IS〈インフィニット・ストラトス〉宿命を変える奇跡の双騎士   作:《陽炎》

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最初に謝っておきます。オルコッ党の皆様ごめんなさい!


第11話 怒りと後悔

3時間目の授業に突入し、当然の如く授業は進んでいく。山田先生は時折詰まりながらも俺達生徒にISの基本知識を教えている、最も俺はこの程度の知識なら十二分に把握しているのだが、ちゃんとノートは取っている。

 

「という訳で、ISは宇宙での作業を想定して作られているので、宇宙空間でも特殊なエネルギーバリアが操縦者の全身を包み込んで守っています」

 

ISの事なら何年も叩き込まれてきたのでこれも理解している。元々は宇宙空間での作業を想定して開発されているのだ、操縦者の肉体を保護するのは当たり前の事だろう。

 

「生態機能を保護する役割も兼ね備えていて、常に操縦者の肉体を安定した状態に保たせます。これには心拍数、脈拍、呼吸量、発汗量、脳内のエンドルフィンなどがあげられており……」

 

「先生、それって大丈夫なんですか?なんだか体の中を弄られてるみたいで怖いんですけど……」

 

クラスメートの1人が不安そうに尋ねる。ISを動かした際に体感する独特の一体感は不安を覚える物なのかもしれないが、そんな物、非合法の実験で肉体を弄られるよりかは遥かにマシだ。

 

「そんなに難しく考える事はないですよ。例えるなら……皆さんはブラジャーをしていますよね。あれはサポートこそしても体に悪影響を与えたりはしませんよね。勿論自分に合ったサイズでなければ型崩れしまいますが……」

 

ここまで話して山田先生が俺と奴を見る。目が合って数秒後に顔が赤くなる。

 

「あっ、えっと、いや、その……織斑君と一季君はしていませんからわからないですよね、この例え。あは、あはは……」

 

何やらごまかした笑いが、妙な空気が漂う教室に虚しく響く。山田先生の言う通り今の例えは全くわからない、そもそもブラジャーとは何なんだ?俺より女子達がその発言を意識しているのか、腕組みをして胸を隠そうとしている。……………何となく、何となくだが俺の苦手な話題だと思えてきた。

 

『なんだ、この変にまずい雰囲気は……』

 

落ち着きたくても落ち着けない。この気まずさの中では居心地がよくない。

 

「んんっ!山田先生、授業の続きを」

 

「は、はい!」

 

咳払いでこの妙な空気を一掃するとは、流石は姉さん。これがブリュンヒルデの成せる技……ではないな。

 

「そ、それともう1つ大事な事は、ISにも意識に似た物があり、一緒に過ごした時間で分かり合うといいますか、操縦時間に比例してISも操縦者を理解しようとします」

 

その言葉に制服の下で首からぶら下がっている悲劇の復讐者に意識がいく。お前も俺の事を理解しようとしているのだろうか?

 

「それによりお互いが理解して、より性能を引き出せる事になるという訳です。ISは道具ではなく、あくまでパートナーとして認識してください」

 

「先生ー、それって彼氏彼女みたいな関係ですかー?」

 

今の説明にすかさず女子が反応し山田先生に問う。

 

「そ、それはあの……ど、どうでしょう。私にはそういった経験がないのでわかりませんが……」

 

その経験とは恋仲になった事がないという意味だろう。俺にもわからない、言葉の意味やそれがどういった物なのかはわかるのだが、どんな心境になるのかわわからない。赤面している山田先生を余所にクラスの面々はきゃいきゃいと男女関係での雑談をしている。姉さんが居るこの空間でよく授業中に雑談など出来るものだ。

 

「……なんですか?山田先生」

 

「あっ、いえ。なんでもないですよ!」

 

何やら山田先生が奴をジロジロと見ている。それに気付いた奴に尋ねられ慌てふためいていた。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「え、えっと。次の時間では空中におけるIS基本制動をやりますからね!」

 

そう言って山田先生と姉さんは職員室へと戻って行く。休み時間となったこの教室は先程の雑談の続きが飛び交っている。……なんだ、この甘ったるい空間は。教室に来てから感じるが、雰囲気だけではなく、実際に甘さを感じて胸焼けを起こしそうだ。こんな感覚今までに経験した事がない、これは……正直此処で暮らしていく事を舐めていたな。奴は女子達に囲まれて質問責めに遭っているが、何故か俺には誰も寄ってこない。また屋上に行くか、と席を立とうとした所

 

「ちょっとよろしくて?」

 

世の中物好きは居るらしく、奴ではなく俺に話し掛けてきた。

 

「……何か用か?」

 

