私は神宮寺 真夜。
数日前からSPRでアルバイトをしてる。
「おはようございます」
「おはよー」
先に来ていた麻衣さんが返してくれる。
「ふと思ったんだけど、真夜はどうしていつもスーツなの?すごく似合ってるからいいんだけど、私服の方が楽じゃない?」
「所長命令です」
「えぇ!?ナルの?」
「大人っぽく見える方がいいとかなんとか言ってましたよ」
「むむむ~!ナルの好みか!?」
いや、そういうのでは無いだろうと思った。
「学生に見えないので、相手に舐められないとか、そういう理由だと思いますよ」
自分で言ってて悲しくなってくる。
私はまだ15歳なのに何度20代(それも後半)にみられたことか……。
「ナルが実は、スーツ萌えとかだったら面白いけどねー」
麻衣さんがニヤニヤして言う。
ナル程萌えと言う言葉が似合わない人はいない……いやリンさんといい勝負か。
想像したら笑えた。
私が笑ったら麻衣さんも笑ってた。
「真夜、お茶」
所長室からだった。
実際、お茶を入れたのは麻衣さんだった。
習慣だと思う。
ナルはなんて言うだろうか。
嫌な予感はしたが、何も言えなかった。
すぐに麻衣さんは戻ってきた。
「真夜、ナルが呼んでる」
泣きそうな顔をしていた。
お盆の上のティーカップがなくなっているのが唯一の救いか。
「了解です」
所長室に入った。
「僕は『真夜、お茶』と言ったはずだが」
地を這うような声でナルに言われる。
「はい、そのように聞こえました」
ああ、怖い。表情は変わらないが、纏う空気が剣呑だ。
「では、なぜお茶をいれた麻衣に何も言わなかった」
麻衣さんはナルのことが……。
私はその上後輩だし。
「申し訳ございません」
頭を下げた。
「僕は理由を聞いている」
「麻衣さんの方が紅茶をいれるのが上手だから、です」
そう言うしかなかった。
「真夜がいれるお茶は僕の兄がいれる味と同じなんだ」
それは知ってる。
実はナルは本当は何者なのかも。
双子のお兄さんが亡くなっていることも。
私が、まだここの人達に伝えていない能力で知ったものだ。
紅茶のいれ方だって、能力を使って知った。
「だから、真夜が入れるお茶が飲みたくなる時もある」
「分かりました、次からは」
気をつけますと言おうとした時、軽く揺れた。
地震??
危ない、と誰かが叫んだ気がした。
次の瞬間、ナルの腕の中だった。
私の背後の本棚から本が落ちたようだ。
所長室の本棚の本はどれも相当分厚く、頭に当たれば下手しなくても死にそうなものばかりだ。
ナルは動かない。
「ナル、大丈夫!?なんか凄い音したけど……って、あ、ぇ」
麻衣さんが激しく扉を開け激しく閉めた。
これじゃあ、麻衣さんにとんでもない勘違いをされてそうだ。
「大丈夫か」
ナルは腕を解く。
「ええ、ナルこそ本、当たりませんでしたか」
「いや、当たってない」
床を見ると全て、私達二人を避けるように落ちていた。
「真夜、PK使ったのか」
ナルが本を拾いながら言う。
きっと本が熱をもっていたのだろう。
「反射的に使ってしまったようですね」
本を拾い終えた。
「真夜、お茶」
「はい」
ティーカップを持って所長室を出たが、麻衣さんがいない。
「リンさん、麻衣さん知りませんか?」
資料室に顔を出し聞く。
「さっき、胸が痛いとか言って帰りました」
精神的なものだから心配いらないとか言ってましたと補足が入る。
「そうですか」
心の中で溜息をついて、扉を閉めた。