私は天使なんかじゃない   作:月詠ウサギ

104 / 207
キャピタルの風

  そして私はキャピタル・ウェイストランドに舞い戻る。

 

 

 

 

 

  薄暗いトンネルの先が見えてきた。

  光だ。

  光が見える。

  自然、足が早足となり、次第に走り始めていた。

  「主、転びます」

  「大丈夫」

 

  タタタタタタタタタタタタタタタタ。

 

  「おー」

  外。

  眩しい太陽。

  今日も良い天気だ。

  私は帰ってきた、北部にあった激動の街ピットからキャピタル・ウェイストランドに帰ってきた。何だかんだで今の故郷はここだ、やはり感慨深いものがある。

  行きは拉致られてだったのでどこから辿り着いたのかが分からなかったけど、このトンネルから向こうに行ってたのか。

  近くに奴隷市場の跡がある。

  今は誰もいない。

  ラムジーたちは既に骨となっていた。

  「あっ。モールラット」

  化け鼠だ。

  ふぅん。

  あいつが、いや、あいつらが奴隷商人どもの死体を全て平らげてしまったようだ。

  モールラットの生態は基本的に温厚。雑食。

  今のところはお腹が一杯だからか、こちらを威嚇するにとどまり、攻撃はしてこないようだ。

  「一兵卒、意外に無邪気だな」

  「そう?」

  クリスたちがトンネルから出てくる。

  モールラットたちは大勢の人を見たからか、そのまま一目散に逃げて行った。

  「ここが、キャピタル・ウェイストランド、か」

  そう呟いたのはレイダー。

  ……。

  ……あー、レイダーって区分ではないのか?

  意外に謎のカテゴリーだよな、ピット組って。

  ピット組、つまりはピットで私の部下になった面々です。アカハナもいる。ただし、今呟いたのは彼ではなく、部下その①。そもそもアカハナはキャピタル出身だ。

  アカハナの経歴はBOSに現地採用組として登用され、その後OCとなり、OCの命令でピットに奴隷王と接触しようと向かってトロッグに襲われ、奴隷王に助けられてピットの戦士になったという

  わりと面倒臭い経歴の持ち主。ああ、そして今は私の部下となりキャピタルに戻ってきた、わけです。

  さて。

  「アカハナ、あんたたち本当にいいの?」

  今更ですけどね。

  ここはもうピットではなくキャピタル・ウェイストランドなわけだし。

  彼らははるばる来てしまったわけで。

  「ボスに忠誠を誓っておりますので」

  「そう」

  と言うしかない。

  何気にグリン・フィスタイプなのかな、彼は。

  「キャピタルの風は久し振りです」

  「そうね、私もよ」

  彼の言い回しに含まれた真意は分からないけど、キャピタルの風は確かに久し振りだ。ピットの空気は、どこか鉄臭かった。まあ、製鉄の街なわけだし、工場も錆びてたし、独特の匂いだったな。

  ピットの動乱、終わって、帰ってみたらどこか遠くの話だ。

  「それでミスティ、どうするんだ?」

  「クリス、どういう意味?」

  「どうもこうもないさ、感慨深げにここにいるのはいいがねそろそろ移動しないか? ……ラブホテルに」

  「行かないわよっ!」

  「ちっ」

  「というか、そもそもそんなものが今の時代にあるの?」

  「ないだろうな」

  「駄目じゃん」

  「カロン、ハークネス、ここにラブホを建てるのだっ!」

  『御意のままにっ!』

  意味分かんねぇ。

  「クリスティーナ」

  「ん? お前が私に声を掛けるとは珍しいな、何だ、グリン・フィス」

  「ラブホとやらを建てたならば、自分も加えてほしく」

  何言ってんだグリン・フィスさんよぉ。

  「ふっ、よかろう。私はお前とミステイで大乱交スマッシュブラザーズをやろうではないか」

  やらねぇーよっ!

  「いいですな」

  うるせーよっ!

  何なんだお前らは。

  「ボス」

  「ん?」

  「グリン・フィスさんは、その、ああいう方なのですか? もっと渋い方だとばかり……」

  「ああ、あれ基本変態だから」

  「……」

  ギャップにドン引きってすか?

