ラブライブ! オーブ‼︎   作:ベンジャー

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第20話 『スーパーアイドル、にこ!』

音ノ木坂学院のアイドル部部室にて。

 

色々とトラブルはあったものの、ラブライブでの予選を終えた穂乃果達は今日この日、ラブライブの公式ホームページにて予選結果が発表されることとなっており、みんなで結果を確認するためにμ's一同と紅葉は全員部室に集まっていたのだった。

 

「い、いよいよです・・・・・・!」

 

鋭い目つきをしながら冷や汗を流しす花陽。

 

そんな彼女がみんなを代表してパソコンを起動させると、花陽はマウスに手をかけてホームページに行く為に「ラブライブ」とキーワードを入力し、検索をかける。

 

「緊張するね・・・・・・!」

「あ〜、もう心臓が飛び出しちゃいそうだよ・・・・・・」

 

ことりや穂乃果も緊張でいっぱいのようで、不安な気持ちを全く拭うことができずにいた。

 

「終わりましたか? 終わりましたか!?」

 

一方でそれは海未も同じようなのだが、彼女は見るのも怖くてパソコンに目もくれず、両手で耳を塞いでおり、切実に早くこの不安な気持ちがなくなってくれることを願っていた。

 

「まだよ」

「誰か答えてください!!」

「耳を塞いでたら聞こえんだろ」

 

海未がもう結果発表は終わったのかどうか誰か自分に教えてくれと頼むが、全力で耳を塞いで尚且つ目を瞑っているんだからそれじゃ聞こえないだろうと紅葉から冷静にツッコミを入れられるのだった。

 

「そそそ、そうよ! 予備予選くらいでな、なにそんな緊張してるのよ・・・・・・」

 

にこは机の上にあったイチゴ銃乳のパックに手を伸ばしながらそう言って必死に冷静さを装うとしていたが、手がガッチガッチに震えており、誰がどこからどう見ても彼女も緊張しているのが手に取るように分かってしまう。

 

「そうやね。 カードによると・・・・・・」

「よると・・・・・・?」

 

希はタロットカードを取り出して占って結果を見てみると、彼女は不安そうな顔を浮かべ、そんな希の表情を見た瞬間結果を聞こうとした穂乃果は「あー! やっぱり聞きたくなーい!!」と悲痛な声で叫ぶ。

 

「希、そんなツラ見せられたらこっちまで不安になるんだけど・・・・・・!」

 

前回「A-RISEも凄いがμ'sも凄い!」なんて啖呵を切っていた紅葉だったが、やはり彼も緊張するものは緊張してしまうようで必死に自分を落ち着かせようとしていたが、希が怪訝な顔をするものだから余計に緊張してしまうではないかと自分の頭を抱えながら訴える。

 

「な、なんかごめん・・・・・・」

「来ました!!」

 

次の瞬間、花陽の声が鳴り響くとにこと真姫、海未以外のメンバーはパソコンの画面を覗き込み、花陽は予選突破したスクールアイドルのチームの名前を上から順に読み上げてくる。(その際、にこは緊張のあまり手に力が入りすぎて持っていたいちご牛乳を握りつぶしたりしていた)

 

「1チーム目はA-RISE」

「そこはまぁ、予想通りだな」

 

ラブライブの予選を突破できるのは4組のアイドルグループのみ。

 

しかし、4組と言ってもA-RISEがいる時点で1組目は決まったも同然であるため、実質的には3組。

 

そのため予選突破の結果発表はむしろここからが本番であり、花陽は画面をスライドさせて次のアイドルグループの名前を読み上げる。

 

「2チーム目は『eAst heArt』」

「あとは?」

 

そこで丁度にこや真姫も画面を覗き込んでにこが残りのチームは一体誰なのかを花陽に尋ねると、彼女は再びマウスのカーソルを動かして画面をスライドさせ、3チーム目のアイドルグループの名前を読み上げる。

 

「3チームはミ・・・・・・!」

『ミッ!?』

 

花陽が先ず最初に「ミ」なんて言うものだから、今度こそ自分達の名前が載っているのではという期待と不安を膨らませる穂乃果達だったが・・・・・・3チーム目は「ミ」から始まるμ'sではなく同じく「ミ」から名前が始まる「Midnight Cats」というグループだった。

 

それに一同はガックリとあからさまに残念そうにし、そして遂に、これで泣いても笑っても次でいよいよラスト・・・・・・。

 

ここで自分達の名前が載ってなければ、μ'sはラブライブに進出することは叶わず、どうあがいても失格。

 

覚悟を決めて、花陽がカーソルを動かして次の名前の確認を行う。

 

「4チーム目は、ミュー・・・・・・」

『ミュー・・・・・・?』

「お願いだからあんまり溜めないでくれない花陽ちゃん!?」

「ミュー・・・・・・タントガールズ・・・・・・」

 

そして・・・・・・最後の4チーム目の名前には、μ'sではなく、代わりに「Mutant Girls」と書かれた文字がメンバー全員の写真付きでデカデカとパソコンの画面に載っていたのだった。

 

このことに、穂乃果達全員がまるでこの世の終わりでもあるかのような表情を見せ、全員どう言えば良いのか分からず、語彙力も低下し、「あ、あ、あぁ・・・・・・」としか言えないまるでゾンビのような状態になってしまっていた。

 

「そ、そそ・・・・・・そんなあああああああ!!!!!」

 

唯一、穂乃果だけはちゃんとまともに言葉を発することが、それは悲痛な叫び。

 

予選で惨敗してしまったことに彼女は涙を浮かべ、悲痛な声で大きく嘆き、悔しさのあまり、悲しみに満ちた声を空へと叫ぶのだった。

 

 

 

 

「・・・・・・っていう夢を見たんだよ!!」

 

μ'sが予選で惨敗したと言ったな、アレは嘘だ。

 

というか、先ほどまでの出来事は全て穂乃果の夢の中の出来事であり、実際のところまだラブライブ予選突破の結果発表は行われていなかったのだ。

 

最も、どちらにしても結果発表はまだ時間が来ていないだけで行われるのは今日なのだが。

 

『・・・・・・』

「・・・・・・あれ?」

『夢なんかーい!!!!』

 

そしてそんな穂乃果に、紅葉達一同は彼女に対し総出でツッコミを入れるのだった。

 

 

 

 

 

 

「それにしても、生々しい夢だよね」

「ホントに・・・・・・」

「って言うかさ・・・・・・今夢と同じ状況だし〜!!」

 

今現在、紅葉達はラブライブの公式ホームページを開いて予選突破の結果発表を待っているところだったのだが・・・・・・。

 

今のこの状況、みんなの立ち位置やにこが持参していたいちご牛乳のパックの置き場所、さらには結果が怖すぎて海未が耳を塞いで目を瞑ってしまっている状況まで何もかもが穂乃果が見たという夢とその全てが一致してしまっているらしく、にこは余裕そうな顔を見せてはいるものの、穂乃果の夢の話を聞いたこともあってか見るからに動揺を隠せていなかった。

 

「ど、どこが同じ状況だって言うのよ」

「終わりましたか? 終わりましたか!?」

「どこもかしこも穂乃果の言ってた状況と同じじゃねーか!」

 

そこで希はタロットカードによる占いをしようとするが、それを穂乃果は慌てて止める。

 

「ダメだよ! このままじゃ正夢になっちゃうよ!」

 

頭を抱えて嘆く穂乃果だったが、そこで彼女は「そうだ!」と何かを閃いたようでにこにいちご牛乳を一気飲みしてくれと頼み込んできたのだ。

 

「にこちゃん! それ一気飲みして!」

「なんでよ!?」

「なんか変えなきゃ正夢になっちゃうんだよー!!」

 

今朝見た夢が正夢にならないよう、穂乃果は少しでも違うことをすれば未来を変えることができるのではないかと考え、紅葉は一応理には叶っているだろうと穂乃果の意見には同意して頷き、少しでもあがこうと彼もまたにこにいちご牛乳の一気飲みを勧めた。

 

「ほらイッキイッキ!!」

「イッキイッキ!!」

 

紅葉と穂乃果はそんなテンションでにこにいちご牛乳一気飲みをするように必死に訴え、そんな2人ににこは「お酒か!!」と即座にツッコミを入れる。

 

「来ました!!」

 

しかし、にこがいちご牛乳を飲み干す前に花陽がラブライブの公式ホームページに結果が発表されたことを報告すると、真姫、海未、にこ以外のメンバーが一斉にパソコンの画面を覗き込む。

 

ちなみにその際、にこが夢の時と同じく緊張あまりまた手に力が入ってしまい、いちご牛乳のパックを握りつぶしたりしていた。

 

「最終予選進出は、A-RISE・・・・・・。 2チーム目はeAst heArt、3チーム目は・・・・・・Midnight Cats」

「お、おいおいマジか。 ここまで穂乃果の見た夢と全く同じ結果じゃないか・・・・・・」

 

流石の紅葉もラブライブの予選突破をしたグループが穂乃果の言っていたチームと全く同じ、しかも順番までピッタリ当て嵌まっていることに驚愕し、このままでは本当に穂乃果達は予選を突破できていないのではないかと不安を募らせる。

 

夢と同じように遅れてにこと真姫も画面覗き込んで来たのもあるのかもしれないが、穂乃果の方も「ダメだよ、同じだよ・・・・・・」なんて言って諦めモードだった。

 

(いや、俺が弱気になってどうする。 だって、A-RISEに負けないくらい、穂乃果達は・・・・・・μ'sはとても良くて、良いライブをしたじゃないか・・・・・・!)

