私は天使なんかじゃない   作:月詠ウサギ

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老兵の挽歌

 

  大衆は英雄を求める。

  だけどその英雄が死ねばどうなる?

 

  回答は極めてシンプル。

  大衆はその次を求める、それだけだ。

 

 

 

 

 

  「どういうつもり?」

  「どういうつもり、じゃと? 言った通りじゃよ、あんたを殺す、それだけのことだ」

  そう言って彼は、バーバート”冒険野郎”ダッシュウッドは銃をこちらに向けた。

  私はまだ銃を抜いてない。

  44マグナムの一丁はデリンジャーに壊されたけど、一丁あれば対処は可能だ。

  「撃つの?」

  「話が終わったらな」

  「殺すのに話す必要はあるわけ? いや、わざわざ死ぬ気はないけど」

  「誰だって自分を分かって欲しいものさ。それが人生じゃろ?」

  「さあ?」

  彼は有名な冒険者。

  キャピタル・ウェイストランドにおいて冒険者と言えば彼を差す、冒険者業界というのがあるのかは知らないけど、彼こそが第一人者であり、いける伝説。

  その彼が今私に銃を向けている。

  それもズー・ロンv418中国軍ピストル。

  火の玉を出す珍しい銃だ。

  銃弾は視界に入る限り自動的にスローになる、しかし何故か……何故とは聞かないで私も知らん……何故か銃弾以外はスローにならない。実験したら他にもスローになる

  対象もあるのかもしれないけど、わざわざ実験しようとは思わん。スローにならずに当たったら嫌だし。

  ともかく。

  ともかく火の玉はスローにならない。

  私の能力を知った上でそのチョイスをしてくるのだろう。つまり私を殺す全開ってわけだ。

  まあ、あの銃、タートル・ダヴ収容所で一発受けたけど服が燃える程度だ。顔に当たったら火傷するだろうし目に当たったら場失明するかもだけど、致命傷にはならない。

  当たる気はないですけどね。

  さて。

  「話が飲みこめないんだけど……」

  「やはりな、やはりあんたもワシと同じ側の人間というわけじゃ。世渡りのうまさで乗り切ったってわけじゃな」

  「言いたい意味は分からないけど、言葉の意味は分かる、それ言ってて空しくない? 自分自身を能無し扱いしてんじゃん」

  「可愛くない女じゃ」

  「そりゃどうも」

  意味が分からん。

  何なんだ、こいつ?

  年輩だしここに来てから色々とお世話になったから今まで敬意を持って接してたけど……うーん、敬意の払い方を間違えた?

  何か逆恨みされてる?

  うーん。

  そうかもしれないけど、それだけでここまでするだろうか?

  となると可能性としてあるのは……。

  「まさか教授の手下の生き残り?」

  「教授? 何じゃそれは?」

  違うらしい。

  「COSの回し者?」

  「ワシは誰の指図も受けん。ワシは、ワシという勢力の支配者だ」

  「1人親方ってわけね」

  仲間たちは奴に銃を向けてるけど、まだ撃ってない。仲間にしてもこいつの真意が分からないからむやみ撃てないでいる。やっておしまいと言えばグリン・フィスは動くだろうけど。

  デリンジャーは腕組みをして眺めていた。

  まあ、仲間じゃないし、いいですけどね。

  「何をしたいの?」

  「お前を殺す、言ったはずじゃ」

  「今まで助けてくれたのに、どうして?」

  「助けただって」

  そう言って彼は笑った。

  今までのような明るい笑いではなく、老獪……いや、嫌らしい笑いだった。

  「ラッド・スコルピオンをけし掛けられた後に、あんなに都合よくあらわれると思っているのか?」

  「えっ?」

  「あれはワシの差し金じゃよ」

  「はっ?」

  「ストレンジャーのブリーダーにあんたを殺すように差し向けたのさ」

  「……何で?」

  「お前がいるからっ! ワシが現役を復帰せねばならんかったっ! この歳でじゃっ! この歳で密林を歩き、泥水を飲まねばならんかったっ!」

  「……」

  怒号が響く。

  言っている意味が分からない。とりあえずスーパー・エゴは逃げたし、もう戻ってこないだろう。バルトは死んでる、ザ・ブレインとマクグロウは潜水艦を奪いに行ってる、COSは舞い

