IS〈インフィニット・ストラトス〉宿命を変える奇跡の双騎士   作:《陽炎》

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久し振りの戦闘シーン。やはり苦手です。


第21話 代表決定戦 開幕!

「そー言えば、アンタの専用機をじっくり見るのは初めてだねぇ」

 

「……そう言われればそうだな」

 

「まさか空から降って来た侵入者と模擬戦するとは思ってなかったよ」

 

「……それは言うな」

 

時は放課後、日が暮れる手前といった時間帯。何時もと変わらぬマリアに主導権を握られている一季が蒸し返すなと言わんばかりの態度で喋っている光景、決定的な違いは共にISを展開・装着して、オープンチャンネルを通してアリーナ上空にて言葉を交わしている事だろう。先日の一件で上級生との模擬戦に勝利し、一季の指導役の権利を手にしたマリアは一季へ指導の一環として模擬戦を行おうとしている。一季を助ける為に発した嘘とは言え、模擬戦まで行って何もしないのは彼女の性に合わない。何よりその権利を賭けて戦った先輩に対して失礼だと考えたマリアは、こうして一季に教える事にしている。それに専用機持ちである一季と戦えるのは戦闘好きの彼女にとっても見返りはある、実力が未知数の相手との戦い、何処をどう対処してどう攻めてこの手で勝利の2文字をもぎ取るか。そのシュミレーションをするだけでも楽しいと思える。

 

『昨日の戦い振りを見るに、恐らくブライトは実力者に違いはない。代表候補生と模擬戦を行えるのは此方にとっても好都合だからな』

 

かく言う一季もとっくのとうにISの知識は身に付けているが、色々と恩義もあり、ある程度は接する事の出来るマリアならば別に指導役になっても構わないという思いと、この状況で模擬戦を行えるまたとない機会を逃すのは惜しいという考えがある。よって代表候補生であるマリアが模擬戦の相手になってくれるというのは一季にとっても願ったり叶ったりなのだ、互いに利害が一致した双方得をする契約である。そんなやり取りが成立した今現在、トムキャットを装着したマリアと、悲劇の復讐者を装着した一季はこうして空中にて佇むかの様に浮遊している。

 

『あのIS、トムキャットが機動性を生かした空中戦闘に特化しているのは昨日の戦いから理解はしている。問題はそれをどう対処するかだが……』

 

トムキャットとは元々アメリカの戦闘機F-14の愛称であり、それがこの機体の名前の由来とである。名称だけではなく、機体の外観も原型のそれを踏襲しており、その外観には意識して開発された点がよく見て取れる。カラーリングもグレー迷彩に施されており、脚部のスラスターは尾翼を、アンロック・ユニットは原型の主翼からエンジンまでをモチーフにしたブースターとなっている。そして対を足している主翼は折り畳む事で空気抵抗を減らす事が出来るウイングスラスターとなっており、スラスターだけでは生み出せないスピードを作り出せる。逆に翼を広げる事で生じる空気抵抗によって減速を行え、低速度での移動も可能とする可変翼。この可変翼は原型となっているF-14にも搭載されており、その可変翼を折り畳み広げる様が丸で猫みたいに見えるという理由から雄猫、つまりトムキャットと言う愛称を名付けられたのである。マリアが纏うそれは空軍改修により、他の機体よりスラスターによる出力向上及び火器管制システム、通称FCSを増強した事で、より一層空中戦闘に特化した機体にされている。普通の機体でさえ乗りこなすのが他の量産機に比べて骨が折れ、じゃじゃ馬と称されているトムキャットだが、マリアが操縦するそれは端的に言えば良くも悪くもアメリカナイズされた恐竜的なISだ。

 

『しっかし初めて見た時も思ったけど、イツキの専用機のデザインってホント悪魔みたいだよなぁ』

 

