私は天使なんかじゃない   作:月詠ウサギ

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解凍作業は丁寧に

 

  冷凍する際にはご注意を。

  運搬や保存には適しているかもしれないものの影響があります。

  それが食材であれ人材であれ。

 

 

 

 

 

  エンジンコア。

  ところどころが吹き抜けになっている広大な部屋。

  ここは宇宙空間と接しているので透明の分厚い強化ガラスらしきもの(材質が何かは不明)が窓枠にはまっている。その向うには宇宙が広がっていた。

  ……。

  ……マジで宇宙船内なんですね。

  改めて納得。

  どのあたりがエンジンコアなのかはよく分からない。多分部屋の中央にある巨大な柱がエンジンコアなのだろう。ピカピカと光ってる。そしてその柱を囲む形

  でこれまた妙なものが回転してる。歯切れ悪くて申し訳ないっす。だけど意味分からんもん、ここの設備。

  ボルト101にあるものとは似ても似つかない。

  そもそも別物だし。

  ともかくここが目的にエンジンコアらしい。ここは他の区画とも繋がっている。というかこのエンジンコアを通らないと他の区画には行けない構造らしい。

  つまり。

  つまりここを制圧出来たら敵の分断が可能って事だ。

  まあ、それには人数足りないけど他の捕虜達を仲間に加えれれば制圧は可能だと私は踏んでいる。自分達を捕虜にした相手が人間ならともかく、相手は

  人外であり地球外生命体。エイリアンだ。捕虜にされた者達は解放すれば同志として行動してくれるのは明白。

  エイリアンに転ぶ事はあるまい。

  そして……。

  

 

 

  「ここがエンジンコアよ」

  「ふぅん」

  サリーの的確な案内でエイリアンをやり過ごして私達はここに到達した。

  あのでかい柱がエンジンなのだろう。

  それのメンテの為の工具などが置かれているけど用途がまったく不明だ。使い方すら分からない。それらが大量に置かれてたり奇妙な材料があったり

  するから備品置き場も兼ねているのかもしれない。ただ目下のところ求めているのは地球外の代物ではない。

  地球製の強力な火器だ。

  エイリアンは肉体的には脆弱。

  あの反則的なバリアさえなければアサルトライフルでも充分に太刀打ちは可能。だけどやっぱりこちらは相手に比べて人数的に圧倒的に不利だからそれ

  以上の銃火器を求めるのは人としての真理だろう。

  サリー曰く貨物室には武器が大量にある。

  何としてもゲットしたいな。

  さて。

  「私が見つけた物を見せてあげる。ここから出るのに役に立つわよ。ついて来てっ!」

  「分かったわ」

  サリーは走る。

  私はその後に続いた。

  結局のところ私は今までエイリアンを倒していない。監獄エリアでは下着姿で何度も何度もビクンビクンしてただけだし。

  エイリアン達にやられまくりです。

  フルボッコです。

  何気に私はエイリアン達に抵抗すら出来ず、成す術もなくやられまくっちゃってる状態です。私はか弱いヒロインというポジションなわけ?

  うー、嫌な現実だなぁ。

  悪態吐こうとした矢先にサリーが先に悪態を吐いた。

  「ああ、もうっ!」

  「どうしたの?」

  足元には円形の物体がある。

  何これ?

  「パワーを切られたわっ!前に来た時はこれを使って、てっぺんまで行ったのよ」

  「ふぅん」

  よくは分からないけど足元にある円形の代物は、多分エレベーターみたいなもんか。

  聞いてみる。

  「エレベーターみたいなもの?」

  「そうよ。移動するのは上下だけじゃなく、それにちょっとチクチクするわ」

  「チクチク」

  かなり気になる。

  チクチク感か、どんな感覚なんだろ。

  「私達の事を知って奴らカンカンなのね。……じゃあ、別の方法でボスを倒す計画立てましょ。ついて来てっ!」

  「仰せのままにお姫様」

 

 

 

  私は素直に付いて行く。

  宇宙船内部に一番精通しているのは彼女だから仕方ない。

  不思議とエンジンコアにはエイリアンが1体も存在していなかった。自分達のテクノロジーに絶対の自信があるからなのかな?

