IS〈インフィニット・ストラトス〉宿命を変える奇跡の双騎士   作:《陽炎》

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今回は少し手間取りました。


第13話 bright

空を見上げれば見事なまでの晴天。青空と雲のコントラストが見渡す限り広がっており、眩しく輝いている太陽の光と暖かさが大地へと降り注いでいる。こうした晴れ晴れとしている青空の下ならば屋内で食事を食べても気分が弾むだろうが、外で自然を直に感じながら食事を取るというのも一瞬の風流である。ここまでの晴天ならば世界中で大勢の人々が外で昼食を食べている事だろう。カフェテリアであっなり、公園であったり、屋上であったりと場所と気分にもよるだろうが、此処IS学園の屋上でも昼食を食べている面々はいる。生徒は一季とマリア、そして用務員の十蔵という3名が屋上で昼食を食べていた。人数が少なくも感じなくもないが、多くの生徒はもう1人の男子である一夏が学食に向かったからか其方で食事を取っているのか、本日屋上で昼食を食べているのは前述した3名となっている。

 

「……ご馳走さまでした。お弁当、美味しかったです」

 

「そうですか、それはよかった」

 

昼食を食べ終わって空腹も満たされたイツキは轡木さんに昼食をご馳走になった事に礼を述べていた。あたしはというと、まだベーグルを頬張っているところだ。天気がいいから屋上でお昼食べようと思って来て見れば、まさかイツキが用務員の轡木さんとお一緒にお昼ご飯食べると知った時は内心驚いたよ。いや、同じ男子同士で織斑と一緒ってならわかるけど、用務員のおじいさんとご飯食べるって選択肢は普通ないぞ。まぁ、イツキは異性と接するのが得意じゃなさそうってのはさっき話した時に薄々感づいてはいたし、織斑と話してた時も……なんかこう話し掛けてくるから渋々話していたって感じだったからなぁ。多分人と接するのがあんまり得意じゃないんだろうねえ。しかし屋上からの眺めは絶景だなぁ、座っててもいい景色が眺められてここはいい場所だよホント。こう高い所からだと遠くまで見渡せるしね、馬鹿と煙は高い所に登るって言うけど、こういうのをわからない方が馬鹿だとあたしは思うよ。

 

「さてと……それでは私はこれで失礼します」

 

そう言って轡木さんは空になった弁当箱と食器を回収してリュックに入れ直していく。もう仕事に戻るのか?まだ昼休みなのに。

 

「もう行くんですか?もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」

 

「いやはや、そうしたいのは山々なんですが、仕事がありますのでそろそろ戻らなければ……」

 

あたしの言葉にそう返した轡木さんは片付けを終えると手を合わして、「ご馳走様でした。まだお昼休みですから、お2人はどうぞごゆっくり」と言って席を立つと、そのまま屋上を後にした。これだけ広い学校だと用務員の仕事も多いんだろうなぁ、お仕事ご苦労様です。

 

『……………』

 

十蔵が居なくなった事により、屋上に居るのが一季とマリアだけという状況になる。2人だけというのは先程の休み時間と同じ状況だが、今回は違う。昼食の際に食べさせたり、食べさせられたりした。そのせいだろう。一季は明らかに気まずそうである。

 

『まずい、非常に気まずい……』

 

2人きりとなった事でその事を再び意識してしまったのだろう。恥ずかしさが再び込み上げてきたのか顔が赤くなり始めていた。

 

『うぁ~……あたしってばなにやってんだろ。今更だけど恥ずい』

 

その事を恥ずかしがっているのは何も一季だけではない、それはマリアも同じである。コミュニケーションが得意ではないであろうに一季対して先程の様な積極的な行動に打って出たまではいい。しかし、今更ながら羞恥心が湧き上がってきている。

 

『……………まぁ、照れたりするとこは可愛いかったからいいとするか』

 

落ち着こうとタンブラーに入っているコーヒーを飲む。少しは落ち着いてきたから、照れたり戸惑ったりしている一季は可愛げがあったなと思い返していた。チラッと隣に座っている一季を見てみると、まだ照れを掻き消しきれていないのか、顔が少し赤くなっていてあたしと目を合わせようとしない。

 

『恥ずかしいのはお互い様って事か』

 

そんな一季の様子を見たら、少しは気が楽になってきた。まだ次の授業まで時間は残っていて、食後の一服を取る余裕はある。

 

「ところでさ、イツキ」

 

「……なんだ?」

 

こんな雰囲気で終わるのもあれだから話をする事にした。普通に雑談とでも思ったけど、あたしに話し掛けられて返事をした後の一季の表情が暗くなっていたのが何処か気になって仕方なかった。

 

 

 

 

 

