私は天使なんかじゃない   作:月詠ウサギ

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激闘スーパーウルトラマーケット

  スーパーウルトラマーケット。

  この近辺では最大規模のお店で、このお店の存在により待ちはさらに栄えると誰もが思っていた。

  しかしそれは夢幻。

 

  200年前の全面核戦争。

  それが全てを終わらせた。人々の夢も、街の発展も、全てが止まった。

  全てが?

  全てが。

 

  アメリカと中国の全面核戦争終結から200年。

  世界は滅亡した。

  大国同士の自分勝手な理論から、我侭な理屈から文明世界は核爆弾で吹き飛んだ。人間だけではなく文明すらも吹き飛ばした。

  それでも。

  それでも人間は大地にしがみ付いている。

  今尚しがみ付いている。

  そして……。

 

 

 

 

 

  《現在の装備》。

 

 

  ミスティ。

  10mmサブマシンガン。ハンティングライフル。ナイフ。

 

 

  ビリー・クリール。

  コンバットショットガン。

 

 

  グリン・フィス。

  中国製の剣(モイラからプレゼントされた。元々持っていた剣は折れていて使い物にならなかった為)。

 

 

  クリスティーナ。

  スナイパーライフル。32口径ピストル。

 

 

 

 

 

  「……」

  「……」

  「……」

  「……」

  大所帯となった私達一行は目的の場所で立ちすくんでいた。

  スーパーウルトラマーケット前。

  あちらこちらに死体が吊られている。首がなかったり腕がなかったりと、全て肉体的に欠損している死体。

  壮観ではある。

  しかしだからといって手を打って喜べる状況ではない。

  スプリングベール小学校でもそうだったけどレイダーの趣味というのはよく分からない。

  ビリー曰くこれはレイダーの住処の証拠らしい。

  何故に?

  ある意味でレイダー達のトレードマークみたいなもの?

  まあ何でもいいですけどね。

  分かり易いし。

  つまり死体=レイダー出没注意、になるわけだ。

  外の世界って意味分からん。

  「……死霊術師はアカヴァル大陸にもいるのか……」

  「はっ?」

  謎の拾い物グリン・フィスは呟く。

  意味不明。

  拾われた事に対して妙に恩義を感じているらしく私に懐いている。今回の同行も進んでの行為だ。

  「偉大なる主」

  「な、何?」

  慣れない名称。

  懐かれるのは悪くないけどさ。

  「これは死霊術師の示威行為の1つ。ここには敵が潜んでいます。……お気を付けをください」

  「……はーい」

  死霊術師って何?

  風変わりなこの銀髪の男を見る。

  パパに次いで良い男ではあるけど風変わりなのは性格だけではない。武器は頑として剣を主張するし、弾除けにもならないような布地のローブ

  に身を包んでいる。何より銃器を携帯しようとしない……というかそもそも銃器を知らないのだ。

  ボルトっ子の私ですら銃器知ってる。

  こいつどこから来たんだろ?

  タムリエルとかシロディールとか意味不明だし。

  ……。

  こんな時代だ。

  地名は大戦以前の名称と変わっていてもおかしくはない。

  彼の住んでいた場所では『アメリカ大陸』が『アカヴァル大陸』と呼ばれていたらしい。

  まあ、なんでもよろしい。

  「準備は?」

  与えし者(名称意味不明)グリン・フィス。

  鬼軍曹……失礼。保安官助手クリスティーナ。

  眼帯伊達男ビリー・クリール。

  3人の仲間に向き直る。

  歩哨はいないようだけどスーパーウルトラマーケットには敵がいると見て間違いはないだろう。準備と警戒は必要だろう。

  今回の任務は調査。

  レイダーの始末ではない。

  でもまあ、調査するのにレイダーは邪魔ですから。断ったからといって調査をさせてくれそうもないし。

 

  「すいませーん☆ 調査させて欲しいんですけどー☆」

  「いいぜいいぜ。俺達は手を出さない、好きだけ調査してくれよ。ハハハ☆」

  「わーい。ありがとー☆」

  「ハハハ☆」

 

