IS〈インフィニット・ストラトス〉宿命を変える奇跡の双騎士   作:《陽炎》

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第0章 2つの始まり
プロローグ


IS、正式名称『インフィニット・ストラトス』。

 

宇宙空間での活動を想定して作り上げられたマルチフォーム・スーツ。日本語に訳するなら無限の成層圏とた言ったところだろうか。ISが発表された当初、世界はISの存在を認めず嘲笑う意見の方が多かった。

 

それは何故か?答えは簡単、余りにもISが現実離れし過ぎていたからである。現行の兵器を凌駕する戦闘力と超音速での移動が可能という余りにも現実からかけ離れている『制作者』の話を科学や技術等の権威や宇宙開発の専門家達は真面目に耳を傾けず妄想の様な話を嘲笑い『制作者』の話をまともに聞く人間は皆無に等しかった。

 

しかしISの表から1ヶ月後、その人間達もISを認めざるを得ない事件が発生した。

世界各国のミサイル2341発が一斉にハッキングされて制御不能となり日本へと発射されたのである。世界は混乱し日本はミサイルの雨が降り注がれるという絶望の真っ只中にあった。そんな終焉の時が近付いていたその時、突然ISを纏った1人の人間が現れた。

 

白銀の鎧を纏いし騎士、顔は兜で覆われていて確認出来ないが膨らんだ乳房を守る装甲とくびれたウエストというボディラインから女性という事だけは理解出来る。その出で立ちはまるで北欧神話に登場する戦乙女(ヴァルキリー)がこの世界に降臨したのかと錯覚させた。その騎士が現れてすぐに状況が急変した。その騎士は超音速で飛翔し空を翔ると、手にした剣を振るい近代兵器であるミサイルを次々とぶった斬っていく。遠距離のミサイルに対しては当時まだ試作型であった大型荷電粒子砲をいきなり呼び出して撃ち落としていき、なんとたった1人で日本に放たれた全てのミサイルを撃墜したのだ。フィクションの世界でしか有り得ないSFの様な展開に世界は唖然とし日本の国民は未曽有の危機から救われ安堵した。

 

超音速での格闘能力、物質を粒子から構成して呼び出し、更にはビーム兵器の実現化、どれをとっても匹敵する現行兵器等存在しなかった。その突然現れたミサイルから日本を守り圧倒的な力を世界に見せつけたISは、その力を認めさせるのと同時に敵に回せば脅威とも言える存在である事を知らしめた。そのISに対し世界の対応は当然愚鈍ではない。世界各国は国際条約を無視して偵察機を大急ぎで現地へと向かわせある任務を与えた。偵察を命じられた者達に与えられた任務は『目標の分析。可能であるならば捕獲。無理なら撃滅せよ。』という任務。その当時の最新鋭の機体も数多く投入し運が良ければISを我が物にし自国の軍事力強化にと目論んだ思考が作戦の内容から見て取れる。それが駄目なら他国に渡さぬように撃滅してしまおう。その後頃合いを見計らってISの『制作者』とじっくり交渉してISを手に入れればいいと国のお偉方は考えていた。

 

だが……そんな考えをISがすぐにぶち壊した。現場に向かわせた最新鋭の戦闘機はISに全く歯が立たなかったのだ。まず第一に、戦闘機は急速な旋回を行えないがISはそれを行える。戦闘機の場合乗っている人間が急激なGに耐える事が出来ないが、ISは保護システムにより操縦者は守られているのでブラックアウトする事も呼吸困難に陥る事もない。更に搭載されているハイパーセンサーから脳に送られてくる情報によってコンピューターより早く思考と判断を行え、実行に移せるのである。

 

数時間後、たった一機のISでミサイル2341機、戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻、監視衛星8基を撃破もしくは無力化された。しかも、驚く事にこれだけの被害を出しながら、この事件で死者は1人も出なかったのである。戦闘機に搭乗していた者達から負傷者こそ出たが、世界各国の戦闘機を撃墜しながらも人命を奪わずに戦うというのは、それ即ち『相手を生かしたまま無力化して戦う余裕がある』というのを知らしめるには十分過ぎる結果である。自国の誇る最新鋭の戦闘機が自分達が嘲笑ったISたった1機に赤子の手を捻る様にあしらわれた現実から芽生えてくる屈辱、恐怖、憤り等の感情が思考を染め上げていた。

 

