とある5月の昼下がり。
渋谷の道玄坂にあるSPRのオフィスにはイレギュラー達が来ていた。
美少女霊媒師の原真砂子、派手な見た目だが巫女の松崎綾子、歌って踊れる密教僧の滝川法生。
3人に飲み物を出す、苦学生の谷山麻衣。
「ここは喫茶店じゃないんだからね」
とお決まりのセリフを言いながら、飲み物を机の上においた。
穏やかな時間が流れていた。
しかし、その時間は扉が三回ノックされ終わることとなる。
「お客さんかしらね」
綾子がそういい、イレギュラー達がソファを空ける。
「どうぞ」
麻衣が扉の向こうの人に声をかけた。
パンツスーツ姿でOL風の一人の女性が入ってきた。
前髪はキリッとした細い眉を出すように8:2に分けられ、長い黒髪は後ろで一つに束ねられていた。
「ここは渋谷サイキックリサーチで間違いないですか」
小顔で切れ長かつ大きな目で、ナルを彷彿とさせる漆黒の瞳。
そして透き通った白い肌。
いきなりの美人の登場に面食らいつつも、麻衣は、間違いありません、と答えた。
「私、神宮寺 真夜と申します。本日はこちらでアルバイトをさせて頂きたくて参りました」
彼女はそういい30度の礼をする。
動きに合わせて長い黒髪はサラサラと流れた。
「…はぁ。話を聞きましょう。どうぞおかけください」
いくつかの言葉を交わし、履歴書を麻衣が受け取った時、所長室の扉が開いた。
「麻衣、そちらの方は」
「神宮寺 真夜さん、ここでアルバイトがしたいんだって」
麻衣は内心ヒヤヒヤしていた。
また、ナルの事だから、嫌味を言いまくるのではないかと。
「僕が話を聞く」
珍しいこともあるもんだと、麻衣は思った。
麻衣の隣に、ナルは腰掛けた。
「特技欄に、PK、霊視、透視とありますね。どの程度の実力か見せてください」
ナルにそう言われた彼女は、カバンからティーポットなどを出し、それらに手を触れずに紅茶を入れてナルと麻衣に振舞った。
一人でに動くティーポットやティーカップはまるで出来の良いマジックを見ているようだった。
ナルが紅茶を飲んで固まった。
「美味しくありませんでしたか?」
透き通った落ちついたトーンの声で彼女はたずねた。
「いいえ、肉親の入れる紅茶と同じ味だったものですから」
と答えながらナルはカップをソーサーに置いた。
「さすがにここでは霊視は無理なので、透視をしますね」
そういった彼女は、鞄から同じ形の黒い箱を10箱出してきた。
「普通の箱です、お確かめください」
滝川と綾子が確かめた。
どこにでもある箱だ。
「これは、蓄光ビーズです。好きな箱に入れてください。私は後ろを向いているので」
ナルがビーズを入れているとき、麻衣はなぜ蓄光ビーズなのかと尋ねた。
「発光しているものの方が見えやすいのです。正答率を上げるためですね」
だからと言って、黒い箱から蓄光ビーズの光が漏れでることはない。
10回ほど同じことを繰り返したがどれも外すことなく当てた。