  ……なわきゃないない。絶対にありえない。

  中には気さくなレイダーがいるのかもしれないけどとりあえずそれを確認する術はない。打ち解けるのは大切な事だけどそれも時と場合による。

  今の時代なら尚更だ。

  敵のカテゴリーに入っている以上、敵でしかない。

  デストロイするに限る。

  それがお互いに分かり易い事だ。敵味方を明白にする。極めてシンプルにね。

  それ大切。

  「偉大なる主よ。準備は万端。……命令あり次第、暗殺を実行します」

  「愚問だな兵卒っ! 将たるものいつでも臨戦態勢であるっ!」

  「行こうぜ嬢ちゃん。パーティーの時間だ」

  それぞれ得物を手に取る。

  中に入ればド派手な展開になる事は必至。わざわざ相手に警告などしない、一気に始末するだけだ。

  銃は法律。

  私は法律。

  少なくとも私は私の良心と打算に従って行動している。私は正しい。そう思う事こそがこのキャピタルウェイストランドでの法律なのだ。

  私は悪意?

  んー。仕方ないわ。

  だって私は天使なんかじゃないもの。

  クリスティーナが不敵に笑う。

  「ハッピーハッピーハンティング♪」

  「すいませんそれゲーム違いますよね? ま、まあ確かに別のゲームからの介入者はいますけどあまり話を捻らせないで欲しいのですけど」

  「意味が分からんな一兵卒」

  「……ですよね……」

  ま、まあ、よろしい。

  この世界に残留している放射能の所為か少々意味不明な言動ではあったものの、そこに意味はない。

  今意味があるのは調査だけ。

  というか突撃あるのみ。

  「行くわよ」

  「御意」

  「兵士たるもの勇敢であれっ! 進めっ!」

  「マギーの養育費を稼ぐ時間だ。行こうぜ」

 

 

  商品の陳列棚。

  レジ。

  店内は過去の雰囲気を残していた。……まあ、死体のオブジェは当時はなかったでしょうね。

  そして大規模な銃撃戦も。

  強盗が入った事はおそらく戦時前もあったでしょうけど銃撃戦はありえなかったはず。

  今それが行われている。

  今?

  ええ。現在進行系で銃撃戦中。

  私もそこに参加してる。

  課外活動には必ず参加するのが私のポリシーですのでね。

  ほほほ☆

  「こんのぉーっ!」

  バリバリバリ。

  私の手にあるサブマシンガンから大量の銃弾が一秒の間に何十発も放たれる。正確無比な銃撃能力が私にはあるものの、全てが一発で仕留

  めれているわけではない。身を隠しながら近付いてこようとするレイダー達を牽制する意味合いの方が強い。

  ……まあ……。

  「はぐぅっ!」

  「ぎゃっ!」

  2人始末。

  死体が2つ転がったけど誰も気にするわけではない。そもそもここにはレイダー達のお遊びで切り刻まれた死体が多数転がっている。

  2つ増えた程度で誰も気にしない。

  私も気にしない。

  そこに問題はおあり?