  戻ってくるかもだけど連中の親玉のPIPBOYは初期化した。PIPBOYのサポートなしでここのセキュリティをどうにかは出来まい。

  ……。

  ……あー、訂正。

  どうにかは出来るのか、あの親玉のスペックは高い。とはいえPIPBOYのサポートがある私には勝てないだろう。さすがに私とハッキング対戦しても頭だけで処理できんだろ。

  要は敵はここに戻ってこないし、COSが部隊を仮に投入してもセキュリティをこちらで抑えれるから問題はあるまい。

  老人の言い分を聞くとしよう。

  何も知らずに撃ち殺すのは私としても気が引ける。

  「ワシの名声はどれだけだと思う? たまたま物資の調達に立ち寄ったテンペニータワーの主が頭を下げて永住を求めるぐらいに高いものじゃった」

  「大半はアーガイルのもんじゃんか。それを横取りしただけでしょ」

  シーはずけずけと呟く。

  空気読め。

  空気。

  あー、というか、わざと言っているのかな。シーも頭いいし。さっきの冒険野郎の話ではアーガイルの能力を警戒して、嫉妬して、そしていつかでっち上げの冒険談がばれるのを恐れて

  謀殺したようなニュアンスだった。IFはないけど、ロックオーポリス襲撃がなければアーガイルに惚れ込んで住んでたスマイリーは追われる必要もなかった。

  今でも幸せに暮らしてた可能性もあった。

  そういう意味では、私は冒険野郎に次第に反感を覚えてた。

  冒険野郎はシーを睨むものの銃口は私を向けたまま、それから再び私に視線を戻した。サラはシーを睨んで耳元で何か囁く、シーは肩を竦めて黙った。

  シーはサラに任せるとしよう。

  「ワシはテンペニータワーで悠々に暮らしたよ。求められれば冒険談義をしたりしてな。求められ過ぎて毎日が忙しいぐらいじゃった」

  「素敵な老後ね」

  「あんたが現れるまではな。ワシの居場所はなくなった」

  「テンペニータワーにいられなくなった理由はエンクレイブでしょ? ……ああ、あんたの話じゃ襲来前に冒険に出たから助かったんだっけ。本当に私のせいで居辛くなったってわけ?」

  「精神的にという意味じゃ」

  「精神的に?」

  「あんたのせいでワシは誰にも見向きもされなくなった。つまりあんたのせいじゃっ!」

  身に覚えは全くない。

  テンペニータワーにはそもそも行ったこともない。

  逆恨みか?

  「赤毛の冒険者、そう、あんたが売り出したのが原因じゃよ」

  「あれはスリードッグが勝手に言い出しただけで……」

  「最初はな。そして名は一人歩きした。だがあんたは現実に今、赤毛の冒険者として名馳せている。キャピタル・ウェイストランドで知らない者はいない。エンクレイブもその名を警戒し、あの

  排他的なBOSはその存在を身内として扱い、レギュレーターは同志であることを誇りとしている。子供たちはみんなお前を英雄だと思っている。ワシを差し置いてなっ!」

  「悪いけど」

  「冒険者として年季もない、ただラッキーと取り巻きに恵まれただけのお前が、ワシの人生を否定したのだっ!」

  「悪いけど、逆恨みに付き合うつもりはないわ。悪いけどね」

  敵意は明確なる殺意へと変わったのを感じる。

  こいつどうするつもりだ?

  仮に、まあ、ありえないけど、仮に私を殺せても次の瞬間にはこいつも死んでる。

  私の仲間をどうかわすつもりだ?