「まぁ、なんですのそのお返事は。わたくしに話し掛けられたのですから、それ相応の態度という物があるのではなくて?」

 

鮮やかな金髪と透き通る青い瞳を持つ女子が話し掛ててくるが、なんだコイツは。初対面の女子にこんな偉そうな振る舞いをされなければならない。と思ったが……女性優遇の社会になっていればこういう奴が居ても可笑しくはないなと結論付ける事にした。

 

「………悪いが、俺はお前の事など知らん」

こういう時俺の愛想の無さが役に立つ。実際こんな奴は知らない。何処の誰なのかも興味がない。

 

「知らない?このセシリア・オルコットを?入試主席にしてイギリス代表候補生である、このわたくしを!?」

 

目の前の女子、セシリア・オルコットが噛み付いて来そうな勢いで話してくる。

 

「知らないと言っているだろう。何度も言わせるな」

 

他の人間が自分の事を知っていて当然とでも思っているのか?

 

「……信じられませんわ。常識ですわよ、常識。全く、これだから男は……」

 

「ブツブツと煩い奴だな。自分の存在が万国共通の常識だとでも思っていたのか?身の程をわきまえろ」

 

「なっ!?」

 

思わず毒を吐いた様な言葉を口にしたが後悔はしていない。こいつは自分の事を過大評価している、そう感じた。

 

「あ、貴方ねえ!わたくしを侮辱していますの!?」

 

「事実を言ったまでだ。代表候補生とはそこまで初対面の人間に偉そうに振る舞える程偉いというのか?」

 

先程、代表候補生のブライトと話したが、あいつはこんな自分の立場を鼻にかけた振る舞いや言動などしていなかった。こいつは明らかに俺を、いや。男という存在を見下している。

 

「当然ですわ、わたくしはエリートなのですから偉いのは当然の事。貴方や織斑さんは偶々ISを動かしただけで此処に居る場違いな存在。比べるまでもありませんわ」

 

「そうか、エリートというのは偉いから自分より劣る存在を見下してもいい身分なのか。随分ご立派な身分な物だ」

 

「……馬鹿にしていますの?」

 

「さあな、誉めていないとだけ言っておこう」

 

売り言葉に買い言葉とはこの事である。この2人のやり取りを見て昨日の件を思い出していたクラスメート達も今日は穏やかではないと察し始めて来た。受け流していた一夏と違い、一季は臆する事なく言い返してる。雰囲気は悪くなる一方だ。

 

「言わせておけば……」

 

思い切り睨みを利かせているオルコットだが、そんな物で俺が臆するとでも思ったか?

 

「……ふぅ。まったく、少しは知性を感じさせる方かと思いましたが、みずほらしい外見通りの中身のようですわね」

 

「ほざいてろ。お前に罵られても腹も立たんわ」

 

怒りが一回りして冷静になったのか落ち着いて嫌みを言ってくる。悪かったな、身嗜みなど気にして生きていける余裕などなかったものでな。向こうはこの発言に不愉快そうだが知った事か、不愉快なのは此方も同じだ。

 

「まぁまぁ、2人共。その辺にしておけって」

 

この現状を見かねたのか、俺達の間に奴が割って入ってくる。

 

「貴方は関係ないでしょう。口を挟まないでくださいます?」

 

「別にお前に仲裁して貰う必要などない。こんな奴適当にあしらうだけだ」

 

「おいおい……」

 

ちっ、何故休み時間をこんな無駄な事に費やさねばならない。実に無駄な時間な使い方だ。

 

「そもそも貴方達は礼儀という物がなっていませんわ。このわたくしに話し掛けられるだけで幸運だという事を少しは理解してくださる?」

 

「お前の様な傲慢な奴に話し掛けられるのが幸運ならば、不幸で構わないから話し掛けるな。生憎俺はお前みたいな傲慢な人間に礼儀を払いたくはない」

 

「くっ、この……!」

 

こんな奴に礼儀正しく振る舞わねばならない理由が何処にある。礼儀なら多少はわきまえているが、こんな奴に使いたくはない。

 

「……もういいですわ。1人でポツンとしているから折角わたくしが話し相手になって差し上げようとしたのに、その心遣いを無碍にするようや無礼な男だったなんて、時間の無駄でしたわ」

 

「時間の無駄?それはこっちの台詞だ。貴様のせいで休み時間を不快に過ごす羽目になった。まだこいつと話していた方がマシだ」

 

「まぁ、わたくしより極東の猿と話す方がいいだなんて。もういいですわ、猿同士仲良くしてください」

 

そう吐き捨ててオルコットは自分の席へと戻っていく。全く、本当に無駄な時間だった。

 