  いいえ。

  問題などない。

  「来いよっ! 来いよーっ!」

  レイダーは叫ぶ。

  私達はカウンターに身を屈めて隠れながら、時折突撃してくるレイダー達に一斉射撃を浴びせている。

  私はサブマシンガンで応戦。

  ビリーはコンバットショットガンで近付いて来ようとするレイダー達に応戦しているものの、ショットガンという特性上遠距離戦には向かない。威力

  が半減してしまうのだ。だからといってわざわざ接近を許す必要はないのだけど。

  スーパーウルトラマーケットに突入して10分。

  双方激しい銃弾の応酬。

  「結構多いわね」

  「ああ、確かにな」

  弾装を交換しながら私は呟く。カウンター越しにビリーは応射した。

  グリン・フィスは剣を手にしたまま座っている。

  ……。

  ……ま、まあ、剣だけじゃ役立たずよね。

  私はパパから投薬されなくなった為か、妙な能力に目覚めている。時が止まって見えたり、銃弾が見えたり。だから私は結構万能に振舞えるも

  ののグリン・フィスはただ剣を持った美形(パパには劣る。十年後にはダンディーでしょうけどね☆)でしかない。

  銃撃戦では役立たずだ。

  ガチャ。

  弾装交換終了。

  私もカウンターに隠れながら銃身だけを露出させ、連射。

  もちろん相手がいるであろう場所は狙ってる。

  今のところこれは功を喫している。相手は足止めされ、一定以上は近づけない。

  「ぎゃっ!」

  また1人死亡。

  私かビリーのどちらかの銃弾で沈んだ。

  あまり弾丸を豊富に持っていなかったものの、さほど弾丸には困らない。おそらくレイダー達が持ち込んだのであろう弾丸箱が大量にある。

  必ずしも10mm弾ばかりではないけど、それでも大量にある。

  銃弾には困らない。

  「思ったよりは数少ないわよね」

  「確かにな」

  「レイダー同士で共食いでもしたのかしらね?」

  「ははは。そりゃ助かるよな」

  軽口を叩きながら私達は激しい銃撃を繰り出す。

  ルーカス・シムズ曰く『ここにいるレイダーの数はスプリングベール小学校の比ではない』らしいけど……実際問題、人数的には大した事ない。

  10名は越えない。

  いやまあ正確に数えているわけではないので10人いるのかもしれないけどそれ以上ではない。

  んー、ルーカスの早合点?

  ただ少なくとも銃器の数は多いみたい。

  迂闊にカウンターから離れられないのはレイダー達の銃撃も激しいからだ。

  双方激しく撃ち合う。

  銃からは大量に弾が放たれ、お互いに応酬。

  弾丸の交換中。

  にしてもお互いに言葉を交換するのではなく弾丸を交換し合う仲とは……人間分かり合えないものらしい。

  不毛ねー。

  現在人類は破滅へと加速度的に突撃中。

  「野郎ども突撃だぜーっ!」

  「ひゃっはーっ!」

  「女だ、女だーっ!」

  残った連中が身を乗り出して突撃開始。もちろん銃撃を続けながらだ。

  迂闊には身を晒せない私達の銃撃の命中精度が低い事を理解した上での行動だ。それにレイダー達は外観ほど知能は低くないらしい。多少な

  りとも思慮を働かせ、棚や瓦礫に身を隠しながらの移動。

  次第に近付いてくる。

  よーしよし。

  狙い通りだ。

  「……っ!」

  ドサ。

  突然、1人が倒れた。

  当然レイダー。

  無音。

  新たな銃撃は無音のまま的確にレイダー達の頭を貫いていく。眉間から入る弾丸は容赦なくレイダーの命を奪う。

  慌てて身を隠すもののレイダー達に命を続ける事を許さない。

  音もなく相手を射殺すスナイパーは冷酷なまでにレイダー達を狩り立てる。

  狙撃は誰?

  わざわざ聞くまでもない。

  クリスティーナだ。

  背負っていたスナイパーライフルは飾りではない。

  ……。

  なるほど。

  高飛車な口調と性格ではあるものの、それに伴う実力は……いやそれ以上の実力があるのだ。

  納得。

  レイダー達の鎮圧完了。

  スーパーウルトラマーケット制圧完了。

  「終わりね」

  溜息。

  疲れた疲れた。

  撃ち過ぎて銃身は滅茶苦茶熱くなるし、戦闘はやっぱり体が緊張して疲れる。敵は全員デストロイ。所要時間は二十分ちょっと。

  それでも一時間ぐらい戦闘していた感じがする。

  あー、疲れた。

  「ふぅ」

  ……やれやれだぜー。

 

 

  食料品は大量にあった。

  お酒もね。

  缶詰を1つ開けて試食するビリー・クリール。ホウレン草の缶詰だ。……おいしいらしい。

  「悪くないぜ」

  ……マジっすか?