 

しかし、だからと言ってまだ諦めるには早いと紅葉は自分に言い聞かせ、彼は客観的に見て、マネージャーであることを抜きにしても、本気で彼女達のあのライブはA-RISEに決して劣らない素晴らしいライブだと思ったのだ。

 

そう考えた彼はそれが予選で惨敗するなんて絶対に無いと確信に近いものを得、紅葉はこの中で1番弱気になっているであろう穂乃果の頭をそっと撫で、声をかけることにしたのだ。

 

「お兄ちゃん・・・・・・?」

「諦めるのは、まだ早い。 俺はみんなを信じるよ」

 

なんにしてもこれでラスト、全員の緊張が走る中、花陽はマウスのカーソルを動かして画面をスライドさせると彼女はそこにあった最後のスクールアイドルの名を口にする。

 

「4チーム目は、ミ・・・・・・!」

『ミ?』

「ミュー・・・・・・」

『ミュー・・・・・・?』

 

そして・・・・・・。

 

「ズ」

 

花陽はそこにあったスクールアイドルの名前の最後の一文字を、口にしたのだった。

 

『えっ?』

「μ's! 音ノ木坂学院高校スクールアイドルμ'sです!!!!」

 

そこにあったのは、紛れもなく自分達の名前であり、そこに張られてあった画像も間違いなく自分達の姿だった。

 

「μ'sって・・・・・・私達、だよね? 石鹸じゃないよね?」

「当たり前でしょ!?」

「なんでラブライブ公式ホームページに石鹸が載ってるんだよ」

 

真姫と紅葉の双方からツッコミを入れられるが、それでもあんな夢を今朝見てしまった手前、今起こっている現実が良い意味ですぐには受け入れられないのは当然のことだろう。

 

「凛達、合格したの?」

「予選を突破した・・・・・・?」

 

だが、すぐに現実を入れられなかったのは凛や絵里、他のメンバーも同じなようで・・・・・・。

 

しかし、頭が状況に追いついて来たことで先ほどまでの諦めムードだった暗い表情から、みるみる何時もの明るく、みんなは元気な笑顔へと戻って行き、特に穂乃果は嬉しさのあまり隣に立っていた紅葉に抱きついたのだ。

 

「わーーーーい!!!! やったよお兄ちゃん!! 私達、やったよ!!」

「うおっ!? あぁ、あぁ! やったな、穂乃果! みんな!!」

 

自分に抱きついて来た穂乃果を受け止めつつ、紅葉も予選突破したことを喜び、そのことに他のメンバーも声を揃えて「やったあああああ!!!!」と歓喜の声をあげると一同は部室を飛び出し、穂乃果や紅葉はヒフミトリオ、花陽や凛はアルパカ、ことりは母親の理事長にこのことを報告しに行くのだった。

 

「終わったのですか? 終わったのですか!?」

 

尚、その際部室には海未だけが未だ取り残されており、彼女はずっと耳を塞いで目を閉じていた為に紅葉達の喜び合う声や様子にずっと気付いていなかったのだが、しばらくしてようやく部室に自分以外誰もいないことに気づき、両手を耳から離し、「あれ?」とみんながいなくなってることを不思議に思い首を傾げていると丁度校内放送でμ'sが予選突破したことが報告され、それを聞いた海未も嬉しそうな笑顔を浮かべるのだった。

 

『お知らせします。 たった今、我が校のスクールアイドルμ'sがラブライブの予選を合格したという連絡が入りました!』

「・・・・・・っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、放課後の屋上にて。

 

そこでは予選を突破したからと言って浮かれてばかりはいられないとラブライブ出場を目指して今日も今日とて練習に打ち込もうとする穂乃果達の姿があった。

 

「最終予選は12月! そこでラブライブに出場できる1チームが決定するわ!」

「次を勝てば、念願のラブライブやね」

 

しかし、それは同時に今度こそA-RISEに勝たなくてはいけないということを意味しており、そのことを分かっているからか花陽は「でも、A-RISEに勝たないといけないなんて・・・・・・」とどこは気弱そうな声を出してしまう。

 

「先ず、気持ちで負けたらダメだよ、花陽ちゃん。 自分達ならやれるって思わないと!」

「そうだよ! それにそれを今考えても仕方ないよ! 兎に角頑張ろう!」

 

紅葉と穂乃果にそう言われたことで、花陽もそれに戸惑いつつも「そ、そうだね」と小さく頷く。

 

「紅葉や穂乃果の言う通りです。 そこで、来週からの朝練のスタートを、1時間早くしたいと思います!」

「えっ〜!? 起きられるかなぁ?」

 

そこから海未が来週からの練習予定を穂乃果達に伝えるのだが、1時間早く・・・・・・ということはかなり朝早い時間からの練習となることを意味しており、凛はそんなに早く起きられるだろうかと心配になり、紅葉も不安そうな視線を穂乃果に向けていた。

 

「な、なんで私の方を見るのお兄ちゃん・・・・・・?」

「凛ちゃん以上に、お前が起きられるか不安だからだよ」

 

その指摘に対し、「うっ」と穂乃果の表情が歪み、紅葉はなるべく自分が頑張って穂乃果をちゃんと叩き起こせる努力をしようと心に誓うのだった。

 

「この他に、日曜日には基礎のおさらいをします!」

 

さらにそこから告げられた海未の練習内容に、凛や花陽は少しだけ「えぇ〜!?」とでも言いたげな顔をしていたが、ラブライブ優勝を目指すなら今よりもハードルを上げる必要があるのは当然のことだった。

 

「練習は嘘をつかない。 けど、ただやみくもにやれば良いという訳じゃない。 質の高い練習をいかに集中してこなせるか、ラブライブ出場はそこにかかっていると思う」

 

海未に続くように、絵里がみんなにそう言っていくとそれを受けて穂乃果も気合い十分といった様子を見せ、「よーし!!」と力強い声をあげる。

 

「じゃあみんな行くよ!! ミュー・・・・・・!!」

「待って!」

 

何時ものμ'sの掛け声を行おうとした穂乃果だったが、その時突然ことりから待ったをかけられたことでそれは中断され、全員はそんなことりに対し、一体どうしたのだろうかと頭に疑問符を浮かべて首を傾げる。

 

「誰か1人足りないような・・・・・・」

「うち、ことりちゃん、真姫ちゃん、えりち、海未ちゃん、凛ちゃん、花陽ちゃん、穂乃果ちゃん、紅葉くん・・・・・・」

「全員いるよ! ちゃんと9人だし!!」

「なぁ〜んだ!」

 

希は1人ずつμ'sのメンバーの名前を1人ずつ読み上げて行くのだが、ちゃんと9人いるのできっと1人足りないというのはことりの勘違いだろうということとなり、穂乃果は改めてμ'sの掛け声をあげる為、右手を前に突き出す。

 

「では改めて・・・・・・!! インスタンス・ドミネーショ・・・・・・じゃなかった!! って、あっ・・・・・・」

『にこちゃん!!!!』

 

穂乃果が手の平を前に突き出し、そこから手をにっこにっこにーのポーズにした為に、一同は今、この場に実は来ていなかったにこの存在を思い出し、そこで紅葉達はようやく誰が足りていなかったのか気付くことが出来たのだった。

 

「そこで俺をμ'sのメンバーの数にカウントしちゃダメだろ希! 凛ちゃん! 俺、言うなれば椅子の人だよ!」

「椅子の人ってなに?」

 

恐らく、紅葉は希が人数を数えた際に自分をカウントしてしまった為、にこの存在に気付くのが遅れてしまったのだろうと思い、兎に角一同はにこが来ていない理由を誰1人として知らない為、紅葉達は急いでにこを探しに行くことに。

 

「にしても意外と影薄いのかな、にこ。 良くも悪くもμ'sで1番キャラ濃そうなのに」

 

その時、そんなことをにこを探しに行く際にみんなにこが来ていないことに今の今まで気付かなかったことから、にこってキャラが濃そうに見えて意外と影薄いんだろうかと紅葉がちょっと呟いていたりしたのだった。

 

ただそれと同時に今まで気付かなかったのは単ににこは弄られキャラだからそういう意味でみんなから忘れ去られていた可能性もあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にこちゃーん!!」

「うっ」

 

その後、みんなでにこを探したところ校門辺りで鞄を背負って帰ろうとしているにこの姿を発見し、穂乃果が大声を上げながら彼女を呼び止めると、それに驚いたにこはビクッと一瞬肩を震わせて立ち止まる。

 

「予選突破したばかりだって言うのに、もうサボりか? らしくない」

「そうだよ! もう練習始まってるよ!」

「誰がサボりよ! き、今日はちょっと用があるの・・・・・・」

 

どこか気まずそうな顔を見せながら、今日は用事があるから練習できないことをにこは穂乃果達に伝えるのだが、それならば普通にそう言えば良いのにと思わずにいられない紅葉と穂乃果。

 

「それより最終予選近いんだから気合い入れて練習しなさいよ!!」

「「はい!!」」

 

最後ににこはそれだけを言うと、彼女のその言葉に紅葉と穂乃果はビシッと背筋を伸ばして敬礼して元気の良い返事を返し、にこはそのまま校門を潜り抜け、学校を出て行ってしまうのだった。

 

「あれ? 行っちゃった・・・・・・」

 

そして、穂乃果達はそんなにこの背中を不可思議そうに見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからにこは穂乃果達と別れた後、とあるスーパーへと訪れていた。

 

そしてそんなにこの後を・・・・・・練習そっち退けでこっそり尾行している紅葉、穂乃果、海未、ことり、凛、花陽の姿があり、紅葉達はそのスーパーの入り口の前にある荷台に隠れてにこの様子を伺っていたのだ。

 

「お店に入っちゃったよ」

 

そこでにこはスーパーの店内へと入って行くのだが、その時の動作がやたらと挙動不審であり、彼女はキョロキョロと辺りを見回してから入店していったのだ。

 

「なんで跡つけるの?」

「というか、そもそも練習そっち退けで良いのか?」

「だって怪しいんだもん!!」

 

真姫はなんでわざわざこんな跡をつけるような真似をするのかと疑問を抱き、紅葉はにこにも先ほど釘を刺されたばかりだと言うのに練習そっち退けでこんなことしていて良いのだろうかと少しばかり心配するが、しかし、どうしてもにこの動向が気になった穂乃果はこのままでは練習に集中して打ち込めないということでみんなでにこの跡をつけることにしたのだ。

 

「まぁ、確かに集中できなくなるのは困るが・・・・・・。 でも、海未まで割とノリ気なのは意外だったな」

 

紅葉の言う通り、こういう時、いの1番に「そんなことより練習です!」と言い出しそうな海未も特に文句を言うこともなく参加している辺り、どうやら彼女自身もにこの動向が気になったようで・・・・・・。

 

本格的に練習のハードルを上げるのも明日からなので今日くらいは休みにしても良いだろうと言うことで、彼女もにこの尾行に参加したのだ。

 

「にこのことですから、何か良からぬことでも企んでいるのではとも思いましたしね・・・・・・」

「成程な」

 