圧倒的戦力を見せつけられ次々とISに返り討ちにされても各国は躍起になって部隊を投入する。しかし、世界を躍起させた当のその白き騎士は日没と同時に姿を消した。忽然と姿を消しまるでその存在が夢か幻であったかの様な消失、世界に様々な爪痕を残した白き騎士は蜃気楼の様に消えていった。世界にISを知らしめその実力を見せつけたこの事件、白き騎士が世界に残した衝撃とISを嘲笑っていた者達にその力を嫌と言う程見せつけ、思い知らせたこの事件は『白騎士事件』として語り継がれ、世界を変える決定的な出来事となった。

 

 

 

 

 

あっという間に時は流れ、ISが誕生してから早10年。10年という節目をま迎えたこの年に、再び世界に衝撃を走らせる出来事が起きた。

 

「今日は話題の織斑一夏君についてです」

 

2月下旬、俺は気を紛らわせようとテレビを付け、放映されている番組を見ている、流れているのはコメンテーターを何人も集めて討論しあう番組だ。今回は世界に衝撃を走らせた少年について話している。気を紛らわせようとテレビを付けてもどのチャンネルでも同じ内容ばかりで嫌になる。もっと他に視聴者に伝えなきゃならない事は山ほどあるだろうに。

 

「まぁ、こうなっているのは俺のせいなんだけどな……」

 

番組を見てふと口にした言葉。そう、今世界中で話題になっている織斑一夏とは俺の事だ。別に大発明や世紀の大発見をした訳でも世界を震撼させる事件を起こした訳でもない。じゃあなんでこんなに話題になっているか?それは……

 

「やっぱり大変な事ですね」

 

「そりゃあそうですよ。なにせ世界で初めてですからね」

 

俺の考えを代弁する様にコメンテーター達が喋っている。コメンテーター達の言う通り、俺はある事で世界で初めての人間になってしまった。

 

「女性にしか動かせないISを男が動かせるなんて」

 

そう、俺は女にしか動かす事が出来ないIS、インフィニット・ストラトスを男で初めて動かしてしまったのである。

 

『白騎士事件』の発生以来、ISは世界中から注目され世界中の権力者達は自国の軍事力強化にと躍起になり『制作者』に交渉を持ちかけた。が、発表当初認めずに否定し嘲笑ったのを物凄く根に持っていたのか交渉は剣もほろろ、取り付く島もないといった有り様で「最初から認めておけば良かった……」という後悔の意見で溢れ返っていたとの事だ。しかしそんなISにも欠点が存在した。

 

それは『女性』にしか動かす事が出来ないという物である。その事実が公になると各国はISを動かせる優秀な女性を発見・育成に力を入れる様になっていった。その影響からかIS発表から10年という年月の中で世界は女性優遇の社会へと変化した。

 

「はぁ~……なんでこんな事に……」

 

ISを動かしたと世界中に知られてから何回吐いたかわからない溜め息を吐く。物凄くどうでもいい情報だが、確実に三桁はいっている。動かしたその日から検査検査の繰り返しの日々、学校にも行けない上に外にも出歩けない。もし出よう物ならマスコミやハパラッチの格好の餌食だ。気を紛らわせようとテレビや新聞を見ても飽きもせずに俺の話題だ。全く嫌になる。

 

『試験会場を間違えなければこんな事には……』

 

俺がISを動かし世界に衝撃を与えてしまったその日に何があったのかというと……

 

 

 

 

 

「あ~……寒い。今年1番かもな……」

 

その日は2月の真ん中、外は吐く息が真っ白になる程寒い。現在中学3年生の俺は高校受験の真っ只中で俺は身に染みる寒さを我慢して入試会場に向かっていた。

 

「何で1番近い高校の入試会場に行くのに電車を4駅も乗らなきゃならない……」

 

それもこれも去年起きたカンニング事件のせいだ。その事件のせいで今年はカンニング対策とかで入試会場を通知するのが2日前という政府の無茶苦茶なお達しがあった。そのせいで俺は1番近い高校を受けるのに電車を4駅も乗らなきゃならない。政治家とカンニングやった奴に文句の1つでも言う権利は今年の受験生全員にあると思う。なんて事を考えながら今年1番の寒さとも思える冷たさを堪え、4駅も乗り変え終えた俺は足早に入試会場へと向かう。

 

俺が受験する高校は私立藍越学園。家から1番近くて学力も中間の高校だ。特筆するならば学費が私立にもかかわらず非常に安い。それは卒業生の9割が学校法人の関連企業に就職するからだろう。