  食糧事情が厳しい世界なのは分かってる。

  ちょっと小腹が空いたからってコンビニが近くにある世界ではないのだ。

  私がメガトンで食している食べ物も出所は大して変わらないだろう。つまりビリーが食べているものとそう変わらない。

  だけどやっぱ抵抗があるなー。

  200年前の缶詰。

  生産ライン止まってから200年前の缶詰です。

  それを平気で躊躇いもなく食すビリー君も信じられませんけど、レイダー達の胃袋も信じれません。

  ……やれやれだぜー。

  「んー」

  まあ、そこはいい。

  ただ医療品が見当たらない。

  モイラから提供されたこのスーパーウルトラマーケットの情報では、ここには医療品も販売されていたようだ。地元の皆様から愛された便利な

  お店だったらしい。だとしたらどこかに医療品があるはずなんだけど……店内には見当たらない。

  略奪された後?

  まあ200年も経ってるわけだからそれもありえる。

  ある意味で食料以上に医療品は切実な問題だからだ。これこそ生産ラインが止まれば二度と手に入らない。

  今、出回っている薬がなくなればそれでお終い。

  全て略奪されていてもおかしくない。

  ただ……。

  「この扉よね」

  1つだけ。

  1つだけ開かずの扉がある。鋼鉄製の扉だ。

  現在グリン・フィスが開錠中。こういう作業は得意らしくヘアピンとドライバーで開錠している。

  私、ビリー、クリスティーナは周囲を警戒中。

  レイダー始末はした。

  この店内にいた連中はすべて排除した。……まあ、死に損なってたのは2人いた。

  どうしたかって?

  改めて逝ってもらったわよ、地獄に。

  てへ☆

  ガチャ。

  「偉大なる主よ。開きました」

  「ありがとう」

  扉は開錠。

  扉を開いて私達は中に入った。

  「うわぁ」

  思わず感嘆の声。

  中にはお酒の類と医療品が山と積まれていた。なるほど。ここは倉庫としての意味合いがあるのか。ほとんど手付かずのまま。

  レイダー達が入った形跡はない。

  鋼鉄の扉。

  おそらく今まで破る事すら出来なかったのだろう。

  爆発物なら鋼鉄製を吹っ飛ばす事は可能だったろうけど……レイダー達もここにお宝があると踏んでいたに違いない。だからこそ吹き飛ば

  さなかった。よっぽど爆発物のエキスパートでない限り扉ごと室内を吹き飛ばしかねないからだ。

  「こりゃお宝だぜ」

  ビリーが口笛を吹いた。

  今回彼が同行してくれたのは好意以上に報酬目当てだ。

  そこはいい。

  別に批判すべき事ではない。

  好き勝手に漁って頂戴な。今回の任務は街を潤す必要はない。あくまでモイラのサバイバル本の為だ。

  欲しいだけゲットすればいいさー。

  私もそうするし☆

  「一兵卒警戒せよっ!」

  「はっ?」

  銃を身構える軍曹……失礼、クリスティーナ保安官助手。32口径ピストルだ。接近された際にはこちらを使うのだろう。その動き、無駄がない。

  この女何者なんだろう?

  前身が分からない。

  少なくとも正式な訓練を受けているような気がする。

  まあいいけどさ。

  「ふーん」

  私は特に警戒しなかった。

  そこにはロボコ社のプロテクトロンが箱型ユニットに収められている。起動していない。メンテナンス状態のまま、置かれている。

  「ふーん」

  耳を澄ます。

  ぶぅぅぅぅぅぅぅん。

  静かな電動音が響いている。

  ……稼動している。

  まあシステム的に中のプロトテクロンが稼動可能かは知らないけど、保存状態は完璧だ。

  これまたありえないわよね。

  200年もここに置かれたままシステム自体は活きてるなんてさ。

  世の中色々とありえない事がありえるらしい。

  ……やれやれだぜー。

  「大丈夫よ。クリスティーナ」

  「自分が心配してるとでも思ったのか恐怖しているとでも? ……兵卒、市中全裸引き回しの刑だっ!」

  「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

  ……。

  ……既に軍隊関係ない刑ですねー……。

  セクハラ決定っ!

  はぁ。

  「主」

  「……?」

  「妙な気配がします」

  「……?」

  気配?