  まあ、そうですね。

  ドン引きですねー。

  そういえばピットでの宴会でシーはグリン・フィスにベタベタしてたなぁ。好みなのかな?

  彼女は私よりも先にキャピタルに帰った、1人で。

  スマイリーも居場所を求めてピットを去った。

  また会えるだろうか。

  「主」

  「……何?」

  「その、露骨に嫌そうな顔をしないでほしいのですが」

  「あー、はいはい。それで、何?」

  「我々は大所帯です」

  「そうね」

  確かに大所帯だ。

  私、グリン・フィス、クリスチーム、そして新たにピット組がいる。ピット組は私の副官のアカハナ、9名の部下、計10名で構成されている。当然全員が武装している。体感的にピットの戦士はキャピタル

  よりも弱い印象はあるけど、実際相対したのは弱かったけど、銃で武装した10名なわけだから結構な戦力だ。ただ、レイダーファッションなのが玉に瑕。どっかで着替えささんと。

  「それで、それが何?」

  「戦力的に申し分ない、と思われます。このまま奴隷商人にトドメを刺しに行くのはいかがかと」

  「あー」

  確かに。

  確かにそれはありだろう。

  ユニオンテンプルの絡みでMr.ウォーカー率いる部隊は全滅、奴隷市場のラムジーたちも全滅、ピットに出張ってきた部隊も全滅。残念ながらボスのユーロジー・ジョーンズ、愛人のクローバーと

  クリムゾンは仕留め損なったけど、大勝利と言っても過言ではない。残りどの程度の戦力がいるかは知らないけど、冷やかし程度に奇襲ぐらいは出来る戦力だとは思う。

  どうする?

  やってみるか?

  「何だ一兵卒、パラダイス・フォールズに攻撃をするのか?」

  「場所を知ってるの?」

  「カロンが知っている」

  「ああ」

  元奴隷ってクリスに聞いたような。

  「教えてやれ」

  「御意のままに」

  「それでカロン、どこにあるの?」

  「クリスティーナ様に聞けっ!」

  「……」

  何だこのコントは。

  面倒臭い指揮系統ではあると思う。カロンとハークネスはクリスの言うことしか聞かないからなぁ。仲間ではあるけど、クリスチームは別系統の仲間って感じ。

  「一兵卒」

  「何?」

  「さすがに勝てないだろう、どれだけ削ったかは分からないがレギュレーターあたりと組んだ方がよいのではないか?」

  「そうね」

  やっぱり、やめとくか。

  私は強い。

  仲間も強い、だけど数は向こうの方が上だろう。

  過信はダメだ。

  「大体負けた時のことを考えているのか? 一兵卒は可愛いから負けたら群がる男たちに欲望のままに貪られるのだぞ。……ひへ、うへへ……」

  「……」

  危ないから危ないから。

  もうやだこいつ。

  「……ボス」

  「気にしないで、発作だから」

  「そ、そうですか」

  考えてみたらアカハナたちピット組は私が養うことになるのか?

  何とかメガトンの戦力に組み込めたらいいけど。

  というかパパがこのことを知ったら泣くんじゃないのか、実の娘がレイダーの親玉になっているわけだし。

  うーん。

  「そうだ一兵卒」

  「ん? こっち側に帰ってきたのね」

  「意味が分からんな。ともかくだ、実はメガトンに帰ったらしばらく忙しくなる。お前が地元民の為に奔走したり二束三文の仕事をするのは構わんが、クリスチームはしばらく休暇だ」

  「……何気に今までの私の行動をディスってらっしゃる?」

  嫌だったらしい。

  水臭いな。

  「嫌なら嫌だって言ってくれたらよかったのに」

  「嫌ではないさ。面倒だっただけだ」

  「同じじゃん」

  「そうではないよ。お前の為に骨を折るのは構わん。我々は友達だろう? ただ、私の趣旨には反していただけだ。まあ気にするな。お前との旅は楽しいよ、これは嘘ではない。信じてくれるか?」

  「ええ、信じる」

  何だかんだで良い奴だ。

  一生の親友だといいなぁ。

 

  「オヤ? ダレカイルゾ?」

 

  「スーパーミュータント」

  厄介なのかで出来たな。

  アンクル・レオみたく善良なタイプかな?

  手にはスレッジハンマーを持っている。

  私たちを値踏みするように見ている、そうこうしている間にドスドスと足音を立てて数が増える。1、2、3……6体か。

  最初の奴が叫んだ。

  「ゲームシュウリョウ、スグニシネっ!」

  ただの敵か。

 

  「な、何だ、あれっ!」

 

  ピット組の1人が叫ぶ。

  ああ、そうか。

  ミディアはスーパーミュータントを知らなかった、少なくともピットにはいないようだ。私もピットでは見なかったし。

  44マグナムを1丁引き抜く。

 

  ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。

 

  6連発っ!

  スーパーミュータントは全員が頭を撃ち抜かれてその場に崩れた。

  巨漢で巨体でも頭を潰されれば死ぬしかない。

  「ふぅ」

  空の薬莢を排出して、弾丸を装填。

  あれで全部?

  斥候の可能性がある。

 

  「ほう、赤毛ではないか」

 

  「はあ」

  ため息。

  そりゃため息も吐きたくなります。

  ジェネラルだ。

  出てきたのは赤いスーパーミュータントのジェネラルだ。何回殺したら生き返るのやめるんだ、こいつは。自作の鉄の甲冑を付けたスーパーミュータント2体を護衛に従えている。

  一瞬ピット帰りの瞬間を狙って来たのかとも思ったけど、私が向こうに行っていたと特定する材料なんてないだろ。

  偶然か。

  嫌な偶然だな。

  いずれにしてもこれはお互いに遭遇戦に近いモノだろう。

  「何であんたがここにいるの?」

  「お前は何故ここにいる?」

  今回はなんか頭良さげな喋り方だな。

  ビッグタウンではそうではなかった、ああ、最初に会った時も頭良さげだったな。何なんだこいつの知能は。わりとアップダウンある気がする。

  「いいところであった、お前を殺す」

  「最初から殺す気満々だったくせに何をいまさら」

  「タイムスケジュールだよ」

  「タイムスケジュール?」

  何の話だ?

  「間に合わなくなる前に殺す。お前はそろそろ、本当に邪魔だ。ここで死んでもらうとしよう。北部は我々の王国だということを知るといい。ようこそ、我が王国へ」

  「悪いけどパスポート忘れたから帰る。またね」

  「ははは。相変わらず面白いな、さて、ここで死んびゃっ!」

  ジェネラルの頭が吹き飛んだ。

  クリスがスナイパーライフルで吹き飛ばしたのだ。

  直後カロンとハークネスも攻撃、護衛も永遠に黙る。

  「えっと、何で撃ったわけ?」

  「はあ? 敵だろ?」

  「そうなんだけど……」

  「会話を楽しむのはお前の悪い癖だぞ、一兵卒。ピロートークは嫌いではないがな」

  「知らんがな」

  まあいいや。

  ジェネラルさん死亡。最初に決着をつけた時以外は雑魚雑魚ですな。

  このままメガトンに帰るとしよう。

  問題は、これで全部かということだ。

  王国にようこそ、ね。

  どうやら北部はスーパーミュータントの領域らしい、一応この辺りは北部には入らない。私目当てでジェネラルがいたわけではないようだけど、この近辺まで部隊率いて出張ってきてた。

  まだいるのか?

  いなければいい。

  ただしいた場合はちょっと厄介な気が……。

  「主、囲まれています」

  「マジで?」

  「はい」

  「やれやれ。アカハナ、警戒態勢」

  「了解しました。おい、やるぞっ!」

  『おうっ!』

  「クリス」

  「心得ている。カロン、ハークネス、攻撃態勢」

  『御意のままに』

  仲間たちは全員臨戦態勢。

  さあて。

  「行くわよっ!」

 

 

  攻撃開始っ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




期間早々に戦闘な受難体質のミスティさん。次回からオアシス絡みの話です(=゚ω゚)ノ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。