初日以来となる悲劇の復讐者を改めてじっくりと目にするマリア。その胸に抱く感想通り、トムキャットは愚か現在のISでは珍しく顔はバイザーによりすっぽりと覆われ顔は隠れており、悪魔に憑依されたかの様な外観である悲劇の復讐者を装着してい一季。夜中見たら大抵の人間が悲鳴を上げる事間違いなしの外観をしているそれのバイザーから一季の表情は見えない。口調やトーンから何時もと変わらない様子なのは把握は把握は出来る。

 

「じゃ、イツキ。そろそろ始めるか?」

 

「……あぁ。此方は何時でも構わない」

 

正式な試合ではないのでブザー等による試合開始の合図はない。頃合を見つけたマリアのその言葉を一季が承諾した正に今、灰色迷彩の雄猫と黒き復讐者の戦いの幕が開けようとしていた。

 

「そんじゃ、始めるよ!」

 

そのマリアの一言を合図にこのアリーナにて模擬戦が勃発する。かなりの戦闘好きであるマリアは開始早々大型ハルバード《スマッシュ・マッシャー》を展開しながら、トムキャットのその機動性の高さを生かしてスラスターを噴かせ一季へと詰め寄り、両手で握ったそれを薪割りの如く勢いよく振りかぶった。

 

ガキィン!

 

「くっ!」

 

対する一季もアンロック・ユニット《悪魔の尾》を同じく両手に手に取り、ガンランスへと変わったそれを握り締め大型のハルバードの一振りを受け止めた。ぶつかり合う事で生じる金属音と受け止めた時の衝撃と振動が互いの全身に響き流れ渡る。

 

「うりゃ!」

 

「かはっ……!」

 

そんな物などには意も解さず、追撃と言わんばかりにマリアは右足で勢いよく一季の腹部に蹴りを入れ、その衝撃により生まれた隙に再びハルバードを左から横手向きで振り抜いて一撃を与えようと試みる。

 

「そうはいくか!」

 

ズドドドドドドドッ!

 

「うぉ、ガンランスか!」

 

普通のランスならそれで再びハルバードを受け止めるか受け流すかだが《悪魔の尾》はガトリングガンを内蔵しているガンランス、砲門より放たれた銃弾が幾つか当たりトムキャットのシールドエネルギーを僅かだが削り取り、ハルバードの一閃もかろうじてだが避けた。そして《悪魔の尾》はガンランスだけではなく鞭へと変化する事も出来るのである。振り抜かれた槍ははしなる様に鞭へと変貌を遂げ、マリアを薙ぎ倒す様に遅い掛かっていく。

 

「って、今度は鞭かよ。珍しい武器持ってんじゃんか!」

 

その事実にマリアは軽く驚きを見せながらも、未知の武器との遭遇にワクワクしている様子の笑顔も見せていた。本来ならガンランスが鞭へと変貌し襲いかかってこよう物なら慌てる物なのだが、流石強い相手と戦いたいからと言う理由でクラス代表に立候補した戦闘好きと言った所か。慌てや驚きよりも、未だ経験のない武装を持つ相手と戦えるという事実に彼女のテンションは上がっていた。

 

「でも、簡単には食らわないよ!」

 

まだまだ本編はここからだよと言わんばかりに鞭の一振りを振ったハルバードでバシィッ!と弾き飛ばして隙を作り出し持ち前の機動性を用いて一端距離を置く様に避ける。距離を取るのを目にした一季も対局の位置へと移動してマリアとの間を置いた。マリアは矢継ぎ早に武装を展開して一気に攻め立ていくのが戦闘スタイルだ、それは昨日の戦いを目にした一季も理解しており接近戦は避けたい所。しかし、かと言って自分には遠距離戦では決定的なダメージを与える武装がないジレンマがある。悲劇の復讐者の装備で相手に決定的な一撃を与える事が可能なのは近距離を通り越して超至近距離専用の《灰色の鱗殻》のみなのだ。それが一季の頭を悩ませる。

 