  鋼鉄の扉は半開きのまま。クリスティーナは目で私とビリーに合図。静かに銃を引き抜き、店内の様子を窺おうとする。

  その時、声が響いた。

 

  『おいおい、誰も出迎えなしかい? 虐殺将軍エリニース様のご帰還だよっ!』

  

  「……っ!」

  思わず耳を覆った。

  女の声だ。

  店内放送用のマイクで喋っているのだろう。しかも音量最大で流してる。耳をつんざくような大声だ。

  きーん。

  耳鳴りがした。

  「どうやら本隊か。一兵卒、侍、眼帯、配置につけ。第二種戦闘配置だっ!」

  「はっ?」

  意味分からんし。

  ともかくレイダーの一団が店内に雪崩れ込んでくる。

  いやまあ殺気立ってるわけではない。元々ここにいた一団だろう、私達が始末したのは留守部隊。どっかに略奪(多分)に出てた本隊が戻っ

  て来たのだ。数は12ぐらいかな。あの世に旅立った留守部隊合わせて総勢で20名を越す数の集団。

  なるほど。

  確かに大部隊だ。

  「なんだこりゃっ!」

  レイダーの1人が叫ぶ。

  はい。殺気立ちました。始末した留守部隊の死体を見つけたのだ、敵さんは全員警戒態勢。

  そのレイダーはそのまま仰け反って倒れる。

  「ちょっとっ!」

  「ふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは人がまるでゴミのようだっ!」

  クリスティーナの狙撃。

  ……駄目だ。

  この女、完全に性格が意味不明だ。軍人なのか狂人なのかよく分からん。

  ルーカス・シムズの言葉を思い出す。

  掴み所のない女性。

  確かにぃー(ダイゴ風味)。

 

  『撃ち殺せっ!』

 

  館内放送が響く。

  虐殺将軍とかふざけた自称をしていた女の声だ。リーダー格なのだろう。

  声と同時に銃弾が浴びせられる。

  私達のいる部屋に向って。

  「グリン・フィスっ!」

  「……」

  戸口で平然と発っているグリン・フィスに向って銃弾は飛んでくる。私の警告は……。

  「はっ!」

  キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンっ!

  鋭い音が響く。

  断続的に。

  グリン・フィスは刃を振るう為にその鋭い音が響き渡る。

  ……。

  ……すいません剣で銃弾を切り落しているのでしょうか?

  ……ありえねぇ。

  「扉をっ!」

  「任せとけ嬢ちゃんっ!」

  ビリーが鋼鉄の扉を急いで閉める。

  閉まり切る前にクリスティーナのスナイパーライフルの一撃でレイダーの1人を射抜いた。

  バタン。

  扉が完全に閉じると銃弾の音が反響した。

  少なくとも豆鉄砲で破れる扉ではない。銃弾では無理だ。……ミサイルとかグレネードなら……そうね、私達ごと吹っ飛ばせるだろう。

  今までは中身を気にしてそれをしなかった。

  そう。

  レイダー達は扉の向こうにお宝があると踏んで爆破はしなかった。

  しかし今は?

  今は私達ごと吹っ飛ばすのに躊躇いはないだろう。

  それに気付くまでに何とかしなきゃ。

  「しゃあない」

  私はプロテクトロンを起動させるべく行動を開始する。

  コンピューターを狂ったように叩く。

  カチャカチャカチャ。

  「おい一兵卒っ! 篭城と密閉は別物だぞっ! 扉を閉めたお陰で反撃も出来ずに……っ!」

  「……」

  カチャカチャカチャ。

  「おいっ!」

  「……」

  カチャカチャカチャ。

  「おいっ!」

  「やかましいあんたが発砲するからでしょうに連携出来てない奇襲のお陰で相手にただ無駄に気付かれただけだ黙れボケーっ!」

  「……」

  「黙ってろ」

  カチャカチャカチャ。

  クリスティーナの先走りのお陰でこんな状況になったのは確かだ。

  やかましい。

  鋼鉄の扉に銃弾が撃ち込まれるものの、鋼鉄をぶち抜くには威力が小さすぎる。撃ち抜きたいならガトリングガンでも持って来い。

 

  『ガトリングガン用意っ!』

 

  「……」

  うがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!

  こいつら半端ねぇーっ!

