みんなも頑張ってズバッとやっつけちゃおう」
「「「ハイッ」」」
「はいっ」
重なる三つの返事と遅れた一つの返事。
「キャロ」
最年少の彼女。しかしかつてのなのは達と同じように、彼女もまた、
比類なき才能の持ち主だと聞いている。……もう一人の近い歳のエリオ
少年はまあ、少年だから平気だろう。かつての自分もそうだった。
「大丈夫、そんなに緊張しなくても。離れてても通信で繋がってる、一
人じゃないから。ピンチの時は助け合えるし、キャロの魔法はみんなを
守ってあげられる優しくて強い力なんだから。ね」
タンッ。
小さく音を立ててヘリから飛び降りる。その事に戸惑いや躊躇は一切
存在しない。
『スタンバイ、レディ』
「レイジングハート、セーットアップ!」
高性能AIを搭載したインテリジェントデバイス、レイジングハートの
声と共になのははバリアジャケットを展開する。その一瞬の出来事の間
に余計な演出なんて入っていない。入っていないと言ったら入っていな
いのだ。
「バリアジャケット展開」
残念ながら俺のデバイスにIAは積んでいない。極限の速さを求める俺
にとって選択肢など合ってないようなもので、少しでも処理速度の速い
ストレージデバイスを使うのは至極当然と言えた。
余計な装飾の少ない赤色のハーフコートに膝から下を覆い隠す様な流
線型の脚部装甲。各種スラスターを無駄なく配置されたそれはまさに、
機能美とも言うべき姿だ。
『アクセルフィン』
なのはのレイジングハートが小さくつぶやき足元に桃色の羽が展開さ
れる。そして、羽ばたく。加速したなのはが空を翔ける。
「高町なのは、行きます!」
「俺が遅れるわけにはいかねぇな、行くぜ!」
俺は空を蹴ってなのはに追いすがる。
「遅い遅い! さっさと行くぜ?」
「隼人君が速すぎるだけ……、って何処掴んでるの!?」
なのは背後に追いつくと、その両脇を抱えるようにして、空に吼えた
。
「かっとビングだ、俺!」
「ちょっと、待って~~~~~!!」
先ほどに倍する速度で空を行く。なのはの叫びは新人達のいるヘリま
では届かなかった。
スターズ1、高町なのは隊長は安定の空中機動と誘導弾による射撃で
的確に敵航空魔道機械を撃墜していく。
ライトニング1、フェイト・T・ハラオウン隊長は高機動と近接戦闘
や高威力の魔法刃で次々と数を減らしていく。
そしてファントム1、久我隼人は……。
「衝撃のファースト・ブリットォー!」
文字通り己の身一つ、その両足を持って敵にぶつかって行く。そして
その衝撃は逃さず速度へと変換され、また別の敵機への跳躍へとつなが
る。
「壊滅のセカンド・ブリットォーー!」
まるで矢のように戦場を飛び交う。今の俺にとって湧くように現れる
敵機はもはや足場といっても過言では無い。幾らでも撃墜できそうな勢
いだ。
「えぇっと、崩壊のサード・ブリットォーーー!」
最も、語彙のストック不足は深刻だった。
名前に関しての指摘は結構多いですが、一応それなりに考えてやってます。
あくまでも、兄貴の模倣をする男のお話です。