  「デリンジャー、まさか彼に雇われてたり?」

  「いえいえ。一応はフリーですよ。トバルの始末を早々にしたいので、さっさと彼を片付けてください。それとも僕に依頼しますか? 彼の殺し。知らない仲でもないし特別に割引しますよ?」

  「遠慮しとく」

  「殺しの際にはぜひご用命を」

  微笑して気障ったらしく一礼。

  わざとらしい奴だ。

  「サソリけし掛けたのがあなただったのね。で? あのわざとらしいタイミングでの登場は何?」

  誰がけし掛けたのか謎だった。

  まさか彼だったとは。

  にやりと老人は笑う。

  「良い先輩としての登場じゃったろ? ワシとしては、二つのシナリオを考えておった」

  「二つ」

  「一つはあんたを亡き者にする、まあ、既定路線じゃな。もう一つは変則的ではあったがあんたの名声に乗っかることじゃよ」

  「良い先輩を演じて?」

  「そういうことじゃ」

  なるほど。

  何となく読めてきた。

  ここぞというタイミングで彼は何度も登場した、そしてそのタイミングと並行して厄介なイベントも起きていた。

  偶然?

  いや、これは……。

  「マルグリットの倉庫に閉じ込められてたスワンプフォーク、まさかあなたの差し金?」

  「連中はリンカーンリピーターの音を恐れるからな。閉じ込めるのは簡単じゃった。あの連中は密造酒の取引に来てた連中じゃよ。……ああ、ワシの名誉もあるので言っておくがマルグリットを

  殺したのはCOSじゃ。嘘じゃない。ちゃんと見てたからな。あんたがキャピタルに帰るには必ず物資調達する、じゃからあそこに来るのは分かってたよ」

  「大した名誉ね」

  「じゃがあんたは生き延びた。あんたの先輩格でいる方が良いと思ってたな、加勢したまでじゃ」

  「タートル・ダヴ収容所でも?」

  「勇ましく援護したじゃろ? 見た目はな。実際はとっとと去ったんじゃがな」

  「ん?」

  「何じゃ?」

  「爆破して電力落としたんじゃないの?」

  「それは知らんな」

  あれー?

  じゃああの人影は何だったんだ?

  冒険野郎は話を続ける。

  「カテドラルでは扉が爆破され、スーパーミュータントの襲撃があって大変じゃったな。……そういえばあいつは武器を持っていたか?」

  「あんたが爆破して招き入れたってわけね」

  「かもな」

  「片方では良い先輩演じて、片方では私を殺そうとしてた、どっちになってもあなたは安泰ってわけね。私が生き残れば一緒に大冒険した先輩格として名声が上がり、私が死ねば

  逆恨みは晴れるし寝心地もよくなり私の冒険譚を自分のものにできるわけね。どっちに転んでも万々歳……で終わらせない理由は何? わざわざその手で殺すんでしょ、ここで」

  「出る杭は打たれる。そういうことじゃ」

  「そんなのに興味はないわ」

  「ただ一応はあんたの為になることもしたぞ。雇いはしたが延々と出てきても面倒なんでな、ブリーダーは底なし沼に沈めたよ。密林の沼の貪欲さは桁違いじゃ」

  「ふぅん」

  サソリ使いは死んでいるらしい。

  今まで延々と引っ張って登場渋ってたのかと思ったけど、とうの昔に死んでるようだ。

  なるほどね。

  だけど理解できない、こいつの行動がまるで理解出来ない。

  殺すほどか、私を。

  「そろそろ死んでもらおうか」

  「考え直す気は?」

  「ないな。あんたがいる限り、ワシは№.1ではいられない。そうともっ! ワシの冒険は再放送と同じじゃ、誰もが結末を知っている。しかしあんたは新作、誰もその結末を知らない、だから

  誰もがあんたにのめり込むっ! カムバックするにしてもあんたは邪魔だ、リメイクが勝つには、あんたの旅の結末を無残な死という終わりにせねばならんのだっ!」

  「あんたまともじゃない。狂ってる」

  「続編は作られん、第一部完の続きはない、何故ならここであんたの旅はTHE ENDだからじゃっ!」

  「仕方ない」

  「仕方ない、とは?」

  「あんたを殺す」

  「面白い、保安官と悪党の撃ち合いということじゃなっ! いいとも保安官、見えない弾で死ぬがいいっ!」

 

