私は天使なんかじゃない   作:月詠ウサギ

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ボルト32〜追撃戦〜

 

  和解は出来ない。

  生ある限り敵対する道は既に選択されているのだから。

 

 

 

 

 

  私は走る。

  私は走る。

  私は走る。

  無機質で滅菌されたボルト32の通路をひたすらに走る。

  既に中国軍の本性は分かってる。

  あの連中は中国軍ではなくボルトテック社がエンクレイブから依頼されて(正確には命令されて)作り出された偽中国軍。

  目的はキャピタル・ウェイストランドに世情不安を生み出すのが目的らしい。よく意味は分からないけど、エンクレイブの存在性も分からないけど、作られた中国軍なのは分かってる。

  あのグールの中国兵はボルトテックが<グール化を治療する>という名目で掻き集めたグール達。

  そんな彼ら彼女らを会社は改造した。

  複製。

  妄想。

  戦闘衝動。

  つまり見分けが付かないという理由でグールを複製(普通の人間にはグールの顔は区別が付かない為、同じ顔がいても分からない)し、自分が中国兵という妄想を与え、激しい戦闘衝動を植えつける

  ことにより死すら恐れない軍団を作り上げたのだ。だからこそ銃弾を気にせずに突撃して来た。

  だけど。

  だけど真意も理由もどうでもいい。

  もうどうだっていい。

  私は連中を許さない。

  それだけだ。

  思えば戦闘前に会った<反ヒューマン同盟>のロイ・フィリップスは仲間をボルトテックに奪われた報復の為に出張ってきたのだろう。

  そして返り討ち。

  同じグールの彼には異様な軍隊に見えたことだろう。

  だって中国兵の顔はみんな同じなんだから。

  「逃がすかっ!」

 

  「くそっ! しつこいっ!」

 

  通路を曲がった時、連中の後姿を発見した。

  セキュリティ部隊8名。

  その中にいるウェスカーに用がある。

  もちろんお友達の方々も黙って見逃してあげれるほど私は寛大ではない。

  だって私は天使なんかじゃないもの。

  見逃すものかっ!

  インフェルトレイターを身構える。

  それと同時にセキュリティ部隊も振り返ってアサルトライフルを身構えた。

 

  バリバリバリ。

 

  銃火器が大量に弾丸を吐き出す。

  同時に撃ち合うつもりはない。

  素早く後ろに下がって曲がり角に身を隠す。

  銃の能力としてはピット特製のこの自動衝動の方が高いけど相手の方が銃の数が多い。自然、吐き出される弾丸の数も相手が勝る。

  撃ち合えば力負けするだけだ。

  私は身を隠しつつインフェルトレイターだけを露出して引き金を引く。

  掃射っ!

  弾装の弾丸が尽きるまで撃ちまくる。

  もっとも銃身だけをさらけ出しての攻撃であり私の体も顔も物陰にある。当然相手は見えない。

  しかしここは通路だ。

  相手が身をさらけている以上、デタラメに撃っても当たる。

 

  カチ。

 

  弾装が空になった。

  この時、相手の銃撃はやんでいる。私は素早く弾装を交換して構えながら顔を物陰から出す。

  「ふむ」

  上々だ。

  敵は死体を2つ残して姿を消していた。

  これで数が減った。

  インフェルトレイターの残りの弾装は2つ。現在装填したのと予備のものが2つ。残り6名を始末するのには充分過ぎるほどだ。

  44マグナムもあるし。

  グリン・フィスが<ボルト77>の奴の相手をしてくれて助かった。

  お陰で追撃できる。

  インフェルトレイターを身構えながら私は小走りに倒れている2人の死体に近付く。どう見ても死んでる、蜂の巣だから。相手もアーマーは着てるけどここまで銃撃されても問題ないほどの

  強度ではないし何より額にも当たってる。狭い通路だからこそ回避のしようがなかった、というわけだ。

  「ん?」

  通り過ぎようとした時、死体の1つに不自然なほどにグレネードが置かれている事に気づいた。

  罠か。

  随分と甘い罠だ。

  通路の先に一室があったのだろう、そこから1人の隊員が姿を現す。

  グレネードを狙撃するつもりかっ!