『接近戦を避けて距離を取ったつもりか。だけど、このトムキャットの前じゃ、その作戦余り意味ないんだよねぇ!』

 

一方マリアもマリアで得意な接近戦へと持ち込みたいので、一気に畳み掛けようと試みてそれを実行へと移しだす。可動翼のウイングスラスターを畳み、畳んだそれや脚部のスラスターを噴かせ空中戦闘に特化したトムキャットの機動性を生かして距離を瞬く間に詰めていく。それと同時にロケットランチャーM202-A6《ヒドラ》を呼び出してぐさま、1弾目を一季目掛けてぶっ放した。火器管制システムFCSを強化し射撃時の誤差をなくし対象への命中率を上げている、ロケットランチャーである《ヒドラ》による砲撃の命中率も普通のトムキャットよりは上だ。

 

「ちっ、厄介な!」

 

迫り来る砲弾と機体から発せられている警告アラームに思わず一季は舌打ちした。何時もと違い会話する際に間が発生していない、感情が高ぶったりすれば間は生じる事はないのである。それに加えて模擬戦とはいえ自分より力量のあるマリアという代表候補生が相手だ、間など作っている余裕などなく一瞬でも気を抜けば攻め立てられてしまうと野生の感的感覚が感じ取った。近付いてくる砲撃をどう交わすか、刹那的時間で答えを導き出す。

 

『こうなれば、一か八かだ!』

 

そう博打を打つ覚悟を決め、目と鼻の先にまで来ているミサイル目掛けてランスを突き刺し、爆発する前に全スラスターを使い、後続へと飛ばされていると錯覚しかねない飛び方で自身への直撃を避けその爆風と煙をカーテンに体制を立て直したい所だ。

 

警告!ロックされています!警告!ロックされています!

 

しかし機体から再び警告アラームがなり響いて危機を煽るかの如く警告を知らせてくる。それは安心も体制を立て直す暇もないという事実を突きつけた。

 

『……くそっ、今度は3発か!』

 

M202-A6《ヒドラ》は4連装タイプであり、4弾同時発射もこの様にタイミングをズラして射撃する事も可能の代物だ。それをマリアが行った事で追撃の3発のミサイル弾がそれぞれ異なるタイミングで一季へ襲いかかって来たのである。

 

「くっ、まずは1つ目!」

 

取り敢えずは最低でも1つは撃墜しようと一番最初にむかってきたミサイルを迎え撃つ。先程と同じ容量でランスの突き刺し爆発させ撃墜、続けざまに2弾目のミサイルを打ち落とそうとする。

 

ドカァァァンッ!

 

「なっ!?しまった……!」

 

突如ミサイルとは違う実弾兵器が脚部に直撃し、悲劇の復讐者のシールドエネルギーを削る。一季が3発の砲弾を対処している間何もしない訳がない、爆発と煙を目くらましにし砲弾を対処している隙に距離を詰めると、呼び出していたカートリッジ式の対物ロケットランチャーで一季のを撃ち抜いたのだ。脚を打たれたさ衝撃と事実により一季の意識が一瞬だが其方に意識が行く、その結果2発目は迎撃出来たが残りの一発は直撃してしまう。

 

「まだまだ終わらないよ!」

 

カートリッジ式なので装填されている実弾の数まで一発一発だがこのロケットランチャーも連射は可能。このタイミングを逃すものかと引き金を引いて次々とミサイル弾を放っていき、使用されたカートリッジが地面へと落ちてガシャンと音を立てる。

 

「くっ、このままでは……!」

 

FCSにより命中率を底上げされている砲撃はランスで撃墜しようとも新たな砲撃が次々と一季を襲い、その一発一発がヒットする度に悲劇の復讐者のシールドエネルギーを着実に削っていく。このままではミサイルの嵐を浴びて負けてしまう、そんな結末が一季の脳裏で容易にイメージされた。

 

「まだまだぁ!」

 

