神を破壊する大王(男)   作:ノラミミ

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ふと思いついたネタ。
細かいことは気にしないことをおすすめします。


涙の星

 荒れ果てた廃墟、抉りとられた大地、しかし、空はいつも通りに青く澄んでいて綺麗なままだ。

 

 地上にどのような災厄が巻き起ころうとも、空にはあまり関係がないのだろう。

 

 例えば、そう。

 

 アラガミなんていう異形の獣が、人間よりも気ままに地上を闊歩していようと空には関係がないのだ。

 

「ああ、この夢は……いつ覚めるのか」

 

 空を見上げて呟いた言葉は、誰に聞こえるでもなくその青さに吸い込まれていった。

 

 

 

 ――いや、訂正しよう。

 

 

 

 アラガミには聞こえていたようだ。ゴツい猿のようなアラガミ、コンゴウ。聴覚が発達しているアラガミなのだが……。

 

 ……あれ、この子ってこんな呟きが遠くから聞こえるほど耳は良くなかったよね?

 

 そんな疑問が頭をよぎったが、コンゴウには関係のないこと。咆哮をあげると同時に襲いかかってきた。

 

 振るわれる豪腕は、人の大きさなど凌駕しており、その威力も人間ではひとたまりもないものだ。それは放たれるブレス攻撃にしても同じこと。

 

 しかし、である。

 

「当たらなければどうということはない」

 

 俺はそれらの当たれば大ダメージを免れないであろう攻撃の数々を、軽やかな身のこなしで躱し、捌いていく。

 

 そう、食らうと危ないのなら当たらなければいいじゃない? ダメージなし、アラガミ破壊できる。良いこと尽くしだ。

 

 そんな脳筋思考で今日も俺は戦う。

 

 白い髪を靡かせて、赤い瞳は敵を捉える。そして振るうは軍神の剣。全てを破壊するマルスの剣である。

 

 アラガミだろうと例外ではない。

 

 飛び退りブレスを放つコンゴウに向けて走り出し、跳躍によってそれを躱すと同時に、空中で体勢を整えてコンゴウへと突きを放った。

 

 空中で更に重力によって加速を付けた一撃は、アラガミの要であるコアを完全に破壊する。

 

「ゴアアァァァァァァァッッ!!」

 

 コンゴウは絶叫をあげると地に伏した。そしてその絶叫につられてまた新たなアラガミが現れた。

 

 ――なんて迷惑な……。

 

 死に際に絶叫とか本当にやめてほしい。ただでさえ、ここら辺はアラガミが多いというのに。連戦が基本みたいな状態は全く嬉しくない。

 

 愚痴っても現実は変わりなく、仕方がないので俺はいつものようにアラガミへと駆け出した。

 

「――破壊する!!」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 転生だの転移だのとは、よく聞いたことがある。そういったことはあくまで物語だからいいのであって、実際に身の上になるのは御免被りたいものだ。

 

 まあ、そんな感じのことが自分に起きたからこんな話をしているんだが。

 

 何が起きたかって?

 

 ふと気がついたらアルテラ(男)になって、GOD EATERの世界にいた。一言で表すならこれだけだ。

 

 意味が分からない?それは俺のセリフだ。開口一番で何でだ!?と絶叫をあげたほどだ。そして声につられて現れたアラガミに殺されかけたほどだ。

 

 本当、何でだ……。

 

 自分に運などないことは自覚していたが、まさかそれがマイナス方向に天元突破してるだなんて誰が思うだろうか。

 

 確かにGOD EATERは好きだが、それはゲームとしてという前提に基づいたものであって、まかり間違ってもアラガミと実際に戦いたいだなんて思わない。

 

 そしてなぜアルテラ(男)になっている――!!

 

 世界線が違う!それにアルテラは女の子だ!

 

 そんな突っ込みをついつい入れてしまい、結局アラガミを呼び込んでしまった。

 

 学習しろ俺ェ……。てかアラガミいすぎィ!

 

 そんなわけでアルテラ(男)として日夜、アラガミ絶対ぶっ壊すマンとして戦っているわけなのだが……。

 

 声を大にして言いたい。

 

 

 

 ――休みをください。

 

 

 

 もう本当に休みたいでござる。

 

 毎日毎日アラガミアラガミアラガミアラガミ。

 

 やってられるかあぁぁぁぁぁぁ!!

 

 信じられるか?日没で数えるともう一週間たってるんだぜ?戦闘もサバイバルもしたことのない一般人の俺には、少々ハードなんではありませんこと?

