ラブライブ! オーブ‼︎   作:ベンジャー

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第18話 『逆襲』

音ノ木坂学院講堂にて。

 

そこでは2学期に入ったこともあり、全校集会が開かれていて、今は理事長による話を全生徒が聞いているところだった。

 

「音ノ木坂学院は、入学希望者が予想を上回る結果となった為、来年度も生徒を募集する事になりました。 3年生は残りの学園生活を悔いのないよう過ごし、実りのある毎日を送っていって貰えたらと思います」

 

理事長の話が一通り終わると、司会を努めるヒフミトリオの1人であるヒデコから生徒会長の挨拶があることが全校生徒に伝えられ、それを受けて絵里が立ち上がると・・・・・・彼女は小さな拍手を「新」生徒会長へと送る。

 

すると、講堂の壇上に現れたのは・・・・・・青い瞳に茶髪のサイドテールの少女、「高坂 穂乃果」だったのだ。

 

「皆さん、こんにちわ!!」

 

穂乃果が元気よく挨拶をすると、生徒達の何名からか黄色い歓声が飛び、それを受けて穂乃果は自己紹介を行う。

 

「この度、新生徒会長となりました! スクールアイドルでおなじみ、わたくし・・・・・・!!」

 

そこまで言うと、穂乃果は勢いよくマイクを手に取ってなぜか頭上に放り投げ、くるっと一回転して左手でマイクを掴み取る。

 

「高坂 穂乃果と申します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわあああああ!!!!? 今日は穂乃果の晴れ舞台だってのに、なに出てきてんだオメーはよぉ!!』

 

同じ頃、とある山奥でオーソドックスな見た目をした怪獣、「超古代怪獣 ゴルザ」が出現し、人の住む街に向かって進行するゴルザを食い止めるべく、紅葉が変身した「ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオン」が立ちはだかっていた。

 

しかし・・・・・・。

 

オーブはゴルザが出現したせいで学校に遅れてしまい、その上今日は穂乃果は生徒会長を正式に襲名する日だというのに彼女の晴れ舞台を見れないことを嘆きながら戦っていたのだ。

 

「グルアアアアア!!!!」

 

勿論、ゴルザにとってそんなことは知ったことではなく、ゴルザは頭部から放つ破壊光線「超音波光線」をオーブへと放つが、オーブは両腕を交差して防ぎ、なんとか光線を耐え抜く。

 

『シェア!!』

 

オーブは「ティガ・スカイタイプ」の力を一時的に発動させると素早くゴルザに接近し、連続で何発も拳をゴルザの胸部に叩きこむ。

 

それによって蹲るゴルザにすかさずオーブは掴みかかり、ゴルザを右腕で押さえつけつつ、左手のチョップをゴルザの頭部に喰らわせるのだが、ゴルザはなんとかオーブを振り払い、尻尾を振るってオーブを叩きつける。

 

『ヌア!!?』

 

それによって吹き飛ばされ、地面に倒れ込むオーブ。

 

倒れ込んだところを狙い、ゴルザはジャンプしてその巨体を生かしたボディ・プレスをオーブに繰り出し、オーブの動きを封じてしまう。

 

『ウゥ・・・・・・!!? こうなったら!!』

 

するとインナースペース内の紅葉はカードホルダーから力に優れた姿の赤いウルトラマンティガ、「ティガ・パワータイプ」のカードを取り出し、オーブリングにリード。

 

『ティガさん!!』

『ウルトラマンティガ! パワータイプ!』

 

続けて紅葉はティガと同じく力に優れた赤い姿のウルトラマンダイナ、「ダイナ・ストロングタイプ」のカードをオーブリングにリードさせて読み込ませる。

 

『ダイナさん!!』

『ウルトラマンダイナ! ストロングタイプ!』

 

そして紅葉はオーブリングを掲げる。

 

『力強いやつ、頼みます!!』

『フュージョンアップ!』

 

するとティガ・パワータイプとダイナ・ストロングタイプの姿が重なり合い、オーブは2人の力を融合させた「パワーストロング」へと姿を変える。

 

『ウルトラマンオーブ! パワーストロング!』

『光の剛力に敵はない!!』

 

戦闘BGM「Brave Love, TIGA (Instrumental Version)」

 

オーブはその力に優れた怪力によって自分にのしかかっていたゴルザを両腕で持ち上げ、放り投げて地面に叩きつけ、身体が転がる。

 

「ガアアアア!!!!?」

 

だが、ゴルザは地面に転がりながら超音波光線をオーブに放つが、オーブは咄嗟に光線を躱し、立ち上がったゴルザに向かって駈け出して行く。

 

それに対して起き上がったゴルザは尻尾を振るうが、オーブはそれを両手で掴むとジャイアントスイングを繰り出してから投げ飛ばす。

 

『セアア!!』

「グルアアアア!!!!?」

 

それによって、ゴルザは又もや地面に激突し、大きなダメージを負うが、フラフラになりつつもゴルザはどうにか立ち上がり、オーブに向かって振り返ると猛牛のように勢いをつけて突進するが、オーブはそれを余裕で受け止め、膝蹴りを喰らわせるとそのままゴルザにサバ折りを繰り出し、ゴルザの背中から「メキメキ」と嫌な音が鳴る。

 

「ギシャアアア!!!? グルアアアア!!!!」

『ウオッ!?』

 

ゴルザはオーブに頭突きを喰らわせることでなんとかオーブの拘束から逃れ、オーブの足下に超音波光線を放つと煙幕を作り、その間に素早くゴルザは地中を掘って逃げようとする。

 

『っ! 待ちやがれ!! ガルラシウムボンバー!!』

 

だが、オーブはそれを許さず、赤い光球を生み出して相手に飛ばす「ガルラシウムボンバー」をゴルザに向かって放ち、直撃を受けたゴルザは爆発し、その場から姿を消すのだった。

 

「グルアアアアアア!!!!!?」

 

 

 

 

 

 

その頃、生徒会室にて・・・・・・。

 

「どわー!! 疲れた〜!」

 

そこでは机に突っ伏した穂乃果がおり、そんな穂乃果を労うようにことりが「穂乃果ちゃん、お疲れ様」と声をかける。

 

「生徒会長挨拶って、ライブとは全然違うんだねぇ。 緊張しっぱなしだったよ・・・・・・」

「でも、穂乃果ちゃんらしくて良かったよ?」

 

ぐでーっとする穂乃果に対し、生徒会長挨拶はとても穂乃果らしくて良かったと評することりだったが、逆に海未は「どこが良かったんですか!!?」と怒っていた。

 

「折角昨日4人で挨拶文も考えたのに・・・・・・」

「うぅ、ごめん」

 

苦笑しながら海未に謝罪する穂乃果。

 

尚、なぜ海未がこんなに穂乃果に怒っているのかと言うと、ど派手に新生徒会長として自己紹介したのは良いのだが・・・・・・。

 

それ以降彼女は昨日自分と紅葉、海未、ことりの4人で考えたという挨拶文の台詞を忘れてしまい、何も言えなくなってしい、海未はそのことで穂乃果に怒っていたのだ。

 

ちなみに、海未、ことり、紅葉も新生徒会のメンバーだったりする。。

 

「結局その先は真っ白。 うあ〜、折角練習したのに・・・・・・」

「っていうか、紅葉は一体どこ行ったんですか!?」

 

そこで海未は今朝から姿を見ていない紅葉のことが気になり、新学期・・・・・・それも新しい生徒会長の挨拶があるというのにと・・・・・・遅刻しているであろう紅葉に海未は「はぁ」と溜め息を吐かずにはいられなかった。

 

「全く、紅葉が遅刻なんて珍しい。 穂乃果じゃないんですから」

 

そんな海未の言葉にちょっとだけムッとしてしまう穂乃果だったが、何も言い返せないのも事実である。

 

「すまん!! 遅れた!! ところでさっきミュージカルやってなかった?」

 

そこへ丁度遅れてやってきた紅葉が慌てた様子で生徒会室へとやって来たのだが、当然遅れて来た紅葉に海未は激怒。

 

「やってませんよ!! それよりも紅葉!! 一体どこ行ってたんですか!? もうとっくに始業式も終わりましたよ!?」

「い、いやホントすまん。 ちょっと、昨日食べたカレーパンが賞味期限切れてたらしくて・・・・・・それに当たって腹壊して公園のトイレに駆け込んでた」

 

本当はウルトラマンオーブに変身して怪獣と戦っていたのだが、そんなこと言える筈もなく、紅葉は両手を合わせて必死に海未に謝っていた。

 

「穂乃果にことりもごめんな? 迷惑かけた」

「う、ううん、お腹壊したんじゃ仕方ないよ。 ところでさ、お兄ちゃん・・・・・・今日、怪獣が出たらしいね? ここから結構離れた山奥のところらしいけど・・・・・・」

 

不意に、穂乃果がそんな話題を振って来て一瞬ドキリとする紅葉だが、紅葉はなんとかポーカーフェイスを保ち、「そうらしいな」と応える。

 

「でも、オーブが追っ払ってくれたって聞いたぞ?」

「う、うん、そうらしいね・・・・・・」

 

なぜだか、穂乃果はジーッと紅葉のことを先ほどから見つめており、それに対して紅葉は軽い冷や汗を流す。

 

「オーブや怪獣よりもです!!」

 

だが、そこで海未が穂乃果の目の前にズドンっと大量の資料ファイルを置き、それに穂乃果は驚いて引き攣った顔になってしまい、その量の多さに紅葉も目を丸くしてしまう。

 

「今日はこれを全て処理して帰ってください!!」

「こんなに!?」

 

さらに海未は「それにこれも!!」と言いながら「一般生徒からの要望」と書かれた紙を穂乃果に突き出し、彼女はそれを受け取るとその内容を読み上げる。

 

「『学食のカレーが不味い』、『っていうか学食にカレーパンとラムネ置いて欲しい』、『文化祭に有名人を』、『サトルくんに『地球をあなたにあげましょう』と言わせたい』、『本当に超獣を見たんです! 信じてください!』、『バカを言うな、お前は一週間の謹慎だ!』」

「一部変なの混ざってない!? しかもなんか最後会話になってる!?」

 

穂乃果が読み上げた一般生徒の要望の中に明らかにおかしいものが幾つか混ざっており、ことりはそれにすかさずツッコミを入れ、穂乃果と海未はカレーに関する項目をジッと見つめた後、2人は紅葉に視線を向ける。

 

「カレー関係はお兄ちゃんだよね?」

「な、なぜ分かった!?」

 

穂乃果からの指摘に紅葉は心底驚いた顔を見せ、むしろなぜバレないと思ったのかと疑問に感じる穂乃果達。

 

「あなた以外に誰が書き込むんですかこんな要望!?」

「そ、それよりも幾つかは解決できそうな案件あるぞ、それ!」

 

海未は「無理矢理話逸らしましたね」と鋭い目つきでジッと紅葉を見つめ、紅葉はそれに戸惑いつつもなんとか話を逸らそうと案を絞り出す。

 