 

  どくん。

  どくん。

  どくん。

 

  私の能力が発動する。

  相手の動きが遅くなる。加速装置でも体に埋め込まれているのかは知らないけど私のこの能力により全てがスローになる。

  私は引き金を引く。

  無数の弾丸が相手に向って飛んでいく。

  そして能力を解除。

  「死んどけ屑が」

  本来の時間の流れを取り戻され、弾丸もまたその速度を取り戻す。

  セキュリティ隊員は私を罠に嵌めることもなく、また引き金を引くこともないまま弾丸の洗礼を全身に受けて地に屈した。

  生きてるようには見えない。

  これで敵は3人消えた。

  残りは5名。

  勝てるわね、これは。

  ここに至っても敵の増援は来ていない。だとすると敵の戦力はあれが最後というわけか。

  中国兵もいない。

  ここまで入り込まれることを想定していなかったのだろう。

  そりゃそうか。

  たかだか数人がここまで突っ込んでくるとは思ってもなかったろ、現在の私はソロですし。

  中国兵は地上戦に全て投入していると見てまず間違いはない。

  残っているのは最低限のセキュリティのみ。

  そのセキュリティも瓦解しつつある。何しろセキュリティは造反してる、私が追ってくるから戦ってるだけで、別に施設の防御を担当しているわけではない。後でここにいる奴らも皆殺しにしてやるっ!

  勝てる。

  勝てるっ!

  PIPBOY3000を起動させて周囲を索敵する。

  あまり広範囲は無理だけど、近くにいるいないが分かるだけでもありがたい。

  幸い敵はいないらしい。

  私は再び走り出す。

  「ん」

  十秒ほど走るけどすぐに立ち止まった。

  ウェスカーは私がここで爆死することを望んでる、それを思い出したからだ。

  左手でインフェルトレイターを持ち、右手で44マグナムをホルスターから引き抜いてグレネードに照準を定める。

  1発の銃声。

  そして。

 

  ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンっ!

 

  爆音が響き渡る。

  もしかしたらこれで私が死んだと錯覚するかもしれない、そういう意味合いでの爆発。

  私が死んだと錯覚する?

  さあ、それはどうだろ。

  だけど相手の意表を突くには良い材料になると思う。

  追撃するとしよう。

  「逃がすものか」

 

  タタタタタタタタタタタタタタタタタタタタっ。

 

  走る。

  もちろん無防備に走っているわけではない。

  待ち伏せの相手が現れたら瞬時に銃口を向けれるように神経を鋭くしてる。

  少なくとも私の視界で発砲する限りは特に怖くない。視界に入っている限りは銃弾がスローに見えるからだ。

  本気で人類規格外よね、私(汗)。

  ウェスカーは私のことを何か知っているようだった、ボルト77の奴も何か知ってる風だった。

  私は一体何者なんだろ。

  そういえばボルト101にいた頃は週に一回の間隔でパパに注射されてた。

  パパは私に何かを投与してた。

  パパが脱走したのが丁度薬が切れる一週間目。それ以後、私はこの特殊能力が身に付いた。

  だとするとこの能力をパパ知ってる?

  もちろん責める気はない。

  これは使える。

  良い能力だ。

  敵を殺す為の、良い能力。

  全部殺すっ!

 

  ウウウウウウウウウウウウウ。

 

  「ん?」

  立ち止まる。

  唸り声がした気がする。

 

  ウウウウウウウウウウウウウ。

 

  空耳ではない。

  手にしているインフェルトレイターを構える。

  数秒の間。

  そして通路に接する部屋という部屋から異形の人影が這い出てくる。

  グールか。

 

  「ひぃっ!」

 

  白衣の女性が部屋の1つから逃げ出してくる。その背後からグールが飛び付き、さらに無数のグールが押し倒し、あっという間に食い殺してしまう。

  肉を咀嚼する音が響く。

  えっと、もしかしてフェラルですか?

  システムか何かが暴走してガラス筒に眠ってたのが目覚めたというわけではあるまい。

  この状況下でのフェラルの暴走。

  おそらくウェスカーだ。

  奴はボルトテックを捨てて連邦に寝返ろうとしてるらしい。奴がそうカミングアウトしてた。

  だからフェラルを解き放って私の足止めをしようというわけか。

  たぶん実験の副産物なのだろうね、フェラルは。

  どれだけ飼ってることやら。

 

  キシャーっ!

 

  一斉に異様な叫びを上げる。

  私を視認したらしい。

  知性の宿らない濁った瞳をこちらに向ける。そして一斉に駆け出してくる。

  馬鹿め。

  こんな狭い通路に大量投入したところで大した意味はない。

  単発ならともかく連射が出来る武器が私にはある。

  少なくともピットのスチールヤードでトロッグに追い込まれた時のような危機感はない。

  インフェルトレイターを横に掃射。

  フェラル達は弾ける様に次々と倒れる。

  もちろん弾装に弾がどれだけ入っていようとも連射を続ければすぐに弾装は空になる。

  フェラルはラッシュしてくる。。

  全力で私に迫る。

  はい。

  ご苦労様です。

 

  ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンっ!

