その頃、綾子は嶋田さんがいるホテルに来ていた。
「こんにちは、あんたが嶋田さん?」
「はい。派手な格好の巫女さんってあなたですか」
「あってるわ。私、松崎綾子」
「松崎さん、宜しくお願いします」
嶋田さんは頭を下げた。
「とりあえず、これ持っといて」
私は御札を彼に渡した。
話聞いた感じだと家に問題があるだけっぽいし、これで問題ないでしょ。
こんな楽な仕事で給料出るなんて、今回はラッキーだわ。
夜十時、何だかんだでお酒を飲んでいた。
別に、私が勝手に飲み出したわけじゃないのよ。
一応、仕事中だしってことで断ったんだけど、嶋田さんが強く勧めるから仕方なし。
一人で飲むのもつまんないもんねえ。
にしてもコイツ何なの、潰れんの早すぎ。
「酔うの早すぎません?」
「まっだ、よおてませんよお~」
クダ巻いて酔ってないもなにもないわよ。
つまんないのー。
でもタダでお酒飲めてるんだし、良しとするか。
1瓶飲みきって、そろそろ自分のとったホテルの部屋に戻ろうとしたとき。
「…………ナ…………カ、ナ……」
「カナ?寝言?」
彼女は確か、瞳さんだっけ?
別の女の夢見るなんて、いただけないわね。
ふと、背後に気配を感じた。
嫌な感じ。
振り返っても振り返らなくてもヤバイ。
根拠は女の勘。
仕事なのに酒飲んだ罰?
「はぁ……、ついてないわねえ」
振り返った。
近くに女の顔。
「ヒッ…………」
奇跡的に大きな声を上げずにすんだ。
しかし、目が合ってしまった。
不気味だった。
なんとも言えない顔をしている。
愛と憎しみも併せ持った表情。
隣の男は起きない。
「冗談じゃないわよ…………」
目を逸らせば負ける。
私一人なら、九字でなんとかして逃げるけど、二人じゃ無理。
睨み合ったまま朝を迎えた。
朝日が顔を出した頃、その女は消えた。
調査二日目、朝。
ベースには安原、滝川、ナル、リン、綾子、麻衣、綾子がいた。
「どういうことよ」
剣呑な声の綾子さん。
何があったのかと真夜はヒヤヒヤする。
「変な女の霊が出て、朝まで睨み合ってたの!聞いてないんだけど、あんなの出るって」
ナルが綾子さんに視線だけよこす。
ちょっと怒ってる?
あ、これはデータ撮り損ねたからだな。
「巫女なんだから、なんとかできないのかよ」
ぼーさんの発言で、綾子さんが目の前の金髪を睨みつける。
「はあ!?私一人しかいないんだったらなんとかしたわよ。戦力になんない男一人つれて逃げなきゃいけないのに、最低戦力になるやつ二人は必要よ!」
ふんっとぼーさんは横を向いてしまう。
綾子さんもツンとしてベースを出ていく。
私は彼女を追いかけた。
「綾子さん」
「なによ」
「想定外だったんです」
「はあ?」
綾子さんが意味がわからないという顔をする。
「出るって分かってたら、綾子さん一人で行かせたりしません、ナルは」
「新米のあんたに何がわかるっていうのよ」
「出るって分かってたら、ナルならカメラの準備をしないはずありません」
綾子さんの表情が柔らかくなる。
「新米の癖によくわかってるじゃない。こういう仕事は予想外な事が起きることの方が多いもの、ナルの想定外なら仕方ないわ」
よかった、機嫌がなおって。
後ろからとたとたと足音が聞こえた。
「綾子」
麻衣さんだった。
声の響きが不安げで。
振り返り、私は笑顔を見せる、大丈夫だと示すように。
少し話してから三人でベースに戻った。
「何してたんだよ」
ぼーさん、そろそろ黙っておけばいいのに。
「秘密」
即答した綾子さん。
こりゃあ根に持ってるなあ……。
「麻衣なら教えてくれるよな」
「えー秘密っ」
麻衣さんにも裏切られ沈むぼーさん。
「本題に入る」
ナルの声で、皆がビシッとなる。