「アルパカは花陽ちゃんに懐き方教えて貰えばいいだろ。 あと、有名人なら・・・・・・もうμ'sがいるからよくないか?」

「有名人に関するところはなんか投げやりだね・・・・・・」

 

兎にも角にも、生徒会長のやる仕事はかなり多めであり、海未はこれらの仕事を穂乃果にやって欲しいと言うのだが・・・・・・その仕事量の多さに穂乃果は駄々を捏ねるようにして不満を漏らす。

 

「もう! 少しくらい手伝ってくれても良いんじゃ無い? 海未ちゃん副会長なんだし!!」

「勿論、私はもう目を通しています!!」

「えっ!? じゃあやってよー!!」

 

海未が一通り資料に目を通していると聞いて穂乃果はだったら海未がやれば良かったのではないかとまたまた駄々を捏ねるようにしてジタバタ動き、そんな穂乃果をちょっと可愛らしいと思いつつも紅葉は「子供か!!」とツッコミを入れる。

 

「それに、仕事はそれだけじゃないんです!! あっちには校内でたまりにたまった忘れ傘が放置、各クラブの活動記録のまとめもほったらかし、そこのロッカーの中にも、3年生からの引き継ぎのファイルが丸ごと残ってます!!」

「どふ・・・・・・」

 

海未からのさらなる仕事量の多さを聞いて資料ファイルに頭を突っ伏してしまい、愕然とする穂乃果。

 

「生徒会長である以上、この学校のことは誰よりも詳しくないといけません!」

「でも、4人いるんだし手分けてしてやりま・・・・・・」

 

そこでことりが穂乃果に助け船を出すのだが、海未は「ことりは穂乃果に甘すぎます!!」と言って反対。

 

「ふいい〜、生徒会長って大変なんだね〜」

「頑張れシャミ子・・・・・・じゃなかった穂乃果、俺もできる限り手伝うから」

 

紅葉は「うぅ〜」と唸る穂乃果の頭を撫で、頭を撫でられた穂乃果は「癒やされる〜」とそれによってほんの少しだけ元気を取り戻すことに成功。

 

「生徒会長が大変なの、分かってくれた?」

 

するとそこへ絵里が扉を開けて入ってやってくると、少し遅れてからタロットカードの1枚を手に持った希もやってくる。

 

「ふふ、頑張ってるかね? 君たち?」

「絵里ちゃん! 希ちゃんも」

「大丈夫? 挨拶、かなりつたない感じだったわよ?」

 

先ほどの生徒会長挨拶の失敗についてのことを絵里に指摘され、穂乃果は苦笑しつつ「ごめんなさい」と謝った後、「それで今日は?」と絵里達が他に何か自分達に用事があるのかを尋ねる。

 

「特に用事はないけど、どうしてるかなって。 自分が推薦した手前もあるし、心配で・・・・・・」

「明日からまたみっちりダンスレッスンもあるしね? カードによれば、穂乃果ちゃん生徒会長として相当苦労するみたいよ?」

 

カードを1枚出しながらニヤけた笑みを浮かべ、これから穂乃果は生徒会長としてかなり苦労してしまうということを伝える希。

 

それに「ええええ!?」と驚きの声をあげる穂乃果に、「穂乃果が生徒会長ならあり得そう」と思う紅葉だった。

 

「だから3人ともフォローしてあげてね?」

「気にかけてくれてありがとう!」

 

希の言葉にことりが代表してお礼を述べる。

 

「困ったことがあったら何時でも言って? なんでも手伝うから」

「うん、ありがとう!」

 

元生徒会長ということもあり、絵里は困ったことがあれば自分も手伝うと述べ、それに笑顔でお礼を言う穂乃果だった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、にこ、真姫、花陽、凛の4人は屋上に集合しており、にこは髪をかき上げ、真剣な表情を1年組に見せる。

 

「いい? 特訓の成果を見せてあげるわ」

 

にこがそう言うと、彼女は花陽達に一度背を見せた後、勢いよく振り返り・・・・・・。

 

「にっこにっこにー! あなたのハートににこにこにー! 笑顔届ける矢澤にこにこー!! あっー、ダメダメダメ! にこにーはみんなのも・の♪」

「・・・・・・気持ち悪い」

 

そんなにこに対し、髪を弄りながら「気持ち悪い」と評する真姫。

 

「ちょっと!! 何よ!! 昨日一生懸命考えたんだからーっ!!」

 

気持ち悪いと言われ、反論するにこだったが真姫は「知らない」と一蹴されてしまい、にこは「ぐぬぬ」と悔しそうな顔を浮かべる。

 

「っていうか、4人でこんなことして意味あるの?」

 

そこで凛が首を傾げながら疑問に思ったことを口にすると、にこはそんな凛に対し呆れたような溜め息を吐く。

 

「アンタ達何にも分かってないわね、これからは1年生が頑張らなきゃいけないのよ!」

 

そう言うとにこは三脚にセットしたビデオカメラをどこかからか取り出して用意し、設置する。

 

「いい? 私はアンタ達だけじゃどう頑張ればいいか分からないだろうと思って手助けに来たの! 先輩として!!」

「・・・・・・そのビデオは?」

 

真姫がそのビデオカメラは一体何に使うつもりなのかと問いかけると、にこ曰く「ネットにアップするためのものに決まってるでしょ!」とのこと。

 

「今やスクールアイドルグローバル、全世界へとアピールしていく時代なのよ! ライブ中だけじゃなく、日々レッスンしている様子もアピールに繋がるわ」

 

そこで言い終わっていればちょっと先輩らしいところを1年組に見せられたものの、直後ににこは悪い顔となり、悪役のように微笑む。

 

「グフフ、イッヒッヒッヒ、こうやって1年生をかいがいしく見ているところをアピールすればそれを見たファンの間に『にこにーこそセンターに相応しい』との声が上がり始めてやがて・・・・・・」

「全部聞こえてるにゃー」

 

本人は小声で喋っているつもりだったのだろうか、割と全部ハッキリと1年組全員に聞こえており、それに呆れた顔となる真姫達。

 

そのことを凛に指摘されるとにこは「あっ! にこー!」と慌てて笑顔を見せて誤魔化す。

 

その時、花陽のスマホが突然鳴り響き、彼女はスマホに手を取って画面を覗くと、目を開き、「えっ!?」と何かに驚いたかのような声をあげる。

 

「えっ? えっ? えええええ!!?」

「かよちん、どうかした?」

「ああああ・・・・・・! 嘘・・・・・・! あり得ないです、こんなこと・・・・・・!!」

 

直後、花陽は早歩きで急いで部活へと向かい、部室に入るとパソコンを立ち上げてネットを開き、興奮した様子で何かを調べ始める。

 

それに真姫、にこ、凛も慌ててついて行き、一体突然どうしたのかと首を傾げるにこ。

 

花陽がこうなるのは大体アイドルが関係していることが多く、その様子から少なくともアイドルに関係した何かがあったのは間違いないらしい。

 

「アイドルの話になるといつもこうね」

「凛はこっちのかよちんも好きだよ!」

「夢? 夢なら夢って先に言って欲しいです!!」

 

未だに興奮が冷めない花陽を見て、真姫は一体何なのかと尋ね、にこもいい加減教えなさいと問いかけ、2人してパソコンの画面を覗くと・・・・・・。

 

彼女達はそれを見て目を見開き、驚愕の表情を浮かべ、後ろの方から背伸びして画面を見た凛も真姫やにこと同様に衝撃を受け、4人はこのことを知らせる為に急いで穂乃果がいると思われる生徒会室へと向かう。

 

「穂乃果!!」

「あっ、矢澤先輩」

 

しかし、そこには穂乃果ではなく雑誌を読むヒデコの姿があり、にこは穂乃果がどこにいるのかを聞くとヒデコ曰く「教室の方が捗るからそっちで仕事する」と言って一緒にいた紅葉と共に教室に行ったそうだ。

 

「穂乃果ちゃん!!」

 

それを受けて4人は今度は教室へと向かうのだが、そこにも穂乃果の姿はおらず・・・・・・。

 

「あっ、凛ちゃん」

 

代わりにいたのは他の生徒と喋るフミコの姿があり、今度は凛がフミコに穂乃果の行方を尋ねると、「どうしても身体を動かしたいと言って紅葉と一緒に屋上へ」とのことだった。

 

どうやら少しすれ違ってしまったらしい。

 

「穂乃果ぁ!」

「真姫ちゃん?」

 

4人は急いで学校の屋上へと戻ると、ここにも穂乃果はおらず、代わりに他2人の生徒と話すミカの姿があり、真姫は穂乃果がどこに行ったのかを尋ねる。

 

「お腹が空いたから紅葉くんと一緒に何か食べてくるって!」

「穂乃果の奴ウロチョロしすぎぃ!! ってかもれなく紅葉とセットでついてくるわね!! アイツも留めておきなさいよ!!」

 

にこはウロチョロとする穂乃果と、それを留めておかない紅葉に若干腹を立てつつ再び4人は穂乃果を捜し回り、なぜか4人はアルパカ小屋に来ることに。

 

「ここに来てどうすんのよ!?」

「ねえ、穂乃果ちゃん知らない!?」

 

アルパカに穂乃果の行方を聞く花陽だったが、当然アルパカに聞いても答えてくれる筈もなく・・・・・・。

 

それから4人は必死に穂乃果の姿を探し、中庭にて紅葉の背中に背もたれしてランチパックのパンを頬張る穂乃果の姿を発見したのだった。

 

「いやぁ、今日もパンが美味い!」

「はぁ、はぁ、少しはジッとしてなさいよ・・・・・・」

 

凛以外の3人は息を荒くし、にこは荒い呼吸をしつつも穂乃果の肩を掴み、それに不思議そうな顔を浮かべる穂乃果。

 

「穂乃果、もう1度・・・・・・あるわよ」

「はぁ、はぁ、もう1度・・・・・・」

「はぁ、はぁ、もう1度・・・・・・!」

「んっ? もう1度・・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう1度?」

「もう1度?」

「もう1度・・・・・・!?」

「この下り何回やるんすか?」

「ラブライブ・・・・・・!?」

「あっ、やっと終わった・・・・・・ってえぇ!?」

 

部室にてμ'sメンバー全員と紅葉が集まると、花陽から改めて説明を受け、彼女の説明によればA-RISEの優勝と延期があったとは言え一応の大会の成功を持って終わったらしい第1回ラブライブ。

 

その第2回ラブライブが早くも決定したと言うのだ。

 

それから花陽はパソコンのラブライブのホームページを開き、花陽からのさらなる説明を受ける一同。

 

「今回は前回を上回る大会規模で会場の広さも数倍! ネット配信の他、ライブビューイングも計画されています!」

「凄いわね・・・・・・」

「凄いってもんじゃないです!! そしてここからがとっても重要!! 大会規模が大きい今度のラブライブはランキング形式ではなく各地で予選が行われ、各地区の代表になったチームが本戦に進む形式になりました!!」