昼食を食べ終えた轡木さんが屋上から立ち去った事で、今現在此処には俺とブライトだけという現状が完成してしまった。まずい……非常に気まずい事この上ない。そもそも轡木さんに誘われ此処で昼食を食べる事になった筈が何故こんな状況へと辿り着くんだ。ブライトが此処に来て、成り行きで共に食事を取ろうという事になったまではよかった。しかしブライトの奴が悪乗りしたお陰で食事を食べさせあうという全くもって想定外のトラブルが発生した結果がこの気まずい雰囲気だ。目を合わせまいと顔を背けてはいるが、ブライトも今更ながら恥ずかしがっているのはこの雰囲気で理解出来る。だがなブライト、俺はあの時今のお前の何倍もの羞恥心が心境を支配していたんだぞ。

 

『景色でも見て紛らわすか……』

 

眺めのいい屋上から景色を見渡してなんとか気を紛らわせようと試みる。今の俺にはこれが限界だ。こんな状況を打破するコミュニケーションや話術など、俺は持ち合わせていない。この現状から逃避するのが関の山とは……我ながら情けない、見渡せる絶景や世界を照らす太陽の光がこの情けない心情をより引き立てている。

 

「ところでさ、イツキ」

 

沸いてきた羞恥心がなんとか収まって来た時にブライトから話し掛けられる。少し落ち着いてきた現在ならば、話す事くらいなら出来そうだ。

 

「……なんだ?」

 

相変わらず異性と話すのは慣れない、愛想の無さが増している気がするのは間違いではない筈だ。どうすれば慣れるのだろうか?話していけば慣れもするのだろうが、あの一件でクラスメートの俺に対する恐怖心を増加させてしまった。最悪孤立しても可笑しくはない。本当に、初日から何をやっているんだ俺は……

 

「いや、ちょっと雑談でもしようと思ったんだけど……アンタさ、なんかあったのか?」

 

「……い、いや、なんでもない」

 

咄嗟にはぐらかして事なきを得ようとするが、ブライトが指摘するまで考えが顔に出ていたのか?

 

「あのさぁ、嘘つくならもうちょっとバレないようにつきなよ。顔に嘘付いてますってモロに出てるんだよ」

 

……やはりあの誤魔化しかたでは、はぐらかすのは無理だったか。あんなバレバレの誤魔化しで騙される程、ブライトも鈍くはないだろう。

 

「それで、なにがあったのさ?あたしでよければ聞いてやるからさ、話してごらんよ」

 

そう言われて素直に話せる事情ではない。もし話してブライトにまで怖がられたり、軽蔑されるのは心に堪える物がある。こんな俺に分け隔てなく接してくれた人物にまでそんな感情を抱かれるのは避けたい。

 

「1人で抱え込んでてもしょうがないだろ、誰かに聞いて貰うだけでも少しは違うと思うけどね」

 

確かにその通りだろう。1人で出来る事には限界がある、誰かの手助けがあって初めて成し遂げる事も多い。しかし俺は……もう何年も誰かに頼る事も、助けを求める事をしなかった。いや、出来なかった上にしても虚しくなるだけだと諦めて生きてきた。俺を救ってくれる人間など、誰も居なかったのだから……

 

『ブライト、お前はどうなんだ?』

 

話を聞いて俺を軽蔑するのか、恐怖するのか……どちらにせよ、これ以上俺と関わってお前にまで悪印象を植え付けてしまう位ならば話してしまおう。恐怖されるのも軽蔑されるのも好まないが、無関係なブライトまで巻き込みたくはない。

 

「……話してもいいが、俺を軽蔑するかもしれないぞ」

 

話すなら傷が浅い内がいい。俺にもブライトにとっても、これ以上引っ張っても良い事など有りはしない。なんとなくだが、そう悟った。

 

「軽蔑って……そんなにとんでもない事したのか?」

 

クラスメートを怯えさせる程の事をしでかしたのだ、とんでもない事には違いない筈だ。現時点でのブライトは俺を軽蔑していそうな気配はないが、この気配も長くは続かないだろう。

 

「……3時間目の授業の後にクラスメート揉めてな、イギリスの代表候補生だか知らないが、男の俺を見下した態度を取ってきたのが不愉快で反抗した」

 

「まさか……それが原因でクラスで孤立でもしたのか?」

 

「いや……その時点はせいぜい俺が怖いという認識位で済んだんだ」

 

まだあの時点で済んでいればよかった。俺が受け流していればそれだけで済んだ物を……オルコットの発言に必要以上に強く言ったりと本当に愚かな真似をしてしまった。

 

「……その後、此処に来る前にまたその代表候補生と揉めてな、今思えば俺も感情的になり過ぎた。だが、その際にどうしても許せない事を言われてな、怒りを堪えきれずに……」

 

「……殴り掛かりでもしたのか?」

 

「いや……怒りの余り、椅子の背もたれをへし折ったんだ」

 

「へっ、へし折った!?」

 

この事を聞いてブライトは驚きを露わにしている。それはそうだろうな、一般的に考えて『普通の人間』が背もたれをへし折るなど出来る訳がない。そう、『普通の人間』ならばな……

 

「……そのまま怒り任せて怒鳴り散らした結果、そいつにもクラスメートにも廊下に集まっていた生徒にも怯えられてしまった。逃げ出す様に宛もなく歩いていたら、轡木さんに会って此処に来たんだ」

 

結果は大勢に怯えられるという最悪な物。これから集団生活をしていく環境で第一印象が余り良くないにも関わらず、初日から騒動を起こすは、恐怖心を植え付けるは、それが原因で怯えられるは……自己嫌悪という底無し沼に嵌まって、そこから抜け出せない。

 

「……………」

 

言葉も出ないか、当然だな。だが、もうどんな罵詈雑言でも浴びる覚悟が出来ている。ブライト、とうやらお前にも……

 

「で、何処にあたしがアンタを軽蔑する所があったのさ?」

 

軽蔑され……ん?今、ブライトはなんと言った?俺の聞き間違い……ではないよな?