 

  転がしたグレネードがフェラル達の足元で爆発。

  敵は全て行動不能になる。

  生きているのもいる。

  だけど身動きが取れないのは全員共通している。

  このフェラル達が実験の産物(失敗作)なのか、それとも実験とは別にフェラルを捕まえてあったのか。

  それは私には分からない。

  死骸の山を越えて私は追撃を開始する。

  走りながら無数の部屋の中を確認していく。どうやらウェスカーが無理矢理にフェラルを解放したらしい。

  白衣の科学者達の中には銃撃で死んだ者もいた。

  バイオの洋館並みにずさんな管理体制ですな。

  操れないモノを延々と飼っておくなよと。

  ついでにセキュリティの死体も2つあった。これはフェラルに食い殺されたようだ。

  ウェスカーの部下か、別の部隊員なのかは知らないけど前者なら敵の数はさらに減ったことになる。というかどっちにしろ私の敵は死んでるってわけだ。

  生き物を兵器として使うという無理をする以上、利用しようとした相手に殺されるってわけだ。

  何しろ生物には意思がある。

  それを無視して兵器利用しようとしたという時点で既に法則に反してる。

  足止めを排除して私は先に……。

 

  「ボルト32内の全スタッフに告ぐっ! 原子炉区画に爆発物が仕掛けられたっ! 総員退避っ! 総員退避っ!」

 

  「はあ?」

  原子炉区画に爆発物が仕掛けられた、ね。

  アナウンスが狂ったようにそう告げている。

  ……。

  ……ソノラか。

  どうやら私達もまた陽動であり、別働隊としてソノラが動いていた……と見るべきか。OCの人数ではこんな芸当は出来ない。

  「あの女」

  愚痴るものの、まあいいか。

  これで根こそぎに出来る。

  良い展開ですね。

  ハッピーエンドにするには私も脱出しないといけないけど。

  利用されていようがいまいがそこは問題ではない。

  このアナウンスはボルト32全体に流れている。

  部下2人は地上に戻したし、ガレージにいるアカハナ達は脱出するのは容易。

  問題は私とグリン・フィスか。

  放送が耳に入った以上はグリン・フィスは自力で脱出するだろう。

  私も自力で脱出する。

  それだけの話だ。

  原子炉区画が爆発してもアーリントン墓地一帯も吹き飛ぶとは思わない。

  ボルト32は核にも耐えるだけのシェルターであり地下都市。

  外部からの爆発に耐えられるわけだから、逆を言えば内部の爆発は外には届かない。厚い装甲で遮断されるはず。

  少なくともママ・ドルス周辺が地表に沈む程度かな。

  いずれにしても地表には最低限の被害で済むはずだ。

  逃げられないほどじゃあない。

  「行くか」

  再び走り出す。

  それから数分後、銃撃音が響き渡った。俊敏に、音を殺して私は音の出所を窺う。

  ウェスカーだ。

  ウェスカー達がフェラルに追いつかれて銃撃で追い払っていた。というか従えれないのを解き放つなよ(汗)。

  馬鹿なんじゃないのか、あいつ。

  「死ななきゃ治らないなら、死ななきゃね」

  笑う私。

  残忍な笑みなのは、分かってる。

  今回の私はかなり頭に来てる。

  こんな怒りは初めてだ。

  ボルトテックの残党がアホなこと考えなければスマイリーは死なずに済んだんだ。

  殺す。

  全部殺すっ!

  「ウェスカーっ!」

  「ちぃっ! もう来たかっ!」

  敵の数は10名に増えていた。

  ふぅん。

  途中で合流したのか。

  邪魔するフェラルを掃討して敵さんはエレベーターに乗り込む。エレベーターは2つある。隣接してる。

  逃がすかっ!

  「奴を殺せっ!」

  ウェスカーの声が響き、彼が乗ってるエレベーターの隣に乗ってた5人が飛び出して銃撃を開始する。

  私は隠れる。

  「逃げるぐらいなら最初から私を敵に回すなんてばかなことしないことねっ!」

  その間にウェスカーと部下4名が乗ったエレベーターの扉は閉まり上昇する。

  まずいな。

  奴らはおそらく車庫のトレーラーで逃げる気だろう。

  もしくは屋上にあるとかいう飛行物体で逃げる?

  逃がす気はないけど車庫だとまずいな。

  アカハナ達は中国兵を迎え撃つべく外に注意が行ってる。

  ウェスカー達は背後を突く形になる。

  まずいな。

  44マグナムを連射。相手はその攻撃力の高さに吹っ飛ばされる。

  全員即死。

  向かい合って私に勝てる奴などいるものか。

  少なくとも銃を使う相手は怖くない。

  弾丸がスローになるし。

  だけど私も万能ではない。相手を瞬殺したのはいいけどもう1つのエレベーターは無人のまま扉が閉まって上昇してしまう。

  「ちょっと待ってーっ!」

  カチカチカチとボタンを連打するけどあとのお祭りです(泣)。

  急いでるのにーっ!

  「くそぉー」

  エレベーターを待ってても仕方ない。

  階段を駆け上る。

  逃がすものかーっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回この流れ完結。浄化プロジェクトにするか、別の展開にするか決めかねてます(=゚ω゚)ノ
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