  どくん。

  どくん。

  どくん。

 

  心臓の脈打つ音が聞こえる。

  急速に周囲の時間は緩やかになり、そして私だけがその中で不通に動いている。

  彼は私の能力の殺し方を知ってる。

  だけど中途半端だ。

  そんなんじゃ私は殺せない。

  44マグナムを引き抜きトリガーを一回引く。

  そして時は動き出す。

 

  ドン。

 

  「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

  絶叫を上げて冒険野郎は膝を付いた。

  左足を撃ち抜いてある。

  そこらの豆鉄砲ではない、44マグナムだ。スティムパック打たない限りは動けない。

  足を押さえてもだえる冒険野郎。

  ズー・ロンv418中国軍ピストルは床に転がった。冒険野郎は自分の足の惨状に手一杯で武器を拾う余裕はないし、9㎜ピストルを引き抜いたりリンカーンリピーターを構えたりもできない。

  完全に無力化した。

  私の能力の殺し方の一例を知っている、だけね、彼の場合。

  そういう意味ではデリンジャーの調査は完璧だったと言わざるを得ない。あれは対処のしようがなかった。

  確かに。

  確かに火の玉は見えない、正確にはスローにならない。

  だけど……。

  「任意で時間をスローにもできる、火の玉の場合は自動発動しないだけで、任意でもスローにできるの。能力発動さえすれば火の玉もスロー。偏頭痛するけど、あんた程度の相手なら問題ないわ」

  「くっ!」

  デリンジャー級相手なら?

  極力使いたくないですね、任意では。偏頭痛で集中が途切れるから避けたい。だって確実にデリンジャー級はスロー能力駆使しても苦戦するし(汗)

  さてさて。

  「もう終わりにしましょう」

  「ワシに命令するなっ!」

  9㎜ピストルを引き抜いて私に向ける。

  痛みで全身が震えてるけど。

  ふぅん。

  ガッツはありますね。

  だけどその出血だと死ぬ。止血すらせずに私に武器を向ける、よほど私が目障りらしい。

  「ワシは、ワシこそがNO.1なんじゃっ!」

  「じゃあ私は辞退するから、それでいいでしょ」

  「生きている限りは無理じゃな」

 

  ドサ。

 

  その場に座り込む。

  まあ、あの足で立ったり中腰は無理か。幾分か口調が和らぐ冒険野郎。痛みが怒りを越えてるからだろけど。

  平和的解決は、これは……無理かも?

  「ワシはアーガイルの手柄を奪うことで名を上げてきた。奴はそれに甘んじていた、何故かは知らんがな」

  「……」

  「その名声でワシはキャピタル・ウェイストランド随一の、伝説の男となった。テンペニータワーでワシは冒険譚を話して過ごしてきた。スリードッグに冒険話を売り込み、ギャラクシー

