私は天使なんかじゃない   作:月詠ウサギ

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バカンス

  休日は観光地でバカンス。

  おいしい料理。

  美酒。

  最高に信頼できる友人たちとの語らい。

  それは人生における最高の法悦。

 

  問題は運命が休養を許すかどうかだ。

 

 

 

 

 

  「マダム・パナダ、おはようございます」

  「ああ。昨日のお客さんね。お弁当は出来てるわ」

  早朝。

  二日酔いで頭が痛いけど、私は早起きしてマダム・パナダのお店にお弁当を取りに来ている。

  昨日の夜に注文して帰ったのだ。

  その引き取りに来た。

  「随分とラフな格好ねぇ。ルックアウト風になったじゃないの」

  「どうも」

  カーキ色のサファリジャケットを着て、下は青いジーパン。

  街をうろついているヴァン・グラフのチンピラと三回ここに来るまでに遭遇したけど私を見ると嫌そうな顔してからいなくなるし、44マグナムはちゃんと装備してるから問題ないだろ。

  建物の屋根と屋根は全て繋がっていて、その上をバルトの警備兵が徘徊してるし治安は維持されている。

  ……。

  ……たぶんねー。

  まあ、厄介あっても何とかなるだろ。

  客は全くいない。

  というのもソドムを取り巻く周辺の密林は夜は完全にデンジャラス・ゾーン。名のあるスカベンジャーや荒くれたちも恐れて出歩けないスポットへと早変わり。日が昇ればその脅威はぐんと

  薄れる。なのでハンティングや探検目当ての旅行者は当然ながら、一攫千金の癖のある面々も夜は街で飲み騒ぎ、日中に密林に入るってわけだ。

  なので街は現在ひっそりとしている。

  そういう意味では私たちは出遅れたのかな。グリン・フィスとアンクル・レオは酔い潰れてまだ寝てる。いやたぶん寝てる。2人は相部屋だけど私は違う、扉の前でイビキを聞いただけ。

  だから起こさずに私だけで来てるってわけ。

  「はい。山賊風弁当三人前、うち一つは超大盛りお待ちどうさま」

  「ありがとう」

  山賊って何だ?

  ジャラジャラとキャップを支払う。

  130キャップ。

  キャピタル・ウェイストランドでもポイントルックアウトでも流通している、ヌカ・コーラの王冠でお弁当の代金を支払う。わりとウェイストランド内でも場所場所に

  よって物価が全く違うのでこの額が安いんだか高いんだか分からない。もっとも今のところソドムでの支払いはメガトンよりは安い。

  なお全般的にヌカ・コーラの王冠が貨幣替わりかと言えばそうではないらしくサンセット・サルサパリラの王冠も流通してる。

  どちらも通称はキャップ。

  私は持ってないんで何ともだけど西海岸方面で使われているようだ。レート的には大した違いはないとか何とか。

  西海岸、つまりヴァン・グラフ・ファミリーが持ち込んだってわけだ。

  「重いから気をつけてね」

  「はい」

  重っ!

  持ってきたナップサックにお弁当を入れて背負う。何気に山に芝刈りに行ったおじいさん状態。

  「今日は探検に?」

  「そのつもりです」

  市長のバルトに宝の地図貰ったし。

  この近辺の沖合に何らかの宝が沈んでいるらしい。

  何らか?

  何らか。

  何もなくとも話のタネになるし、みんなでワイワイと何かをするのは楽しいものだ。

  ずっと戦い尽くめだったしたまにはいいだろ。

  ……。

  ……まあ、できたら戦いなんてもうしたくないんですけどね。

  もっともジェファーソン記念館のエンクレイブ軍は全滅したけど、テンペニータワーにいたクリスの部隊を始めほぼ大半は無傷で撤退してる。

  再侵攻は時間の問題だ。

  手を出してこない?