  そんな玩具まで持ってるのかよっ!

 

  『ボス。それよりもヌカランチャーで……』

  『なるほどそいつは上出来だ。小型核で吹っ飛ばすっ!』

 

  うがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!

  今のご時世犯罪者でも核が携帯出来る時代なのかっ!

  私はここに要求する。

  核廃絶(リアルなまでに悲痛な訴え)っ!

  「急げ急げ嬢ちゃんっ!」

  「急げ一兵卒っ!」

  カチャカチャカチャ。

  急ぐ。

  急ぐ。

  急ぐ。

  けど急いだところでどうにかなるかボケーっ!

  ガチャ。

  突然、鋼鉄の扉を開いてグリン・フィスが飛び出す。その動き、俊敏そのもの。瞬く間にレイダー達に肉薄する。

  嘘っ!

  グリン・フィスの突飛な行動に思わず我を忘れて私はパソコンから離れる。

  相手方もまさか斬り込んで来るとは思ってなかったのだろう。対応が一瞬遅れる。その次にはレイダー達の悲鳴が響いた。

  響くのは声。

  それも悲痛な叫び。

  「……死ね」

  グリン・フィスの動きは神速(フォールアウトとオブリの移動速度の圧倒的な差をご想像あれ☆)で動き回り、相手を床に沈めていく。

  この機を逃す馬鹿はいない。

  私は右手でサブマシンガンを乱射しながら左手で背負っているハンティングライフルを手に取る。

  レイダーの軍団は混乱していた。

  単身斬り込んで来たグリン・フィスに動揺しているのもあるし、そもそも私達の人数が分からないので混乱の原因でもある。

  赤毛の女を捕捉する。

  見た感じあいつがボスだろう。館内放送の声は女、レイダーの女で生きているのはあいつだけ。

  死んでる他の女レイダーがボス?

  そうかもしれない。

  それならそれでもいいのよ。ともかく安全の為に女のレイダーは始末しておこう。

  弾が尽きたサブマシンガンの弾装を代える事なく捨ててハンティングライフルを構える。長射程ではこちらの方がサブマンシンガンより分がある。

  女の額に照準を合わせる。

  女、気付いた様子はない。乱戦で混乱しているのだ。女の指揮は部下達に届かない。

  そして……。

  バァン。

  響く銃声。

  ……なんじゃこりゃーっ!

  「ぐぅっ!」

  女、足を射抜かれてその場に倒れる。しかし屈せずにこちらに向かってアサルトライフルを乱射してそのまま戸外に脱出。

  モイラめぇーっ!

  調整滅茶苦茶じゃないのっ!

  赤毛女を逃す事になった。こりゃ使えないわ。私はサブマシンガンを拾って弾装を交換、残りのレイダー達を一掃すべく行動する。

  そして……。

 

 

  レイダー達を一掃。

  ボスを失った敵さんの士気は瞬く間に低下し一掃には時間が掛からなかった。

 

 

  「大量大量っと」

  食料品&医療品を抱えまくって私達はご満悦。

  今回の任務はモイラの本の執筆の手伝い。どこに行けば食料品や医療品、飲料水が手に入るかの調査。手に入れるのは二の次。しかし

  証拠の為にも現物は手にした方がいいと思ったのである程度は持ち帰る事にした。

  ある程度はね。

  ビリー・クリールに関してはまた別だけどさ。

  彼には今回手伝うという条件で、報酬としてスーパーウルトラマーケットにある代物をゲットしてもいいと約束した。

  ……。

  まあ、約束といっても私のモノですらないけどさ。

  スーパーウルトラマーケットの物資は誰のモノでもない。つまり報酬といっても私の懐は痛まないわけだ。

  極悪人?

  商売人と呼んで。

  「今回はご苦労だったな、兵卒。レイダーは抹殺され、正義は成された」

  クリスティーナが口を開く。

  相変わらずの軍人口調だ。保安官助手ではなく鬼軍曹と名乗ればいいのに。

  「しかしいいのか?」

  「ん?」

  「その気の抜けた言葉は何だ兵卒っ! 上級士官に向かっての返答は敬語のみっ!」

  「すいませんでしたっ!」

  ……疲れる奴。

  チャッ。

  私に『らぶ☆』なグリン・フィスは剣に手を掛ける。斬り捨てちゃおうとしているわけ?