確かに挙動不審な態度や普段のにこの姿を見ていると、何かやらかそうとしているのではないかと海未が疑うのも仕方のないことなのかもしれない。

 

実際、にこにはちょっとだけ腹黒いところもあるので尚更。

 

尚、ここにはいない希と絵里だが、彼女等2人は念のために別の場所で待機させてある。

 

「・・・・・・まさか、ここでバイトしてるとか」

 

穂乃果がスーパーに入っていくにこを見つめながらポツリとそんなことを呟き、その呟きを聞いた紅葉達はついつい思わずみんなでスーパーでバイトしているにこの姿を思い浮かべてしまう。

 

『にっこにっこにー!! 今日のお肉は2個でにこにこ2525円!!』

「ハマりすぎだにゃ!」

「何故か違和感ない!!」

 

にこのバイトをしている姿を想像してその違和感の無さに声をあげる凛と紅葉。

 

だが、それと同時にもし本当にそうなら、にこが挙動不審だった理由も納得できる。

 

にこのことだからそんな姿を知人に見られでもしたらきっと死ぬほど恥ずかしい思いをすることだろう。

 

なので紅葉は即ここからの撤退を穂乃果達に進言。

 

「そんな姿見たら俺もちょっと気まずいよ! 今からでも学校に帰って練習の続きしよう!?」

 

先ほども言ったように、きっとバイトしている姿を見られたらにこも死ぬほど恥ずかしい思いをするのはほぼ間違いないだろう。

 

だがそれと同時に、そんな姿を目撃したら自分達も気まずい思いをしてしまうかもしれない。

 

だから紅葉は今すぐにでも学校に帰って練習なりなんなり別のことに集中することでこのことを忘れようと言うのだが・・・・・・。

 

「待って! 違うみたいよ・・・・・・」

 

そこで真姫がにこは別にバイトに来ている訳ではないことに気づき、ただにこは普通に売られている肉を買い物籠に入れたりして普通にスーパーに買い物に来ているだけのようだった。

 

「なぁんだ。 ただの夕飯のお買い物かぁ・・・・・・」

「でも、それだけで練習を休むでしょうか?」

 

しかし、スーパーに買い物に来るだけなら別に練習を行った後でも良かった筈。

 

さらに言えばラブライブ出場も決まって気合いも入っている時期だと言うのに・・・・・・。

 

それにも関わらずただ「夕飯の買い物に行く為に練習を休む」というのはあまりにも不自然過ぎる。

 

「・・・・・・余程大切な人が来てる・・・・・・とか」

「どうしても手料理を食べさせたい相手がいる・・・・・・とか・・・・・・!」

 

そこで花陽や真姫が険しい表情を見せながら2人は自分の頭に思い浮かんだ予想を口にし、穂乃果以外の全員が2人の予想に対し、驚愕した表情を浮かべる。

 

「ま、まさか・・・・・・」

「にこちゃんが!?」

「ダメです!! それはアイドルとして1番ダメなパターンです!!」

 

次の瞬間、その「アイドルとして1番やってはいけないパターン」を想像してしまった花陽は声を荒げるようにしながら勢いよく立ち上がり、またそんな花陽に対し、穂乃果は一体彼女が何を言っているのかよく分かっていないようで小首を傾げていた。

 

「えっ? なんの話?」

「あれだろ? アイドルは恋愛御法度的なやつ。 アイドルってのは基本恋愛禁止だからな」

「えっ、そうなの!?」

 

つまり、花陽の言っていたアイドルとして1番やってはいけないことというのは「アイドルが誰かと恋愛をしてしまう」ことであり、スクールアイドルも部活の一環とは言えアイドルである以上それは同じ。

 

だから花陽はその辺りのことを懸念し、にこにもし本当に彼氏でもいたらと思うとこれからのアイドル活動にも支障が出るかもしれないことから気が気で無かったのだ。

 

「ってか、なんで穂乃果は驚いてんだよ。 割と有名な話だろ?」

「そ、それはそうなんだけどぉ・・・・・・! だ、だけど・・・・・・だって、だって! スクールアイドルなら別に問題無いかなって思ってたから・・・・・・」

 

その際、紅葉は今にも泣き出しそうな声を出しながら瞳を潤わせて自分の顔を見つめる穂乃果の視線に気付き、そんな彼女の視線に紅葉は思わず動揺してしまう。

 

「えっ、あっ・・・・・・穂乃果?」

「あっ、あー・・・・・・。 ほ、穂乃果ちゃん前々から怪しいなって思ってたけどまさか・・・・・・」

「兄妹にしては穂乃果ちゃんスキンシップ激しかったもんね・・・・・・」

 

花陽や凛も紅葉と穂乃果の2人に血縁関係が無いことを知る以前は単に仲の良いだけの兄妹だと思われていた。

 

しかし、2人が兄妹であることを抜きにして過去の出来事を思い返すと、兄妹という割には穂乃果はあまりにも紅葉に対して過剰なまでのスキンシップをとっていたこと、紅葉が他の女の子と仲良くしていたりすると穂乃果がよく嫉妬していたこと、それに時折穂乃果は紅葉に対して熱っぽい視線を送っていたことを花陽や凛は思い出し、日頃から薄々感じ取ってはいたが今の穂乃果の表情を見て2人は彼女が紅葉に対し、好意を抱いているのを完全に察してしまったのだ。

 

「えっと、穂乃果ちゃん・・・・・・」

 

本来なら、ここは「スクールアイドルでもアイドルは恋愛禁止!」と注意するところだろうが、穂乃果のこんな顔を見てしまっては花陽はそれを注意するに出来ず、困り果てていると・・・・・・。

 

「そ、それよりもにこです! にこ!!」

「そ、そうだよ! 今はにこちゃんの方に集中しよう!」

 

無論、穂乃果や紅葉の幼馴染みでもある海未やことりが穂乃果の気持ちに気付いていない筈もなく、彼女等は穂乃果に助け船を出すかの如く2人は話題を変える為に今はにこのことに注目すべきだと言い放ち、一同の視線をにこに戻そうとしたのだ。

 

「・・・・・・っていうかさ、アンタ等さっきから何してんの?」

『あっ』

 

しかし、一同が視線をにこに戻すといつの間にか自分達の姿を隠していた荷台を店員が持って行ってしまったのか、今、紅葉達の姿は完全に丸見え状態であった。

 

しかも先ほどから騒いでたこともあり、にこには完全に自分達の存在がバレてしまっていたのだ。

 

そして、にこはそっと手に取っていたお肉のパックを元の場所にゆっくり戻すと、その場から急いで走り去って逃げ去っていく。

 

『逃げた!?』

「なんでついて来てるのよ!?」

 

それを受けて、穂乃果達は急いで逃げるにこを追いかけるのだが、にこは従業員用の裏口を通ったことで穂乃果達から逃れることに成功し、彼女達はにこの姿を見失ってしまう。

 

「あれ?」

「二手に別れて探しましょう!」

 

海未が二手に別れてにこを探そうと提案すると、それぞれ花陽、真姫、凛の1年組、穂乃果、紅葉、海未、ことりの2年組に別れてにこを探す為にスーパー内を詮索する。

 

「穂乃果」

 

だが、花陽達と二手に別れてすぐ、紅葉が不意に穂乃果のことを後ろから呼び止め、声をかけられた穂乃果は先ほどのこともあってか思わず内心ドキリとしてしまった。

 

「な、なに・・・・・・?」

 

そして紅葉に呼びかけられた穂乃果はというと、彼女はどこかぎこちない態度を取る。

 

またそんな穂乃果と紅葉を交互に見つめながら、海未やことりは複雑そうな表情を浮かべてそんな2人の様子を黙って見守ることに。

 

「穂乃果って好きな奴いるのか?」

「・・・・・・」

(そんなストレートに聞いちゃうの!?)

 

恐らく、穂乃果に対してこんな質問をしたのは先ほどの「アイドルは恋愛禁止、それはスクールアイドルも同じ」という話を花陽から聞き、穂乃果がショックを受けたようだったからだろう。

 

「そ、それは・・・・・・」

 

その時、ほんのちょっとだけ穂乃果が紅葉の方に顔を向け、絞り出すように言葉を振り絞って何かを言おうとした。

 

しかし、紅葉は少しだけ見えた穂乃果の顔が真っ赤に染まっていることに気付いたことで、穂乃果が次の言葉を発する前に遮るように待ったをかける。

 

「言いたくないなら、無理に言わなくて良い」

 

最も、僅かとは言えチラリと見えた穂乃果の今の赤い顔を見れば、紅葉の問いかけた質問に「YES」と答えているのも同然であり、それはμ'sのマネージャーという立場なら、「ラブライブも控えてるのに恋愛なんてしてる場合じゃない」と注意しなければいけないことだった。

 

だけど、穂乃果の先ほどのあの悲しいそうな顔を見たらとても自分の口からそんなことを言える筈が無かった。

 

それに何よりも・・・・・・。

 

(なんで俺、その先は聞きたくないって思ったんだろうな・・・・・・)

 

自分から穂乃果に「好きな人いるのか?」なんて聞いておきながら、いざ穂乃果が答えようとしたら紅葉はつい、その答えを聞きたくないと思ってしまい、彼女の言葉を遮ってしまっていたのだ。

 

今の穂乃果の顔を見れば、答えを言っているも同然なのに、それでも直接聞きたくないと・・・・・・。

 

「今は、兎に角にこさんを探すの優先だな」

 

どうして答えを聞きたくなかったのか、その理由は紅葉自身にも今はまだ分からない。

 

兎に角今は、この話題は普通なら後回しにすべき問題ではないが、自分自身この件に困惑していることもあり、紅葉はこの問題は後回しにしようと決め、先ずは本来の目的だったにこを探すことに専念することにしたのだ。

 

「そ、そうだね・・・・・・」

 

それには穂乃果も頷き、紅葉、穂乃果、海未、ことりは再びにこを探すためにスーパー内を歩き始めた。

 

「穂乃果」

「穂乃果ちゃん」

 

その時、今度は穂乃果を間に挟むように海未とことりが歩み寄ると彼女の耳元で紅葉には聞こえないようにしてあることを2人して囁く。

 

「私達は、応援してますよ。 彼なら穂乃果を任せられますしね」

「うん、色々問題はあるかもだけど・・・・・・。 ファイトだよ! 穂乃果ちゃん! なんてね・・・・・・?」

「うっ、や、やっぱり2人は気付いてたんだ」

 