  普通なら技術者とか衛兵とかが徘徊してそうだけどそれがいない。つまり絶対的な自信が、装置に不備など起こらないという技術的な余裕と自信から

  誰も置いていないのかもしれない。もしくは完全に無人でも機械が自動的にメンテしてるのかも。

  まあいい。

  どっちにしても誰もいないのであれば無用な戦いをせずに済む。

  弾丸の予備はそんなにないし。

  武器も人数も限られている以上、回避出来る無用な厄介は避けるに限る。反撃は準備が整った後だ。

  それまでは我慢しよう。

  反撃の機会は必ずあるのだから。

  さて。

  「何ここ?」

  「冷凍庫よ。人間用のね」

  白い冷気が床を這う奇妙な一室にサリーは私を連れ込んだ。

  ひどく寒い。

 

  しゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ。

 

  円形のユニットが4個ある。

  それは中央にある機械に太いチューブで繋がっていた。ユニットの中にはそれぞれ人が収まっている。

  生きているようには見えない。

  少なくとも生死は判断の仕様がない。ユニットの中でカチンコチンに凍っているからだ。

  冷凍庫ね。

  なるほど、サリーも上手い事を言うわ。

  「それで?何でここに来たの?」

  「脱出の為」

  「脱出」

  仲間を増やすって意味合い?

  まあ、それもいい。

  ただ問題は中にいる者の存在した時代だ。

  冷凍ユニットの中の1人はコンバットアーマーを着込んだ男性。確かこのコンバットアーマーは軍用だとボルト101の文献で読んだ。

  こいつは話が合うだろう。

  もう1人も、まあ、時代的には近いのかな。少なくとも私と200年程度の差がある程度だ。宇宙服を着込んだ男性。宇宙で有人飛行をしていた際に

  拉致られたのかもしれない。時代的に全面核戦争より前の時代だろう。私とは遠い時代ではあるけど、それでも他の2人よりはいい。

  そう。問題は2人だ。

  1人は侍、1人はカウボーイ。どう考えても年代的に合わんだろ。

  そもそも『エイリアンに誘拐されてるよ、あんたら』とストレートに言ったとしても話が通じない気がする。

  「サリー、仲間増やすのが目的?」

  「ううん。それもあるけど別の目的があるの」

  「別の?」

  「起こすのが怖かったから今まで触った事はないけど、でもやらなきゃ駄目みたい。エレベーターのパワーが切られたから」

  「ごめん。辻褄がよく分からないんだけど……」

  「上に行ってボスを倒すにはエレベーターのパワーを入れなきゃ駄目なの。でもここからは出来ない。一度宇宙空間に出て上に侵入しない限りはね」

  「はっ?」

  宇宙出るの?

  聞いてないぞこんなぶっ飛んだ展開っ!

  ……。

  ……はあ。

  この世界の神様はどうやらカオスな展開がお好みらしい。

  何なんだこの展開。

  嫌だなぁ。

  「どうしたの、ミスティ?」

  「お構いなく」

  「ともかく宇宙に出るには宇宙服が必要なの。エイリアンのじゃ小さ過ぎるし体型も合わない。だから冷凍保存されてる宇宙飛行士の宇宙服が必要なの」

  「それはいいんだけど、これって生きてるの? 死んでるの?」

  「この中に人間を入れるとみんなも寝ちゃうのよ。これは船のあちこちにあるわ。解放されない限り、いつまでもずっと眠っちゃってるわ」

  「ふぅん」

  保存用ってわけだ。

  冷凍されている間は仮死状態、つまり時間が止まる。中にいる限りは年を取らない。だけど不思議なのはサリーよね。言動的に『私も冷凍されてました』と

  いう響きは感じない。なのにずっと子供のまま。ここは時間の流れ方が地球とは別なのか、それともサリーはエイリアンに何かされたのか。

  まあ、考えてないで置こう。

  考え出すと憶測とはいえ結構怖いから。

  さて。

  「この人達は誰?」

  「分からないわ。話をした事もないし。時々ここに来て見るんだけどどうして皆あんな服を着てるのかしら?」

  「時代がまったく私達とは別みたいだからね」

  「その男の人の服装を見て。格好良いわよね。何とかアーマーみたいっ!」

  「侍っぽいわね」

  「あの人は……カウボーイみたいねっ! 本で写真を見た事があるわ。でも本物は初めて」

  「まあ、そうね」

  「ミスティ。この人達を解放しよう。あのボタンを押して。そしたら解凍されるから」

  「やり方知ってるの?」

  「ううん。ノリ」

  「……」

  ノリでボタン押させるんですか?

