IS〈インフィニット・ストラトス〉宿命を変える奇跡の双騎士   作:《陽炎》

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タイトル、思いつかなかったのでこれになりました……


第10話 2人目現る

「……一季だ。今日からこのクラスの一員となる者だ。これからよろしく頼む」

 

千冬姉の隣に立ち自己紹介をしたのは紛れもなく男子だった。

 

「だ、男子……?」

 

クラスの誰かがぽつりと呟くのが聞こえた。その呟きと同じ事を考えていた。だが俺はそれと同じ位気になる事があった。

 

「……俺が女子に見えるなら、視力検査する事を進める」

 

2人目の男子……一季と名乗った男子にも聞こえていたのか、そう返した。

 

『一季って……』

 

俺が気になるのはその名前だ。一季とは亡き俺の双子の兄弟の名前として両親が名付けようと決めた名前だと、昔千冬姉から聞いた。偶然だよな?そこまで奇妙奇天烈な名前って訳でもないしな、だけど……似ている、昔の千冬姉に。中学の頃の千冬姉は接触すれば切られそうな程鋭い雰囲気を帯びていて、弟の俺でさえ恐ろしいと感じる程だった。高校生になる頃には束さんとよく連んでいた影響からか大分丸くなっていたが。それ以上に思う点がある。

 

『あいつ、何処かで会った様な気が……』

 

初対面の筈だというのに、何故だろうか?初めて会ったとは思えないんだ。何なんだよ、このモヤモヤとした違和感は。

 

「2人目の男子……」

 

「それも家のクラスに……」

 

「これは夏の新刊はこれに……」

 

転校生の一季が男だとわかり、各々好き勝手に色々と述べている。所でおい、最後のはなんだ最後のは!

 

「あー、騒ぐな。静かにしろ」

 

その一言で教室は静かになる。流石は千冬姉と言った所か。

 

「まぁ、取り合えず席に着け。席はそこだ」

 

「……わかりました」

 

そう返すと一季は開いている廊下側の一番前の机へと向かい、自分の席へと座ると、視線の集中放火も特に意に介さす鞄から教科書などを取り出している。

 

「さて、転校生の事を気にする事は構わんが、それで授業に身が入らない等というのは認めないのでちゃんと授業に集中する様に」

 

その言葉に一同、はーい。と返す。丁度ホームルームも終わる時間となり、そのまま授業へと直行するのであった。

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、1組に2人目の男子が転校してきたってホント?」

 

「ホントホント!もう見た子も居るらしいよ」

 

一時間目が終わり休み時間となった途端に雑談に花咲く我が3組の教室、そんな空間の中で聞き逃せない会話が、あたしマリア・ブライトの耳に入ってきた。

 

『もしかして……』

 

あたしはその男子に心当たりがある。昨日アリーナに現れた侵入者の男、奴は男なのにISを動かしていた。同じく男でISを動かした織斑が此処に入学したって事は……自分の目で確かめよう、そう決めて廊下へ出て1組へと向かう。考えるより目にした方が早いってもんさ。にしても、凄い人数だねえ。他にやる事ないのか?って、あたしが言えたことじゃないか。大勢詰め掛けてる中でも、175cmと他の女子比べても頭一つ分は高い身長のお陰で教室内がよく見えるよ。

 

『……やっぱり』

 

廊下に一番近い列の一番前の席にそいつは座っていた。あたしの予想通り、転校生は昨日此処に侵入した男だった。いやはや、もしかしたら此処の生徒になったりして。と思ったけどさぁ、まさか本当に生徒になってるなんてねえ。

 

『にしても、誰か話し掛けたりはしないのかね』

 

クラスメートも廊下に集まってるいるのも、皆が皆して興味はあるけど話し掛けたりはしていない状態さ。まぁ、何となくその理由はわかる。怖いんだろうね、雰囲気とかさ。まったく歯痒いなぁ、よし、昨日の事もあるしあたしが話し掛けてみるかな、と思ってたら既に織斑イチカが話しかけていた。

 

 

 

 

 

「……………」

 

授業は終わり今は休み時間という物らしい。授業には問題なく付いていけた、次の授業の準備を済ますと、やる事もないので他の教科書を読む事にする。何せ廊下は生徒が押し掛けて此方を凝視している。他にやる事がないのだろうか?

 

「彼が2人目の男子?」

 

「なんか……暗そうね」

 

「ちょっと怖いかも……」

 

俺を見て好き勝手な意見を述べている。明るくはないので暗いというのは否定はしないが、怖いとはなんだ怖いとは。人を妖怪みたいに。

 

一季は失敬だと感じているが、伸びに伸びた黒い髪に、余裕で目に掛かりまくっている前髪と顔の左側を覆う包帯、本来は整っている顔立ちもそれらで隠れてしまっており、顔立ちがはっきりと伺えないのだ。その容姿を見て日本妖怪の貞子に見えると漏らしていた。男なので貞子というより貞男といった方が正しい気もしなくはない。

 

「えーと、ちょっといいか……?」

 