  いやぁ。

  それはないだろー。

  「市長に宝の地図を貰ったんで宝探しに」

  「市長ねぇ。まあ、この街を興した人だし、色々と貢献してる人だからあんまり言いたくはないけど、好きにはならない方がいいよ?」

  「はっ?」

  「要は信用はしない方がいいってことさ。まっ、表面的な付き合いにしておきなってことよ」

  「ふぅん?」

  信頼というものがないらしい。

  まあ、確かに胡散臭いけど人望ないなぁ。

  「でも初期からの人なんですよね?」

  「初期というか、いきなり現れたような。いや私も初期からいたんだけどね、確か……そうそう、フェリー乗りのトバルが殺されてから~……殺される前だっけ? そのぐらいから来た人だよ」

  「へー」

  「キャップばら撒いて街を作ったのさ。キャップの出所は知らないけどね。元々いた地元部族のトライバルからプンガフルーツを取引したり協定結んだり、かなり胡散臭いね」

  「バルトとトバルが同一人物だったり?」

  茶化して私は言う。

  まあ、明らかに露骨過ぎるから、ないだろうけど。

  マダムも苦笑して首を振った。

  「それはないよ。ネイディーンは……」

  「知ってます」

  「その子がトバルの悪事を晒す為に囮になったんだよ。で誰だか知らないけど、襲われた直後に雇ってた傭兵に狙撃させ、姉貴分のトレジャーハンターと一緒にハチの

  巣にして鎖で巻いて沈めたらしいよ。ここの常連のシーリーンがそう言ってたよ。あの子徹底してるからね、死んでるよ」

  「へー」

  シーリーンね。

  どうやら彼女はネイディーンの姉貴分らしい。姉貴分のトレジャーハンターってシーなんだろう、きっと。

  だとするとネイディーンも元々はトレジャーハンター?

  そうなのかもしれない。

 

  「宝の地図ねぇ。見つけたものは俺のところに持ち込むんだぜ?」

 

  「……?」

  ビア樽体型の、大柄の口髭男がいつの間にかそこにいた。

  誰だこいつ?

  男は続ける。

  「いいな。俺のとこに持ち込むんだぞ? そいつがルールってもんだ」

  「えーっと」

  言いたいことを言って男はいなくなった。

  意味不明。

  何なんだ?

  「誰、今の?」

  マダムに聞く。

  「ブルート」

  「ブルート、で、誰?」

  「スカベンジャーの元締めってところかしらね。安く買い叩いて、高く売ってる奴。何だかんだで古株だし、市長とも懇意だからね、基本スカベンジャーは獲物を彼に売るしかないってわけ」

  「ふーん」

  「最近ではトミさんのロボットを狙ってる」

  「へー」

  トミ、珍しい名前だな。

  日系かな?

  「執拗で嫌な奴よ、ブルートは」

  関わらないようにしよう。

  別に私は現金収入が欲しくて宝探しするわけではない。

  バカンスの一環でだ。

  これ以上かかわることはないだろ。

  「長々とごめんね。じゃ、冒険を楽しんでおいで」

  私はマダムのお店を後にした。

  その後モーテルの自分の部屋にお弁当を置いて、仲間たちの扉の前で爆撃音のようなアンクル・レオのイビキを聞き、2人を放置してモーテルを北上。雑貨やレンタル用の骨董品のような

  ハンティング用のライフルやショットガンを取り扱うヘイリーズ・ハードウェアに立ち寄る。というかグリン・フィス、よく寝れるわね。

  ノックしても出てこないから寝てるのだろう。

  ……。

  ……いや。

  もしかしたら爆撃音で気絶してるのか、ノック音が聞こえないのか?

  私なら死んでます。

  おおぅ。

  そこで私は古臭い大きいカメラと、潜った後に体を拭くタオルとか火を起こす道具等を購入。地図では宝は海中を指しているからだ。

  水着も購入。

  グリン・フィスは黒い海パン。サイズは適当。

  私は……いや、断っておきますけど私の趣味ではないですよ?