 

この就職難の時代に卒業後の進路ケアまでしてくれるのは有り難い事だ。しかも就職先が優良企業が多く地域密着型でいきなり僻地に飛ばされる心配も無い。素晴らしい高校だと思う。

 

俺には事情があり両親が居らず千冬姉という年の離れた姉が養ってくれている。幸いにも昔は周りの人々が援助してくれたし、現在は千冬姉の稼ぎがいいから貧乏ではない。しかしそれに正直負い目を感じていた俺は中学を卒業したらすぐに就職するつもりだったが姉の力……主に腕力にはかなわず高校に通う事になった俺には藍越学園は有り難い高校である。藍越学園を受験すると決めてからしっかり試験勉強の甲斐もあり模試はA判定。合格はほぼ間違いないだろう。受かれば就職は決まった様なもんだ。千冬姉に楽させてやれる。

 

「いかんいかん。此処で受かった気になって落ちたら洒落にもならん」

 

受かるまでは油断禁物だ。それで落ちたら本当に笑えん。

 

「漸く着いたか……」

 

面倒な移動を終えやっと入試会場に到着した。到着して入ったまではよかったんだ……

 

「えーっと……あれ?」

 

藍越学園の入試試験は市立の多目的ホールで行われる。私立の試験に市立の施設を借りるというのもおかしい話だが、本当におかしいのは

 

「なんだこれ?どうやって2階に上がるんだよ?」

 

この多目的ホール、構造が非常に分かりにくい。地域出身のデザイナーによる設計という地域密着型なのはいい。だがしかし、この常識的に作らない俺カッコいい的設計はよくないだろ。冗談抜きで迷路として使用出来るぞ、どう使用すればいいのかは知らんが。案内図もないから階段も入試の部屋さえ分からない。

 

「……………」

 

中3にもなって迷子……恥ずかしいにも程がある。

 

「おっ、あんなとこにドアが」

 

どうしたもんかと考えながらさ迷っていると1つのドアが目に入る。まあいい、あのドアを開けよう。もし違っても場所を聞けばいいんだ、よし決めた!なんともしょうもない決意をして目の前のドアを開けた。

 

「あー、君受験生だよね。時間押してるから急いで。此処4時までしか借りられないからやりにくいったらありゃしないわ。あっ、試験の前に向こうで着替えてね」

 

ドアを開けた途端、神経質そうな女性教師に指示を言い渡される。相当の忙しさで判断能力が鈍くなっているのか、指示して愚痴を零した後、俺の事を確認もせずパパッと指示だけして部屋から出て行ってしまった。

 

『なんだ、最近の試験は着替えてからするのか?』

 

カンニング対策かなにかだろうか?学校も大変だなぁ、って此処は藍越学園の入試場所なのか?それを確認する間もなかったし……

 

そう思いながらカーテンを開けると、そこにはある物体が鎮座していた。

 

一言で表すなら『中世の鎧』だろうか。まぁ、細部等が甲冑とは違うし、人によっては鎧という印象は抱かないだろう。しかしそれに似た『何か』が置いてある。人型に近いそれは、使用されるのを沈黙して待っている。

 

俺はこれを知っている。これは『IS』だ。

 

10年前、世界を変えた女にしか動かせない『インフィニット・ストラトス』

 

男である俺には本来余り関係ない物かもしれない。しかし俺はISとは浅からぬ縁がある。ISの『制作者』とその家族とは小さい頃からの付き合いがある。最も6年前にその家族は引っ越してそれから音沙汰無したが。

 

『それにしても、なんでこんな所にISが有るんだ?』

 

そんな事を考えながら俺は、ほんの少し芽生えた好奇心からISに触れた。男である俺にはISは動かせやしないのだから触れても大丈夫だろう。

 

しかし、ISに掌が触れたその刹那、その思考が間違いだと思い知る事になるとはその時の俺は全く予想していなかった。

 

 

 

 

 

『まさか俺が動かすなんて……』

 

触れた途端にISの全てが頭の中に流れ込んで来るような感覚、気付いたらISを動かしていた。

 

それからは世界中が大騒ぎだ。俺が男で初めてISを動かしたという事は瞬く間に世界中で報道され、ある種の時の人状態だ。あの日以来パニックになるからと1度も学校に行けず、検査の繰り返しの日々。検査が無くても外に出ようもんならマスコミの餌食。俺の自由は何処へやら……結局藍越学園の受験も出来ず仕舞いだし、もう2月の下旬だぞ。このままじゃ中学浪人だ。どうなるんだ俺の将来……

