真夜は綾子とともに病院に来ていた。
一応医者に見せとけというナルの指示でだ。
やはり捻挫という診断で、湿布臭をあたりに撒き散らしていた。
今、真夜と綾子は受付のロビーにいる。
**********************
「真夜、聞いたわよ。あんたナルの命救ったんでしょ」
「ええ」
綾子さんは誰から聞いたんだろう。
リンさんは多くを語るタイプじゃないから麻衣さんかぼーさん辺りだろうか。
「それなのに、なんで自分から言わないわけ?」
「言うほどのことでもないと思いまして……」
それにあんまり詮索されたくなかった。
「人の命を救うってのは凄いことなのよ。もっと誇りなさいよ」
「はあ……」
こんな気の抜けた返事しか返せない。
だって私はまだあの時の判断を迷っている。
ナルの運命をあんな形でねじ曲げてしまったことは果たして正しかったのか、と。
「私の親は医者なのよ。以前言ってたわ、医療は命を救うから素晴らしいって。来るはずのなかったその人の明日を与えることができるからって」
「はい」
「でもね、その分医療ミスが許せないし怖いって言ってたわ。来るはずのその人の未来を奪ってしまうから」
「いいお医者さんですね」
綾子さんが力強く笑う。
「あったりまえよ」
そういう自信が羨ましかった。
私にはない輝きだった。
今まで、常人を超えた能力は私に迷いだけを与えてきた。
これからもきっとそうだ。
救うべきか救わざるべきか、教えるべきか否か……迷うことはたくさんあった。
そこから学んだことはひとつ。
常人を超えた力でどれだけの善を成したところで、常人を超えた力を使った時点で善行とは見られない。
疑われるのがオチだ。
それは私を周りの人間たちは常人の基準で測ろうとするから。
だから常人を超えた人の集まりなら、それを避けられるのではと思ったから、SPRをバイトに選んだ。
そこの所長だからナルを助けようと思った。
なのに私はこうして今も悩んでいる。
それは本当に正解だったのか、と。
「真夜?」
「…………は、い」
「大丈夫?足痛むとか?」
「それは大丈夫です」
「いきなり黙るから心配したわよ」
「すいません……」
綾子さんが顔をのぞき込んできた。
「あんたは色々なものを持ってる。だけど自信が足りない、本当に勿体無いから何とかしなさい」
受付の人に呼ばれる。
代わりに綾子さんが行ってくれた。
あなたなら、私が迷い込んだ袋小路の突破口を知っている気がする。
答えを探すように彼女の背中を見つめ続けた。
ナレーションぽいところからの視点変更を分かりやすくするため「*」で区切ってみました。
試行錯誤しながらなので、いろいろ変わってすいません。