スタジオside
三人はスタジオに向かって歩いていた。
「真夜ちゃんよ」
滝川に真夜は、はいと返事した。
「麻衣がああして噛みついたのは……」
「言ってもいいんですの」
真砂子が鋭く言う。
「麻衣を誤解されたくないから、な」
それを聞いた真砂子はツンと横を向いた。
「麻衣は孤児なんだ」
滝川が静かに言う。
「何かあるんだろうなとは思ったんですけど、そう言うことだったんですね」
麻衣の必死さを感じさせる言い方、何かない方が不思議だ。
「だから」
「ええ。麻衣さんの言葉がただ相手を非難しようとしたものではなかったので、私も理由を言おうという気持ちになったんです。彼女を責めたくて、とかじゃないんです。私は今回の件で麻衣さんを嫌に思ったりなんてことはありえません」
「よかった」
心の底からよかったと思った風に滝川が言った。
滝川に真夜は笑顔を返した。
「よし、到着だ」
「おい、法正。今日は両手に花か?」
滝川達を滝川の仕事仲間と思われる人が出迎えた。
「いらんこと言わんでいい。いつものとこか?」
「ああ」
滝川についていくと、いかにもスタジオという部屋にたどり着いた。
「どうや、真夜ちゃん」
真夜は何もない場所を指さした。
真砂子には、その先に初老の男性が見えた。
「あなた、除霊か浄霊はできて?」
「少しは……」
「なら、それほど害のある霊とも思えませんから、祓ってみてはどうですの」
真砂子に指示され真夜が祓うことになった。
「私は、真夜と申します」
《……ワシはゲンゾウだ》
「残念ながら貴方はお亡くなりになっています」
《……そのようじゃな》
「なぜ、このような所に留まっているのです。天界へ行きましょう」
《……ワシだってそうしたかった。なのにワシの家族は焼いただけで葬式さえしてくれなんだ。ワシは念仏聞かんと天国へいけんと思っているからここにおるんじゃ!》
「なるほど……」
真夜は滝川の方を向く。
「この方に、通常の葬式のお経を上げてもらえませんか」
「おいおい、それじゃあ」
「私が祓ったことにはなりませんが、仕方ありません。この方を浄霊するにはそれしかありません」
「それなら除霊に切り替えてはどうですの」
滝川は真砂子の発言に驚いた。
いつも除霊を嫌う彼女がなぜ。
「害のない方を除霊するのは気が引けます。叶えられる望みなら、それで悔いなく天に行けるなら叶えてあげたいと思います」
「真、夜さん」
真砂子は目を見開く。
自分と同じ考え方で驚いた。
「ぼーさんは歌って踊れる密教僧でしたよね?お願いできますか」
滝川はへいへいと言って数珠を取り出した。
「ゲンゾウさん、彼、見た目は僧侶ぽくないですけど、力のある御坊さんなのでちゃんと天国へ行けます、安心してください。お経を聞いて光の見える方へ行って下さい」
《……ありがとう》
滝川のお経を聞いてその霊は無事天に登った。