装填されていた砲弾を打ち終えたマリアはロケットランチャーを放り投げてIS重機関砲M-240をコールする。これはベルト給弾式の機関銃をIS用に開発された機関砲であり、分間数百発の弾丸が相手を撃ち抜く火器だ。

 

『くっ……こうなれば、一か八かだ』

 

自分が押され不利的状況下に置かれている一季は機関砲による砲撃の集中放火に飛び込む覚悟でマリア相手に接近戦を挑む事を決意する。この作戦が賭けだとしてもこのままでは火器の嵐にやられてしまう、ならば一か八か自分の武装の中で一番の威力を持つ《灰色の鱗殻》を喰らわせられれば、僅かかもしれないが逆転という一筋の光を掴み取れるかもしれない。 ならばその作戦に賭けるまでだ。そう決意した一季はミサイルの直撃により産まれた煙を目くらましとして左へ旋回、そして全スラスターを噴かせマリア目掛けて一直線へ移動する。

 

『んっ?接近戦挑むつもりか?なら、のぞむとこだよ!』

 

自分へ突っ込んでくる一季を見て接近戦へと持ち込もうとしている意図を予測したマリアは、接近戦上等と笑みを浮かべて既に発射準備完了している機関砲の引き金を引く、それにより次々と連射されていく弾丸の集中豪雨が一季目掛けて降り注がれていく。

 

「はあぁぁ!」

 

「うわっ!このっ……」

 

突っ込みながら鞭と化した《悪魔の尾》を下から振り上げ、更にそれを振り下ろし、そして更に右から勢いよく木こりが斧で大木を薙ぎ倒す様に振り払う。その薙ぎ倒す一振りはバシィ!と勢いよく機関砲とそれを持つ手に直撃し、機関砲は砲身がひしゃげ、最早弾丸を打ち出せない。そして一気に距離を詰めた一季はガンランスへ変えた《悪魔の尾》で隙を作り出そうと一突きする。

 

ガキィン!

 

しかしマリアは呼び出した《スマッシュ・マッシャー》でギリギリそれを受け止め弾き、右足で右脇腹に蹴りを入れる。一季も先程の二の舞にはならないと左手で自分の右脇腹に蹴りを入れようとする脚撃を受け止め、掌で足の甲を掴む。

 

「なら、これならどうだっ」

 

「ふんっ、そんな簡単に喰らうか!」

 

マリアが振り下ろしたハルバードを右手で刃から少し離れた付近をガシっと掴み取り、そのまま流れる要領で右足でマリアの左脇腹に思いきり蹴りをかます。

 

ドンッ!

 

「かはっ……!」

 

『今だ!』

 

脇腹に足蹴りを喰らい、僅かだがマリアに隙が生じる。この瞬間に出来た隙をチャンスだと確信した一季は右足甲を掴む左手を解くと、パイルバンカー《灰色の鱗殻》で一気に決めようと試みる。しかしその瞬間、一季の作戦を瓦解させる物が視界に入る。トムキャットの非固定浮遊部位の名のままに浮遊しているアンロック・ユニットに、先程までは存在のその字さえなかった小型のバルカンポッドが2つ付いているのだ。これはハードポイントシステム、通称HPSと呼ばれている武装を取り付けるアタッチメントである。官制システムとの連動は必要不可欠だが、様々な状況や用途に応じて扱えるので、戦闘機でも大抵搭載されており、戦闘機が原型となっており尚且つかFCSを増強したトムキャットならば当然搭載している。その時一季が見たマリアの表情は微笑んでいる様にも見えた、但し何時もの笑みではない。

 

「かかったな」

 

そんな一言を発していると捉えられる笑みを浮かべていた。それは自分の考えた作戦が成功したかのような微笑み。その時一季の本能が理解する。

 

『作戦に引っかかったのはブライトではなく、この……俺』

 

ドカァァンッ!