  ニュースラジオで物語となった。だがその評判も次第に衰えていった。あんたがボルト101から這い出してきた時からなっ!」

  「……」

  黙って聞く。

  とはいえ完全に逆恨みだ。辞退もダメらしい。

  どうすりゃいいのさ。

  「気が付けばワシに話をせがむ者はいなくなっとった。ワシは酒を飲んだ。毎日毎日な。そしてある時気付いた、酒を飲むしか能がない自分に」

  「だったらそれを何とか……」

  「全部お前のせいだお前さえいなければこんな惨めな余生を送らずに済んだんじゃっ!」

  「そもそも話がかみ合わないみたいね」

  妥協点はないな。

  ならば撃つしかないか。

  「大衆は英雄を求めている、常にポイントを稼がねばならん、そうしなければ忘れられてしまう、そしてお前もいつか気付く、きっと気付く」

  「何を?」

  「名声の果てにあるものが虚無だということをっ!」

  「名声と虚無、ね」

  「そうとも。いつかその空しさに気付く。だが走り続けなれば忘れられるだけ。冒険者とは永遠に走り続けなければならんのじゃっ!」

  「空しい人生ね」

  「あんたもいつか忘れられる。今は分かるまい、ワシの苦悩が。だがあんたもいつかワシと同じことをするぞ」

  「しないわ」

  ホルスターに銃を戻す。

  必要ない。

  ここにいる彼は過去の妄執。今を生きてない。過去に執着しているだけの存在。哀れな存在だと思う。私が同調できるところは何もない、一つもない。

  私は彼を否定する。

  「アーガイルが何故あなたを立てたのか、あなたは何も分からないのね」

  「何?」

  「彼にとってあなたは仲間だったのよ。あなたにとっては嫉妬の対象で、いつか暴露されるかもしれないという恐怖の対象だったみたいだけどね。だから消した、でしょ?」

  「仲間じゃと? そんな曖昧な……」

  「見て」

  私は仲間に振り返り、それからまた冒険野郎を見る。

  「私の仲間たち。私は別に名声求めてやってない、ただ仲間を護りたいから、大切な人を護りたいから、それだけ。あなたのようにならないし目的がそもそも違う。虚無? ないな、それは」

  「詭弁だっ! 大衆は必ずお前を持ち上げ、一番高く上げてから叩き落とすぞっ! 落とされないためにはポイントを稼ぐしかないのじゃっ!」

  「だから何?」

  「だから何、じゃと?」

  「名声がなくなって、誰にも見向きもされなくなって、新しい人が英雄になって、まあ、そうね、その未来は確実に来るでしょうね」

  「そうともっ! 必ず来るっ! じゃから、そうじゃな、組もう、ワシとあんたの2人で輝かしい未来を刻もうっ!」

  「例え名声がなくなっても、皆がいる。私はそれで充分よ」

  「じゃ、じゃが、ワシはどうすればいい、ワシはこの先どうしたらっ! ワシは嫌じゃ、誰にも見向きもされない人生などっ!」

  「可哀そうな人。あなたも1人じゃなかったのに虚栄の為に仲間を捨ててしまった」

  「……」

  ガタガタと冒険野郎は震えだす。

  銃口も。

  私を弱々しく睨み付け、哀願し、それからおもむろに口の中に銃を突っ込んだ。

 

  ばぁん。どさ。

 

  銃声。

  倒れる音。

  「あなたのせいではないですよ、彼はあの終わり方を自ら導き出していた、既にね。それだけです」

  何気なくデリンジャーは言った。

  私が追い込んだのは確かだ。だけどこういう終わらせ方しかなかった。彼は説得には応じなかっただろうし、彼を撃つ理由は私には弱かった。

  伝説の冒険者はこの地で果てた。

  伝説のまま、彼は旅立ったのだ。私はわざわざこの死にざまを言うつもりはない。

  今後も生き続けるだろう。

  冒険野郎として、誰かの心の中で。

  「主、仕方なかったと思われます」

  「私もそう思うわ。彼は悲しい人だった、それだけよ」

  「ズー・ロンv418中国軍ピストルもーらい☆リンカーンリピーターは好きにしていいよ~。さすがに呪われそうだし、冒険野郎に」

  ……。

  ……シーだけいい根性してますね。

  まあ、そうすることで私の気を楽にしようとしているのだろう、と思い込むことにしよう(汗)

  さてさて。

  「行こう、皆」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  原子力潜水艦が水中を進む。

  音もなく。

  水中で圧倒的な存在感を示しながら。

  戦前の中国海軍の原子力潜水艦。領海侵犯した後に座礁、水中で遺棄されていた。

  それをCOSに組した戦前の中国人スパイMr.チャン主導のもとで引き揚げ作業が行われていた。タートル・ダヴ収容所にCOSの部隊が駐留していたのも情報の引き出しの為だ。