 

 ならなんで戦えているのかって?

 

 それはほら、アルテラだから。

 

 男だし偽者だけどアルテラだからね、仕方ないね。いやふざけてないです本当です。戦闘になるとどう動けばいいのかが分かるというかなんというか。

 

 肉体の記憶、みたいなものだろうか。いやアルテラ女性だけど。まあ理由はどうあれ戦えるのだから、細かいことは気にしない。てかどうでもいい。重要なのはアラガミと戦って、かつ生き残れるということなのだから。

 

 それよりもサバイバルの方が問題なのだ。

 

 こんな終末世界では生き物が人間とアラガミぐらいしかいない。つまり――食糧がない。水は割りとどうにかなるのだが、食べ物がないのだ。

 

 取り敢えずはその辺の草とか木の実とかで飢えをしのいではいるのだが、これがとにかく美味しくない。不味い。でも食べないと生きていけないという負のジレンマ。

 

 そして美味しいものが食べたくて、段々とアラガミが美味しそうに見えてくる不思議。これが禁断症状というやつなのか……。

 

 とにかく最優先としては、泣く泣く不味くても我慢して食べている現状をどうにかしたい。美味しいものが食べたい。

 

 そして気が休まることのない日々を抜け出したい。

 

 そういうわけで、ゴッドイーターの皆さんを探しているのだが……。

 

 見つかるのはアラガミばかり。ここが極東のどこかなのは分かっているのだが、肝心の極東支部がどこにあるのかさっぱり分からない。

 

 どうして極東のどこかだと分かったのかは、最初にいた場所が愚者の空母だったからだ。エイジスが見えてましたしね、はい。

 

 それよりもゴッドイーターだ。もうずっと探してるのに全く見つからない。ここでも俺の運がマイナス方向に働いているというのか……。

 

 ……いや。そもそも探すのが間違いだったのだ。

 

 入れ違いになる可能性だってあるし、場所が分からないのに無闇に動いたら見つかるものも見つからない。どうやら自分でも気づかないうちに、冷静ではなくなっていたようだ。

 

 そうと決まれば愚者の空母でゴッドイーターが来るのを待とうか。ゲームの中のキャラクターに会えるのかもしれないと思うと、少しわくわくしてきた。

 

 

 

「グルアァァァァァァァァァ!!」

 

 うん……。戻ってきたら愚者の空母がヴァジュラファミリーに占領されていたでござる。そこにはヴァジュラ、プリティヴィ・マータ、ディアウス・ピターの核家族が我が物顔でのさばっていた。

 

 ――よし、消し飛ばす。

 

 俺の決意を早速邪魔してくれやがったアラガミなんぞ破壊では生ぬるい。八つ当たりだが塵も残らず消し飛ばしてくれる。

 

 軍神の剣を逆手に構えて空へと掲げる。果たしてこの荒廃した世界でこれが出来るのか。そう考えて今までは一度も使わなかったが、不思議と今は出来るという確信があった。

 

 宝具の真名解放。

 

 軍神の剣の、その真の力を今ここに。

 

火神現象(フレアエフェクト)。マルスとの接続開始。発射まで、二秒。軍神よ我を呪え。宙穿つは涙の星」

 

 空中に巨大な魔方陣が展開され、それに気付いたヴァジュラ達が各々反応を示す。が、もう遅い。

 

「消えろ。『涙の星、軍神の剣(ティアードロップ・フォトン・レイ)』!」

 

 神の怒りが極光として、地上の神を呑み込む。光の柱が晴れた時、そこには何物も存在していなかった。

 

 恐ろしい程の威力だが、これは結構疲れるな……。体への負荷も消耗も激しい。そう何度も連発出来るような代物ではないことを実感した。

 

 それより、一つ思ったのだが。

 

 最初からこれ使ってれば、極東支部が何かしら観測してここにゴッドイーター派遣してくれてたんじゃなかろうか。

 

 ……ははっ、まさかねぇ。

 

 笑えねえ……。もしそうなら俺のここ一週間のサバイバル生活はなんだったんだ……。

 

「この夢は……いつ覚めるのか」

 

 取り敢えず空を見上げて現実逃避した。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 観測班からフェンリル極東支部へ。

 

 本日正午、愚者の空母にて正体不明の極大の光の柱を確認。現場へ急行したところ、光の柱が観測されたと思われる周辺一帯が削り取られたように消失していた。

 

 また、現場にて白い人影を見たという報告もあげられている。原因究明のため、ゴッドイーターの派遣による詳しい調査が望まれる。

 

 

 


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