 

「彼はこれからどうするんでしょうね?」

 

「まぁ、政府としてはIS学園に通わせるつもりでしょう」

 

……何やらコメンテーター達が好き勝手意見述べているが、簡単に言うとIS学園とは、ISについてを学ぶ高校である。でだ、ISは女にしか動かせない、そのISを学ぶIS学園は必然的に女子高と何ら変わらない。そんな何処に俺が入学?と思考を巡らせているとポン、と頭に何かが置かれた。

 

「何だこれ?」

 

手に取って確認してみると、それはビニール袋に包装された衣服だった。

 

「制服だ」

 

「あっ。千冬姉、帰ってたのか」

 

「そりゃ帰ってくる、此処は私の家だ」

 

頭にあの袋を置いたのは何時の間にか帰宅していた我が姉、織斑千冬の様だ。黒いスーツにタイトスカート、すらりとした長身に、よく鍛えられているが過肉厚でなく抜群のスタイルを覗かせる黒のパンストに包まれた脚、身びいきしている訳じゃないが美人だと思う。職業は何をしているのか知らないが、普段は仕事が忙しいらしく月に1、2回しか帰宅しない。

 

「制服?何処のだ?」

 

考えが逸れない内に確認しておこう。制服と言っていたが何処の高校の制服なんだ?

 

「IS学園の制服に決まっているだろう」

 

「そっか、IS学園の……って、えっ!?だって俺まだ行くなんて……」

 

余りにあっさり説明するから納得しかけたけど、一体我が姉は何を仰っておられるんだ!?

 

「もう入学手続きは済ませておいた。あそこに入学すれば何処の国も手出しはせん、最低でも年か間は安全だ。それとも実験動物の方がよかったか?」

 

「うっ……」

 

そういう事を言われると言い返す言葉がない。

 

「彼の生体データにも注目が集まるでしょう」

 

追い討ちを掛けるように付けっぱなしのテレビからコメンテーターの意見が耳に入る。確かにこのままじゃ実験動物に就職という最悪な進路だ、ブラック企業より最悪な就職先だ。考えただけで気分が悪い。

 

「はぁー……なんでこんな事になったんだかなぁ……」

 

あれ以降何回したのか解らない後悔をする。受験勉強も水の泡だし……

 

「まぁ、そんなに気を落とすな。IS学園も普通の高校と大差ない。何処で過ごそうと日々が充実するかしないかはお前次第だ」

 

「求めよ、さらば与えられん。そういう事だ」

 

俺の事を励ましてくれているのだろう。しかし千冬姉よ、女子高に男子が俺1人というのは色々と問題が……ねぇ。

 

「流石に千冬姉詳しいな」

 

「まぁな」

 

そりゃ詳しいよな。千冬姉はISの『制作者』篠ノ之束と友人だし、元IS操縦者で国家代表、世界一という頂点の座まで掴んだ最強とまで唄われた人なんだから。

 

「IS学園かぁ……」

 

千冬姉から渡された封筒を開け、IS学園の学校案内の資料を取り出してページを開く。此処で俺は3年間過ごすのか。

 

「所で千冬姉、頼んどいた買い物は?」

 

「ちゃんと買ってきた。食材は冷蔵庫、洗剤とかは洗面所に置いといた」

 

ネクタイを緩め缶ビールをグイッと飲みながら千冬姉が答える。もう家の冷蔵庫には食材が余り無く、洗剤などの消耗品が切れかかっていた。普段は俺が買い足すんだが、こんな状況ではおちおち買い物も出来ない。だから千冬姉に買い物を頼んだのだ。

 

「じゃあ、そろそろ夕飯作るよ」

 

時刻は午後6時過ぎ、米は余裕があったのでもう研いでタイマー予約している、今から作れば7時頃には夕飯が食える。

 

「つまみも頼むぞ」

 

「ハイハイ」

 

千冬姉は昔から働いていた反動からなのか家事が出来ない。だから俺が家事の全てを担当している。

 

『さてと、何を作ろうかな』

 

IS学園に入学となれば、これから今現在より大変な事が幾度となく待っているだろう。そんな近い未来が訪れるのを覚悟した俺は、とりあえず今は夕飯を作ろう、と冷蔵庫を開けて夕飯の献立を考えるのであった。

 

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