教科書を読んでいると奴が、織斑一夏が話し掛けて来る。何の用だ、一体。教科書をパタンと閉じて奴と向き合う。

 

「……何か用か?」

 

「いや、用って程じゃないけどさ。一応挨拶をって思って」

 

そんな事か、貴様など今更自己紹介されるまでもない。此処に居る全員貴様の事を知っている。

 

「俺は織斑一夏、よろしくな」

 

「……知っている」

 

貴様の名前など今更教えられなくてもわかっている、忘れようにも忘れられない名前だ。

 

「……さっきも言ったが一季だ」

 

奴相手だが、一応は名乗り返しておく。我ながら愛想も素っ気ない返答で返したものだ。

 

「……それで、用はそれだけか?」

 

「あぁ、これと言って用はないけど……」

 

「……なら、もういいだろう。用がないなら俺が貴様と話す義理はない」

 

そう吐き捨てて、先程まで読んでいた教科書に目を通すのを再開する。すると奴は軽く焦りながら話し掛けてきた。

 

「いや、そのさ……此処俺達以外男子がいないから話し相手になってくれないかな~って」

 

「……知った事か。他を当たれ」

 

「他が女子しか居ないからお前に話し掛けてるんだよ。てか、お前はこの雰囲気何とも思わないのか?」

 

「……思わないな」

 

淡白な返答を返し続ける。周りで女子生徒達が此方のやり取りを見てワイワイ騒いでいるが、一体何処に騒ぐ要素があると言うのか。

 

世の中、男同士で会話しているだけで妄想の糧と出来る人種が存在している事を一季が知る筈もなく、軽く流している。知ったらどうなる事か、間違いなく現在の様な落ち着きは消え失せるだろう。

 

「何とも思わないのか?こんな動物園の珍獣みたいな、丸で見せ物だぜ……」

視線を廊下に向けてみる。確かに生徒が大勢押し掛けており、差し詰め俺達は見物で他はそれ目当ての見物人と言った所か。その小規模な群集の中に昨日遭遇した生徒の姿も確認出来た。

 

「……実際そうだろう。俺達は女にしか動かせないISを動かしたイレギュラーな存在、珍獣扱いされても不思議な事じゃない」

 

「そりゃあそうだけどさ、俺は昨日からずっとこれだぜ。ったく、何時まで続くんだか……」

 

奴は昨日から見せ物扱いらしいが、何の同情も湧かない。実験動物以下の扱いだった俺からすれば、見せ物など遥かにマシだ、甘ったれた事を抜かしている。

 

「……だったら慣れればいいだろう。それで全て解決だ」

 

「いや、確かに言う通りだけど……お前スゲーな。この状況で全く動じてないなんて」

 

見せ物扱いで動じて等いたら、ここから先を生きていけるか。

 

「……この程度でうろたえている貴様が軟弱なんだ、もっと自分の立場を理解して精進しろ。でなければ此処で暮らしていく事など出来はしない」

 

「……そうだよな、いつかこれにも慣れるだろうし。ありがとな、お陰で休み時間潰せたぜ」

 

その言葉を聞き時計を見てみると、休み時間は残り1分弱だった。何時の間に……何故こんな奴との会話で休み時間を費やさねばならない。

 

「じゃあ、また次の休み時間でな」

そう言って無駄に爽やかな表情でヤツは自分の席へと戻って行く。おい、誰が次の休み時間も相手になると言った?おい!

 

キーンコーンカーンコーン

 

ちっ、授業再開を告げる予鈴が鳴り心の中で舌打ちを付く。まぁいい、次の休み時間になったら直ぐに何処かへ行こう、そう決めて授業に望む事にした。

 

「これは……爽やかなイケメンが素っ気ない根暗系男子を口説く展開……!」

 

「最初は素っ気ないけど、次第にツンデレになってそして……夏の新刊はこれね!」

 

予鈴が流れ、各々がクラスへ戻る最中、一夏と一季の会話する光景を見て腐った会話が聞こえ「薄い本が厚くなるねえ……」と、苦笑いを浮かべながらマリアも自分の教室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

2時間目の授業が終わると同時に教室から出て何処へ行くかと思っていた所、この屋上へと続く階段を見つけそれを登った結果的屋上に辿り着いた。緑の芝で覆われ、綺麗に配置された花壇には色とりどりの花々が咲き誇っている。いい場所だ、風が心地良い。

 

「広いな……」

 

IS学園は島1つが学校というだけあって敷地が広い。見渡せる設備がこの学園の物なのだ、俺もこれらを利用する日がいずれ来るのだろう。そして地平線の先まで広がっている空と海、見ていて飽きがきそうにない位綺麗な景色だ。

 

「ちょっといいかい?」

 

屋上には俺1人だけだった筈だが、誰か来ていたのか。俺に話し掛ける等物好きな……ん?この声……聞いた覚えが。そんな感覚を抱きながら振り返るとその感覚は当たっていた。

 

「昨日振りだね。侵入者さん」

 

その声の持ち主は、昨日此処で初めて会った女子生徒だったのだから。昨日と同じく上着を着崩しているが、ベルト部分は取り付けられている。女子の制服は俺達男子と違いズボンではない筈だが、それを穿いている。女子の穿いているあれ……なんだった、あれの名前?