 

つまり、人気投票による今までのランキングは関係ないということであり、そのことを海未が花陽に尋ねると彼女は「その通り!!」と言って勢いよく椅子から立ち上がる。

 

「これはまさにアイドル下克上!! ランキング下位の者でも予選のパフォーマンス次第で本大会に出場できるんです!!」

「それって、私達でも大会に出るチャンスがあるってことよね!?」

 

花陽とにこの話を聞いて、少し「うっ」となる紅葉。

 

一応、穂乃果のおかげで色々と吹っ切れることが出来たとはいえ、やはり前回のラブライブでμ'sがランキングから外されることになった原因を作ってしまったのは自分なのでその辺の責任を感じているのだろう。

 

しかし、今回はランキングが関係ないというのであれば努力次第で今度こそμ'sはラブライブに出場することができ、海未も「これはまたとないチャンスですね!」とやる気だった。

 

「やらない手はないわね」

「そうこなくっちゃ!!」

 

にこはもう1度ラブライブが開催される喜びのせいか真姫に抱きつき、ことりも「よーし!!」と気合いを入れてガッツポーズをする。

 

「よーし、じゃあラブライブ出場を目指して・・・・・・!」

「でも待って! 地区予選があるってことは、私達・・・・・・A-RISEとぶつかるってことじゃない?」

 

しかし、そこで絵里が前回の優勝者であるA-RISEも必ずラブライブに出るであろうことは容易に想像できるため、絵里は彼女等とぶつかることを指摘し、それに愕然とする花陽。

 

「あ、あああ・・・・・・終わりました」

「ダメだぁ!!」

「A-RISEに勝たなきゃいけないなんて・・・・・・」

「それは幾らなんでも・・・・・・」

「無理よ」

 

にこは頭を抱えて嘆き、ことりや希は弱音を吐き、真姫も流石に無理だと言い、凛に関しては「いっそのこと全員で転校しよう!」とそれなんか意味あるのかとツッコミたくなるような意見を出す始末。

 

「オイオイ、A-RISEがいようがいまいが関係ないだろ。 むしろかかってこいってんだ!!」

「そうだよ!! 尻込みなんてする必要ない!! 人間その気になればなんだってできるよ!!」

 

しかし、紅葉や穂乃果はことり達と違い、悲観にはならず、紅葉と穂乃果は互いに顔を見合わせて頷き合う。

 

「ラブライブに出来るだけじゃ勿体ない!! この10人で残せる最高の結果!!」

「やるからには徹底的にやってやろうぜ!!」

 

すると紅葉と穂乃果は勢いよく窓を開けて外に飛び出すと、空に2人で一緒に一差し指を天に向ける。

 

「「優勝を目指そう!!!!」」

 

それを受けて「優勝!?」と驚きの声をあげる海未。

 

「そこまで行っちゃうの!?」

「大きく出たわね・・・・・・!」

 

それには凛やにこも驚きを隠せなかったが、希は「面白そうやん!」とノリ気。

 

「ラブライブの、あの大きな会場で精一杯歌って、私達・・・・・・1番になろう!!」

 

そして、そう高らかに、穂乃果は言い放ってラブライブの優勝を目指すことを宣言するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてμ'sはラブライブ優勝に向かってまた走り出すことになったのだが、その翌日。

 

「大変です!! ラブライブの予選で発表できる曲は今までに未発表の物に限られるそうです!」

 

屋上にはμ's9人と紅葉が集まっており、花陽から告げられたラブライブの新たに設けられたというルール。

 

それは今まで作ってきた曲は使えないということであり、そのことににこは「なんで急に!?」と問いかけると花陽が言うにはラブライブに出場するチームが予想以上に多く、中にはプロのアイドルのコピーをしている人達もエントリーを希望していることが理由とのことだった。

 

「この段階でふるいにかけようって訳やね」

「そんなぁ!」

 

花陽や希の言葉に凛は嘆き、これから1ヶ月足らずでなんとかしないとラブライブに出られないと語る絵里。

 

するとそこでなぜか腰に手を張って「こうなったらば仕方ない!!」と言いながら胸を張るにこ。

 

「こんなこともあろうかと私がこの前作詞した『にこにーにこちゃん』という詩に曲をつけて・・・・・・!!」

「実際のところはどうするんや?」

「スルー!?」

 

しかし、にこは希にスルーされてしまい、代わりに紅葉がポンっとにこの肩に手を置き・・・・・・。

 

「にこさんはワザと負けたいんですか?」

「えっ、ごめん・・・・・・」

 

と紅葉はスルーしなかったものの割とマジトーンで睨まれた為、にこは思わず謝罪してしまい、紅葉に注意されしょんぼりと反省することに。

 

「なんとかしなきゃ! 一体、どうすれば・・・・・・」

「・・・・・・作るしかないわね」

 

穂乃果の言葉に、絵里が少しだけ考え込んだ素振りを見せた後、ボソッと呟き、穂乃果は「えっ?」と首を傾げる。

 

絵里の言う「作るしかない」というのは曲作りのことだろう。

 

「どうやって・・・・・・?」

 

海未がそのことについて絵里に問いかけると、絵里は「真姫!」と彼女の名を呼んで視線を真姫に移し、なんとなく絵里が言いたいことを察した真姫は顔を引き攣らせる。

 

「もしかして・・・・・・」

「えぇ、合宿よ!!」

 

なぜかやたらオーバーな動きをした後、絵里が高らかに一同にそう言い放つのだった。

 

「今の無駄な動きなんですか・・・・・・」

 

尚、絵里のその動きについて紅葉がやんわりとツッコミを入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で休日に合宿へと向かうことになった紅葉達。

 

前回は海だったのだが、今回は山で合宿することとなり、「霧門岳」という場所を目指して電車で一同はやってきたのだ。

 

「うわー、綺麗!!」

 

電車から降りると緑溢れる自然を見てことりは感激し、希は「空気が澄んでるねー」と言いながら身体を伸ばす。

 

「やっぱり真姫ちゃん凄いにゃー! こんなところにも別荘があるなんて」

「歌も上手いし、完璧だよね!」

 

凛と花陽が真姫を褒め称え、それに対して真姫は照れ臭そうにする。

 

「と、当然でしょ!? 私を誰だと思ってるの?」

「・・・・・・フン、何自慢してるのよ」

 

そんな真姫ににこが突っかかり、真姫は「別に自慢してないわよ!」と反論。

 

そのようにちょっとした喧嘩をする真姫とにこを絵里が「まぁまぁ」と宥め、今回は時間も多くは残されていないこともあり、それよりも今は早く別荘に向かうことが先だとして絵里に注意され、「むぅ」と膨れっ面になるにこ。

 

その時、「ドスン!!」という大きな音が聞こえ、一同は音のした方に顔を向けるとそこには登山用の大きめの荷物を下ろす海未の姿があり、彼女は「その通りです!」と言いながら絵里に同意する。

 

「・・・・・・海未ちゃん、その荷物は?」

「なにか?」

 

ことりが海未の荷物について尋ねるが、海未は「何か問題でも?」と言いたげな顔をしており、絵里も「ちょっと多くない?」とその荷物について指摘するのだが・・・・・・。

 

「山ですから」

 

さも当然のように彼女はそう応えるのだった。

 

「むしろみんなこそ軽装すぎませんか?」

 

海未はそう言うと荷物を背中に背負い、「さっ、行きましょう」と初々とした様子で歩き出す。

 

「山が呼んでますよ〜! アッハッハ〜!!」

「・・・・・・もしかして、海未って登山マニア?」

 

そんな海未の様子から、絵里はもしかして海未は登山マニアだったりするのだろうか考える絵里。

 

「夏の合宿の時みたいに無茶言わなきゃいいけど」

 

また海未のテンションの高さから海の合宿の時のように無茶言わないかと心配するにこだった。

 

「ほら、もたもたしてるとバス行っちゃうわよ?」

 

真姫にそう急かされ、一同は駅から外に出るのだが・・・・・・ふっと凛は「あれ?」と不意に立ち止まる。

 

「どうかした?」

「何か、足りてない気がしないかにゃ?」

 

ことりの問いかけに凛はそう応え、ことりは忘れ物でもしたのだろうかと思ったのだが、どうやらそうではないらしい。

 

「忘れ物じゃないけど、何か足りてない気が・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、海未達が乗ってきた電車では・・・・・・。

 

「「ZZzzz・・・・・・」」

 

穂乃果と紅葉は互いにもたれ合って眠っていたのだった。

 

そこで、目を覚まし、みんながいないことに気付いて「うあ?」と首を傾げる穂乃果だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、紅葉と穂乃果は無事にみんなと合流することが出来たが、海未からは「たるみすぎです!!」と注意されるのだが、紅葉も穂乃果もむしろ置いて行った海未達が酷くないかと主張。

 

「だってみんな起こしてくれないんだもん!! 酷いよ!」

「そうだそうだ!! ホーム・アローンのケビンくんの気分だったぞ!?」

 

穂乃果は「うぅぅ・・・・・・!」と目尻に涙を浮かべ、紅葉はバス停のベンチに座って膝を抱えて落ち込む。

 

「ご、ごめんね? 忘れ物ないか確認するまで気付かなくて・・・・・・」

「俺唯一の男だし、逆に目立って気づきやすいと思うんだけど・・・・・・」

 

言われてみれば確かにと思うことりだったが、今は兎に角もうすぐバスも来るということでことりや花陽は穂乃果と紅葉を励ましつつバスに乗り込み、真姫の別荘へと向かうのだった。

 

だが、その時紅葉の腰に装着されてあるカードホルダーが何やらカタカタと震え始め、それに気付いた紅葉はみんなに見られないようにカードホルダーから1枚のカードを取り出す。

 

ホルダーが震えていた原因、それは、薄く小さな光を放つ「ウルトラマンティガ」のカードだったのだが・・・・・・その光はすぐに消えてしまった。

 

「ティガさん? 一体今のは・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧門岳の地底深く・・・・・・。

 

そこでは背中に「マグマコア」と呼ばれる赤い鉱物のようなものが生えているのが特徴的な4足歩行の怪獣、「溶岩怪獣 グランゴン」が地底に存在していたのだが、既にグランゴンは生命活動を停止しており、さらに本来その背中に生えている筈のマグマコアはまるで誰かに引き千切られたかのような跡があり・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

それからバスを降りて真姫の案内で別荘にやって来た一同だったが、その豪華な感じの別荘を見て、紅葉達は「おぉ〜」と感心の声をあげ、それににこは悔しそうな顔を浮かべる。

 

「相変わらず凄いわね」

「ぐぬぬぬ・・・・・・!」

 

別荘の中に入ると、穂乃果は先ほどと同じように「おぉ!」と感心の声をあげる。

 

「ピアノ! お金持ちの家でよく見るやつ!! そして暖炉!!」

(天井で廻ってるやつ、あれなんて言うんだろうな・・・・・・)

 