  拾ったのをそこまで恩義に感じられるとは思ってなかった。

  律儀な人だ。

  まあいい。

  私は目で制した。口論でいちいち始末を許可していたら私の周りには死体の山が出来上がるだろう。それにグリン・フィスはそれをやってのける

  気がする。平然とね。付き合いは当然ながら短いけど、そんな凄みはあると思う。

  前身暗殺者?

  さて。

  「クリスティーナ、何が言いたいのさ?」

  「クリスでいい」

  「クリス」

  「そうだ。もちろん戦友だから許すのだ。べ、別に心を許しているわけじゃないんだからなっ!」

  「……」

  軍人娘でツンデレ娘でもあるのかよ。

  あんた歳20代越えでしょうに。

  「ボ、ボクは別にあんたなんかに心許してるわけじゃないっ! そ、それを誤解したら銃殺刑モノなんだからねっ! 死刑よ死刑っ!」

  「……」

  「返事はっ!」

  「はーい」

  さらに追加。

  ボクっ娘でもあるらしい。

  なんなんだこの滅茶苦茶な人物設定は。

  ……外の世界、デタラメな設定多し。

  ……やれやれだぜー。

  おおぅ。

  「それで何? クリス?」

  「ここはメガトンから離れ過ぎている。街の人間が活用するには遠過ぎるし、かといってここに駐屯させる人数もない」

  「ああ、なるほど」

  言いたい事はすぐに分かった。

  さっきまでいたレイダーの集団は蹴散らしたけど次の集団が順番待ちしているのは明白。

  蹴散らしても蹴散らしても次が来る。

  それだけの事だ。

  私は自分のした事は心得ている。ここのレイダーを蹴散らしたからといって世界が平和になるとはこれっぽっちも思っていない。

  「クリス。私の任務はスーパーウルトラマーケットが物資補給の場となるかを調査する事」

  「それだけだと言うのか一兵卒?」

  「ええ、まあ」

  一兵卒。

  どうやらまだツン状態の模様。

  ……やれやれだぜー。

  「ならこういうのはどうだ?」

  ビリー・クリールが提案する。

  「俺は過去の関係でキャラバン連中と付き合いがある。ここをキャラバン達の中継地点にするのってのはどうだ?」

  「中継地点?」

  「ここをキャラバンが通る、その結果ここに旅人達が集まるようになる。まあ、休憩場所的な感じだな」

  「それいいわね」

  「だろ?」

  ビリーの提案は完璧。

  何故?

  何故ならレイダーはキャラバンには手を出さない。キャラバンを襲えば物資の流通は途絶えて集落は枯れる。

  一時の欲望の為にいくら実入りが良いとはいえキャラバンを襲うのはレイダーにとっても自殺行為。

  街が枯れれば彼らも最終的に枯れる。

  最終的にわずかな物資を求めて共食い(色んな意味でね。おお怖い怖い。ガクガクブルブル)を始めて人類は絶滅へと一直線。

  そんな結末を想像する程度の知能はレイダーにもあるだろう。

  つまり。

  「良い案よね」

  「だろ?」

  「ビリー素敵☆」

  「ははは。嬢ちゃんに気に入ってくれて嬉しいぜ」

  キャラバンにはレイダーも手を出さない。

  その中継地点も手を出さない。

  そこに旅人達が集まる、スーパーウルトラマーケットは憩いの場所として栄える。もしかしたら新しい街が出来るかもしれない。

  良い案だ。

  眼帯伊達男はなかなかの策士でもあるらしい。

  「じゃあビリー、よろしくね」

  「任せとけ」

  ともかく。

  ともかく私達の任務はこれにて完了。

  メガトンに帰って休憩しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「あんの小娘めぇーっ! 覚えておいでっ! このわたくしをコケにするなんてねぇーっ!」