「……お前も席に戻ったらどうだ。もうすぐ授業が始まるぞ」

 

「あ、あぁ……」

 

奴に八つ当たりするかの如く言い放ち授業の準備をする。そして数分後、予鈴が鳴り姉さん達が教室へと戻って来た。さて、授業に身を入れるか。

 

「ところで織斑、お前のISだが、準備まで時間がかかる」

 

「えっ?」

 

「予備機がない。だから少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

姉さんのその一言で教室がざわめき立つ。奴に専用機……何の苦労もなく専用機を。

 

「せ、専用機!?1年の、しかもこの時期に!?」

 

「つまり政府からの支援が出るってことで……」

 

「いいなぁー。私も早く専用機欲しいなぁ」

 

クラスメート達から驚きと羨みの声が挙がる、それもその筈だ。現在多くの国や企業で日夜研究に開発が行われているISだが、その中心たるコアは完全なブラックボックスとかしている。現在世界中に存在しているISの総数は467機、その全てのコアを作り出したのは篠ノ之束博士。そしてコアを製造する技術は一切開示されておらず、篠ノ之博士も一定数以上のコアの製かた頑なに拒み現在は行方不明であり国際手配されている。つまり篠ノ之博士以外コアを作れず当の本人も作る気がないのでこの限られたコアを国家、企業、組織、機関に振り当て、それを使い研究や開発に使用しているのだ。コアを取引する事はアラスカ条約第7条に接触し全ての状況下で禁止されており、何処限られたコアしか使用出来ない現状だ。専用機はそんなISの中でも限られた者にしか与えられない機体なのである。

 

「本来なら専用機は国家若しくは企業に所属する人なにしか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なのでな。データ収集を目的として専用機が用意される事になった」

 

「成る程、わかりました」

 

要するに奴は例外中の例外である貴重な男のIS操縦者のデータを収集する為の実験体だ。最も例外なのは俺も同じだ、しかも既に専用機を所有している。

 

「あの、先生。篠ノ之さんってもしかして篠ノ之博士の関係者なんですか……?」

 

女子の1人が手を挙げ質問する。……居るのか?このクラスに篠ノ之博士の関係者が。

 

「そうだ、篠ノ之はあいつの妹だ」

 

あっさりと姉さんは口にしているが、かなりとんでもない事実だぞ。篠ノ之博士の妹がこの学園に、しかも同じクラスとは……世の中狭い物だ。

 

「えええー!す、凄い!このクラス有名人の身内が2人もいる!」

 

「しかも、今日2人目の男子も来たし……」

 

「ねえねえ、篠ノ之博士ってどんな人?やっぱり天才なの?」

 

「篠ノ之さんも天才だったりする?今度ISの操縦教えてよ!」

 

授業中、しかも目の前に姉さんがいるこの状況でよく席を離れてわいわい喋れるな。山田先生、おろおろしてないで注意をしてください注意を。貴方教師でしょう、そうには見えませんけど。

 

「あの人は関係ない!」

 

突然、大声が耳に入る。これは姉さんの物ではない

、篠ノ之博士の妹の物の様だ。

 

「……大声を出してすまない。だが私はあの人じゃない。教えられるような事は何もない」

 

そう言って篠ノ之は窓の方を向く。篠ノ之に群がっていた女子達も気分を削がれたのか席へと戻っていった。人には触れられたくない過去がある、篠ノ之もそうなのだろう。その後は普通に授業へと突入し、問題なく授業が進んでいった。

 

 

 

 

 

「安心しましたわ。まさか訓練機で戦おうなどとは思っていなかったでしょうけど」

 

授業が終わるとオルコットが奴に絡んでいた。俺達にあんな振る舞いをしておいて何故絡むのか、あいつも話し相手が居ないのではと思えてくる。話の内容が見えないがあの2人は戦うのか?事情がさっぱり把握出来ん。

 

「……少しいいか?」

 

「えっ!?な、なにかな……?」

 

意を決して一季は後ろの席の女子、相川清香に話し掛けて事情を聞いてみる事にした。しかし話し掛けられると思っていなかった清香は驚きと一季を少々怖いと思っていたからか対応が少しおどおどしている。そんな対応を受け一季は「……何も怖がる必要ないだろう、話し掛けただけだというのに。俺だって結構勇気出して話し掛けたんだぞ」と内心思いつつも話を進める。

 

「………あの2人、織斑とオルコットが戦うとか話しているが、どういう事だ?」

 

「えっと………それはね、昨日クラスの代表を決める事になったんだけど、決まらなくて。1週間後に2人が戦って、勝った方がクラス代表という事に……」

 