また、穂乃果と同じように凛も感心の声をあげ、「凄いにゃー!!」と興奮気味だった。

 

「初めて暖炉見たにゃー!」

「凄いよね〜、ここに火を・・・・・・」

「つけないわよ」

 

真姫にそう言われて、「つけないの!?」とでも言いたげな顔になり、ショックを受ける穂乃果と凛。

 

まだ対して寒くもないのにつける意味がないということで真姫は火をつけるのを断ったのだ。

 

最も、理由はそれだけではないようで・・・・・・。

 

「それに、冬になる前に煙突を汚すとサンタさんが入りにくくなるってパパが言ってたの」

 

その一言を聞いて、顔をお互いに見合わせる穂乃果と凛。

 

「パパ・・・・・・」

「サンタさん?」

 

ことりや海未はそんな真姫の話を聞いて笑みを浮かべ、「素敵!」と「優しいお父さんですね」と評し、それに少し嬉しそうにする真姫。

 

「ここの煙突はいつも私が綺麗にしていたの。 去年までサンタさんが来てくれなかったことは無かったんだから! 証拠に、中見てごらんなさい」

 

真姫に言われて穂乃果と凛、気になった紅葉も暖炉の中を覗いてみるとそこにはチョークで「Thank you!」と書かれており、それにどこか自慢げな真姫。

 

「ぷぷっ、アンタ・・・・・・。 真姫がサンタ・・・・・・」

 

するとにこが今にも笑い出しそうな顔をしており、肩を震わせ、今にもいらないことを言い出しそうな彼女を花陽と絵里が必死に止める。

 

「にこちゃん!!」

「それはダメよ!!」

「痛い痛い!! 何よぉ!!?」

 

強く自分の肩を掴んでくる絵里の腕を振り払うが、流石にこれはにこが悪い為、穂乃果や凛も慌ててにこを止めようと注意する。

 

「ダメだよ!! それを言うのは重罪だよ!?」

「そうにゃ! 真姫ちゃんの人生を左右する一言になるにゃ!!」

「だって、あの真姫よ? あの真姫が・・・・・・!!」

 

このまま放っておいたら本気で余計なことを言い出しそうな為、穂乃果と凛はすぐさまにこに飛びかかって口を塞ぎ、紅葉も一度にこにちゃんと注意しようと思ったのだが・・・・・・。

 

ふっと再び暖炉の中を見てみると紅葉は1つ、あることに気がついた。

 

「んっ?」

 

それは「Thank you!」と書かれた文字の少し上の少々見えづらい、位置。

 

そこにも一言文字が書かれていたが、それは英語や日本語でもなく、むしろこの地球には存在しない筈の文字が書かれており、その文字を紅葉は読むことが出来た。

 

「これは・・・・・・」

 

それはウルトラマン達の故郷、光の国の文字であり、そこには略すとこう書かれていた。

 

『メリークリスマス、byウルトラの父』

(何してんのあの人!?)

 

とは言え、ある意味本当に本物のサンタが来ていたことは間違いないようだった。

 

(エックスさんのところにもクリスマスシーズンに来たらしいし、あの人の趣味なんだろうか・・・・・・)

 

紅葉はそんなことを思いながら未だに穂乃果と凛に押さえ込まれるにこをなんとか引っ張りだし、彼女が余計なことを言わない為にもそっとにこに耳打ちし、ここにやって来たと思われるサンタのことを伝える。

 

「えっ、マジで・・・・・・?」

「えぇ、だから割と間違ってないかと」

 

取りあえず、これでにこの口は封じたことに成功しホッと安堵する紅葉。

 

しかし、そんな紅葉とにこのやり取りを見てモヤモヤした気持ちになる者が1人・・・・・・。

 

(またお兄ちゃん、にこちゃんとなんか話してる・・・・・・)

 

頬を膨らませ、嫉妬の視線を紅葉に向ける穂乃果だったが、紅葉はその視線に全く気付いておらず、それにちょっとだけ苛立ってしまうのだった。

 

(もう・・・・・・お兄ちゃんのバカ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから穂乃果、絵里、花陽、凛、にこ、希は外に出て絵里の指導の元一同は先ずは基礎練習からすることとなり、紅葉は絵里の手伝いで、それ以外のメンバーである真姫、海未、ことりは別荘の中で曲作りをすることになるのだった。

 

曲作りの為、真姫はことりと海未を2階に案内し、最初に海未が作詞をしやすそうな部屋に案内。

 

「海未はここで作詞をまとめて。 本棚に辞書とか詩の本とか用意しておいたから」

「あ、ありがとうございます」

 

真姫の手際の良さに少し驚きつつも海未はお礼を述べ、次に真姫はことりが衣装を作りやすそうな場所に案内。

 

「ことりはこっちで衣装を決めて。 ファッションの本もミシンも一通りあるから」

「わぁ。 ありがとう、凄いね!」

「私は下のピアノのところで曲を幾つか考えてるから何かあったら来てね?」

 

真姫はそれだけを言い残して部屋の扉を閉めて出て行き、ピアノのある1階へと戻るのだが、部屋に1人残されたことりはなんだか落ち着かない様子だった。

 

「うぅ・・・・・・」

 

同じ頃、海未も作詞をしようと手にペンを取ったのだが、少しずつ浮かない顔になって行き・・・・・・。

 

「でも、なんか・・・・・・」

「落ち着きませんね」

 

それぞれ別々の部屋にいるにも関わらず、タイミングピッタリに喋ることりと海未。

 

同時に、真姫も椅子に腰掛けてピアノを弾こうとするのだが・・・・・・。

 

「ふぅ、予選・・・・・・突破か」

 

 

 

 

 

 

 

一通りの基礎練習を終えた穂乃果達は今は休憩時間に入っており、希と凛は草むらに寝そべり、くつろいでいた。

 

「うっはー!! 気持ちいいね〜」

「やっぱり山はスピリチュアルパワー全開や〜」

「眠くなっちゃうね?」

 

なんて花陽が言っていると、彼女の左隣から誰かのいびきが聞こえ、見てみるとそこには大の字になって眠っている穂乃果の姿が。

 

「あっ、寝てる!?」

「なんか、穂乃果の奴何時も以上にダラしなく見えるな。 自然に囲まれてるせいか?」

 

とか言っている紅葉も草むらに寝転がって滅茶苦茶ゴロゴロしていたりするのだが。

 

「ちょっとぉ、休憩は5分よ?」

 

そんなダラけまくる穂乃果、紅葉、希、凛に注意し、にこは彼女等の代わりに「分かってるわ」と返事を返すのだが・・・・・・。

 

「んっ?」

 

その時、にこはこの森に住んでいるであろうリスが現れ、何やらゴソゴソとしていることに気付き、リスをジッとよく見てみると・・・・・・。

 

リスはにこのリストバンドを手に持って口に咥えており、座り込んでいたにこは慌てて立ち上がる。

 

「あぁ! 私のリストバンド!!」

「可愛いにゃ〜」

「そうね〜って言ってる場合じゃないでしょ!? 返しなさーい!!」

 

にこはリストバンドを盗んだリスに向かって駈け出し、それに驚いたリスはリストバンドを口に咥えたまま走り出して逃げ出し、大ジャンプした際にリストバンドを落としてそのままリスは去って行くのだが・・・・・・。

 

そのリスが落とした場所というのが結構な急な坂になっているところであり、にこは必死に手を伸ばすが・・・・・・中々リストバンドに手が届かない。

 

「と、届かない・・・・・・! 手伝ってよ!!」

「えぇ〜?」

 

にこは一緒に来ていた凛にリストバンドを取る手伝いをするように頼み、凛は渋々にこの手を右手で掴み、左腕で木にしがみつくことでにこの手が伸びる範囲を広げるのだが、それでもやはり中々リストバンドに後もう少しというところで手が届かなかった。

 

「もう限界だよ〜!」

「あと、少し・・・・・・! もうちょ・・・・・・!」

 

そして、にこはなんとかリストバンドを手に取ることに成功したのだが・・・・・・直後に凛も限界が来て木にしがみついていた左腕を離してしまい、2人は揃って急激な坂を強制的に走ることに。

 

「もう・・・・・・ダメにゃー!」

「えええええ!!!!?」

 

そのせいで2人は止まるに止まることができず、にこは草の生えた木の枝に顔を軽くぶつけてしまったり、2人で仲良く丸太のような気を飛んだりしながらひたすら前に突き進むしかなく、「誰か止めてえええええ!!!!?」と叫ぶことしかできないのであった。

 

やがて2人は森を抜けてそんなに高さがある訳ではないが、崖の上を大きく飛んでしまい、凛とにこはそのまま真っ直ぐ下にあった川に落っこちそうになってしまう。

 

しかし、その時・・・・・・。

 

同じように崖から飛んだ紅葉が空中でにこと凛を担ぐようにキャッチし、そのまま彼は川岸まで飛んで着地し、無事2人を救出することに成功するのだった。

 

「爆沈完了ってな」

「はぁ、はぁ、た、助かったわ・・・・・・」

「ぜぇ、ぜぇ、怖かったにゃ〜。 ありがとう紅葉くん」

 

紅葉はにこと凛の2人を下ろすと2人からは頭を下げられて感謝され、紅葉は「無事で良かった」とだけ言うと2人を連れてみんなの元に戻ろうとする。

 

しかし、その際紅葉の立っていた場所がやたら滑りやすかったのか、歩き出そうとした瞬間彼は「ツルッ」と滑ってしまい、すぐ後ろが川だったこともあり、彼は背中から突っ込む形となって川に落ちてしまうのだった。

 

「あっ」

「紅葉いいいいいいい!!!!?」

「紅葉くうううん!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、3人とも無事だから良かったけど・・・・・・」

「いやホント申し訳ないです」

「ごめんなさーい。 紅葉くんも助けてくれてありがとにゃー・・・・・・」

 

その後、紅葉は自力で川から這い上がって来たものの全身びしょ濡れになってしまい、今はこんなこともあろうかと用意してあった替えの服を着て暖炉に火をつけ、身体を温めているところだった。

 

最も、超人的な身体能力を持つ紅葉に取っては零下20度で5時間過ごすことも容易いので、川に落ちた程度どうということはないのだがあくまで身体能力はちょっと高めの人間としかみんなからは思われていない為、誤魔化す為に形だけでもこのようにしていた。

 

そして自分達を助けた結果、川に落ちてしまったにこと凛は絵里に注意されながら紅葉に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、2人揃って土下座して謝っていた。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

穂乃果は紅葉に寄り添って川に落ちた彼を下から覗き込むように見つめ、そんな穂乃果に紅葉は笑みを浮かべて「おう」と元気よく頷く。

 

すると穂乃果が突然紅葉の膝の上に座り込み、それに紅葉は戸惑ってしまう。

 

「お、おい!」

「この方がお兄ちゃん身体が温まるでしょ? それにお兄ちゃんのおかげで本物の暖炉に火がつくの見れたし♪」

 