  青いハイレグの水着。

  露出気味。

  これしかなかったのだ、仕方ない。

  最近はちゃけ過ぎてるグリン・フィスがまたはちゃけるのかぁ。

  嫌だなぁ。

  合計で300キャップ弱を支払い私は辞去。

  そろそろ起きてるころかな?

  さあ冒険に行ってみよーっ!

 

 

 

 

 

 

  その頃。密林。

  旧来からポイントルックアウトにいた先住部族トライバルに襲撃され、支離滅裂に敗走したアウトキャスト。

  虎の子のパワーアーマーやレーザー兵器は戦闘中盤で役に立たなくなり脆くも敗北。

  大半は死亡。

  大半は逃走。

  「どうするの、護民官マクグロウ」

  「考えてる。オリン」

  当てもなく密林を彷徨う2人。従がう部下はいない。

  オリンは泥で汚れたスクライブの服、腰には役立たずとなったレーザーピストル。マクグロウは動力の尽きたパワーアーマー、そして携帯用の実弾ピストルを所持している。

  2人はトライバルに襲撃され、逃げに逃げてきた。それが昨夜だ。動力の尽きたパワーアーマーはただの鉄の鎧でしかないものの、脱ぐ暇すらなかった。

  神経を集中させ、巨木に寄って周囲を探る。

  「……」

  「……」

  どうやら撒いたようだ。

  少なくとも今は。

  「それでマクグロウ、これからどうする……」

 

  「ようマクグロウ」

 

  嘲るような声が2人に浴びせられる。

  黒人だ。

  わずか半日の間でどこから調達してきたかもしれないコンバットアーマーに身を包んだ一団を引き連れている。マクグロウの顔が綻んだ。

  全員アウトキャストの同胞。

  数は12名。

  「ディフェンダー・ジブリー、無事だったのか。よし、体勢を立て直し……」

  「ディフェンダーだって? おい、今の俺はパラディン・ジブリーだぜ?」

  「……? どういうことだ?」

  「あんたの時代は終わったんだよマクグロウ。今日からは俺が仕切る。そのように命令を受けているのさ。あんたらは、今日から俺の下働きに降格ってわけだ。いいな?」

  「我々はBOSの大義を護るべくリオンズから離反した。BOSの大義の為、Out Castの汚名を受けながらも……」

  「違ぁう。今日から俺たちはBOSでもOCでもない、覚えとけっ!」

 

 

 

 

 

 

  太陽は上りちょうど真上。

  私たちは海岸に荷物を置いて海の中にダイビーングっ!

  スノーケルの類は雑貨屋にはなかったので素潜り。それでも水中メガネは買いました。ので海の中は綺麗……でもないかー……透明度が微妙だ。PIPBOY3000は防水

  だからしたまま。ライト機能を使って水中を探しているけど特に何もない。魚が私を見て驚いて逃げるぐらいだ。

  たまぁにカニ人間が泳いでたりする。

  ミレルーク。

  いや。

  ここではスワンプルークだっけ?