  それが全面核戦争前後の時代のバイタリティ?

  侮れん。

  何より凄いのは自分では押さずに私に押させるという根性。だけど拒めない私がいます。何しろ私は足手纏い。仰せに従います、お姫様。

  ポチっとな。

 

  ビー、ビー、ビーっ!

 

  音が響く。

  警告音?

  もしかしたら勝手に装置に触ったから近場のエイリアンを呼び寄せる為のセキュリティが作動したのかもしれない。

 

  ぷしゅー。

 

  円形のユニットが開く。

  途端に白い冷気が膝ぐらいまで増量される。今までユニットに流れ込んでいた&充満していた冷気が解放されて部屋の床を覆っている。

  さむっ!

  だけどそれはわずか数秒だった。

  ま、まあ、数秒だけど凍り付きそうな寒さだったけどさ。

  システム的に円形ユニットが解放されると冷気の噴出は止まるらしい。次第に床を這う冷気は消え去る。それでも寒いけどさ。

  円形システムから凍った人間が出てくる。

  3人。

  侍、軍人、カウボーイ。

  その3人だ。

  全員体を凍らせたまま出てくる。出た瞬間に急速解凍される仕様らしい。冷凍庫で凍るという感じではなく液体窒素で凍らせれるようなものなのかな?

  まあ、いずれにしても生きているだけ凄いけど。

  エイリアン技術侮れん。

  だけど出てきたのは3人だけ。3人は少しの間凍ってたけど解凍されて数秒後に動き出す。

  ぎこちなくはあるけど生きている。

  だけどもう1人は?

  「サリー、宇宙飛行士出てこないわね」

  「そうだね。何でだろ」

  見に行ってみる。

  宇宙飛行士は力なく円形ユニットの中に崩れていた。

  脈を触ってみる。

  冷たい。

  冷凍されていたから冷たいのもあるけど、脈がないから冷たいのもある意味で正しいだろう。

  つまり死んでる。

  解凍作業が悪かったからか、それとも冷凍された時点で死んでいたのか。

  ま、まあ、生理的に考えると冷凍された時点で死んでる方が私としても罪を感じずに済む。というか解凍作業はスイッチ押すだけだったし。

  それで私の所為で死んだと責められるのも困る。

  いやまあ、誰も責めてないですけど。

  サリーは口元を押さえた。

  「可哀想な宇宙飛行士さんっ! ……この機械は危ないわ。中の人が起きない時もあるのね……」

  「そうね」

  「あの人の服を貰ったら? あの人が駄目ならあなたが行くしかないわ。でもまずは外に通じる扉まで行かないと」

  「……」

  脱がすんですか?

  私が?

  今までの展開の流れを考えてみる。

  ……。

  ……エイリアンに全裸にされて色々と実験される、ソマーにどこまでも赤毛と言われる、ショックバトンでビクンビクンする、そして今現在は男の身包みを剥ぐ。

  すいません完全にエロの領域に私はいませんか?

  うがーっ!

  完璧変態の領域にまで行ってるかもしれない。

  嫌だなぁ。

  だけど興味あるのは宇宙空間だ。まず体験出来ない事だから怖いというよりは興味津々。

  どうやるんだろ。

  「そこに行くにはどうすればいい?」

  「ジェネレーターがあるの。それも三箇所。冷却ラボ、ハンガー、ロボット工場。それらにあるジェネレーターを潰せば主導権はこっちが握れるわ」

  「ジェネレーターって何?」

  結局サリー救出に破壊すべきだったジェネレーターはフィーが破壊したから詳細がよく分からない。

  チラッと見ただけだしね。

  「大丈夫、見れば分かるわ」

  「そう」

  「あっ。あれ見てミスティ」

  「うん?」

  ソマーが数名を率いてこちらに来る。監獄から連れてきたのか別の場所で解凍したのか。

  ともかくこれで仲間が増えるのは確かだ。

  よしっ!

  「何とかなるかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




当小説の登場キャラは従来のゲームキャラよりも多く解凍されとります(=゚ω゚)ノ
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