……成る程。この説明を聞いて、なんとなくだが事情が見えてきた。

 

「………つまり、このクラスの代表を決める時に男の織斑を代表にしようとしたら、それにオルコットが反発して譲らず、その結果戦って勝った方がクラス代表にという事に話しが纏まった。という事か?」

 

「えっ!?なんでそこまでわかるの?だって私、そこまで詳しく説明してないよ?」

 

「……このクラスの雰囲気とオルコットの性格から推測した結果だ」

 

そんなに驚くとは、そこまで推測通りの展開だったのか?別にこんな推測当たってもさほど喜べないんだが。

 

「なにせ、このわたくしセシリア・オルコットはイギリス代表候補生、そうつまり……現時点で専用機を持っていますの!」

 

ビシッとポーズを取って格好付けている所悪いが、専用機なら俺も持っているぞ。そうオルコットに言ったらどうなるか、面倒事になるのは確かだ。

 

「そうなのか。そういえば……一季は専用機とかどうなってるんだ?」

 

絡まれていた奴が俺に話を振ってくる。貴様、自分は専用機を与えられたが俺はどうなのだろう?という気持ちでこの話題を振ったのだろうが……俺まで巻き込むな、いい迷惑だ。

 

「……持っている、と言ったらどうする?」

 

「えっ?まさかもう持ってるのか?」

 

「そんな……有り得ませんわ!世界に467機しかないISの中でも、専用機はほんの僅かの限られたエリートにしか与えられない物ですわよ。それを……」

 

今の発言を聞いてか、教室内がざわついている。教室内どころか廊下にも伝わったらしく、廊下のにもざわめきが起きている。少し思わせ振り過ぎたか。

 

「それで、持っていますの?いませんの?はっきりしてください!」

 

此方に近付いて来て机を勢い良く叩くオルコット。おい、俺の机だぞ、迷惑な。

 

「……耳元で騒ぐな。そんなに見たいなら見せてやる」

 

制服を胸元まで緩め、続けてシャツのボタンを3つ外す。何やら女子達が顔を赤くしながら胸元を見ているが気にせずにおく。鼻息が荒い女子も居たが気にしない、寧ろ気にしたらいけない。そんな感覚を覚えた。そのまま鎖部分を持ち上げると、悪魔を象ったかの様な黒い装飾がシャツから顔を出す。これが俺の専用機、悲劇の復讐者の待機形態。悪魔を象ったデザインのネックレスだ。

 

「ほ、本当に専用機持ちだなんて……」

 

「うわぁ、もう専用機持ちなんだ……」

 

「けど、デザインが悪趣味な気も……」

 

オルコットは俺が専用機を所有していると理解すると、驚きを露わにしている。他の面々も同様だが、誰だ?待機形態が悪趣味だと?ISは一度フィティングすれば、アクセサリーの形状で待機するが、どんなアクセサリーになるかは決められないのだ。悲劇の復讐者も待機形態にしたらこのデザインのアクセサリーとなったんだ。それを悪趣味だと?何処が悪趣味なんだ、中々のデザインだろうが。

 

「……で、もう気は済んだか?」

 

4時間目が終わり、昼食を取る為にこの休み時間は長い。それをこんなやり取りに費やしたくはない。

 

「お待ちなさい!まだ話は終わっていませんわ!」

 

「……だったら早く済ましてくれ。昼食を取る時間が減る」

 

普段は余り腹は減らないが、慣れない学生生活を過ごした上にこの特殊な環境に戸惑って今日は腹が減っている。早い所昼食を取りたい気分なんだ。

 

「決闘ですわ!」

 

「……はぁ?」

 

今、決闘と言ったな。間違いなく。

 

「決闘と申したのですわ!先程の礼儀を弁えない態度や振る舞いといい、男がISを動かしたというだけで何の努力もせずに専用機を持つだなんて……」

 

「黙れ……!」

 

「っ!?」

 

今なんと言った?こいつは俺が何の努力もせず、男でISを動かせるというだけで専用機を手に入れたと抜かした。ふざけるな!