  若干色合いが違う。

  けど堅さも生態も大して変わらないような感じ。

  まあ、とりあえずこちらを捕捉してくるのは海岸沿いまで引き付けてから射撃して駆逐してる。ウェイストランド初心者だった頃とは違いますとも。

  それに連中、水中でも意外にも動きが鈍い。

  むしろ陸上の方が早かったり。

  泳ぎが遅いというか正確には頭と足を上下に揺らしながら泳ぐという妙なフォームなのでこちらに対して攻撃できないでいる。少なくとも水中ではね。

  視点が定まらないんだろうな、水中では攻撃に移れないようだ。

  ともかく。

  ともかく動きは鈍い。

  カニの駆逐は最初の10分ぐらいであらかた片付き、ダイビング&宝探し開始してから既に1時間経った今では姿すら見えない。

  強くなったなぁ。

  「ぷはぁ」

  水から顔を出す。

  素潜りだから限度がある。というか泳ぎに慣れてない。

  ずっとモグラだったし、地上に出てから泳ぐ機会なんてなかったし。

  「何かあった?」

  同じく顔を出したグリン・フィスに聞く。

  宝の地図的にはこの辺りなんだけどな。

  「いえ。何も」

  「そっかぁ」

  「主、もしかしたら既に宝は持ちだされた後なのかもしれませんね」

  「かもね」

  宝の地図が存在している=そこに宝が今もある、ではない。

  既にゲット済みの場合もあるし、ガセの可能性もある。

  だけどそこはどうでもいい。

  要はエンジョイできたらそれでいい。

  楽しむために来た。

  「アンクル・レオは?」

  「まだ潜ってます」

  「息継ぎなしで……5分ぐらいたつけど……」

  「エラ呼吸しているのではないかと」

  「エラはないでしょ」

  「ユーモアです」

  「そ、そう。だけどここはポイントと違うのかな。もう少し進んでから潜って……」

 

  バシャーン。

 

  突然海坊主……じゃなかった、アンクル・レオが水面に顔を出す。

  ビビったーっ!

  「ミスティ、あったぞ」

  「マジでっ!」

  「こっちだ」

  アンクル・レオは泳ぎだす。それに私、グリン・フィスは泳いで付いていく。

  500メートルほど泳いだかな、海岸が遠い。

  「大きく息吸ってして付いて来い」

  「了解、隊長」

  すーはーすーはー。

  大きく息吸いこんで潜る。

  足をバタバタ。

  そこまでは30秒ほど。あまり長居は出来ないけど、行ってみるぐらいはできた。そこには宝……なのかな、何かのオブジェ……いや、これは骨か?

  巨大なトカゲのような代物が骨となって底に横たわっていた。

  何だこれっ!

  買ったカメラは水中カメラではないので海岸に置きっぱなし。とはいえ海岸までこれを持っていけるかと言えば無理だ。

  私はそれを目に焼き付け、感動を胸に上へと泳ぐ。

  来てよかった。

  世界には不思議が一杯だっ!

 

 

 

  「あれはアカトシュのなれの果てでしょうか」

  「はっ?」

  ちょいちょいグリン・フィスの言動は謎です。

  お弁当食べたし散々遊んだから私たちは帰り道。あの妙なトカゲ……いや、子供のころにアマタに貰ったグロッグナック・ザ・バーバリアンという漫画に出てくるドラゴンっぽかったな。あの

  ドラゴンはさすがに持ち帰れないので各々の思い出に刻み込んで宝探しは終了。

  風でタオルが飛ばされたので体を拭くことができず、つまりは着替えることもできず私は水着で海岸沿いを歩く。水着にホルスター巻くのも変な感じだ。グリン・フィスは普通に服を着てる。

  彼の分はタオル飛ばされてないし、私にくれようとしたけど、まあ、そこまでかしこまられるのも嫌なので断った。飛ばされたのは私の分だし。

  来た時とは別の道。

  来た時は岩壁迂回して海岸に降りたけど、帰りは海岸を突っ切って帰ってます。

  意味?

  特にない。

  気分転換だ。

  お宝は見つけたし、まあ、持ち帰れないけどさ、あんなの。お弁当も食べたし水遊びもした。……アンクル・レオに思いっきり投げられて水に沈んだ私ですけどねー。

  たくさん遊んだので帰ります。

  ……。

  ……とまではよかったんだけどー。

  そういえばパパに頼まれてパソコンの材料探しに行ってた時、帰りは別ルートで帰ったらユニオンテンプル絡みの強制イベントが発生したな。

  教訓。

  過去のことから学びましょう。

  「はぁ」

  死体死体死体。

  十数の死体が転がっている。身元不明の死体。

  何故って?

  全部裸だからだ。

  すぐ側には大型の漁船が停泊している。これに乗ってきた面々なのかな?

  裸族ってわけではなく多分不法侵入者?