海未とことりからエールを送られ、恥ずかしくも嬉しさを感じ取った穂乃果はそんな風に応援してくれる彼女等に対し、微笑みを向けながら「ありがとう」と小さく呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、スーパーの裏口から外を飛び出し、穂乃果達を捲くことに成功したにこはと言うと・・・・・・。

 

裏口を出たところには丁度、にこの動きを読んで既に裏口で待機していた絵里が不敵な笑みを見せながら待ち構えており、にこはそのことに「いっ!?」と驚きの声をあげる。

 

「流石にこ。 裏口から回るとはねぇ?」

「うわあ!?」

 

絵里の存在に驚き、にこは大きく後退るといつの間にか絵里と同じく裏口で待機していた希が背後からにこの胸の辺りをワシッと掴むことで彼女を捕まえ、希はニマニマした笑顔を浮かべると、彼女はにこが今日なんで練習を休んだのかを問い詰める。

 

「さあ、訳を聞かせて〜?」

「わっ、ちょっ・・・・・・ハア!!」

 

しかし、にこは下からすり抜けるようにしてワシワシしてくる希の両手から脱出することに成功し再び走って逃げ出すと、慌てて絵里よりも先行して希が急いで彼女を追いかける。

 

だが、途中までちゃんと姿を捉えていた筈なのに曲がり角を出た瞬間ににこの姿を希は見失ってしまい、彼女は「あれ?」と首を傾げながら辺りを何気なく歩いていると・・・・・・。

 

「あっ!」

 

そこで希は危うく通り過ぎそうになってしまったが、制服や衣装が酷似していたアイドルのパネルを利用することで、カモフラージュをして身を隠していたにこの存在に気付き、そちらの方へと視界をやるとにこは「うっ」と苦い顔を浮かべる。

 

「に、にっこにっこにー!」

 

誤魔化すように何時もの決めポーズを行うにこだが、当然そんなもので誤魔化せる訳もなくにこはそのまま再び希から逃走を試みる。

 

「あー!! 待てー!!」

 

するとにこは今度は車が2台停められてある小さなパーキングエリアに向かうと、彼女はその車と車の小さな間を通って抜け出し、希も同じように車と車の間を通ってにこを追いかけようとする。

 

しかし・・・・・・その間はとても小さいが為に小柄なにこならば通ることは可能だったのだが・・・・・・逆に希は自分の胸がつっかえてしまったが為に車と車の間を通ることが出来ず、彼女はそのせいでにこの追跡を諦めざる得なかったのだった。

 

「希ちゃん! にこちゃんは?」

 

だが、直後にそこで穂乃果達が合流すると、希はジッと何故か凛の、ある一定の部分を見つめて・・・・・・。

 

「なんか不本意だにゃー!!?」

 

どこが・・・・・・とは言わないがある一定の部分がにこと1番そう変わらない凛が車と車の間を通ってにこを追いかけることとなり、その時の希の顔は何故かとても悪そうな笑顔だったという・・・・・・。

 

「もー!! にこちゃーん!!」

 

しかし、パーキングエリアを抜けたは良いものの数秒間とは言え流石ににこが姿を眩ますには十分な時間だったこともあり、凛がパーキングエリアを出た頃には右を見ても左を見てもにこの姿はどこにも無かったのだった。

 

「いないにゃー!」

 

 

 

 

 

 

 

「結局、逃げられちゃったか・・・・・・」

「しかし、あそこまで必死なのはなぜなのでしょう?」

 

にこに逃げられた紅葉達は、とある橋の傍でそこにある椅子や階段、手すりなどに腰掛けながらなぜにこがあそこまでして自分達から逃げるのか、そのことについて一同は話し合っていたのだった。

 

「にこちゃん、意地っぱりで相談とか殆どしないから」

「真姫ちゃんに言われたくないけどね!」

「アハハハ!! おまいう!」

 

意地っ張りで中々相談してくれないという点に至っては真姫も同じであるため、そのことについて「お前が言うな」と指摘する凛と紅葉。

 

そんな2人に対し、ムッとしながら「うるさい!」と怒鳴る真姫。

 

「家、行ってみようか?」

「押しかけるんですか?」

「だって、そうでもしないと話してくれそうにないし」

 

こうなればと穂乃果はにこの住んでいる家に突撃して、多少強引にでもにこが何を隠しているのかを聞き出そうかと提案するのだが、そこで紅葉が「それは流石にやりすぎだろ」と彼女を注意しながら穂乃果の意見に反対する。

 

「誰だって他人に知られたくないことの1つや2つはある筈だ。 花陽ちゃんの言う通り、アイドル御法度案件だったら流石に強引な手段を執らざる得ないかもしれないが・・・・・・」

 

しかし、見たところにこにそういった節がある感じはしないし、スクールアイドルの自覚の強いにこがそういったことをするとも思えない。

 

それにこの場合、もし本当に彼氏でも出来ていたらもっとボロがすぐに出ていた可能性が高い。

 

なので紅葉は、花陽がその話題を持ち出した時には自分もその可能性について考えたが、冷静になってみると上記でも述べたように、別ににこに魅力が無いと言っている訳では無いが、彼女には家庭的な面もあるのでその気になれば彼氏くらい出来るとは思うものの・・・・・・その可能性は薄いと思ったのだ。

 

だからにこ本人が知られたくない、知られるのが嫌なのならば無理に聞き出す必要はないのではないかと紅葉は考えたのだ。

 

「確かに、紅葉くんの言う通りかもしれないわね。 無理に聞き出すのが良いこと、とは限らないしね」

 

そして紅葉の意見にも一理あるとして同意して頷く絵里。

 

「・・・・・・(ジーッ」

 

一方で穂乃果には、そんな紅葉の姿をジトッとした目でジーッと見つめており、彼女の視線に気付いた紅葉はそれに少しばかり動揺しつつ穂乃果に「ど、どうした?」と尋ねる。

 

「ううん。 なんかお兄ちゃん、やたらにこちゃんの肩を持つなーと思って・・・・・・」

「いや、別にそういう訳じゃないんだがな・・・・・・」

 

「他の人に知られたくない」というのはよくあることだろう。

 

だから紅葉はあくまで一般論としてにこが秘密にしていることを無理に聞き出す必要は無いだろうと思い、ああ言っただけでにこをフォローするようなことを言ったことに対し、特別な意味は特にはない。

 

無いのだが、穂乃果はぷくっと頬を膨らませて不機嫌そうな様子を見せ、紅葉はどうして穂乃果が機嫌を損ねてしまったのか分からず、どうすれば機嫌を直してくれるのかも分からず、困り果てる紅葉。

 

「まぁ、どちらにせよにこの家がどこにあるのか私達知らないしね」

 

仮ににこの家に押しかけるという方法についてだが、それはこの場にいる1人だけを除いて全員にこの家がどこにいるのか分からない為、仮ににこの家に押しかけるにしてもここにいる全員が彼女の家の住所を知らない以上、どちらにしてもその手は使えないだろうと語る絵里。。

 

最も、紅葉だけはにこの家がどこにあるのかを知っていたりするのだが・・・・・・。

 

なぜ紅葉だけにこの家の場所を知っているのかと言うと、その時の話を振り返れば分かるが、それは以前「光怪獣 プリズ魔」が現れた際に紅葉はオーブに変身して立ち向かったのだが、初戦ではボコボコにされて傷を負い、その時にこに家まで運ばれ彼女の家で傷の手当てをして貰ったからである。

 

しかし、紅葉は幾ら自分がにこの家を知っているからと言ってもそれは個人情報ということもあり、にこ本人の許可がない以上無闇やたらに喋るべきことではないという考えから、黙り込むことで彼は敢えて穂乃果達ににこの家の場所を教えなかった。

 

「あーーーー!!!!」

 

そんな時、突然花陽が大きな声を上げたことで紅葉達は何事かと思い、花陽のすぐ傍にいた凛が「どうしたの?」と尋ねると、花陽は右手を震わせながらある一定の方向に「あれ・・・・・・」と言いながら一差し指を向け、一同は花陽の指差す方向へと目を向けると・・・・・・。

 

そこには何時ものツインテールではなく、髪型をサイドテールにしたにこにそっくりで瓜二つの少女が歩いていたのだ。

 

「にこちゃん!?」

「でも、ちょっと小さくないですか?」

 

海未の言うように、その少女はにこととてもよく似ていたのだが、髪型以外でにことの大きな違いがもう1つだけあった。

 

それは「身長さ」であり、元よりにこは身長が低い所謂「ロリ体型」ではあったのだが、そこにいる少女は明らかににこよりも身長が低かったのだ。

 

また、それらのことから紅葉は一瞬「怪獣人 プレッシャー」の存在が脳裏に浮かび上がるとかつて自分を赤ん坊に変えた存在ということもあり、「まさかまた奴が現れてにこを幼くしたのか!?」と思い彼はバッバッと周囲を警戒しながら辺りをあちこちと見回す。

 

「ど、どうしたのお兄ちゃん? そんな首をガンガン動かして・・・・・・」

「い、いや、なんでもない・・・・・・。 ちょっと蚊が飛んでただけだ」

 

そんなことをしていたものだから穂乃果からは不審がられはしたが、一応、一通り確認してみたところプレッシャーの存在は感じ取ることは出来なかったため、少なくとも近くにはいないのだろうと紅葉は判断した。

 

「確かに、小さいわね」

「そんなことないよ! にこちゃんは3年生の割に小さ・・・・・・小さいにゃー!!?」

 

真姫も海未と同様ににこにしてはやたら小さいと呟き、凛はそんなの元からだろと思ったのだが、その少女が目の前を通り過ぎようとしたところで彼女もにこ以上に少女の身長が低いことに気付き、それと同時に少女が普通に自分達の素通りしようとしたことから紅葉も恐らくではあるが、にこが幼くなった訳ではないのだろうと判断した。

 

なぜなら、あれが仮ににこだとしたら流石に自分達に助けを求めて来るだろうと思ったからだし、何よりあのにこが知らんふりで自分達の前を素通りできるとは思えなかったからだ。

 

間違いなくボロが出そうなので。

 

最もプレッシャーのような奴に幼くされた上に記憶を消されたという可能性も無くは無いが・・・・・・。

 

「んっ? あの・・・・・・何か?」

 

