Devil of a child   作:神崎 真由

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第八話 束の間のバカンスと融和

「ナルっ!」

 

麻衣さんの声で、皆が一斉にナルの方を見る。

 

ナルの瞼が薄らと開いていた。

 

「ナル!ナル……。良かった。ナルはPK使った後倒れて、今は病院にいるんだよ」

 

ナルは視線を麻衣さんに向ける。

 

「見れば、分かる」

 

この調子なら、大丈夫そうだ。目覚めから毒舌が炸裂している。

 

「本当に心配しましたのよ」

 

整った眉をハの字にして真砂子さんが言った。

 

「もう、大丈夫ですから」

 

相変わらず、ナルは素っ気ない。

 

「ナル、お茶入れるね」

 

「たまには、わたくしがっ」

 

「私の仕事取らないでー」

 

麻衣さんと真砂子さんがじゃれあっていた。

 

「ねぇ、ナル、茶葉リクエストある?」

 

笑顔の麻衣さんに、ナルは顔を横に振る。

 

麻衣さんの表情が曇る。

 

「リン」

 

ナルはただそう名を呼んだだけだが、リンさんは全てを理解し頷く。

 

「私は、ナルの着替えを取りに車を出すので、皆さんそれに乗ってください」

 

リンさんが朗々とした声で言う。

 

「え……でもまだナルが目覚めたばかりなのに?」

 

「そうですわ。もう少しいてもよいのでは」

 

不満そうな麻衣さんと真砂子さんの肩に綾子さんが手を置く。

 

「歩いて帰りたくなかったら言うこと聞く!」

 

「えー!」

 

ぞろぞろと出ていき、病室にはナルと私、真夜だけになった。

 

少し日が傾いてきていた。

 

少しの沈黙のあと最初に口を開いたのは私だった。

 

「肝心な時に、いなくてすいませんでした。私が補助できれはこんなことにはならなかったのに……」

 

ナルの黒い瞳が揺れる。

 

「なぜ……僕を責めない」

 

「…………なぜ、なんでしょう」

 

ナルの眉間に皺がよる。でも、私は続ける。

 

「今、こうしてナルが生きててくれて嬉しいと、思っています。……だからでしょうか」

 

私にも責めない理由なんて分からない。

 

ただ、今はそういう気分になれなかった。

 

「理解、できない」

 

「してもらおうとは思ってません」

 

ナルにも私にも、普通の人が持ってる何かが足りない。

 

分かり合うのは、きっと難しいだろう。

 

「一方的に責めて悪かった。あの日、助けてくれて…………ありがとう」

 

ナルはこちらを見ない。

 

プライドの高いナルの珍しい言葉に少しばかり驚いてしまう。

 

「私はナルにSPRで雇っていただいて、そのことにすごく感謝してます。きっと、それでトントンです。こちらこそありがとうございます」

 

西日が病室を照らす。

 

白い壁に私の影が長く伸びた。

 

「真夜のお茶が飲みたい」

 

ナルがそう唐突に言った。

 

いつぶりだろうか。

 

なぜ、こんなに嬉しいのだろう。

 

思わず明るい声が出る。

 

「わかりました」

 

 

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