単純に穂乃果が膝の上に座りたかっただけなのでは・・・・・・と思うにこだったが、その時穂乃果が「あれ?」とてっきり1階のピアノで曲作りをしていると思われていた真姫の姿が無かったことに気付き、彼女は首を傾げる。

 

「そう言えば、真姫ちゃんは?」

 

だが、そこで丁度お盆にお茶を乗せた花陽がやってきて彼女はそれぞれのメンバーにお茶を配る。

 

「あっ、じゃあ海未ちゃん達には私が持って行くよ」

 

そこで穂乃果が紅葉の膝から降りて申し出ると、花陽からお盆を受け取り、2階へと向かう。

 

「うわっ、静か。 みんな集中してるんだなぁ」

 

2階の静けさから海未やことりはかなり集中しているのだと感じ取った穂乃果はそんな2人に感心しつつ先ずは海未のいる部屋に向かい、ノックしてから部屋に入るのだが・・・・・・。

 

そこに誰もおらず、穂乃果も「あれ?」と海未がいないことに驚く。

 

「んっ? うわっ!?」

 

ただ、その代わりに机の上にぽつんっと「探さないで下さい・・・・・・。 海未」とだけ書かれた置き手紙があり、それを見た穂乃果は慌ててことりの部屋へと今度は向かう。

 

「ことりちゃん!! 海未ちゃんが・・・・・・!! ってだぁぁあー!!!?」」

 

部屋に入るとそこにことりの姿は無く、代わりに穂乃果が部屋に入った直後、目の前に飛び込んで来たのは壁に掛かっている額縁にピンクの紐で『タスケテ』 と書かれていた文字。

 

「大変だぁ・・・・・・!」

「穂乃果!? どうかしたのか!?」

 

そこへ穂乃果の声を聞きつけた紅葉が慌ててやって来ると、穂乃果はすぐさま紅葉に海未とことりが姿を消したことを伝える。

 

「あっ? アイツ等どこに・・・・・・んっ?」

 

すると、紅葉は部屋の窓からロープに見立てたカーテンが外に向かって垂らされていることに気づき、穂乃果もそれに気付いて2人で窓の外を見てみるとそこには木の下で海未、ことり、真姫の3人が囲むように体育座りをしながら溜め息を吐いていた。

 

「うっ、あれ?」

「っていうかなんでわざわざことりはカーテン垂らして出て行ったんだ!? 危ないだろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ことりは紅葉から別にコソコソする必要もないのにわざわざ2階からロープを垂らして降りるという危険行為をやったことを注意されつつ、彼女と海未と真姫を紅葉と穂乃果は別荘に連れ戻し、今はみんなで一体3人はどうしたのかと彼女等に尋ねているところだった。

 

『スランプ?』

 

そして、事情を聞いたところによるとどうにも3人、スランプに陥って中々作業が進まなかったらしく、それが原因で3人は落ち込んであんなところにいたらしい。

 

「つまり、今までよりも強いプレッシャーがかかっているということ?」

「・・・・・・はい。 気にしないようにはしているのですが・・・・・・」

「上手くいかなくて予選敗退になっちゃったらどうしようって思うと・・・・・・」

 

絵里の問いかけに海未とことりが応え、一同は2人の事情を聞いて「成程」と納得。

 

「まっ、私はそんなの関係なく進んでたけどね!」

「嘘つけ! 真姫ちゃん、海未達と一緒になって落ち込んでたじゃねーか!」

「そうだにゃ! その割には譜面真っ白にゃー!」

「って勝手に見ないで!」

 

紅葉と凛からの指摘にそれぐらいしか言い返せない真姫。

 

海未やことりは作業が進まないことに申し訳なさそうな顔を浮かべ、そんな3人の様子を見て花陽は「確かに3人に任せっきりっていうのは・・・・・・よくないかも」と意見を出す。

 

「そうね。 責任も大きくなるから負担もかかるだろうし・・・・・・」

 

絵里も花陽の意見に同意して頷き、そこで希が打開策としてある提案を打ち出す。

 

「じゃあみんなで意見出し合って話しながら曲を作っていけばいいんじゃない?」

「そうね、折角10人揃ってるんだし、それで良いんじゃ無い?」

 

希の意見ににこも賛同すると、「しょうがないわねぇ」といきなり胸を張る。

 

「私としてはやっぱり『にこにーにこちゃん』に曲を付けて・・・・・・」

「だからにこさんはワザと負けたいんですか・・・・・・? この前も言いましたよね?」

「それに、こんな風に話してたらいつまで立っても決まらないよ?」

 

紅葉はにこを睨んで彼女を黙らせ、さらににこの発言を軽くあしらう希。

 

そこで絵里は「そうだ!!」と何かを閃いたらしく、一同は外に出ると絵里は割り箸で作ったくじ引きを用意し、3班に分かれる為みんなにくじ引きを引かせる。

 

尚、紅葉は手が足りなさそうなところに手を貸すというスタイルの為、彼だけはくじ引きは引かなかったが。

 

そして、一同がくじ引きを引き終わるとことりを中心に衣装を決める班に穂乃果と花陽が入った通称「Printemps」、海未を中心に作詞する班に凛と希が入った通称「lily_white」、真姫を中心に作曲する班ににこと絵里が入ることになった通称「BiBi」に別れ、一同はそれぞれの作業を行うことになるのだった。

 

「じゃあ、ユニット作戦で曲作り頑張ろう!!」

『おぉー!!』

「おー・・・・・・」

 

穂乃果のその掛け声に、一同は右腕を挙げて気合い(真姫だけは戸惑いつつだが)を入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ずはBiBiチームと最初に彼女達を手伝うことにした紅葉。

 

絵里達は別荘にあったテントを引っ張り出して別荘の近くに紅葉が手際よく建てると、4人はその中で作業することに。

 

「ってどうして別荘があるのに外でテント張らなきゃいけないのよ!?」

「少し距離取らないと、3班に分けた意味がないでしょ。 丁度別荘にテントもあったし」

 

なぜ別荘があるのにわざわざテントを建てる必要があるのかというにこの質問に、絵里はそう応え、こんなので本当に作曲できるのだろうかと疑問に思うにこ。

 

「私はどうせあとでピアノの所に戻るから」

「うぅ・・・・・・」

 

真姫はそうは言うのだが、にこは未だに納得していないかのような顔を浮かべており、そんなにこに絵里は苦笑。

 

「じゃあ先ずは食事でも作りましょうか。 真姫が少しでも進めるように」

 

絵里のその言葉に一瞬真姫が顔を赤くするが、すぐに手に持ったノートに視線を戻し、作曲作業を進めるのだった。

 

「なら俺も料理の準備、手伝います」

「アンタ、料理なんてできるの?」

 

にこは海の合宿の時に料理上手であることは分かっているし、絵里も料理自体はできそうだが、正直紅葉はどうなのだろうかとにこは疑問を抱く。

 

なにせ紅葉はどちらかと言えば食べる方専門なイメージがあるので正直にことしてはちょっと不安だった。

 

「俺、一応和菓子屋の息子ですよ? お菓子作り自体はできますし、普通の料理もある程度出来ます」

「そう言えば実家、和菓子屋だったわね」

 

自分の料理の腕を疑われて、反論する紅葉。

 

確かに和菓子屋の息子でお菓子作りの手伝いなどをしているのだとしたらある程度料理も出来るかもしれないと納得する絵里とにこであった。

 

「あっ、そうだわ。 この際だから、紅葉くんにお願いがあるのだけど・・・・・・」

「んっ? なんすか絵里さん?」

 

料理を作る準備をしながら、絵里が不意に紅葉に声をかけると彼はなんだろうと思い首を傾げると、いきなり紅葉は絵里にビシッと一差し指を向けられたのだ。

 

「それよ、それ」

「えっ?」

 

いきなり絵里に「それ」だと言われても、なんのことか分からない紅葉。

 

「そろそろ紅葉くんも、3年生に対してさん付けや敬語、いい加減辞めにしない?」

「・・・・・・いや、でも、俺のキャラ的に・・・・・・」

「紅葉くんだって、私達μ'sの仲間よ? それに、ラブライブ優勝を目指すなら今以上の結束が必要になる。 だから、そろそろ私達に対して敬語を使ったりしないで欲しいと思って。 ダメかしら?」

 

紅葉は自分のキャラ的に合わないと思って今まで3年生の先輩達には「さん付けで敬語」というスタイルを取っていたが、ラブライブ優勝を目指すならば今以上の結束力が必要だと絵里に説かれ、それには紅葉の力も必要だと語った彼女はその為にもそろそろもう紅葉も絵里や希、にこに対してさん付けや敬語を辞めても良いのでは無いだろうかと提案したのだ。

 

「・・・・・・それは、まぁ、確かに穂乃果達には俺も優勝して欲しいし、俺も出来る限りのサポートはしたいと思いますが・・・・・・」

「だったら、もうさん付けや敬語を辞めても言い頃合いだとは思うわよ? どう?」

 

絵里にそう言われて、少しばかり考え込む紅葉だったが・・・・・・すぐに確かに絵里の言う通りだと判断し、彼は絵里に言われた通り今から3年組に対して敬語やさん付けをやめることに決めたのだった。

 

「分かりまし・・・・・・分かったよ、絵里」

「うん、素直でよろしい。 一応、このことは私もメールでみんなに伝えておくわね」

「あぁ、お願いしま・・・・・・頼む」

 

 

 

 

 

 

一方、Printempsチームはというと・・・・・・。

 

穂乃果達は川沿いでテントを張り、ことりはその中で衣装のデザイン画を描いていたのだが・・・・・・やはりまだどうにも上手く行かないようでことりは眉間にしわを寄せて溜め息を吐き、困り果てている様子だった。

 

「はぁ、穂乃果ちゃーん?」

「すぅ、すぅ」

 

ことりが穂乃果に助けを求めようと声をかけるのだが、穂乃果はことりの隣でスヤスヤと眠っており、ことりが呼びかけても全く起きる気配が無かった。

 

ことりの性格上、海未のように叩き起こすということもできず、彼女は一度テントの外に出て深呼吸をして気分転換を計る。

 

「すぅー、はぁー。 気持ちいい〜」

「ことりちゃん、どう? 進みそう?」

 

そこへことりよりも前に外に出ていた花陽が戻って来ると彼女は衣装のデザインの進行状況は上手く行っているかと尋ねるとことりは「うん」と頷く。

 

「ひと息ついたら少しイメージが湧いてきたよ」

 

そこでことりが花陽が両手で籠を持ち、その中にコスモスの花が入っていることに気付くとことりは「それは?」と花陽に尋ねる。

 

「綺麗だなぁって思って。 同じ花なのに1つ1つ色が違ったり、みんなそれぞれ個性があるの。 今回の曲のヒントになるといいな♪」

 

どうやら花陽は衣装のヒントになればということでコスモスの花を持ってきたらしく、それにことりも笑顔で「ありがとう、花陽ちゃん!」とお礼を述べる。

 

「・・・・・・なんだか・・・・・・」

「うん」

「眠くなっちゃうね〜」

 