ほぼ真横で凛に叫ばれた為か、少女は不思議そうな顔を浮かべながら凛の顔を見上げ、それに凛は戸惑ってしまう。

 

「ああ、いや・・・・・・」

「あら? もしかしてあなた方、μ'sの皆さんではありませんか?」

 

すると少女は凛達の顔を見て彼女達がμ'sのメンバーであることに気付いたようで、それに絵里が少しばかり驚いたような反応を示す。

 

「えっ、知ってるの?」

「はい! お姉様がいつもお世話になっております。 妹の、『矢澤 こころ』です!」

『ええぇぇーーーーーー!!!!?』

 

にこの妹だというこの少女、「矢澤 こころ」は礼儀正しく、丁寧に自己紹介を穂乃果達に行うと、彼女達はにこに妹がいたという事実に全員が一斉に驚きの声をあげ、驚愕するのだった。

 

「・・・・・・あっ、そう言えば前ににこって前に妹と弟いるって言ってたな」

「・・・・・・えっ?」

 

そこで紅葉はその妹や弟には結局最後まで会わずじまいだったので、面識は無かったのだがプリズ魔の事件の時ににこが妹と弟がいること何気なくカミングアウトしていた時のことを思い出したのだ。

 

「・・・・・・」

 

また、その時・・・・・・穂乃果がどこか複雑そうな顔をしながら紅葉に視線を向けていたのだが、彼はその視線に気付くことは無かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして・・・・・・、紅葉達はこころに連れられ、とある駐車場裏へと何故か連れて来られていたのだった。

 

「にこっちに妹がいたなんて・・・・・・」

「しかも礼儀正しい」

「まるで正反対にゃー」

 

希や真姫、凛がそれぞれそう言いながらにこに妹がいたことについてコメントしていると、穂乃果は少しだけしゃがんでこころになんで裏駐車場なんてところに連れて来られたのかを尋ねる。

 

「あのー、こころちゃん? 私達なんでこんなところに隠れなきゃ・・・・・・」

「静かに! 誰もいませんね・・・・・・。 そっちはどうです!?」

 

こころは穂乃果の言葉を遮ると、自分と同じように周囲を確認させていた海未に周囲に誰もいないかを問いかけると彼女は特に気になるような人影はいないとこころに報告する。

 

「人はいないようですけど・・・・・・」

「よく見て下さい! 相手はプロですよ! どこに隠れているか分かりませんから!」

「プロ!?」

 

当然ながら、穂乃果達はこころの言う「プロ」というのがなんのことなのかサッパリ分からず、どうにも穂乃果達とこころの間でイマイチ話が噛み合っていないような気がしたため、紅葉がもっと詳しくこころに話を聞こうとしたところ・・・・・・。

 

「大丈夫みたいですね。 合図したら、皆さん一斉にダッシュです!」

「えっ、あの、ちょっと・・・・・・」

「なんで?」

「決まってるじゃないですか!! 行きますよ・・・・・・えいっ!」

 

しかし紅葉が話しかけるよりも早く、こころは周囲に再び人がいないことを確認すると彼女は勢いよく裏駐車場から飛び出すように走り出し、穂乃果達は慌てて戸惑いながらもこころの後を追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

その後、こころと一緒に自分が暮らしているという、とあるマンションへとやってきた紅葉達。

 

マンションへと辿り着くとこころは紅葉達を壁の片隅に追いやってから再度周囲を警戒しながら確認し、怪しい人影などは見当たらないと判断したのか、こころはほっと胸を撫で下ろした。

 

「どうやら、大丈夫だったみたいですね」

「・・・・・・一体なんですか?」

 

一体、こころは何をそんなに警戒しているのか、海未はそれが分からず頭に疑問符が浮かび上がるばかりだった。

 

「もしかしてにこちゃん、殺し屋に狙われてるとか?」

「珍しく物騒なこと言うな、花陽ちゃん」

 

花陽の口から「殺し」なんて言葉が出たものだから、それがちょっと意外で少しばかり驚いた紅葉だが、殺し屋に狙われてるにせよしないにせよにこのことなので何かしらやらかしてる可能性もあるのではと思い、「誰かに狙われてる」という部分だけなら案外当たっているのかもしれないと思う紅葉だったが・・・・・・。

 

どうやら別に、にこは「誰かに命を狙われている」という訳ではないようで・・・・・・。

 

「何言ってるんです? マスコミに決まってるじゃないですか!」

『えっ!?』

「パパラッチですよ!」

 

確かに自分達μ'sは知名度もそれなりに上がり、ラブライブの予選を突破したスクールアイドルのグループではあるものの、だからと言ってマスコミに、ましてやパパラッチ等に追われるまでの立場になった訳では無い。

 

そのため、穂乃果達はどうして自分達がマスコミに警戒しないといけなのか分からず、困惑していると次のこころの言葉でさらに穂乃果達は困惑することに・・・・・・。

 

「特にバックダンサーの皆さんは顔がバレているので危険なんです! 来られる時は、先に連絡を下さい・・・・・・」

 

どこか不満げに家に来るならアポを取ってくれと言うこころだが、今はそれよりも何故自分達がバックダンサーということになっているのか分からず、どうにも話が噛み合っていないようで戸惑いを隠せない穂乃果達。

 

「バック・・・・・・」

「ダンサー?」

「誰がよ?」

「スーパーアイドル矢澤 にこのバックダンサー、μ's! 何時も聞いています! 今、お姉様から指導を受けてアイドルを目指していられるんですよね!」

 

こころからのさらなる説明を受けて、穂乃果達は「はああ!!?」と驚きのあまり大きな声を上げてしまい、なんでそういうことになってるんだと言わんばかりにお互いに顔を見合わせる一同。

 

「ぬう、なるほど」

「状況が読めて来ました・・・・・・」

「忘れてたわ。 相手はにこちゃんだもんね」

 

そしてここでようやく、一同は今まで微妙にこころと話が噛み合わなかった理由をなんとなくではあるものの色々と察し、にこが滅茶苦茶話を盛って自分達のことをこころに話しているのだろうということを穂乃果達は理解したのだ。

 

「アイドル目指して、バックダンサー・・・・・・。 やめろぉ! そのワードは・・・・・・そのワードは俺に、いや、多分色んな奴に効く・・・・・・!」

「アンタはなんのトラウマが刺激されてんのよ」

 

何故かこころの話を聞いて頭を抱えながら蹲る紅葉に、一体どうしたんだと問いかける真姫。

 

「頑張ってくださいね! 『ダメはダメなりに8人集まればなんとかデビューくらいはできるんじゃないか』ってお姉様言ってましたから!」

「何が『ダメはダメなり』よ!!」

 

流石に今のこころの言い分にはイラッときたのか、真姫がこころを睨みながら一歩前に踏み出してきたが、それを「ドードー!」と紅葉が落ち着かせる。

 

「落ち着け真姫ちゃん! 言ったのはにこだ! 責めるならにこを責めろ!」

 

確かに、今のこころの発言は少々失礼だったかもしれないが大本を辿ればにこが嘘八百をこころに教え込んでいるせいなので、相手がまだ幼い子供ということもあり、真姫に責める相手が違うと注意を促す紅葉。

 

「そんな顔しないでください! スーパーアイドルのお姉様を見習って、何時も『にっこにっこにー!』 ですよ?」

 

そんな真姫に、こころはにこを見習ってと言いながら彼女が何時もやる「にっこにっこにー!」のポーズを取る。

 

「そうだな。 アイドルだったら、何時も笑顔でってのは大切だよな。 特に真姫ちゃんは短気だし」

「誰が短気よ!?」

「現在進行中で短気だにゃー」

 

次の瞬間、真姫にキッと睨まれた凛は背筋をピシッと伸ばしてお口にチャックをした。

 

「でもなこころちゃん」

 

すると、紅葉は片膝を突いてこころと目線を合わせるとやんわりとした口調で彼女と話す。

 

「にこが本当にそう言っていたとしても、それを本人達の前で言うのはちょっと失礼だぞ?」

 

例え自分が最初に言った訳では無いにしても、流石に先ほどの言葉は初対面の相手に対しては少々失礼なことなのではないだろうかと紅葉はこころに注意し、それを受けてこころも紅葉の言い分に一理あると思ったのか、少しだけ「うっ」と唸る。

 

「そういうのは、今度からちゃんと気をつけないとな。 君は素直そうな子だから、その辺のことをお兄さんと約束してくれるかな?」

「うっ、た、確かに・・・・・・ちょっと偉そうだったかもしれません。 分かりました。 皆さん・・・・・・先ほどは、申し訳ありませんでした」

 

紅葉の言うように、意地っ張りのにこと比べるとやはり素直な性格をしているこころ。

 

彼女は紅葉からの注意を素直に受け入れると、こころは反省の色を見せながら穂乃果達に向かってペコリと頭を下げて謝罪し、それに穂乃果達・・・・・・特に真姫が少しばかり戸惑ってしまう。

 

「も、もう良いわよ! そんな・・・・・・!」

「そ、そうよ。 そんなに頭を下げなくても良いから・・・・・・」

 

取りあえず、今は先ずバックダンサーだなんだのと嘘をこころに吹き込んだにこにその辺のことを問いただすためにも、絵里はスマホを取り出し、彼女はにこに電話をかけるのだが・・・・・・。

 

『にっこにっこにー あなたのハートにラブにこ、矢澤にこでーす! 今、電話に出られませぇーん。御用の方は、発信音のあとに、にっこにっこにー!』

「・・・・・・もしもし? わたくし、あなたの『バックダンサー!!』 を、勤めさせて頂いている絢瀬 絵里と申します。 もし聞いていたら・・・・・・」

 

すると次の瞬間、眉間にシワを寄せながら絵里はスマホの画面に向かって・・・・・・。

 

「すぐ出なさい!!」

「出なさいよにこちゃん!!」

「バックダンサーってどういうことですか!?」

「説明するにゃー!!」

 

絵里がスマホの画面に向かって怒鳴り込むと同時に真姫や海未、凛も続いてさっさと電話に出て説明しろとだけ残し、こころはそんな絵里達の後ろ姿を「うん?」と不思議そうに見つめるのだった。

 

「そう言えば、こころちゃん」

「んっ? はいなんでしょう?」

「にこは俺のことは君にどう説明してたの?」

「えーっと、矢澤 にこ専属マネージャー・・・・・・とだけ説明していましたけど?」

「俺はあんまり変わんねえ・・・・・・。 別に良いんだけど」

 