 

「……あぁ、昨日振りだな」

 

何の用なのだろうか?昨日の事で文句でも言いにきたのか?

 

「そんな気構えるなよ。あたしは只単にアンタと話がしたいだけさ」

 

「……そうか」

 

……この状況、余りよろしくない。俺は異性と接した事などまるでない、昨日姉さんと山田先生と会話するので精一杯だったんだ、ましてや同世代の女子となど話をした事が昨日が初だぞ。

 

「男でISを動かしていたから、もしかしてって思ったけど……まさか侵入者が本当に此処の生徒になるなんてねえ」

 

「……別に好きで侵入したわけじゃない」

 

「へえー、じゃあなんであんな侵入の仕方なんてしたのかねえ?」

 

……言えん、整備不足でPICに異常が起きてそのまま落下したなど口が裂けても言えん。誰があんな侵入をする、やるならもっとマシな方法を模索する、あんな侵入を思い付いたら只の馬鹿だ。

 

「ふーん」

 

いかん……完全に向こうのペースだ。話題を変えなければ。

 

「……そういえば、足は大丈夫なのか?」

 

「えっ?あぁ、軽く捻っただけだから2、3日で直るよ」

 

「……そうか」

 

「なんだ、心配してくれるのか?意外と優しい所あるんだねえ」

 

……何故よりにもよってこの話題を振った、俺の阿呆。

 

「……その、本当にすまない」

 

軽い怪我で済んだから良かったものの、それでも罪悪感は湧いてくる。もう一度しっかり謝りたいと思っていた。

 

「いいって、いいって。あっ、そういえば自己紹介がまだだったね。あたしはマリア・ブライト、アメリカの代表候補生さ。よろしく」

 

「……一季だ。よろしく頼む」

 

その事ならもういいよと言う様に軽く許すと、その生徒、マリア・ブライトが自己紹介をしてきたので此方も自己紹介をする。

 

「イツキ、か。名字は?」

 

「……ない」

 

「ない?」

 

「……生憎名字はない。名前だけだ」

 

嘘ではない。本当にないのだから。今朝まで名前さえなかったのだ、そんな人間に名字がある訳もない。

 

「……そっか。アンタ、苦労してるんだね」

 

察してくれたのか、ブライトはこれ維持深く詮索してこなかった。

 

「……察してくれて助かる」

 

「礼を言われる事じゃないよ。誰にだって触れられたくない事があるってもんさ。そうだろ?

 

「……あぁ。その通りだ」

 

話のわかる相手で助かった、過去は詮索されるのは余り好きでないからな。

 

「さてと、もうそろそろ教室に戻ったほうがいいねえ」

 

「……そうだな」

 

まだ休み時間ではあるが箇々から教室まで距離がある。早めに戻っておいた方が得策だ、何せ俺のクラスは担任が姉さんだからな。遅れたらどうなるか……それはわからない、しかし遅れてはならないという感覚が俺の中に芽生えていた。俺とブライトは教室へ戻ろうと、歩を進めていく。教室に近付いていくにつれ生徒の姿が増していき俺達を見るなりひそひそと話している。

 

「……全く、他にやる事がないのか?」

 

「仕方ないよ、あんたと織斑は此処に2人しか居ない男子なんだからさ」

 

「……そんな事は十分理解している。だが、俺達を鑑賞して何が楽しい?」

 

こんなのを鑑賞しても何も得る物などないだろうに。

 

「まっ、世界に2人しか居ない男でISを動かした存在なんだ、一度はどんな男か目にしておきたいんだよ」

 

「……そういう物なのか?」

 

「そういうもんさ。暫くは続くよこの状態」

 

「……………はぁ……」

 

少し間を置き溜め息を吐く。認めたくはないが、奴が溜め息混じりに言っていた愚痴を俺も言いたくなった。

 

「じゃあ、あたしは此処で」

 

3組の目の前に辿り着いた事でブライトとの移動は此処までだ。といっても、此処から1組まで時間にしてみれば30秒もかからない。

 

「じゃ、頑張れよ!」

 

「あぁ……」

 

励ましにそう短い返事を返して俺も教室へと歩むのを再開する。もう少し気の利いた返事が出来ないのか、我ながら愛想のない返事だ。

 

その後、教室に着いた一季は授業の準備をしてそのまま問題なく授業へと入ったが、一季と話していたマリアは、担任が来るまでクラスメートに質問責めにされる羽目にあったのだった。

 

 




という訳で、授業の描写がなく、休み時間の描写が中心となった今回ですが、

一季、一夏と意外と会話しました。まぁ、全く愛想のない返答ですが、それでも腐った妄想をされるという……知ったらどうなる事やら。

そして屋上でマリアと会話をしますが、さっき一夏に偉そうに言ってたの誰だっけ?とツッコミたくなるような事に、完全に女の子相手に戸惑ってます、だって同世代の女子と会話したのマリアが初めてですから。

では、また次回。
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