ポカポカとした日差しや大自然の雰囲気のせいか、ことりや花陽もなんだか眠くなってしまい、2人も穂乃果と同じように・・・・・・。

 

「おーい? 穂乃果、ことり、花陽ちゃん? いるか〜?」

 

そこに絵里達と料理の準備をある程度終わらせ、穂乃果達の手伝いにやってきた紅葉。

 

しかし、やけに物静かなことに紅葉は首を傾げつつ、「入るぞ?」と声をかけつつテントの中を覗くとそこには穂乃果、ことり、花陽がスヤスヤと眠る姿があり、「えっ」とそれに紅葉は戸惑う。

 

「なにここ、天国か?」

 

μ'sの中でも特にほんわかした3人が眠っている姿となると、なんだか癒やされる感じがしてしばらくの間3人から目が離せなかった紅葉。

 

(しかもなんか凄く良い香りがする)

 

それは花陽の傍に置かれてあったコスモスの花の匂いか、それとも彼女等3人の女の子特有の香りかは分からないが、これ以上はいけないと思い紅葉はそっとテントから抜け出そうとするのだが・・・・・・。

 

「あれ? お兄ちゃん・・・・・・」

 

そこで「う〜ん」と目を擦りながら未だに寝惚けた様子とは言え、目を覚ます穂乃果。

 

穂乃果は紅葉の姿を見ると、「えへへ〜」と笑顔を彼に向けながら紅葉の腕を掴んでテントの中に引っ張り込んで座らせると、そのまま紅葉の膝に自分の頭を置いて膝枕の形にさせる。

 

「お、おい!?」

「わーい、お兄ちゃんの膝枕だぁ・・・・・・。 くぅ・・・・・・」

 

そのまま再び穂乃果は戸惑う紅葉を余所に眠りに入ってしまい、紅葉は困り果ててしまうのだった。

 

「はぁ、全く・・・・・・」

 

そんな穂乃果に呆れつつ、紅葉は視線をコスモスの花に移す。

 

「コスモスか・・・・・・。 なんだかこの3人にピッタリだな」

 

どこかの慈愛の勇者のことも思い出しつつ、そういう意味でもなんだかコスモスの花がこの3人にピッタリだなと思いつつ、紅葉は気持ちよさそうに眠る穂乃果の頭を撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして最後にlily_whiteチームはというと・・・・・・。

 

彼女等3人はなぜか、山を登っているところだった。

 

「いやああああああ!!!!?」

「凛!! 絶対にこの手を離してはなりません!! 死にますよー!!!!」

 

ここはかなりの強風が吹いており、そのせいで岩を登っている際に滑って落ちそうになったのか、今は先に登っていた海未が落ちそうになった凛の腕を自分の手で掴み、その下から希が凛の背中を押さえている状態だった。

 

「いやああああ!!? 今日はこんなのばっかりにゃー!!」

「ファイトが足りんよぉー!」

「・・・・・・なにしてんの」

 

夕暮れ時になってようやく穂乃果から解放された紅葉は今度は海未達を手伝おうとやってきたのだが、なぜか山登りしている海未達に何してるんだと言わんばかりの視線を向ける。

 

「おや? 紅葉、よく私達がここにいると分かりましたね」

「んっ、まあ・・・・・・」

 

そこで海未が紅葉がやってきていることに気づき、紅葉は希と一緒に凛を押し上げ、取りあえず紅葉も折角来たのならと海未に半場強制的に山登りを付き合わされることに。

 

「別に俺は山登りに付き合うのは良いけど」

「しかし、紅葉。 その軽装でよく1人でここまで来れましたね? やはり紅葉は昔からその超人的身体能力は驚異的ですね」

「まぁな。 っていうかだからなんで山登りしてんの? 凛ちゃん泣いてるじゃねーか」

 

さらに少し歩いた後、海未の疑問に応えつつ、泣きじゃくる凛に飴玉をあげながら励ます紅葉。

 

「うぅ、ぐすっ。 ぐすっ」

「よしよし頑張った頑張った」

 

また海未と希はジッと空を見つめ、山に雲がかかってきたことに気づき、渋い顔を浮かべる2人。

 

「雲がかかってきた。 山頂まで行くのは無理やね」

「そんな・・・・・・! ここまで来たのに・・・・・・!!」

「いやちょっと、山頂まで行くつもりだったのか?」

 

そんな海未達に一体なにしに来たんだと思わずにはいられない紅葉。

 

それには凛も同じ気持ちなようですすり泣きながら「酷いにゃー!!」と不満を口にする。

 

「凛はこんなとこ全然来たくなかったのに!!」

「仕方ありません。 今日はここで明け方まで天候を待って翌日アタックをかけましょう!」

 

しかし、海未は未だに山頂を目指すことを諦めていないようでそれに驚愕する凛。

 

「山頂アタックです!!」

「まだ行くの!!?」

 

未だに山頂を目指すのを諦めていない海未に凛はまだ進むのかと問いかけると海未は「当然です!!」と言い放つ。

 

「なにしにここに来たと思ってるんですか?」

「作詞に来た筈にゃー!!!!」

 

泣き叫ぶように言い放つ凛の言葉を聞いて「ハッ!!」と声をあげる海未。

 

「えっ、なに・・・・・・まさか忘れてたの?」

 

紅葉からの指摘に海未は「そ、そんなことありません!!」と否定するが、どう見ても忘れていたようにしか見えない。

 

「山を制覇し、成し遂げたという充実感こそが創作の源になると私は思うのです!!」

 

なんて言い訳しているが、やはりどう見ても忘れていたとかしか思えない紅葉と凛。

 

そんな海未を咎めるように「まぁまぁ」と声をかける希。

 

「気持ちは分かるけど、ここまでにしたといた方がいいよ」

「ですが・・・・・・」

「山で1番大切なんは何か知ってる? チャレンジする勇気やない。 諦める勇気。 分かるやろ?」

「っ・・・・・・」

 

希はそう言うと、海未は何も言い返さなかったものの渋々納得した様子であり、凛と紅葉に下山の用意をするように頼む。

 

「凛ちゃん、紅葉くん、下山の準備。 晩ご飯はラーメンにしよう。 下に食べられる草が沢山あったよ、海未ちゃんも手伝って」

 

戸惑いつつも海未は「は、はぁ」と返事をするが、同時に食べられる草のことなどが分かる希を不思議に思う海未と凛だった。

 

「それにしても、こんなことまで詳しい希って・・・・・・」

「謎にゃー」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、絵里達はというと・・・・・・3人は焚き火をして囲んで座っていた。

 

既に空は暗くなってきており、そんな暗くなっていく空を見上げながら、不安そうな顔を浮かべる絵里。

 

「ねえ、このままだと火を消したら真っ暗よね?」

「なに? まずいの?」

「まさか苦手なの?」

 

絵里の質問に対してもしかして暗闇が苦手なのだろうかと真姫とにこが尋ねると、両手をぶんぶん振って「まさか!」と誤魔化す。

 

しかし、先ほどからどう見ても顔色が悪く、「待っててね」と2人に言うと彼女はテントの中に戻り、ライトを付けて明かりを灯す。

 

「ふふ、絵里にあんな弱点があったなんてね」

「この歳にもなって暗いのが怖いなんて・・・・・・」

 

そんな絵里に真姫やにこは思わず笑ってしまうのだが、直後・・・・・・にこは焚き火の炎が少しだけ消えそうになることに気づき、それに彼女は「うわぁ!?」と小さな悲鳴をあげると必死に息を吹きかけて炎をなんとか先ほどと同じくらいまで再び燃え上がらせる。

 

どうやらにこもあまり絵里のことが言えないらしい。

 

「全く、こんな3年生の為に曲考える方の身にもなってよ」

 

そんな絵里とにこの姿を見て苦笑しながらそう呟く真姫。

 

しかし、それを聞いたにこは「えっ?」と怪訝そうな顔をする。

 

「今、なんて言った?」

「えっ?」

「今、『3年生のため』って言ったわよね!?」

「だ、だったら何よ!?」

 

真姫の言葉に、「そうじゃないかと思ってたのよね」とどこか呆れたように言うにこ。

 

「3年生の為に良い曲作って3年生の為に勝とうって・・・・・・」

「そ、そんなこと・・・・・・」

 

真姫はにこの言葉を否定しようとしたが、途中で言葉が詰まり、黙り込んでしまった。

 

それはにこの言っていることが正しいからだ。

 

3月になれば絵里、希、にこの3人は卒業。

 

こんな風にみんなと一緒にいられるのはあと半年しかない。

 

それにスクールアイドルでいられるのは在学中だけであり、卒業してからもプロのアイドルを目指す者はいるがこの9人でラブライブに出られるのは今回しかない。

 

それが真姫にとってプレッシャーになり、スランプになっていたのかもしれない。

 

にこもそれを薄々と感じており、今それがハッキリとした。

 

「曲はいつも、どんな時も全員の為にあるのよ」

「なっ、なに偉そうに言ってんのよ」

 

真剣な表情で語るにこに、真姫は思わずそっぽを向いてしまう。

 

「部長だもん、当たり前でしょ?」

 

笑みを浮かべながらそう応えるにこは焚き火の中から細長い木の枝で突き刺した焼き芋を取りだす。

 

「あっ、これは?」

「焼き芋よ。 焚き火といったら焼き芋でしょ?」

 

戸惑いつつも、真姫はにこから焼き芋を受け取るのだが、その熱さに思わず落っことしてしまいそうになるが息を吹きかけてなんとか冷ます。

 

「あちち! ふぅー、ふぅー! はい」

 

ある程度焼き芋を冷ますと、真姫は焼き芋を半分に割ってにこに差し出す。

 

「あっ・・・・・・ありがとう」

 

焼き芋を受け取りながらお礼を言うにこ。

 

それから2人同時に焼き芋を頬張り、そこで絵里が不安そうな顔を浮かべながらテントから「どうかしたの?」と顔を出す。

 

「食べたわねー! 食べた以上はにこを1番目立つようにしてよ! 3年生なんだし!」

「何よそれ!? 台無し!!」

「なにが台無しなのよ!?」

「台無しだから台無しって言ったの!!」

「なんですってー!! 焼き芋返しなさい!!」

 

そこでは真姫とにこがそんなやり取りをしており、そんな微笑ましい光景を見て絵里は思わず笑ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

また穂乃果達はというと・・・・・・。

 

眠りから覚めた彼女達は露天風呂を発見し、丁度風呂に入りに来たという紅葉と合流し、それぞれ男女別々に別れて男風呂、女風呂に入浴することになったのだった。

 

その際、穂乃果が「混浴ないのか」となぜかおもむろに残念がっていたが。

 

「こんな所にお風呂があったなんて・・・・・・」

「気持ちいいね〜」

 

穂乃果、ことり、花陽の3人がお湯に浸かると同時に、すぐ隣の男湯の方から「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」というお風呂に浸かって声をあげるサンダーブレスターみたいな紅葉の声が聞こえて来て、思わず3人はビクっとしてしまう。