「にこ専属」という部分以外はマネージャーであるという立場は同じであるため、紅葉は特に絵里達ほど怒り心頭にはならなかったが、それでもこころのような素直な子に嘘を言うのはあまり頂けないとは思わずにはいられなかったので、その辺のことはしっかりと叱っておこうと思う紅葉だった。

 

(さっきのこころちゃんを注意するお兄ちゃん、かっこよかったなぁ・・・・・・)

 

ちなみに、先ほどから黙っている穂乃果はこころと話す紅葉を見つめながらそんなことを思っているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、紅葉達はこころに案内されてにこが暮らしている家へとやってくるとそこでは右手に玩具のハンマーを持ってもぐら叩きをしているまだこころよりも幼い少年がいた。

 

「弟の虎太郎です」

「弟もいたのか・・・・・・」

 

こころに矢澤家の末っ子だという「矢澤 虎太郎」のことを紹介され、弟もいたことに少しだけ驚く紅葉。

 

「・・・・・・バックダンサー・・・・・・」

 

そんな虎太郎は鼻水を垂らしながら穂乃果達を指差しながら彼女達をバックダンサーと呼び、それにことりは「あはは、こんにちわ」と苦笑しながらも軽く挨拶を行う。

 

「お姉様は普段は事務所が用意したウオーターフロントのマンションを使っているんですが、夜だけここに帰って来ます」

「ウオーターフロントってどこよ?」

 

こころの説明を受け、真姫が即座にウオーターフロントってなんの話だとばかりにツッコミを入れるが、こころはマスコミに嗅ぎつけられる可能性があるという理由でウオーターフロントがどこにあるのかは教えてはくれなかった。

 

「にこの奴、話を盛りに盛ってやがる・・・・・・」

 

しかし、どこからどう聞いても、どう考えても事務所やらウオーターフロントのことはにこの言った出任せなのは確実であり、例え教えて貰ったところでそんなものは実在しないのでマスコミに嗅ぎつけられるなんて心配は当然ながら全く無い。

 

それよりも、にこが話を盛りすぎてこころ達に話していることの方が問題であり、紅葉はそんなにこに呆れてしまうのだった。

 

「どうしてこんなに信じちゃってるんだろう?」

「μ'sの写真や動画を観れば、私達がバックダンサーでないことぐらいすぐ分かる筈なのに・・・・・・」

 

花陽は何故ここでにこの言っていることをこころ達がすんなりと信じ込んでいるのか疑問に思い、海未の言う通り、μ'sの写真や動画を観ればすぐに自分達がバックダンサーでないことくらいは分かる筈である。

 

「ねえ、虎太郎くん。 お姉ちゃんが歌ってるとことか見たことある?」

 

そこでことりがその疑問をぶつけるように虎太郎に尋ねると手に持っていたハンマーを「あれ」と言いながらある方向に向けるとそこには冷蔵庫の傍にμ'sのポスターが張られてあったのだが、それには何か違和感があり・・・・・・。

 

「μ'sのポスターだ!」

「いや、なんかおかしい・・・・・・」

「穂乃果の顔と、にこの顔が入れ替えてある!!」

 

そう、そのポスターは本来は穂乃果が中央にいる筈なのだが、穂乃果の顔にはにこの顔が貼り付けられており、逆ににこのいた場所には穂乃果の顔が貼り付けられており、明らかにそのポスターはにこの手によって合成されていたものとなっていたのだ。

 

『合成!?』

 

それからこころににこの部屋の案内だけして貰い、彼女の部屋の中を覗いてみると先ほどのポスターと同じように彼女の部屋に張られていたμ'sのポスターや写真などににこの顔が貼り付けられており、この光景に一同はもはや呆れるしか無かった。

 

「これ、私の顔と入れ替えてある・・・・・・」

「にこってこんなスタイルよくないだろ。 やってて逆に悲しくならなかったのかなこれ?」

 

その中には穂乃果だけではなく、絵里の顔と自分の顔を入れ替えたポスターなどもあり、それを見た紅葉は絵里とにことでは体型が真逆過ぎて先ほどの穂乃果の顔と入れ替えたポスター以上に違和感を抱かずにはいられなかった。

 

「・・・・・・涙ぐましいというか・・・・・・」

 

この光景に、穂乃果も小さくそう呟いていると・・・・・・。

 

丁度家の扉が開き、買い物袋を手に下げたにこが帰宅してきたのだ。

 

「あっ、アンタ達・・・・・・!?」

 

まさか家まで押しかけて来ているとは思わなかったのか、にこは引き攣った顔となり、するとそこへ今度はキッチンからにこが帰って来たのを察したらしいこころが顔を覗かせて来た。

 

「お姉様お帰りなさい! バックダンサーの方々がお姉様にお話があると・・・・・・」

「そ、そう・・・・・・」

「申し訳ありません。 すぐに済みますのでよろしいでしょうか?」

 

顔は笑みを浮かべていたが、それでもとても凍てつくような、凍えるような声色で海未がそう言うと・・・・・・次の瞬間、海未の表情から笑みが消え、同時に鋭い目つきとなってにこを睨み付けると、にこは冷や汗をかきながら思わず後退る。

 

(いや、こえーよ! 穂乃果にですらここまで怒ったことあったか!?)

 

正直、ここまで怒った海未はあまり見たことが無かった為、紅葉は内心ビビってしまい、それは穂乃果も同じなのか、少しばかり肩を震わせていた。

 

「え、えっと、こころ。 悪いけど、わ、私今日仕事で向こうのマンションに行かなきゃいけないから・・・・・・じゃっ!」

 

にこが買い物袋と鞄をゆっくりと床に降ろすと、穂乃果達に背を向けて一気にダッシュして逃げ出すが・・・・・・。

 

「紅葉」

「は、はい!!」

「あなたなら余裕でにこを捕まえられますよね? 行ってください」

「イエスマアム!!」

 

スーパーの時は穂乃果のことで動揺していたこと、にこが素早く裏口を使って姿を眩ませたことから追いつくことは出来なかったが、今は障害物の少ないマンションの廊下。

 

ならば身体能力の高い紅葉なら今すぐに追いかければ余裕で捕まえられる為、海未に指示され紅葉は急いでにこを追いかけ走り出す。

 

「なんで何度も逃げないといけないのよ!」

「左失礼」

 

当然ながら、普通の追いかけっこで紅葉から逃れるられず筈もなく、あっさりとにこは紅葉に左脇を通り抜けられると彼女の前に立ち塞がり、両手を広げて通せんぼをして彼女の行く手を阻んだ。

 

「ちょっ、退きなさいよ紅葉!!」

 

するとその時、紅葉の背後にあったエレベーターが開くとこれまた虎太郎よりも年上で、こころよりも年下といった感じの幼い少女、矢澤家の三女である「矢澤 ここあ」が降りると、彼女はすぐさまにこの存在に気付き、紅葉のすぐ傍を通り抜けると勢いよくにこにここあは抱きついて来たのだ。

 

「あっ、お姉ちゃん!」

「あっ、ここあ?」

「どうしたの? こんなところで・・・・・・」

 

そこへ丁度紅葉と同じく遅れてにこを追いかけてやってきた穂乃果達が合流したのだが、ここあの容姿もまたにこにそっくりなことからまだにこに妹がいたことに一同は驚きの声をあげた。

 

「もう1人妹がいたんだにゃー!」

「・・・・・・っ・・・・・・」

 

ここあに抱きつかれた状態、さらに紅葉がいるとなるともうにこはこれ以上逃げることはできないと判断したのか、にこは遂に観念し、逃走するのを諦めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変申し訳ありません! わたくし、矢澤 にこ。 嘘をついておりました!」

 

その後、家に連れ戻されたにこはまるで土下座でもするかのようにテーブルの上に突っ伏した状態で謝罪を穂乃果達に行っていた。

 

「ちゃんと頭を上げて説明しなさい」

 

仁王立ちしながら苛立った様子で絵里は説明を求め、にこは絵里の言われた通り顔を上げるとこちらを鋭い視線で睨むメンバーが何人かおり、彼女はそれに耐えられず、思わず引き攣った笑みを浮かべる。

 

「や、やだな〜みんな怖い顔して・・・・・・。 アイドルは笑顔が大切でしょ!? さあ、みんなでご一緒に! にっこにっこにー!!」

 

この凍てつくような空気を少しでも変えようと思い、彼女は何時ものにっこにっこにーをやるのだが・・・・・・。

 

「にこっち」

「っ!」

「ふざけてて、ええんかな?」

 

未だになんとか誤魔化そうとするにこに対し、顔は笑ってはいるものの声色に怒気の含んだ希がタロットカードを見せながらそう言うと、にこは「はい」と反省し、顔を俯かせるのだった。

 

「出張?」

 

その後、にこはなんで今日練習を休んだのか、その事情を紅葉達に話し始め、にこが言うには今日休んだのは今日から2週間、自分達の母親が出張で家を空ける為、妹達の面倒を見なくてはいけなくなったというのだ。

 

「だから練習を休んでたのね」

「それならちゃんと言ってくれれば良いのに」

「そうそう、下手に隠すからこんな事態になるんだぞ、にこ?」

 

絵里や穂乃果、紅葉はにこが練習を休んだ理由にはついては納得したものの、1番気になるのは何故自分達が矢澤家ではバックダンサーということになっているのか、海未が不満げにそのことについて尋ねるとそれに絵里も同意し、そこが1番の問題だと言ってにこに説明を求めた。

 

「それより、どうして私達がバックダンサーということになってるんですか!?」

「そうね。 むしろ問題はそっちよ」

「そ、それは・・・・・・」

『それは・・・・・・!?』

「にっこにっこ・・・・・・」

「それも禁止やよ?」

 

この後に及んでまだにっこにっこにーで誤魔化そうとするにこだったが、希に先手を打たれたことでにこは黙り込み、紅葉も「往生際が悪い」半ば呆れたように言われたことで、にこは遂に観念し、事情を紅葉達に話し始めたのだ。

 

「・・・・・・元からよ」

「元から?」

「そう、家では元からそういうことになってるの。 別に、私の家で私がどう言おうが勝手でしょ?」

「でも・・・・・・」

 