 

「……俺を軽蔑しないのか?」

 

「あぁ」

 

さも当然の様にブライトはあっさり答える。失望と軽蔑からくる罵詈雑言を浴びせられる物だと覚悟していたのだが、そんな気配が微塵もない短い返事を返してきたブライトに面喰らってしまう。

 

「何故だ?俺は……」

 

「どんな事言われたのかわかんないけど、そこまで感情的になってキレたのは、よっぽど許せない事言わたんだろ?」

 

「……まぁな」

 

疑問をぶつけて見た所、この返答が帰ってきたので、それに頷いて認める。普通に生きて来た人間なら兎も角、奴隷として虐げられてきた俺にはオルコットのあの発言はどうしても許せなかった。だから怒りを抑えられず怒鳴り散らしてしまった。

 

「だったら仕方ないだろ。誰だって言われてどうしても我慢出来ない事の1つや2つあるよ」

 

「……だが、関係のない生徒まで怯えさせてしまった。孤立しても文句は言えない」

 

自分で自分の首を閉めたのには変わらない。未だに自分への呆れが収まらない。

 

「だったらさ、謝ればいいじゃん。アンタがちゃんと誠意を見せれば、周りとも打ち解けていけると思うけどねえ」

 

「……そうなのか?」

 

確かにその通りなのだが、そう上手くいくものなのだろうか?

 

「そういうもんさ、なんでもかんでも最初っから上手くいくもんじゃないって。この後どうなるのかはイツキ次第だよ」

 

謝ればいい……か。何故こんな簡単な事を思い付かないでいたのだろう。過去の境遇故か自己嫌悪のし過ぎでその考えに辿り着かないとは……我ながら未熟だな。

 

「そうだな……その通りだな」

 

その答えを見つけると、少しばかり気が楽になってきた。自己嫌悪の底無し沼から這い上がった気分だ。

 

「そうそう。悪い事したら謝る、これは万国共通だろ」

 

「……まったくだな。ブライトが言わなければ無駄に悩み続ける所だった」

 

ブライトの助言がなければ、このまま誰にも話さずに悩み続けていただろう。そして自己嫌悪を延々とし続けているのが想像つく。

 

「……ブライト」

 

「なんだ?」

 

「その……ありがとう」

 

こんな俺に接してくれる所か、話を聞いてくれた上に助言までして、励ましてくれるとは……

 

「いいっていいって。大した事は言ってないよ」

 

「だが、お前が言ってくれなければ気付けなかったかもしれない」

 

誰かに悩みを聞いて貰う事も、助言を貰う事も忘れてしまっていた。ブライトまで巻き込む位なら、という考えで話した結果がこう転ぶなどと、数分前の俺は予想だにしていなかった。

 

「だから……ありがとう」

 

礼を述べるのは得意ではないが、今俺が出来る精一杯の感謝の言葉は伝えておきたかった。それにしても、礼を言うのに一々どもる上にもう少しは気の利いた言葉が思い浮かばないものか。本当に我ながら素っ気がない。

 

「……どういたしまして」

 

俺のこの言葉に微笑んで返してきたブライトがとても眩しく思えた。金色の髪が太陽の光で輝いて見えるからではない、この世界を照らす太陽の如き眩い明るさがブライトから認識出来る。ブライトというその名の通り、今の俺には彼女が眩しく見える程輝いて見えた。

 

 




本当ならば12で此処までやるつもりだったんですが、区切りよくコメディで終わらせようというのと、12話を書いていた時にはあの続きが思い浮かばないのもあって2話に分けました。

さて、今回は一季がマリアの言葉を聞いてこの後どうするべきか見付ける話でした。それくらい自分で見付けろという話ですが、もう何年も人と関わりを持たずにいたのでそれが思い浮かばない結果、ネガティブな思考の渦に捕らわれるという事になりました。科学者達?人間として見てないですから。

なので一季にはマリアの言葉は目からウロコが落ちる代物だったでしょう。ブライトという名の体現するようにマリアはライトな人物で、豪快で細かい事は気にしない性格をしています。しかし他人の心情を察する細やか一面を持ち合わせているので、初対面の際に何処か悲しい目をしていた一季の事を気にかけたりしてます。

さて、次回は答えを見付けた一季がどうするのか、恐らく次回で2日目が終わるでしょう。しかし、我ながら話の進むスピードが遅いなぁ、と思ったりします……これ1巻の内容終わるまでに幾らかかるんだろ。
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