 

「貴様に俺の何がわかる?何の努力もせずにだと!?勝手な事を抜かすな!」

 

激昂している俺に多数の女子が怖がったり怯えたりしている。悪いがその面々に配慮出来そうにない。

 

「お、落ち着けって。セシリアも言い過ぎたぞ」

 

「言い過ぎ?事実でしょう。貴方達は偶々ISを動かした男という事に変わりは……」

 

奴が俺を宥めようとするが。そんな物で抑えは効かない。寧ろ今のオルコットの言葉に更に腹が立つ。

 

「こんな奴と一緒にするな、こんな奴と同類扱いなど侮辱以外の何物でもないわ!」

 

「なっ……そこまで言わなくても……」

 

今の発言が少し癪に触りはした様だが、それでも奴は俺を宥め続ける。

 

「引っ込んでろ!これは俺とこいつの問題だ。邪魔するな!」

 

服を剥ぎ取るかの如く、奴を払いのける。

 

「いいぞ、オルコット。その決闘受けたってやる」

 

こんな奴からの勝負から退くなど、屈辱でしかない。逃げる理由など端からないしな。

 

「あら、威勢だけはよろしいのですね。それに免じてハンデを付けてあげてもよろしくてよ」

 

「どこまで俺を下に見ている?貴様にハンデを貰うなど屈辱でしかない。専用機持ち同士、条件は五分五分だろう。それとも、負けた時にハンデが合ったからとでも言い訳したいのか?」

 

「わたくしが負ける?貴方の様な男に?あははっ、冗談は存在だけにしてください」

 

どうやらとことん俺を下に見ているようだな。その驕りが命取りになるぞ。

 

「そこまで威勢よく啖呵を切ったのですから、もしわざと負けるようであれば、わたくしの小間使い、奴隷にしますわよ」

 

「……何だと」

 

今、なんといった……?こいつは今……なんと抜かした!?

 

「まぁ、みずほらしい貴方には奴隷は丁度いい身分……」

 

「おい!流石に言い過ぎだ……」

 

ベキッ!

 

流石に発言が行き過ぎていると一夏がセシリアを止めようとするが、その言葉を言い終える前に、何かが壊れる音が教室に響く。

 

「……………けるな……!」

 

一同がその音の発生源であろう場所を見ると、そこには背もたれの一部分が砕ける様にへし折れており、残骸としかした一部分が床に散らばっていた。

 

「ふざけるな!」

 

誰がどう見ても激怒しているのがわかる怒りを露わにしている一季。怒りの余り、背もたれに置いていた左手を握り締めた結果、背もたれが破損してしまったのである。背もたれが脆いのではない、他の学校では見られないであろう丈夫な椅子の背もたれを人間が素手で壊すなど無理だ。一季が『普通の人間』ではないからこそこの現状とかしているが、その事を知るのは一季しかいない。

 

「貴様……黙って聞いていればいい加減にしろよ、奴隷にするだと?浅はかな事を抜かすも大概にしろ!」

 

「ひっ……!」

 

先程までの余裕に振る舞いは消え失せて、今のオルコットは完全に此方に怯えている。だが、そんな事知った事か。みずほらしい?先程は少々癪に触った程度だが、今回は違う。奴隷に身形を整える余裕が、それを訴える権限などある訳がない。 こいつは……俺達奴隷だった者達全員を侮辱したも同じだ!

 

「貴様みたいな身分を盾に偉そうにしている人間にはわからないだろうな!人として生きる権利も、自由も、尊厳さえ奪われ虐げられて生きていく事を強要され、使い捨てられる人間の苦しみなど!」

 

奴隷時代は後の地獄に比べたら幾分かはマシだった。俺を励ましてくれる人達も居た。だが、皆苦しく、辛い日々を耐えて生き延びていたんだ!酷使されて命を落とした人も、劣悪さに耐えられずに自ら命を絶った人も見て来た。そしてもう皆は……皆は……!

 

「セシリア・オルコット!貴様は俺を本気怒らせた、必ずこの手で叩きのめす。決闘の時まで、首を洗って待っていろ!」

 

そう言い放ち教室を後にする。廊下に集まっていた生徒達も俺を避ける様に距離を取る。今の件で完全に恐怖感を植え付けてしまったようだ。

 

「……………くそっ!」

 

オルコットへの怒りか?初日から自分で居場所を無くす振る舞いをした愚かさに対する後悔か?こんな冷静を欠いた思考では答えなど導けない。今の俺にはそんな不快な感情をこの一言で吐き捨てて、逃げる様に移動するしか出来なかった。

 




という訳でセシリアが一季の逆鱗に触れてしまいました。少々セシリアを悪く描写し過ぎたかな、と思わなくもないです。一夏に奴隷とか言ったなら一季に言っても不思議じゃないなと書いた結果がこれです。本当に奴隷として虐げられてきた一季には許せない暴言だったんですよ。

痛っ!ごめんなさい、オルコッ党の皆様!ごめんなさい、謝りますから、ちゃんとセシリアの名誉挽回や活躍とか書きますから石投げないで!

……活躍が何時になるのかはわかりませんが。

で、ではまた次回!
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