一応、にこは観念してどうして穂乃果達がバックダンサーということになっているのか説明してはくれたものの、彼女の言っている意味がよく分からず、もう少し分かりやすい説明を紅葉が求めるのだが・・・・・・。

 

「なぁ、にこ、もうちょっと分かりやすい説明を・・・・・・」

「お願い。 今日は帰って」

 

にこは後ろの部屋で遊んでいるこころ達を見つめながら、先ほどまでのふざけて場を誤魔化そうとしていた雰囲気とは打って変わり、真剣な口調で紅葉達に帰ってくれと言われると、紅葉達はこれ以上にこに何かを聞くことは出来ない判断し、彼女の望み通り、今日は帰ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから一同はこころと出会った橋の近くまで戻ってくると、不意に真姫が小さく、説明不足なにこに対する不満からか、呆れたように「困ったものね」と呟いた。

 

「でも、元からってどういうことだろう?」

「にこちゃんの家では元から私達はバックダンサー?」

 

ことりと穂乃果がにこの言っていた「元から」という言葉が一体どういう意味なのか、2人で話し合っているとそこで絵里が希が何かを考え込んでいるかのような表情をしていたことに気づき、絵里が「希?」と彼女に話しかけると、希はどうやらにこの言っていた「元から」という言葉に思い当たる節があるようで、彼女はそのことを紅葉達に話し始めたのだ。

 

「多分、元からスーパーアイドルだったってことやろな」

「どういうことです?」

「にこっちが1年の時、スクールアイドルやってたって話は前にしたやろ? きっとその時、妹さん達に話したんやないかな? 『アイドルになった』って」

 

希は以前、穂乃果達ににこはアイドルとしての目標が高すぎたせいで他のメンバーはついて行けなくなったという話をしたことがあった。

 

その結果、穂乃果達が来るまでアイドル部は部長のにこ1人という状況となり、1人でスクールアイドルを続けるのもままならない状況となり、にこはアイドル活動も自然としなくなってしまっていた。

 

こころ達がにこのことをとても慕っているのは彼女達を見ればとてもよく分かることだった。

 

きっと、にこが妹達に「アイドルになった」と言った際、こころ達はとても喜んでくれていたのだろう。

 

「でも、ダメになった時、ダメになったとは言い出せなかった」

 

だから、にこがアイドル活動が出来なくなった時、そんな風に喜んでくれた、自分を慕ってくれた妹達をがっかりさせたくなくて、彼女は今日まで妹達のための嘘をこころ達に突き続けたのだろう。

 

「にこっちが1年の時からあの家ではずっとスーパーアイドルのまま・・・・・・」

「確かに、ありそうな話ですね・・・・・・」

 

希の話を聞き、海未もにこが言っていた「元から」という言葉の意味をなんとなくではあるが、理解することが出来た。

 

「もう、にこちゃんどんだけプライド高いのよ!」

「真姫ちゃんと同じだね!」

「あははは! おまいう。 パート2」

「茶化さないの!」

 

真姫の呟きに凛と紅葉に「お前が言うな」的なことを言われ、彼女は少しだけ怒ったように茶化すなと怒鳴る。

 

「でも、プライド高いだけなのかな?」

『えっ?』

 

そこで、花陽が不意にそんなことを言うと、一同は一斉に視線を花陽の方へと向け、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

「アイドルに、凄い憧れてたんじゃないかな? 本当にアイドルでいたかったんだよ。 私も、ずっと憧れていたから分かるんだ」

 

夕焼けの空を見上げながら、にこと同じようにアイドルが好きだから、花陽はにこの気持ちに共感し、にこの気持ちを代弁するように彼女は語り、そんな花陽の話を聞いた絵里は自分やにこが1年の時、にこがアイドル部として部員を勧誘していた時のことを思い出したのだ。

 

「・・・・・・。 1年の時、私見たことがある。 その頃は私は生徒会もあったし、アイドルにも興味なかったから・・・・・・。 あの時、話しかけていれば・・・・・・」

 

絵里はそう言いながら、かつてアイドル活動を必死に行っていたにこに何も話しかけないでいたことを後悔し、あの時話しかけていれば、にこは妹達に嘘をつく必要も無かったのでは無いかと思い悩むが・・・・・・。

 

「後悔しても、過去は変えられないさ」

 

すると、今まで黙って花陽や絵里の話を聞いていた紅葉が口を開き、過去のことを後悔する絵里に声をかけたのだ。

 

「過去を変えることはできない。 でも、未来なら変えられるかもしれない。 絵里がその時のことを後悔しているのなら、それならまだ、アンタはその為に何か出来ることがまだあるんじゃないのか?」

 

かつて、自分の戦いにナターシャを巻き込み、自分のせいで彼女を犠牲にしてしまったと紅葉は思っていた。

 

その結果、あの戦いで紅葉はウルトラマンオーブ本来の姿である「オーブオリジン」の力を失い、紅葉は自分自身を失ったのだ。

 

もう二度と、かつての自分を取り戻せないと紅葉自身は思っていたが、穂乃果がナターシャの子孫だということが分かったことでナターシャがあの惨劇を生き延びていたことを紅葉は知ることができた。

 

そして、もう二度と戻らないと思われていたかつての力を紅葉は取り戻すことが出来たのだ。

 

それはきっと、「未来を変えられた」ということを意味していたのだと思う。

 

だから紅葉は、自分の未来を変えてくれた隣に立つ穂乃果を横目に見ながら、紅葉は絵里に過去のことを反省するよりも、にこの為を思うなら彼女の未来を変える為に何かをすべきだと言ったのだ。

 

「そう、ね。 紅葉くんの言う通りかもしれないわね。 にこの為にも、私達に出来ることって、何かあるかしら・・・・・・」

 

過去のことを後悔するなら、今、にこの為に出来ることがあるのではないかと考え、模索する絵里。

 

「・・・・・・未来を、変える・・・・・・。 未来を・・・・・・そうだ!」

 

すると、そんな時、隣で紅葉の言葉を聞き、それを繰り返すように呟いていた穂乃果が何かを閃いたらしく・・・・・・。

 

 

 

 

 

その翌日、学校の放課後にて。

 

にこは昨日穂乃果達に伝えた通り、妹達の面倒を見る為に今日も練習を休むこととなり、校門を通って学校の外へと出るのだが・・・・・・。

 

「にーこちゃんっ!」

 

直後、何故か校門前で待ち構えていた穂乃果に声をかけられたことでにこは足を止め、思わず「あっ」と声をあげるにこ。

 

「練習なら出られないって・・・・・・いっ!?」

 

てっきり、穂乃果は自分を部活の練習に誘いに来たのだと思ったのだが、別に穂乃果はにこを練習に誘いに来た訳では無かった。

 

「お姉様!」

「お姉ちゃん!」

「がっこう〜」

 

穂乃果の後ろからこころ、ここあ、虎太郎の3人がひょこっと顔を出して来たことでにこはそのことに目を見開き、なんでこころ達が学校に来ているんだと言わんばかりの視線を穂乃果に向ける。

 

「ちょっ、なんで学校に連れて来てんのよ!?」

「だって、こころちゃん達見たいって言うから。 にこちゃんのステージ!」

 

笑みを浮かべながらそう言い放つ穂乃果の言葉に、にこはステージとは一体なんのことなのだろうかと彼女は首を傾げる。

 

「ステージ・・・・・・?」

「お兄ちゃん!」

 

穂乃果が紅葉のことを呼ぶと、彼女に呼び出された紅葉は何故か空から振って来て見事な三点着地を決めながらにこと穂乃果の間に颯爽と現れる。

 

「ラジャー!! ってぐあああ!!? 膝がぁ・・・・・・!!」

「スーパーヒーロー着地は膝に悪いってあれだけ言われてたでしょ・・・・・・。 ってアンタどっから振って来たの!?」

 

にこは紅葉から空から振って来たことに疑問を持つものの、そんなことはお構いなしに穂乃果がにこに有無を言わせず強制連行するように指示を出すと、超人じみてるおかげか、すぐに痛みが引いたのか、ケロンッと立ち上がった紅葉がにこをロープでにこをグルグルに巻いて担ぐと、そのまま紅葉と穂乃果は担いだにことこころ達を引き連れて一旦部室まで運び去るのだった。

 

「ちょっとー!!? 何グルグル巻きにしてんのよ!? 降ろしなさいよ!? アンタ等あとで覚えてなさいよー!!?」

 

 

 

 

 

 

 

その後、にこを強制連行した紅葉と穂乃果は彼女を部室にいた絵里と希に引き渡すと紅葉達2人はこころ達を屋上へと案内し、それから絵里と希に引き渡されたにこはというと彼女等2人に半ば強制的にスクールアイドルの衣装を着せられ、こころ達が待っている屋上のドアの前に連れて来られたのだった。

 

「・・・・・・これって」

 

ただ、そのピンクのフリッとしていて天使のような羽根のついたその衣装は自分も初めて見るものであり、一体これはどうしたのだろうかと戸惑いつつも絵里と希を彼女が見つめると、どうやらこの衣装は絵里と希、自分達2人で考えたものであるらしいことが2人の口から伝えられたのだ。

 

「にこにぴったりの衣装を私と希で考えてみたの!」

「えへっ。 やっぱりにこっちには可愛い衣装がよく似合う。 スーパーアイドル、にこちゃん♪」

「希・・・・・・」

 

希はにこに微笑みを向けながらそう言うと不意に絵里が手の平を屋上へと続く扉の方へと手をかざした。

 

「今、扉の向こうにはあなた1人だけのライブを心待ちにしている最高のファンがいるわ!」

「っ、絵里・・・・・・」

「さあ、みんな待ってるわよ!」

 

最初こそ、穂乃果達の行動に驚き、動揺したものの、にこはみんなが自分に何をしてくれようとしているのか、そこでようやく察することができ、彼女は絵里の言葉に「うん!」と力強く頷くと、彼女は屋上に設置されたステージへと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、お姉様のステージ?」

「誰もいなーい!」

「おくじょう〜」

 

学校の屋上でにこのステージをこころ達はそれぞれの感想を口にしながらにこがやってくるのを心待ちにしていた。

 

ちなみに紅葉は少し離れた場所からステージを見ることにしている。

 

するとそこへ、ステージの奥からにこがやってくると、少し遅れて穂乃果達8人も現れるとにこは手に持ったマイクを使いながらこころ達に呼びかける。

 

