「周辺警護とは言いつつも、敵の侵入ルートは副隊長陣が張ってる。突然敵と遭遇することはまずないから、もうちょっと楽にしてもいいんだぜ。ディアナ」
「ティアナです。……よくもまあ、そんなに気楽でいれますね。隊長達はオークション会場内、副隊長達は侵入予想ルート付近で張ってるのに、こんなところで油売っててもいいんですか?」
機動六課の新しい任務は大規模なオークションの周辺警護。なんでも、出展される物の中にロストロギアの類があったり、このオークションを隠れ蓑にした密輸ルートがあったりと、ガジェットドローンが襲撃してくる可能性は非常に高いとの事。
「……オークションには騒がしくてそぐわないからって追い出された」
「だったら副隊長達と合流した方が良いのでは?」
「別に良いんだよ。元々過剰戦力気味なんだし」
元々機動六課はかなり強引な手で設立された部隊で、その過剰戦力を緊急用と銘打って誤魔化している。その上『どんな事件だろうと迅速に解決します』をスローガンとして掲げているだけあって、どんな事件だろうと泣き事言わずに対応する手筈になっている。そんな戦力を一挙、防衛戦力に回すと言うのは、どうもまた身内のコネで舞い込んだ仕事の様に思える。
「という訳で、しばらくは暇だから質問とかあったら答えるけど?」
「あ、あたし、この前空中を蹴って進んでたあれが気になります。あれってどうやってるんですか?」
横からスバルが聞いてきたこの前のあれというと、出動の時の空中機動か。
「あれは別に、空気中の塵を一万倍の速さで蹴ってるだけだよ」
「えぇっ!」
「いや、それは冗談よ。私の角度からだと小さくだけど術式が見えたから」
バレてたか。やっぱりいい目をしているな。
「うん、本当は小さな足場を展開してるだけ。簡単だろう?」
「どこが……。小さくそして強固な足場を必要な位置、角度でピンポイント配置するとか……。魔法技術もそうだけどボディバランスも問われる非常に高度な技術じゃない」
小声だけど聞こえてるぞ。しかし、たった一回見ただけでそこまで分析できるとか……。そっちだって十分凄いことしてると思うんだが、気づいてないんだろうな。
その後の警護任務に関してはあまり詳細には語らないことにする。簡素に事態をまとめるなら、襲撃はあったが、防衛は成功。オークションへの直接の被害はなく、少し開始が遅れただけで無事に執り行われた。
問題となったのはガジェットと一緒に現れた強力な召喚士の反応と、おそらく密輸品が倉庫から奪い去られたこと。
それからティアナがミスった事……。
まあ所謂、新人らしい焦りが引き起こしたミスであり、ヴィータの迅速なフォローもあって大事にはならなかった。が、どうにも完璧思考のあるティアナには相当こたえているらしく、精神的な面でのフォローが必要に思えた。
ティアナには優秀な先生であるなのはもいるし、仲のいい相棒であるスバルもついている。だから大丈夫だとは思うが……。
「ん、しょっと。もうこんな時間か」
一通り今日の分の事後処理を終えると、既に夜も遅い時間となっていた。早寝早起き十分な睡眠を信条とする俺にしては、と言った程度ではあるが。
「食堂に行くか……。ん、なのは。まだ残ってたのか」
「あれ、隼人君。珍しいね、こんな時間まで」
「書類を片付けてたんだよ」
「今日の報告書? 相変わらず早いね、提出明日の昼までだから今日中じゃなくても良いのに」
本当に昔から変わらないね、と言っていつものなのはスマイルを作る。
「昔から変わらないのはなのはもだろ? 食事まだだよな、そうだろうな、そんな顔をしている。四の五の言わずについて来い、お前がキチンと食べるのを見張っといてやるから」
「……本当、強引なのは相変わらずなんだから」
「お前が人に隠れて無茶するのもな。隠すならキッチリ隠せ、俺にはバレバレだぞ? あぁーそうだ。飯も食べてもらうが、睡眠もちゃんと取れ。最近寝不足気味だろ、今日は寝かしつけてやろう。なに、心配するな、俺は明日の午前中は暇だから書類くらい任せろ」
「あはは、寝かしつけまでは要らないけど。でも、ありがとう」
「無茶は……、してないんだよな。なのはが一番良くわかってるはずだし。だったら、疲労の原因は無茶じゃなくて悩みとかだな」
俺はうどんを啜りながら、なのははオムライスをつつきながらそんな会話をしていた。
「なのはの悩みって言ったら、まあ……。教導上手くいってないのか?」
「そんなことはないと思うんだけど……。それもあるのかな?」
それも? まるで別の理由はあるみたいな言い方だ。心当たりがあるのだろうか。
「みんな素直でいい子だし、伸びしろも大きい子達なの」
「才能ある若者達?」
「まるで私達は若くないみたいな言い方だね」
少なくとも俺は生き急いでるところがあるしな。なのはだって、地球では味わえないほど濃い人生を生きてるだろう。
「ところで、心当たりはないのか?」
「うーん。だってほら、私は私の経験を下に信念を持って教導してるつもりだから」
「それがなのはの選んだ道か。なら」
「選んだ道を最速で進め、でしょ? 」
言おうとしたことを先取りされた……。
「その言葉を言われるのも何度目かな? ってあれ、どうしたの?」
「先取り……、俺が、俺が遅いのか……?」
「何を言ってるの……。兎も角、最初はそう、公園で一人ぼっちだったとき。覚えてる? あの時隼人君『最速の兄貴』って名乗ってたの」
「うん? ……そんなこともあったなぁ」
あの頃は若かった……、と言うより遅かったな。まあ、一分一秒加速し続ける俺があの頃から速かったら今はもっと速いことだろう。
「呼んだら最速で駆けつけるからって。それで二回目はフェイトちゃんと初めて会った時で、三回目は闇の書事件の時。それで四回目は私が落ちちゃうちょっと前だったよね」
「うっ……」
そうだった。あの時の俺の言葉でなのはは……。
「あ、まだ責任感じてる? 言ったじゃない。選んだ道の、信じた道の先でなら後悔はしないって。だから私はなにも後悔していないよ」
「やっぱり、なのはは強いな」
頑固者でもあるけど。
「まあね。何せ『最速の兄貴』の最初の妹分、『最硬の妹分』ですから」
サイボーグにでもなるつもりか、なのはは。
その夜。食事を終え、シャワーをさっくりと済ませ、ベッドに潜り込む。
「あ、結局悩みの理由聞き逃した。と言うか誘導された?」
なのは→妹分(幼馴染)
フェイト→名前を間違える相手(?)
はやて→騎士(家族?)
さて、この後どうしようかなー。