私は、生まれつき、角が無かった。
なぜ私が鬼であると分かったのかは解らないが、その鬼の象徴とも言える角が無いことに気づいた時、少なからずショックを受けた。
まわりには角の無い鬼はおらず、誰が見ても分かるような形で迫害を受けた。唯一の親友と思っていた鬼も、まわりに同調し、私を避けた。生まれて間もない私は、その時点で現実の非情さを知った。
しかし、良いこともあった。角の無い私は人間から見ればただの子供であるらしく、私に親がいないと知った人々は私に優しくしてくれた。
このまま静かに人と共に人生を過ごし、静かに死んでゆく。そう思っていた。
あの時までは・・・。
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人と過ごし始めて少したった頃、ある噂が立ち始めた。
ーーーこの都に、絶世の美女が来るらしいーーー
私は一応女であり、同性愛の欠片も無かったが、気になるものである。早速、その絶世の美女が住むという屋敷へと走る。鬼である事を隠せば、友達にぐらいなれるのではないかと思っていた。
しかし、人の世界に置いても現実は非情である。
物陰に隠れ、屋敷の門を除くと、屈曲な門番がひい、ふう、みい、4人も立っている。そこらの人から見れば、どう考えても通れないと思うだろうが、人と暮らしているとはいえ、鬼である。いくら人が強くなろうとも、人が鬼には勝てないのは確実なのである。したがって、あの程度の門を突破することなど赤子の手を捻るほど簡単であり・・・、いや、力加減が出来ないので捻れば赤子は跡形もなく消し飛ぶかもしれない・・・。
ともかく、あの程度の門を突破することは簡単であるが、事を大きくしたくない上に、その絶世の美女からも怖がられるかもしれない。つまり、どうするかとなると、ズバリ、不法侵入である。しかし、今日はまだ昼であり、こんな時間から侵入しようとするならばすぐに捕まってしまうのは確実である。レッツ夜まで待機である。
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夜。
人は寝静まり、辺りは猫が数匹歩くだけで、昼からは考えられないほど寂しくなっている。まあ、人が居れば居たで困るのだが。颯爽と夜道を駆け抜け屋敷へ向かう。
昼と人は違うが、未だに門番が立っている。これだけ警備が厳重ならば、より一層期待が出来る。
軽い身のこなしで、スッと屋敷に侵入。幸いにもまわりには人はおらず、そろりそろりと美女のいる場所を目指す。具体的に場所を知っている訳では無いが、こういうものは大抵奥の方に居ると相場が決まっている・・・という会話をどこかで聞いた気がする。
ふと気づくと、一つだけ
そっと障子の破れ目から部屋を覗くと・・・、ビンゴである。スッと障子を開く。向こうの影がこちらに気づいたようである。
「お爺様?夜は入って来ないで下さいと言ったでありましょう?」
どうやら私をお爺さんと勘違いしている様だ。
「お爺様?聞こえていらっしゃいますか?」
「残念ながら私はお爺様ではありません。」
「あら・・?こんな夜遅くにお客様ですか。それも女性の。」
そう言って仕切りの奥から出てきた女性は大層綺麗であり、あんな噂が立つのも納得であった。
いや、それよりも何でいきなり知らない人が入ってきたのに驚かないのか・・。
女性は私の前にすっと座ると、
「私は輝夜と申します。あなたは?」
と言った。そうだ、そう言えば、私には名が無いのだった。
ふむ、名前、名前・・・。
「どうやら名前が無いとお見受け致します。そうですね、人の名前を勝手に決めるのも不躾ですし、一緒に考えませんか?」
・・!まさかこの人、エ〇パーか何かなのか!?
まあそんな訳は無いだろう。
「それでは、宜しくお願い致します、輝夜さん。」
「ふふ、そんなに固くならなくてもよろしいのですよ。気軽に輝夜、とお呼び下さい。」
「じゃあ、お互いに敬語を使うのを止めませんか?」
「そうしましょうか♪じゃあ、どうしましょう?」
私の名前決めはなかなかに難航したが、私はこの時間が幸せであった。ついこの間まで友達がいなかったとは思えず、それこそ永遠にこの時間が続けば良いのに・・。そう思った。
「なかなか人の名前を考えるって難しいわねぇ・・。」
「うーん・・、自分の名前を考えるって不思議な気持ち・・・。」
「あ、『優』なんてどうかしら?」
「『優』・・。気に入った!」
優。いい名前である。しかし、私はこの名前の通り、人に、人以外にも優しくできるのだろうか・・?
「出来るわよ。何たって私の友達なんだもの♪」
「さり気なく心を読まないでよ・・。」
やはり輝夜はエス〇ーなのか。
その後も、最近起こった出来事や、輝夜の屋敷での出来事など、他愛のない話で盛り上がった。
特に、輝夜に求婚してきた人たちに出した五つの難題の話は本当に面白かった。少し、その人達が可愛そうだとも思ったけれど。
「あら、もうこんな時間。そろそろ解散ね〜。」
「あ、ほんとだ。」
外を見ると、だんだん明るくなってきている。このままここに居たいのは山々だが、輝夜の家族に鉢合わせば輝夜に迷惑がかかる。
「じゃ、そろそろ帰るわ。また明日ね〜。」
「あ、明日は夜に外せない用事があるの。」
「そうなの?じゃあ明後日ね。」
「・・・。そうね。じゃあまた明後日の夜に。」
『明後日』と言った時の間は何だったのか気になったが、深く詮索しない方が良いだろう。でも、何故か私が屋敷から出る時の輝夜の顔は少し悲しそうだった。
・・・。いつになっても、この時、何故詮索しなかったのかと、その時の私を恨んでしまう。
きっとあの時、明日の夜に何かあるのかと聞いておけば・・・。
きっと、輝夜はーーー