 

自分であると一季は実感したその刹那、バルカンポッドから発射されたミサイル全弾が一季へ目掛けて降っていく。この至近距離且つFCSを増強している砲撃を避けきれる筈もなく、全てのミサイルが腕、胴体、脚にと直撃すると、爆音、爆風、煙が同時に誕生して、大幅にシールドエネルギーを減らす。少なかったエネルギーはこれにより一気に減らされ、残量は遂に3桁を切って残り50をも下回っている。

 

ブォン!

 

自分を覆う煙を切り裂く風圧を生じさせた一閃、そして一拍子遅れて発する打撃音。それは悲劇の復讐者の残りのシールドエネルギーを削りきるハルバードの一撃から生じた音。

 

ビーッ!ビーッ!

 

シールドエネルギーが底を尽きた事実を聴覚に知らせる警告音、それを視覚に伝える役目を担っているウィンドウが目の前に発生している。視覚と聴覚から伝えられた現実をすぐに思考が理解した。それは自分の敗北を立証する証明なのだと。

 

「あたしの勝ちだな。イツキ」

 

「……あぁ。俺の負けだ」

 

一季は取り乱す事もなく敗北した事実を受け入れている。この結果は素直に認めてはいるが、何処か悔しげな表情はバイザーに覆われていて誰にも見られてはいない。グレー迷彩柄の雄猫と、赤き返り血を浴びたかの様な黒き復讐者が空中でぶつかり合った戦いは復讐者の敗北となり、一季自身にとって初の敗戦という形となった。

 

 

 

 

 

「……………はぁ」

 

自室のシャワー室でノズルから吹き出すお湯で体を洗浄したボディーソープを洗い流しながら小さな溜め息を吐く一季、その溜め息はシャワーの水音により掻き消される。あの後も何度か模擬戦を行ったがその度にマリアに敗れ、結果は4戦4敗と連敗してしまった。理由としては矢継ぎ早に速攻をしかけてくるマリアに一季がその勢いに飲まれて敗れてしまった事だろうと一季は自己分析を行う。ドイツで2対1の劣勢を1機を倒して切り抜けた経験を持つ一季に取っては、同じ相手に4連敗という結果には少なからず気分が下がっている。

 

『まぁ……滅入っていても仕方ないな』

 

原因は至ってシンプル且つ明らか、自分の実力及び経験の不足は確定的理由なのだ。ドイツではワンオフ・アビリティーの発動という不確定要素により切り抜く事に成功したが、それに縋る訳にもいかない。今日は金曜日なので決戦の月曜日までは後2日、時間は余り残されてはいない。それまでの短期間で実力を少しでも上げるしかないのだ。そう結論づけて頭や体を洗い終えた一季はお湯を止めシャワー室を後にした。そして1年生が入学してから初めて迎える週末もあっと言う間に過ぎ、また憂鬱とも言える1週間の始まりである月曜日の授業も終わった放課後、1組のクラス代表を決める代表決定戦が此処第3アリーナにて行われる。世界で2人しか存在しない男性IS操縦者が戦うとあってか、観客席には1組の生徒どころか全学年の生徒が大勢観覧に訪れていた。

 

「いよいよこの時が来たなぁ、イツキ」

 

「……あぁ。そうだな」

 

第3アリーナCピットにて試合を間近に控えている一季はマリアと雑談を交わしている。土日もマリアと模擬戦を行えるだけ行った一季、開始早々次々と武装を展開してくるマリアの戦闘スタイルから午前中まで授業の土曜日は午後から10試合行い、5連敗した後辛うじて勝利したものの3勝7敗。休日の日曜日は朝食後から模擬戦、昼食を挟んだ後も日が暮れるまで26試合行って9勝17敗、金曜日から合わせると模擬戦を合計40戦行い、12勝28敗。勝率は3割と余り良くないが、戦闘経験が殆どなかった人間が代表候補生相手に3割の確率で勝ちをもