私は天使なんかじゃない   作:月詠ウサギ

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別ゲーム、オビリオンのオリキャラです。
ファンタジー世界の住人っす(=゚ω゚)ノ


次元を超えた者

闇の一党ダークブラザーフッド。

  タムリエル最強最悪の暗殺集団でありもっとも恐れれている組織。

 

  幹部集団ブラックハンド。

  闇の一党を統括する頭脳であり精鋭。称号は『聞こえし者』『伝えし者』『奪いし者』。

  しかし新生ブラックハンドには『集いし者』『与えし者』が新設された。

 

  与えし者。

  それはフィッツガルド・エメラルダに対抗する為に作られた称号であり、最強の暗殺者に飲み与えられる称号。

  混沌の世界で両者は激突した。

  そして……。

 

 

 

 

  

  「……」

  「右腕は折れてるな。肋骨もだ。ただし腹の傷は何だ? ただの刃物で斬られてこんなになるのか? ……綺麗な傷跡だな……」

  「……」

  「まあいい。そのまま大人しく寝てろ。治してやるから」

  「頼む」

  薄汚れた簡易ベッドに転がりながら俺はそう呟いた。

  痛み?

  ないとは言わん。

  しかし伝えし者アークエンに拾われて以来、痛みを殺す術は身に付けている。……心もな。

  それにしてもここはどこだ?

  ミスティとかいうハレンチ娘に股間を握られ……いや、それはいい。

  封印しよう。

  ……。

  と、ともかくだ。

  私はミスティという女性に拾われた。

  ここがどこの街なのかは知らないが外に転がっていたのは一時間ほどだろう。その間、誰も見向きもしなかった。彼女が拾ってくれなければ

  おそらくは死んでいたのは確かだろう。攻撃魔法は遠近と使えるものの回復魔法は習っていない。

  死なずに済んだのはフィッツガルド・エメラルダの持つ武器の影響もあるだろう。

  エンチャントされていたのは雷。

  腹は綺麗に焼き切られている。それほど深くはないから出血死せずにすんだものの、普通の剣なら化膿していたに違いない。

  ともかく病院に担ぎ込まれた。

  あの女には感謝しなくてはならない。

  あの女には……。

  「ここはどこだ?」

  「んー? メガトンだ」

  「メガトン?」

  ブラヴィルではないのか?

  いやまあ確かに街の様子はブラヴィルではなかった。ブラヴィルも薄汚れてはいたものの、この街ほどではない。ここはさらにランクが落ちる。

  だとしたらここはどこだ?

  メガトン。

  シロディールにはそんな地名はなかったはずだ。見た感じそれなりに大きな街だ。隠れ村とかいう類ではあるまい。

  だとしたらシロディールではない。

  別の地方なのか?

  「怪我人」

  「グリン・フィス」

  「名前なんざどうでもいいんだよ。お前は怪我人だ。大人しくしてろ」

  「……」

  「いいな?」

  「ああ」

  「結構。では始めるぞ」

  「ああ」

  「では縫合するぞ。スティムパックの予備があまりないのでな、原始的なやり方で勘弁してくれ。骨折に関してはスティムパックで何とかしてやる」

  「ああ」

  意味が分からんが俺は答える。

  ぶっきらぼうの口調ではあるものの、この男は医者である事に不満はないようだ。

  医者としている事に満足しているのだろう。

  医者には治療を任せよう。

  患者は?

  「……」

  大人しくしているさ。

  目を瞑った。

 

 

 

 

 

  俺の名はグリン・フィス。

  闇の一党に置いての階級は『与えし者』。

  任務は闇の一党ダークブラザーフッドの仇敵であるフィッツガルド・エメラルダの抹殺。

  恩義あるアークエンの期待にも応える為にも奮起した。

  最終決戦の場である『混沌と虚無の世界』で自分はあの女と相対し激突した。

  フィッツガルド・エメラルダと。

 

 

  強かった。

  あの女は強かった。……いや。強過ぎた。

  良い勝負をしたような感覚はあるものの、それはあくまで自己弁護であり詭弁でしかない。結果は惨敗だ。健闘ですらない。

  俺は敗北したのだ。

  あっさりと。

 

  

  ただあの女も完璧ではなかった。

  最後の一撃を魔力障壁を張って防いだ。そのまま爆風で吹き飛ばされはしたものの、致命傷は避けた。

  爆風で吹き飛ばされ視界から消える。

  それにより俺が消し飛んだと思ったのだろう。

  しかしそれがあの女の慢心とは思わない。

  実際問題ミスティとかいう女に拾われなければ死んでいた。致命傷ではないにしても戦闘続行出来るほどではなく、また既に役立たずなのは

  確かだ。生きていようが既にあの女の障害にもならないのは必至。

  ……。

  もしかしたらあの女は俺が生きている事すら気付いていたのかもしれない。

  虫の息の俺を見逃したに過ぎないのかもしれない。

  だとしたら、なお恐ろしい女だ。

 

 

  ともかく俺は生きた。

  死ななかった。

  しばらくすると混沌と虚無の世界は次第に崩れた。そして、俺はここにいる。

  ブラヴィルではない。

  おそらくはシロディールですらないだろう。

  メガトン、それはどこだ。

  何故俺はここにいる。

  何故?

  何故?

  何故?

 

 

  魔道に関してはさほど詳しくはないものの、意味は分かる。

  おそらく次元が歪んだのだろう。

  その影響で俺は別の世界に飛ばされた。

  まったくありえない話ではない。

  強力な魔道を用いればオブリビオンにすら飛ぶ事も可能なのだという。何故混沌と虚無の世界が崩れたのかは知らないが、あの時に次元に歪

  みが生じてこちら側に飛ばされたのではないだろうか?

  タムリエルの別の場所か。

  それともオブリビオン?

  16体の魔王はそれぞれオブリビオンを持っている。つまりオブリビオンとは魔王達がそれぞれ有している事になる。

  さらに魔王が存在しないオブリビオンも無数にあるらしい。

  よくは分からんがここもそういう可能性がある。

  何故?

  答えは簡単だ。

  魔王の支配する領域で人が生きられるのは、伝説ではシェオゴラスの領域だけらしい。

  ……ここもそうか?

  まあいい。

  いずれにしてもあの世界が崩れたのは闇の一党が終わった事を意味するはず。あのような崩れ方をしたんだ、闇の一党は負けたのだ。

  集められるだけの数の暗殺者を動員した。

  幹部も勢揃い。

  にも拘らず。

  にも拘らずだ。我々は勝てなかった。

  結局のところ最後の最後まで我々はあの女に出し抜かれ続ける事になった。

  負けた。負けたんだよ、我々は。

  混沌の覇者フィッツガルド・エメラルダに。

 

 

  組織の仇。

  ……いや。そうは思わない。

  組織そのものが存在しない以上、今更どうしようもない。そもそもここがどこかですら分からないのだ。

  今後は1人の人として生きてみよう。

  今後は……。

 

 

 

 

 

  「……お前おかしな奴だな」

  「……」

  「普通は泣き叫ぶぞ、麻酔すらしてないのに。……いやいや。そもそも意識を保ってられるなど……」

  「世話になった」

  「……動けるのも凄いな。お前人間か?」

  「インペリアルだ」

  「インペリアル?」

  ベッドから起き上がり衣服を纏う。大半はフィッツガルド・エメラルダとの戦いでボロボロになっていたが、ないよりは仕方ない。

  ローブを身に纏う。

  剣は……使い物にならんな。

  まあいい。

  自分には魔法がある。

  剣はどこかで調達すればいい。

  「ん?」

  おかしい。

  魔力を感じない。

  虚空に向けて手を向ける。

  「シシスの冷たい手」

  ……。

  ……。

  ……。

  何も起きない。

  本来ならば蒼い光が宿る。触れたモノに対して冷気の魔法を叩き込む効果があった。効力が弱まったとかではない、そもそも発動しない。

  何故だ?

  意識を研ぎ澄ます。

  「何してんだ、お前?」

  「……」

  医者の言葉を無視。

  もう一度やってみる。結果は同じ。

  怪我をしたから?

  いや。それは関係ないだろう。魔力は肉体とは関係ない。まったく異なるものだ。

  ならば何故?

  「これは……」

  そうか。

  ここにはそもそも魔力の流れがないのか。

  あまりの魔道には詳しくないものの魔法を使う以上はそれなりに理屈は押さえている。

  「特異な場所なのか、ここは」

  魔力。

  それは世界に満ちるモノ。

  人(亜人、エルフ、全ての生物)はそこから魔力を得る。消費した魔力は、個人差があるものの再び回復していく。魔法という形ではなった際に

  再び世界に吸収される。つまり人→世界→人→世界……永遠にそれは循環していく。

  それが魔術師ギルドで確立された理論。

  だとしたらここには魔力の流れがないのだ。

  ……。

  ちなみに先天的にありえないほど強力な魔力を生まれながらに持つ者の中には、魔力を自然回復出来ない者もいる。

  そういう者は世界と魔力の流れから遮断されている理屈だ。

  まあ余談だ。

  さて。

  「ここは本当にどこなんだ?」

  「メガトンだ」

  ドサ。

  俺はベッドに腰を下ろす。

  腕も動く。

  スティムパックとかいうのはポーションみたいなものなのか。

  まあ、針がある妙な器具を腕に突き刺して直接注入するとは思ってもなかったが。

  「メガトンとはどこだ?」

  「何だと?」

  「ここはタムリエルのどこかなのか?」

  「……?」

  意味が分からない、そんな顔をした。

  つまりここはタムリエルではないのだ。だとしたらオブリビオンだろうか?

  いや待てよ。

  「まさかアカヴァル大陸なのか?」

  タムリエルが帝国に統一される以前に伝説の大陸アカヴァルから侵略してきた者達がいた。強力なアカヴィリの武具を扱う軍隊だ。

  シロディールに襲来した侵略者達は強力だった。

  しかし結局はモロウウィンドに背後を襲われ、二方面の戦いを強いられ連中は去っていった。

  今なおアカヴァルがどこにあるのかは謎だ。

  医師を見る。

  「そうだ」

  「……」

  やっぱりそうか。

  「しかしあんた少し言葉が鈍ってるな。アカヴァル大陸じゃない、アメリカ大陸だ」

  「そうか」

  どうやらアカヴァルには魔力の流れがないようだ。

  魔法が使えない理屈は分かった。

  なるほどな。

  「で? お前これからどうするんだ?」

  「……そうだな」

  「まあ、文無しのお前に医療費を払えとは言わんさ。しかし身の振り方を考えた方がいいぞ。ここは病院だ。怪我人や病人は救うのが仕事

  だが健常な奴は範囲外だ。悪いがここには置いてやれんぞ、お前は退院だ」

  「心得ている。世話になったな」

  「……待て」

  「何だ?」

  「お前を運んで来てくれた少女は今から危険な場所の調査に赴くらしい。手助けするって選択肢もあるぞ?」

  「……」

  無言。

  俺を拾ってくれた伝えし者アークエンはいつもこう言っていた。……いや。こう言って洗脳していた。耳にタコに出来るほど聞いた。

  与えられた恩は返せ。

  それが口癖だった。

  ずっとそれに従って来た。一理あるからだ。孤児の俺はアークエンに拾われなければ餓死していた。

  だから理屈は理解出来る。

  「……」

  闇の一党は壊滅した。

  ここはシロディールではないしタムリエルですらない。

  まったく異なる場所。

  ならば……。

  「彼女はどこにいる?」

 

 

  与えられた恩は返す。

  それが俺の全ての意思であり財産だ。それに背く事はできない。絶対に。

  拾われた恩は返す。

  ……必ず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  今回の話は『ファーストコンタクト』と対の話です。なお『ファーストコンタクト』の視点はミスティ嬢です。

  お読み頂ければ分かり易いかと思われ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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