  少なくとも死体はどれもバンドをしていない。そして裸の理由は……。

 

  「おい見ろよ、ちび女だぜ?」

  「売春の斡旋かな、ちび女。エロい恰好してるぜ。いくらだ? 10キャップぐらいか? 買ってやるぜ?」

 

  ヴァン・グラフ・ファミリーの連中がアサルトライフルを手にうろちょろしている。船にも乗り込んで物色している。

  黒いコンバットアーマーだし、たぶんヴァン・グラフだろう。

  まあ、どっちでもよいけど。

  不法侵入の排除をバルトに頼まれてきたのかな?

  そういう治安系のこともやってるとは思えないけど、違うとなるとこいつらが略奪紛いをして殺したのかな?

  静かに殺意を含めた瞳を向けているグリン・フィスを私は制する。

  「あんたらの仕業?」

  「おい、口の利き方に気をつけろ、ちび女」

  最初に声を発した奴が私の問いを跳ね返すように怒鳴る。

  髭面の奴だ。

  どうも私が初日に追い払った面子の中にはいなかった奴らしい。ここにいる連中含めて。8人いる。中から出てきたのだろう奴らも含めて船上に5名いる。全部で13名。

  イラついているのか髭面は言う。

  「でかい商売が駄目になったんだ、イラついているんだよ、ちび女」

  「私に関係ないじゃん」

  ちびではないです。

  「俺らを知ってんのか、ヴァン・グラフ・ファミリーだぞ? バルトなんか屑さ。俺らが生殺与奪の権利を持ってんだ。ヤラれたいのか、ちび女。でかいの連れてるからっていきがるなよ」

  でかいの、アンクル・レオです。

  確かに彼と比べたらちびだけど、ちび女ではないなぁ。

  向こうさんは私たちを敵として認識しているらしく、全部が睨みつけている。まだ構えてはないけど。

 

  ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォっ!

 

  その時、アンクル・レオが物言わず髭面を殴り飛ばす。髭面、3バウンドしてノックダウン。動かない。

  攻撃的ですね。

  珍しい。

  「アンクル・レオ殿」

  「だって、フィス、あのままそこの奴に暴言を言わせてたら斬っただろ? 暴力は悪いことだが、時には必要なことだ。そいつもそれで死なずに済んだ」

  グリン・フィス、苦笑。

  確かに。

  彼の性格的に斬ったとしてもおかしくない。

  「おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

  敵の1人が叫ぶ。

  髭面は動きすらしない。スーパーミュータントだから力加減によっては死んだかも?

  お悔やみ申し上げます。

  「くそ、ちび女っ!」

  私はやってないんですけど。

 

  バリバリバリ。

 

  叫んだそいつは手にしていたアサルトライフルを私たちに連射。

  結果?

  まあ、言うまでもない。

  弾倉空になるまで撃ったけど私は避けるし、グリン・フィスはショックソードで全て切り落とすし、アンクル・レオは何事もないように立ってる。

  アンクル・レオ、普通の雑魚スーパーミュータントより数倍タフです。

  「なななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななななんだお前はーっ!」

  「ちび女でーす☆ミャハ☆」

  「主の恋人だ」

  「ミスティの親友だぞ、俺は」

  後ずさるヴァン・グラフ・ファミリーの面々。髭面はその時起き上がるけど足元フラフラ。全員が全員、銃を構えることもなく動揺している。

  1人が叫ぶ。

  そして動揺が広がっていく。

 

  「あ、あの、スパミュ、ミスティとか……ひぃっ!」

  「赤毛の冒険者だっ!」

  「や、やべぇーっ!」

  「ボスに絶対に手を出すなって言われてたあの女かよ、畜生、拾い物なんかしてる場合じゃねぇーっ!」

  「逃げるぞーっ!」

  「お、おい、待てよ、1人だけずるい……おい、お前らも待てってーっ!」

  「お助けーっ!」

 

  ばらばらと逃げていく。

  何だったんだ、あいつら。

  ここにいる死体たちの素性は知らないけど、わざわざ船の中を調べてまで身元を判明しようとかは思わない。うろちょろしていたヴァン・グラフ・ファミリーがいなくなったからか、

  鳥たちが海岸に降り立ってちょこまかと動いている。

  何がしたいのか?