  打ち抜かれた足を引き摺りながら赤毛の女は叫ぶ。

  秘められるのは憎悪。

  憎悪。

  憎悪。

  憎悪。

  「わたくしをコケにする奴は全員ころーすっ!」

  エリニース。

  それが彼女の名。

  つい先程までスーパーウルトラマーケットに巣食うレイダーの一団を仕切っていた化粧っけの多い女性。歳は三十代前半。

  赤毛が美しい白人。

  顔立ちも美しくはあるものの、鬼のような形相に変じている彼女はただただ恐ろしい。

  目付きが悪いのも美貌を損なう原因だ。

  「覚えておいで、小娘っ!」

  呪いの声を残し彼女はスーパーウルトラマーケットを離れる。

  傷付き、勢力を失った今、このような場所に留まるのは得策ではない。レイダーの集団はたくさんある。勢力を失った今ここに留まれば別の

  レイダーの集団に殺されるのがオチだ。

  豊富な物資のあるスーパーウルトラマーケットを陥落した。エリニースの組織がいなくなったと分かれば他のレイダーの集団が早速移り住ん

  でくるに相違ない。勢力を失った身でこんな所に居続ければ殺されるしかない。

  エリニースはそれが分かっている。

  もはやここは固執する場所ではないのだ。

  「覚えておいでっ!」

  叫ぶ。

  憎悪を秘めて。

  憎悪を……。

  「虐殺将軍と呼ばれたエリニースを敵に回して生きていられると思うでないよーっ!」

 

 

 

 

 

  そんなエリニースを遠目に観察する一団がいた。数は八。

  別のレイダーの一団?

  いや。

  装備は申し分ない。レイダーのようにタイヤの廃材や有り合わせの材料を寄せ集めた服装ではなくちゃんとした代物だ。コンバットアーマー。

  1人が軍用の双眼鏡で観察している。

  黒いコンバットアーマーに身を包んだ集団。胸元には『T』という文字が刻印されている。

  「あの女、始末しますか?」

  「一文にもならん」

  「確かに」

  苦笑。

  士官と思われるアジア系の中年髭面男は部下からの提案を一蹴した。

  この瞬間、エリニースは生存が決定された。

  少なくとも今この瞬間は。

  今後?

  それは誰にも分からない。生命は神の采配次第だ。

  人の生死はそんなもの。

  人の生死は……。

  「どうしますか? リーバス少佐?」

  「……」

  「少佐」

  「……」

  彼らは軍隊ではない。

  しかしある意味では軍隊のようなものではある。階級は全て旧アメリカ軍のものが適用されている。

  黒いコンバットアーマーと『T』の文字。

  キャピタルウェイストランドの傭兵なら誰もが知っている組織。

  彼らはタロン社。

  金の為ならレイダーよりも残酷な事を平然とやる組織として、同業の傭兵達からは敬遠され、恐怖され、憎悪されている。しかしタロン社には

  強大な軍事力がある。人員も規模も桁外れだ。だから誰も公然と口は出せない。

  もっとも。

  もっともこの世界に既に法律など皆無だが。

  力が正義。

  だからタロン社の行いもまた正しいのだ。

  キャピタルウェイストランドは弱肉強食の世界。ここはそんな世界。

  「どうしますか?」

  「……」

  「少佐」

  「……なかなか、やるな」

  「はっ?」

  「あの女の腕にあるPIPBOYから発せられる周波数を頼りに追って来たが……まさかレイダーの集団を潰すとは。ボルトの穴蔵で生きていたに

  してはなかなかやる。サバイバル能力は確かなものなようだな。殺すにはちと惜しい」

  「少佐、では見逃す……」

  「依頼は依頼だ。ボルト101の監督官からの依頼。ミスティとかいう女、ジェームスとかいう男の暗殺。任務は任務だ」

  「はい」

  「しかしこの探知機ではちと心細い。簡単には見つけられまい。この辺りの部隊に通達、展開させろ」

  「はい、少佐」

  「我々に狙われて無事でいた奴はいない。今まで誰一人もな。……暗殺抹殺惨殺、人を殺す際にはタロン社をどうぞご贔屓に。ふふふ」

 

 

  ……血に飢えた猟犬、タロン社登場。

 

 

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