 

「す、凄い声したね」

「お兄ちゃん、銭湯とか温泉とか割と昔から好きだったから」

 

花陽が紅葉の声に驚いていると穂乃果が紅葉は昔からお風呂好きだったと説明し、「そうなんだ」と花陽は頷く。

 

「それにしても、ホントに気持ちいいね。 なんか眠くなっちゃう」

「また〜?」

 

風呂の気持ちよさに、また眠気を感じる穂乃果。

 

同時に穂乃果とことりの会話が聞こえていたのか「風呂で寝るなよー!」という紅葉の声が聞こえて来た。

 

「風呂で寝ると失神することもあるらしいからなー!」

「分かってるよー! 寝ないように気をつけるからー!!」

「ところで、他のみんな、今頃どうしてるかな?」

 

穂乃果は紅葉に返事しつつ、花陽がふっとみんなはどうしているだろうかと呟く。

 

「どうだろうねぇ。 私、まだできてない・・・・・・」

「できるよ!」

 

最初の頃に比べて多少進歩したとは言え、未だに衣装のデザインが上手く出来上がっていないことり。

 

しかし、即座に穂乃果が「出来るよ!」とハッキリと断言。

 

「でも・・・・・・」

「だって、9人もいるんだよ!!」

「「穂乃果ちゃん!?」」

 

そこで穂乃果が勢いよく立ち上がり、それに驚くことりと花陽。

 

「誰かが立ち止まれば誰かが引っ張る。 誰かが疲れたら誰かが背中を押す。 みんな少しずつ立ち止まったり、少しずつ迷ったりして、それでも進んでるんだよ!!」

 

そんな穂乃果の言葉に、花陽とことりは共感するかのように笑みを浮かべる。

 

また、それを聞いていた紅葉も、「うんうん」と頷いていた。

 

(あれは、穂乃果だから言えた言葉だな。 それに俺も、お前が引っ張ってくれたから、お前が背中を押してくれたから、俺は・・・・・・自分を取り戻せたんだ)

 

つい先日、オーブオリジンの力を取り戻したことを思い出しながら改めて穂乃果に心から感謝する紅葉。

 

そして穂乃果は再びお湯に浸かり・・・・・・。

 

「だからきっと、できるよ。 ラブライブの予選の日はきっとうまく行くよ!」

「うん!」

「そうだね」

 

穂乃果の言葉にことりと花陽は力強く頷き、3人は夜の星空を見上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に海未達はというと・・・・・・。

 

彼女達3人はテントを張って寝そべりながら夜空を見上げ、その都会では見れない星空に圧巻されているところだった。

 

「綺麗だにゃー!」

「星はいつも自分の事を見てくれる。 星空 凛って言うくらいなんやから、星を好きにならないとね?」

 

希がそう言うと、凛は「うん!」と素直に頷き、また海未も星座も詳しい希に少しばかり驚いていた。

 

「星座も詳しいみたいですね」

「1番好きな星座とかあるの?」

「そうやねぇ。 印象に残ってるのは南十時星かな」

 

凛の1番好きな星座はあるのかという質問に対し、「南十時星」と応える希だったが、海未も凛も星座に詳しくないこともあってかイマイチ、パッとしない感じだった。

 

「ペンギンと一緒に見たんやけどね」

「「南極!?」」

 

海未と凛が顔を見合わせて驚いていると、希は「あっ、流れ星!」と言い放ち、それに海未と凛は顔を上に向け、凛は「どこどこ?」と必死に流れ星を探す。

 

「南に向かう流れ星は物事が進む暗示」

「希・・・・・・?」

「1番大切なのは本人の気持ちよ?」

 

希と海未は上半身だけを起こし、希はそのような言葉を海未に伝えると、テントの奥へと入って行くのだった。

 

そこで凛が「流れ星見損なったにゃー!」とボヤきながら彼女も上半身だけを起こす。

 

「いいえ、元々無かったですよ。 流れ星なんて」

「うん?」

 

そんな海未に、凛は首を傾げるが・・・・・・海未は希が何を言いたかったのか、それを理解したのか、彼女は希の方に視線を向けながら、微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、温泉から上がった紅葉はというと・・・・・・。

 

彼は別荘の方へと戻って来ており、今日はもう特に自分がやることはないだろうと思いソファに寝転がって眠る準備に入っていた。

 

正直、他のみんながテントで寝るというのに自分だけ別荘で眠るのはどうかと思ったが・・・・・・。

 

よく添い寝してくる勝手に穂乃果だけならまだしも、女の子ばかりの中で一緒に眠る訳にもいかない為、そんな中自分だけベッドを使うのも気が引けるため、今日はソファで眠ることにしたのだ。

 

しかし・・・・・・。

 

「・・・・・・寂しい」

 

さっさと寝てしまおうとする紅葉だったが、紅葉はあまりの静けさのせいか無性に寂しさと空しさを感じていた。

 

「よっこらせ」と上半身だけを起こし、扉を見つめ・・・・・・そこから穂乃果辺りがやって来てくれないだろうかなんて思わず紅葉は考えてしまう。

 

しかしすぐに彼は首を左右にぶんぶん振ってその考えを打ち払う。

 

「俺ってこんな寂しがり屋だったか・・・・・・?」

 

こんな風に寂しさを覚えることに少しだけ驚く紅葉だったが、思えば、このように1人でいるのは随分と久しぶりのことだった。

 

「こんなんじゃ、いけねえよな・・・・・・俺」

 

自分はずっと穂乃果達の傍にいられる訳ではない。

 

自分がウルトラマンである限り、その使命を果たす為に必ず何時か旅に出なくてはいけなくなる。

 

それなのにこんなことで寂しさなんて感じてなどいられない。

 

(さっさと寝よう)

 

その為にも紅葉は再びソファに寝転び、眠りに入ろうとするのだが、ふっと彼の脳裏にある考えが過ぎる。

 

(俺がいなくなると知った時、穂乃果はどんな顔をするんだろうな・・・・・・)

 

穂乃果達に黙っていなくなるようなことはしない、いずれ自分は旅に出なくてはいけないことを打ち明けるだろう。

 

その時自分がオーブであることを明かすかは分からないが・・・・・・なんにしても、もし、穂乃果に対して自分がいなくなるということを話した時・・・・・・彼女はどんな顔をするのだろうかと紅葉は不安な気持ちになった。

 

彼女のことなので「行かないで!!」と言って泣きじゃくるかもしれない。

 

だが、マガオロチの時彼女は何も事情を聞かず、玉響姫の復活を手伝ってくれたことから、意外に何も聞かず見送ってくれるかもしれない。

 

自分がいなくなった時、海未達も悲しんでくれるとは思う・・・・・・。

 

だが、やはりどちらにしても自分が1番悲しませてしまうのはきっと穂乃果だろう。

 

(・・・・・・いや、今はラブライブに向けて集中しよう)

 

何にしても、それは恐らく当分まだ先の話。

 

自分までこんな調子じゃ、ラブライブで優勝なんて夢のまた夢だろう。

 

しっかりとマネージャーとして穂乃果達を今はサポートすることに集中しようと心に決める紅葉。

 

そんな時、不意に部屋の扉が開き、誰かが入って来たことに気付いて紅葉は飛び起きる。

 

(んっ? 誰だ? 穂乃果か・・・・・・?)

 

てっきり穂乃果が前の合宿の時のようにまた添い寝しに来たのかと思ったが、やってきたのは穂乃果ではなく真姫だった。

 

「真姫ちゃん?」

「あっ・・・・・・って、なんであなたソファで寝てるのよ?」

「俺だけベッドってのも申し訳ないからな」

 

なんでも真姫はピアノを弾きに来たようで、どうやら絵里達と過ごす内にスランプをなんとか脱したようだった。

 

真姫は「ピアノ使うから、2階のベッド使っても良いわよ」と紅葉に言いつつ、彼女は椅子に座り、ピアノに向き合う。

 

「『いつも、どんな時も全員のために』・・・・・・か」

 

ピアノを弾き始め、真姫がそう呟くとそこへ丁度真姫と同じようにスランプを脱したらしい海未やことりも別荘へと戻って来て現れたのだ。

 

「ことり、海未! どうやら3人共、全員スランプを脱したようだな?」

「えぇ、みんなのおかげで・・・・・・」

「うん!」

 

そこから真姫、海未、ことりの3人はそれぞれ自分のやるべき作業を行い始め、紅葉は邪魔にならないよう、真姫のお言葉に甘えてベッドを使わせて貰おうと2階へと移動。

 

その後は真姫も海未もことりも、躓くようなこともなく、順調に作業が捗るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その翌朝・・・・・・。

 

「お前もう山来るなよ」

 

紅葉が朝の散歩をしていると偶然寝惚けて崖の上で眠っている穂乃果を発見し、即座に叩き起こして崖から離れさせ、そのことからもう二度と山に来るなと注意する紅葉の姿がそこにはあった。

 

「ご、ごめーん! まさかあんなことになってるなんて・・・・・・」

 

穂乃果はそのことについて二度とこんなことがないように気をつけると謝罪しつつ、その後、穂乃果と紅葉はたまたま道端で希、凛、にこ、絵里、花陽と合流する。

 

「あれ? どうしたのみんな?」

「目が覚めたら、海未達がいなくなってて・・・・・・」

 

「どうしたの?」と穂乃果が一同に尋ねると、なんでも目覚めたら真姫もことりも海未もいなかったのでみんなで今探しているところだという。

 

「あー、アイツ等なら別荘にいるぞ。 みんなのおかげでスランプから脱したってな」

「えっ、そうなの!?」

 

昨夜別荘にいた紅葉は海未達の行方を知っている為、みんなにそのことを説明して一同が別荘に向かうとそこでは窓際のソファにもたれ掛かって眠っていることりと海未、それとピアノの上に突っ伏して眠っている真姫の姿があった。

 

「全く、しょうがないわね」

「フフ、ゆっくり寝かせといてあげようか」

 

にこと希はそんな彼女達の姿に微笑み、絵里がピアノの上に置いてあった作曲の紙を手に取る。

 

「そうね。 でも、起きたらすぐに練習よ? みっちりね」

 

また海未やことりの傍には作詞の紙や衣装のデザイン画が描かれたスケッチブックが置いてあり、それに穂乃果達は嬉しそうに微笑むのだった。

 

「んっ?」

 

だが、その時、紅葉は腰のカードホルダーがまた・・・・・・。

 

否、以前よりも強くカタカタと震え始め、紅葉は「俺ちょっとトイレ」と穂乃果達に言ってその場を離れ、別荘から外に出ると素早くカードホルダーからホルダーが震えている原因の3枚のカードを取り出す。

 

それは昨日と同じように小さな光を発するティガのカードだったのだが・・・・・・今回は「マルチ」「パワー」「スカイ」のカードが全て光っており、紅葉が一体何が起こっているのかと頭に疑問符を浮かべた次の瞬間・・・・・・。

 