  まあ、わざわざ言うまでもないか。

  埋めるにはここは適さないだろう、波が来たら暴かれる。運ぶには骨だ。これはこれで見送り方なのかな、もっとも知り合いの場合は……抵抗覚える偽善者の私です。

  「行こう」

  「よろしいのですか?」

  「フィス、鳥葬っていうのがあるらしいぞ」

  私たちはその場を後にした。

 

 

 

  宝探しが終わって一段落。

  夕飯をマダム・パナマの食べて、2人の部屋で皆でトランプして、遊び疲れたので私は自分の部屋に戻り現在シャワー中。

  本日の冒険は終了です。

  お疲れっしたー。

  「ふんふーん☆」

  鼻歌交じりにシャワーを浴びる。

  浴室は狭い。

  浴槽はなく、あるのはシャワーだけ。とはいえこの時代、シャワー浴びれるだけでとっても最先端なシステムだ。それもお湯で。一昔前ならともかく、今では最高の贅沢だ。

  旧時代にあったとされるプールのシャワールーム的な広さ。

  もちろんそれで充分。

  シャワーから噴き出るお湯が私の裸体を撫で、流れ、タイルの床にある排水から流れ去る。

  今日は疲れた。

  ヴァン・グラフ・ファミリーと小競り合いがあったから疲れた、というのでなく泳いだからだ。

  泳ぐと疲れるものなのね。

  知らなかった。

  ……。

  ……まあ、キャピタル・ウェイストランドで泳ぐことはないからいらない知識……いやいや、関係あるか、パパの研究で水は正常に戻りつつある。まだウェイストランド全域に

  浸透はしてないものの、いずれ水は全て浄化されるだろう。おそらく私が生きている間にはスイミングスクール的なものが出来るかも?

  疲れるけど泳ぐのは楽しい。

 

  ガタ。

 

  「……?」

  キュッ。お湯のノズルを回して止める。

  何か音がしたような?

 

  ガタ。

 

  うん。

  音がする。

  背後からだ。

  背後には扉がある、その扉は脱衣場(脱衣場に個室のトイレがある)に繋がってて、そこにある扉は寝室兼リビングになっている。

 

  ガタ。ガタ。ガタ。

 

  「……」

  武器になりそうなものは当然ない。

  私はそーっと扉を開く。

  脱衣場には何もいない。となると寝室の方か。脱衣場にも武器はない。44マグナムは寝室だ。ついでに言うと旅行の解放感から寝室から全裸でここに来たでござる(泣)

  とりあえず脱衣場にあるのは体を拭くバスタオルだけ。

  それを体に巻く。

  何か武器はないものか。

  「トイレ」

  そうだ。

  トイレだ。大したものはないけど……ガチャりと静かに開けるとプランジャーがあった。通水カップ、要は排水詰まり直す代物だ。柄が木製なので武器にはなる。

  まあ、よわよわの武器だ。

  べきっと追って先端のゴムの部分を排除。これで先が尖った木製の槍の完成だ。

  誰もいなかった場合?

  弁償する、それだけの話だ。

  「よし」

  意を決して私は寝室に繋がる扉をそーっと隙間だけ開く。

  いた。

  だけど私はそれを見なかったことにした。というか見なかった、あんなのいない、いるわけないーっ!

  そこには通常サイズのラッド・スコルピオンっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ラッド・スコルピオン。
ミュータント化したサソリで巨大化しとります。三段階の大きさがあり、通常サイズ、要はノーマルサイズでも人間をカッティングするだけの大きさっす(=゚ω゚)ノ
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