「こころ、ここあ、虎太郎。 歌う前に、話があるの」

「「「えっ?」」」

「・・・・・・実はね、スーパーアイドルにこは今日でおしまいなの!」

「「「えぇ!?」」」

 

唐突に告げられたにこのその言葉に、彼女をスーパーアイドルだと思っているこころ達は衝撃を受け、3人は不安そうな表情を浮かべる。

 

「アイドル、辞めちゃうの?」

 

悲しそうな声で、こころがにこがアイドルを辞めてしまうのかと訪ねると、にこは「ううん、辞めないよ」と首を横に振ってそれを否定した。

 

「これからは、ここにいるμ'sのメンバーとアイドルをやっていくの!」

「でも、皆さんはアイドルを目指している・・・・・・」

「バックダンサー・・・・・・」

 

こころや虎太郎の言葉に、にこは応える。

 

「そう思っていた。 けど違ったの! これからは、もっと新しい自分に変わっていきたい。 この9人でいられる時が、1番輝けるの! 1人でいる時よりも、ずっとずっと・・・・・・。 今の私の夢は、宇宙№1アイドルにこちゃんとして、宇宙№1ユニット、μ'sと一緒に!! より輝いて行くこと!!」

 

にこはこころ達にそう言い放つと、彼女は改めてこころ達と向かい合い、自分の想いを妹弟達に伝える。

 

「それが1番、大切な夢。 私のやりたいことなの!!」

「お姉様・・・・・・」

「だから、これは私が1人で歌う最後の曲・・・・・・!」

 

にこはこころ達に自分の伝えたい想いを伝えると、彼女は何時もの例のあのポーズを行って見せる。

 

「にっこにっこ〜!! に〜!!」

 

挿入歌「どんなときもずっと(にこソロバージョン)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に恋愛相談ってマジか」

 

にこのソロライブはこころ達に大盛況といった具合に無事に成功した翌日、バックダンサーの騒動のせいで有耶無耶となっていた穂乃果のこと、またそれ以外の紅葉自身の悩みについて相談しようと彼はにこを昼休みの時間を使って彼女を学校の屋上へと呼び出していた。

 

「それで、どういう相談な訳? 言っておくけど、私彼氏とかいたことないし、そういう経験も無いからあんまり期待しないでよ?」

「えぇ、でも・・・・・・。 これは俺がオーブであることも関わってくる問題なんだ」

 

「自分がオーブであることも関わる」と聞いたにこは先ほどまでとは打って変わって真剣な顔つきとなり、オーブのことが関わるとなってはただごとでは無いだろうと思い、にこは紅葉の話に耳を傾ける。

 

「穂乃果って、好きな奴がいるっぽいんだよね」

「・・・・・・それは、なんとなくだけど、薄々感付いてはいたわよ、私も」

 

その「穂乃果に好きな奴がいるとしたら多分お前だよ」と無償に言いたくなるにこだったが、流石にそんなあっさりと言える筈もなく、言いたくなる気持ちをグッと堪えて彼女は黙り込みながら紅葉の話を聞き続ける。

 

「アイツ自身にも、好きな奴がいるのかって聞いたんだ。 でも、その時俺は穂乃果が何かを言いかけて、言葉を遮ってしまった。 その先の言葉を聞きたくないって思ったから」

「・・・・・・」

「その時はなんで自分から聞いておいてそんなことしたのか、俺には分からなかった。 でも、今になって思い返せば、理由は、なんとなくですけど分かったかもしれない」

 

そこで紅葉は一旦言葉を止めると、すぅっと息を吐いて意を決したように穂乃果の言葉を遮った理由をにこに告げる。

 

「それはきっと・・・・・・俺が穂乃果のことを好きだったからだと思うんだ」

「・・・・・・成程ね。 つまり、穂乃果の好きな奴がもしも自分以外の奴だったら嫌だから、聞きたくなかったから。 だから、穂乃果の言葉を遮ったのね?」

 

にこが紅葉にそう尋ねると、彼はコクリと首を縦に振って頷いてみせる。

 

「穂乃果には誰か好きな奴がいる。 そんで紅葉は穂乃果のことが好き。 そこまでは分かったわ。 でも、オーブについても関わるって言うのはどういうこと?」

 

穂乃果には好きな人がいて、紅葉は穂乃果のことが好き、それだけの話を聞くと今のところはオーブが関わってくるような話だとは思えず、むしろにこはこういうのは恋愛にはよくある話だろうと思ったのだが・・・・・・。

 

「実は俺、これでもにこよりもずっと年上なんだよ」

「・・・・・・はっ?」

 

そこで紅葉は、自分の過去についてのことをにこに話し始め、自分は少なくとも1000年以上を生きている人間であること、150年前のナターシャとの出会いと自分が起こしてしまった悲劇、自分が高坂家の子供となった切っ掛け、そして自分が本来の自分を取り戻した時の出来事を全て、ラグナのことなども含めつつ、紅葉は包み隠さず、洗いざらいにこに話し、自分の過去を明かしたのだ。

 

それを聞いたにこは唖然とした様子を見せ、まさに開いた口が塞がらないといった感じで、目をまん丸にして一瞬思考が停止してしまった。

 

「えっ、じゃ、じゃあ紅葉・・・・・・紅葉さんは私等なんかより全然年上で・・・・・・。 通りでたまに大人びてるなって思ったのよ・・・・・・!」

「いや、にこ、普通に何時もの接し方で大丈夫だぞ? それに、俺の年齢なんて地球人で例えるとにこ達とそう変わりらないし」

 

紅葉が滅茶苦茶年上・・・・・・ということを聞いてにこは何時ものタメ口ではなく、敬語に口調を切り替えて紅葉と接しようとするのだが、紅葉の方は何時も通りの口調で接してくれたら良いと言うのだが・・・・・・。

 

「いや、でも・・・・・・」

「オーブの正体を隠す為にもお願いするよ。 にこだけ俺に敬語だったら、みんな不審に思うだろ? にこは学校では先輩なんだから、普通に何時もの感じで頼むよ」

 

未だに敬語で自分に話しかけようとしてくるにこに苦笑しながらも、紅葉がそう言うと戸惑いながらもにこは納得してくれたようで、「わ、分かり・・・・・・分かったわ」と返事を返すと、紅葉は話を戻し、穂乃果が誰を好きか、自分が穂乃果を好きなこととオーブはどう繋がって来るのかをにこに説明しだす。

 

「きっと、どことなくナターシャに似ているアイツに、俺はいつの間にか惹かれていたんだと思う。 でも、それは別にナターシャと穂乃果が似ているからアイツを好きになったんじゃなくて、それはあくまで切っ掛けで・・・・・・。 俺はちゃんとアイツ自身を見て、俺は穂乃果を好きになったんだ」

「あんま好き好き連呼しないでくんない? 聞いてるこっちが恥ずかしくなる」

 

ちょっとだけ顔を赤らめて恥ずかしそうににこが紅葉に好きを連呼すると、紅葉はそれに申し訳無さそうにして「す、すいません」と頭を下げて謝る。

 

「まあいいわ。 なんとなく話は見えてきたけど、それで?」

「・・・・・・俺には使命がある。 今はこの街で暴れる怪獣や宇宙人の対処ですけど、それはきっと何時か終わりが来来る。 その時俺は、ウルトラマンとして新たな使命が与えられる筈だ。 恐らくその時俺は、この街から離れることになるだろう」

「・・・・・・しかも、アンタの寿命は地球人よりも長い」

 

紅葉の言葉を紡ぐように、続けるようににこがそう小さく呟くと、紅葉はそれに頷き、そこでようやくにこはオーブのことはこのことにどう関わってくるのか、紅葉が何を言いたいのか、やっと理解することが出来たのだ。

 

「アイツとは、長く一緒にはいられないんだ。 だから俺は、そうだとしてもアイツに想いを告げるべきなのか、告げないべきなのか、悩んでるんだ・・・・・・」

「・・・・・・」

 

紅葉の悩み、それは自分の寿命が地球人よりも長く、何よりもオーブの使命を優先しなければならない為、どうあがこうと穂乃果と長く一緒にいられることは出来ない。

 

そんな紅葉が抱く悩みを打ち明けられ、にこは両腕を組んだまましばらく黙り込んでいると・・・・・・不意に彼女の口が動いた。

 

「使命があるからとか、寿命が長いからとか、そんなの、自分自身の想いを告げないって理由になるの?」

「・・・・・・えっ?」

「何かを好きになったり、誰かを好きになったりする気持ちは、自分自身じゃ止められないものよ。 どうあがいたとしてもね。 穂乃果に自分自身の想いを告げるのと、告げないのはどっちが後悔すると思う? 簡単なことでしょ。 例え想いを告げた結果がどうあったとしても・・・・・・」

「っ・・・・・・」

 

にこはそれだけを言い残すと、彼女はクルリと踵すを返すように紅葉に背を向け、その場を立ち去ろうとする。

 

「えっ、ちょっ、にこ!?」

「まぁ、アンタが穂乃果に告白をしようがしまいが勝手だけど、アイドルは恋愛禁止よ! だから、結果がどうあろうと私に報告すんじゃないわよ? 勿論、他の人達にもね」

 

最後ににこはそれだけを言うと、今度こそ彼女はその場をスタスタと歩き去って行き、そんな風に歩き去る彼女の背中を見つめながら、紅葉は思わずクスリと笑ってしまった。

 

「誰にも報告するな・・・・・・かっ。 にこ、色々と、ありがとうございましたっと・・・・・・!」

 

そして、紅葉は去って行くにこの背中が見えなくなるまで頭を下げ、力強く自分の相談に乗り、見道しるべを示してくれた彼女に感謝の言葉を贈るのだった。

 




アカネ
「怪獣出ない回とか作っちゃダメだよね〜」

紅蓮騎をこの話で出そうとは思ったんですけど、にこにーの為のライブを思いついた穂乃果ちゃんがそこまでの嫉妬心を抱くだろうかという疑問からちょっと紅蓮騎は出せませんでした。
そのせいでラグナも今回出せなかったし。
次回はラグナにも関係ある話にするつもりだから出したいですね。
そもそも怪獣が出せなかった。
要所要所でその名残りみたいなシーンが幾つかあるんですけどね。
まぁ、これで一応、紅葉がにこにーに相談とかする建前は出来ました。
そういう意味では多分重要回的なのが出来たかなっと。
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