突如として山から噴火が起こり、マグマが吹き出したのだ。

 

 

 

 

 

 

「うおっ!?」

『ひゃあああ!!!?』

 

それに別荘にいる穂乃果達や紅葉は驚きの声をあげ、眠っていた海未達も飛び起きる。

 

紅葉はもしかしてティガのカードが光っているのはあのマグマが吹き出した山のことを警告していたのだろうかと思い、3枚のティガのカードを山の方に向かってかざす。

 

「あれはただの噴火じゃないな」

 

するとティガのカードは先ほどよりも眩い光を放ち、やはり予想通りティガのカードはあの噴火を警告していたのだろうと思い、スマホを取り出して穂乃果に連絡を入れる。

 

『あっ、お兄ちゃん!? 今どこ!? トイレ行ったんじゃ無かったの!?』

「さっきの噴火の音を聞いて外飛び出したんだよ。 それよりも穂乃果、みんなと一緒にすぐに避難しろ」

『えっ、お兄ちゃんは!?』

「念のため、周辺に俺達以外に人がいないかちょっと確認してから俺も避難する。 それじゃ」

 

「あっ、ちょっと」と言う穂乃果の声が聞こえたが、紅葉は半場強引に通話を終了させ、オーブリングを取り出す。

 

「ティガさん!!」

『ウルトラマンティガ! スカイタイプ!』

 

紅葉は「ウルトラマンティガ スカイタイプ」のカードをオーブリングにリード。

 

『マックスさん!!』

『ウルトラマンマックス!』

 

続けて今度は紅葉は「ウルトラマンマックス」のカードをオーブリングにリードさせる。

 

「速いやつ、頼みます!」

『フュージョンアップ!』

 

最後に紅葉はオーブリングを掲げ、「ウルトラマンティガ・スカイタイプ」と「ウルトラマンマックス」の力を合わせた「ウルトラマンオーブ スカイダッシュマックス」へと変身する。

 

『ウルトラマンオーブ! スカイダッシュマックス!』

『輝く光は疾風の如し!!』

 

変身を完了させた紅葉は先ずは吹き出したマグマを鎮火させようと空中に飛び上がって噴火した山に向かって素早く向かい、吹き出たマグマを凍らせるため、右手を突き出して放つ冷気光線「スカイダッシュブリザード」を放つ。

 

『スカイダッシュブリザード!!!!』

 

スカイダッシュマックスの素早い動きと合わせ、森に溢れ出る前にマグマを凍り付かせ、消火させるとそのままオーブは身体を縮小させ、等身大になるとマグマが噴火した山の方に向かって地面に突っ込み、原因と思われるものが何かを探す。

 

やがて、地底の空洞のような部分に降り立つと、オーブの目の前には逆さま状態の数日前に戦ったゴルザが眠っていたのだ。

 

『ゴルザ!? あの時、倒した筈じゃ・・・・・・』

 

数日前、倒したと思われていたゴルザ・・・・・・。

 

しかし、ゴルザはあの時、ガルラシウムボンバーが直撃する直前・・・・・・ギリギリのところで地面に潜りきることに成功しており、ゴルザはオーブへのリベンジを行う為、ここで山の中のマグマのエネルギーをずっと吸収していたのだ。

 

『あの時、俺は逃がしてたってことか』

 

すると、ゴルザはオーブの気配を感じ取ったのか、ゆっくりと瞼を開けてオーブの姿を確認すると、ゴルザは大きく吠え上がる。

 

「ガアアアアアアアア!!!!!!」

 

目を覚ましたゴルザは地面を掘って地上へと向かい、それをオーブも急いで追いかける。

 

『待ちやがれ!!』

 

 

 

 

 

 

そして、大地を突き破り遂にゴルザが地上に姿を現したのだが・・・・・・その姿は以前と異なっており、マグマのエネルギーを吸収し、さらにはグランゴンのマグマコアを食べたことによって体表が赤くなり、血管のようなものが身体に浮かび上がって両腕は太く、よりマシッブで筋肉質になった姿・・・・・・。

 

ゴルザは超強化された「超古代怪獣 マグマゴルザ」に進化していたのだ。

 

「グルアアアアアア!!!!!」

 

遅れて「パワーストロング」に姿を変えたオーブも地面を突き破って現れ、巨大化してマグマゴルザと対峙する。

 

『お前にはこの姿で対抗だ!!』

 

既にカラータイマーは激しく点滅している為、オーブは早急に決着をつけようとマグマゴルザに駆け出して行き、右拳を振るうのだが、マグマゴルザはそれを左手で受け止め、攻撃を防いでしまう。

 

『なに!?』

 

オーブはマグマゴルザの腕を振りほどこうとするのだが、全くビクともせず、それにマグマゴルザが「ニヤリ」と笑うと逆にマグマゴルザの右拳がオーブの胸部に叩き込まれ、オーブは大きく後退ってしまう。

 

『グゥ!?』

「グハハハハハ!!!!」

 

まるで嘲笑うかのような鳴き声をあげるマグマゴルザ。

 

さらにマグマゴルザは怯んだ隙を狙ってオーブの首を両手で掴みあげて持ち上げる。

 

『ウアアア・・・・・・!!?』

 

そのままマグマゴルザはオーブを地面に叩きつけると、倒れ込んだオーブを今度は蹴り上げて吹き飛ばす。

 

『ウオオオッ!!?』

 

さらに地面を転がるオーブに向かって額から放つ強力光線、「ハイパー超高熱熱線」を発射し、それを喰らわせてオーブをさらに吹き飛ばすマグマゴルザ。

 

『ヌアアアアア!!!!?』

 

身体中から火花を散らし、身体へのダメージのせいでまともに動けなくなるオーブ。

 

そんなオーブにマグマゴルザはゆっくり近づき、オーブの元まで辿り着くとその首を右手で掴みあげて無理矢理立ち上がらせ、そのままあの時のお返しとばかりにオーブに対してサバ折りを繰り出す。

 

『ウアアアアア!!!!?』

「グハハハハハ!!!!」

 

それによって苦痛の声をあげるオーブだったが、なんとかマグマゴルザに頭突きを喰らわせることで拘束を解き、すぐさまマグマゴルザから離れるオーブ。

 

『はぁ、はぁ・・・・・・こうなったら!』

 

インナースペース内の紅葉はオーブオリジンのカードを取り出し、それをオーブリングにリードさせる。

 

『覚醒せよ! オーブオリジン!』

『オーブカリバー!!』

 

オーブリングからオーブカリバーが出現し、紅葉はそれを掴み取り、中央のカリバーホイールというリング部分を回すと、ハーモニカのメロディーのようなものが流れ、紅葉は「ウルトラマンオーブ オーブオリジン」へと変身。

 

『銀河の光が、我を呼ぶ!!』

 

戦闘BGM「オーブオリジンのテーマ」

 

「グハハハハ!!」

 

そんなオーブに、マグマゴルザは「姿を変えたからなんだ」とばかりにハイパー超高熱熱線をオーブに向かって放つが、オーブはオーブカリバーを盾に見立てて刀身で防ぎ、さらに刀身を傾けることでマグマゴルザの熱線を反射。

 

反射した熱線はマグマゴルザに直撃し、それにたじろくマグマゴルザ。

 

「グルゥ!?」

 

さらにオーブは右手に光の光輪を作り出し、それを相手に向かって投げる「オリジウムソーサー」を放つが、マグマゴルザはそれを胸で受け止め、吸収してしまう。

 

『っ!? なら!!』

 

オーブはマグマゴルザに向かって駈け出して行き、マグマゴルザは尻尾を振るってオーブを攻撃するが・・・・・・オーブはスライディングすることでそれを躱し、そのままマグマゴルザに突っ込んでいってすれ違いざまにオーブカリバーを振るってマグマゴルザの膝を斬りつける。

 

「ガアアア!!?」

 

流石に関節となればダメージは入りやすいらしく、それを受けたマグマゴルザは両膝を突いてしまう。

 

だが、痛みを堪えながらもマグマゴルザはなんとか立ち上がり、オーブの方へと顔を向けると突進して体当たりを繰り出す。

 

しかし、オーブはそれをマグマゴルザの頭上を飛び越えることで躱し、マグマゴルザはすぐさま尻尾を振るって背後に回り込んだオーブに攻撃を仕掛けるがオーブはオーブカリバーを振るって尻尾を切り裂く。

 

『シェアア!!』

「グウウウ!!!!?」

 

オーブはマグマゴルザの方に向き直ると、インナースペース内の紅葉はオーブカリバーをオーブリングにリードさせる。

 

『解き放て! オーブの力!!』

 

カリバーホイールを紅葉は高速回転させてからトリガーを引き、オーブはオーブカリバーに宿る4つの属性とオーブ自身が持つ光と闇の力を結集し、掲げたオーブカリバーを円を描くように振るい、オーブカリバーを相手に向けて放つ虹色の必殺光線・・・・・・「オーブスプリームカリバー」をマグマゴルザに向かって放つ。

 

『オーブスプリームカリバー!!!!!』

「グウウウ!! グルアアアアアアア!!!!!?」

 

それによって直撃を受けたマグマゴルザは光線を最初こそ吸収しようとしたものの、その威力の高さの吸収し切ることができず、火花を散らし、倒れ、爆発四散するのだった。

 

「お、おぉ、やったにゃー! オーブが勝ったよ〜!!」

 

避難する為、外に出ていた穂乃果達。

 

そしてオーブが吹き出したマグマなどを鎮火させ、マグマゴルザを倒したのを目撃して、凛は喜びの声をあげ・・・・・・他の一同もそのことにホッと胸を撫で下ろすのだった。

 

「・・・・・・」

 

ただ、そんなオーブの姿を穂乃果はジッと見て、1つだけ思ったことがあった。

 

それは紅葉がオーブニカを自分に託し、ゼッパンドンの元へと走って行った時にも抱いた疑念。

 

紅葉がゼッパンドンの元に走り去って姿が見えなくなると、その姿が見えなくなったほぼ直後にオーブが現れた。

 

幾ら頭の悪い自分でも、そのオーブの登場のタイミングの良すぎることくらいは気付く。

 

それに思い返せば、オーブがいる時紅葉は必ずと言って良いほどいなくなっているような気もするし、不自然な点も多いような気もした。

 

だから穂乃果は、ほんの少し、ほんの少しだけ思ってしまったのだ。

 

もしかしたら、ウルトラマンオーブは・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、オーブが迅速な対応をしてくれたおかげで大した被害もなく、穂乃果達は別荘に戻ってきてダンスの練習をその後は何事もなく行うことができ・・・・・・。

 

帰って来てからも学校の屋上でライブの告知をしたり、ラブライブ出場に向けてダンスの練習を行うのだった。

 

その際、にこがあのリスにリストバンドを奪われていたことに気付いたりしていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。

 

別荘で1人寂しくしてる紅葉の姿を見た穂乃果の感想。

 

「寂しがり屋とか、お兄ちゃん、可愛いかよ」

 


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