6月、全国的に梅雨に入り、今日も雨が降っていた。
真夜がアルバイトを始めて一ヶ月ほど経っていた。
事務を麻衣と安原、来客対応を真夜というポジションが決まってきていた。
「すいません」
20代と思われる女性が入ってきた。
雨の日の来客なんて珍しいと思いつつ席を勧める。
「彼氏を助けて欲しいんですっ」
切羽詰っているようだ。
「事情を教えて下さい。その上でこちらで調査できるか検討しますので」
麻衣さんが紅茶をだす。
彼女はそれに一口、口をつけると、話始めた。
その話をまとめるとこうなる。
▪彼氏(嶋田 明)の元カノが過度の束縛気質
▪彼氏は元カノのことを相談していた彼女(黒川 瞳)と交際
▪彼氏が原因不明の高熱、元カノの夢でうなされる
▪元カノの呪い?生霊?
ナルに引き受けるかどうかのお伺いをたてたところ「今までに生霊はあまり扱ったことがないから面白そうだ、引き受けよう」とのこと。
次の日、ナルとリンさんが事前調査しSPRは調査に乗りだした。
SPRは郊外にある嶋田さん宅に来ていた。
「俺、生霊とか祓ったことないんですけどー」
ぼーさんがやる気のない声で言う。
「まだそうと決まったわけじゃないじゃん」
返事をしたのは麻衣さん。
今日も某親子は仲が良いようだ。
「ベースの部屋は」
ナルに頷きを返した黒川さんの案内で和室につく。
「ここです」
最初広いと感じたその和室も機材をおいてしまうと狭く感じる。
「本間サイズの六畳が狭いって相変わらず機材の量半端ねーな」
残念そうなぼーさん。
「本間サイズって何??」
麻衣さんがキョトンとした顔をして言う。
「うーん、畳にもいろいろあんだよ」
「本間は京間とも呼びます。それ以外にも、中京間、江戸間、団地間などがあって同じ一畳でも名称が違えば面積が違うんですね」
ぼーさんの代わりに安原さんが的確な説明をしてくれる。
「安原さんって博識ですね」
麻衣さん達が、安原さんのことを情報のエキスパートと言っていたのもうなずける。
「いやあ、それほどでも」
そして、この若干嘘臭い笑顔。
彼はなかなかの曲者かもしれない。
「麻衣、真夜を連れてカメラとサーモを持って嶋田さんの寝室へ。話が聞けるようなら、聞いてこい」
「イエッサー」
寝室に入ると、何だろう、この感じ…………。
「……なんか嫌な感じするよね」
麻衣さんのひそひそ声に頷きだけを返した。
麻衣さんが機材を設置している間に、私は嶋田さんに話しかける。
「嶋田さん、私達SPRの者です」
「瞳から、聞いて……ます」
話すのもしんどそうだ。
嶋田さんから事情を聞くのは諦めたほうがよさそうだ。
立ち上がった時、額縁にはいった絵が目に入る。
山の絵、ありきたりな物だ。
何気なく透視してしまう。
「……あれ?」
縦長の長方形の影が見える。
おかしいな、と思って壁から絵をとってみる。
裏返すと紙が貼られてある、それは御札だった。
「ちょっと、ぼーさん呼んできてもらえませんか、麻衣さん」
「え?うん、分かった」
これは良くないものだ、知識がなくてもそれは分かる。
「どうしたんさ、真夜ちゃん」
これ、と言い指さす。
ぼーさんの顔が険しくなる。
「他には?」
「分かりません」
「一旦ベースに行こう」
ぼーさんについて階段を降りた。