  ただ、Mr.チャンは戦前の任務を忠実に行おうとしていた。

  つまり原子力潜水艦の爆破。

  要は証拠隠滅。

  それが本国からの指示だった。

  もちろん既に本国とは連絡が取れず、全面核戦争後の状況は全く不明。そして既に任務発動から200年経っているので今更任務も何もないのだが。

  ともかく。

  ともかくMr.チャンはCOSと組む……いや、利用する形で任務を果たそうとしていた。

  COSはCOSでこの状況を利用していた。

  Mr.チャンを気狂いと認識しながらも情報の正確性を知り、利用できると思い、利用していた。COSにとって原子力潜水艦はどうでもよかったのだが、それを餌にできると踏んでいた。

  しかし……。

  「本部もこの成果を喜んでくれるだろうっ! キャスディンの判断は間違いだった、そしてリオンズの裏切りもな。これで俺は一番の功績を持って西海岸に帰れるっ!」

  「ハッ! 結局俺一人で操縦できるじゃんかー。やべー、俺マジ有能過ぎー」

  潜水艦内部。

  操縦しているのはザ・ブレイン。

  同乗しているのはマクグロウ。

  ザ・ブレインは教授の手下の生き残りではあるものの、特に教授に対しての思い入れはなく、流れでバルトに付き合っていただけだった。同乗しているマクグロウはポイントルックアウトに

  渡った最後のOC(半分は死に、半分はCOSに寝返った)。しかし彼はキャピタル・ウェイストランドに戻るつもりはなかった。OCと呼ばれるのは卒業し、BOSに復帰するつもりだった。

  そう。

  原子力潜水艦というロストテクノロジーを手土産として。

  これだけの戦利品があれば大手を振って戻れる。マクグロウとしては瓦礫の東海岸よりも洗練された西海岸の方が好みとして合っていた。

  今更分派したキャスディン率いるOCに合流するつもりはなかった。

  COSが引き揚げた原子力潜水艦を乗っ取り、西海岸に帰る、それが彼の目的。

  ……。

  ……とはいえ、こうも簡単に乗っ取れたことに疑問をマクグロウは感じていなかった。

  任務達成に気を取られていた。

  そして……。

 

  ビービービー。

 

  「な、何の音だ?」

  「ハッ! 自爆コードが本格的に作動した音ですよー。やべー、俺らもうじき死ぬー」

  潜水艦内に唐突に響く音。

  警告音は唐突ではあったがカウントは出港直後から始まっていた。ザ・ブレインはそれを言わなかった、故意にではなく、彼にしてみたら生死の概念が分からなかった。だから伝えなかった。

  「じ、自爆?」

  「ハッ! 誰だか知らないけどこれを爆破するつもりですよー。やべー、俺お前と心中はマジ勘弁ー」

  「か、解除しろっ!」

  「ハッ! お断りだぜー。100年ぐらい稼働してるし、そろそろスクラップになりたいんだ。やべー。俺マジ達観してる、やべー」

  「このテクノロジーを次世代に伝えなければならんっ! 文明の火が消える前にっ!」

  「ハッ! むしろこんな技術ない方が幸せじゃね? というわけで俺機能停止するわ。スイッチ切るわ、マジ寝るわ。じゃあなー、後は好きにしろー、悔いのない人生送れよー」

  「お、おいっ! おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

  艦内の警告音が激しくなる。

  マクグロウは必死になって計器を弄るが見当違いだし、既にカウントは尽きつつある。

  どう足掻いても無駄。

  脱出しようにも水の中、そして仮に潜水艦から脱出出来ても爆発に巻き込まれるのは確実。

  「俺が死んだらどうなる世界の再建が遅くなる俺はBOSで必要な人材だその俺が死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ嫌だこんなところで死ぬなんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!

  「ハッ! こんなすげぇテクノロジーと死ねるなら本望じゃね? やべー俺起きてたー。これで俺お終い? もう少しだけ続くんじゃ☆ヒャッハー」

  そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




COSのエルダーが誰なのか、COS自体はどうなったのかは判明しないままミスティさんたちはキャピタルに次回帰還してます。

次回、旅の報酬(=゚ω゚)ノ
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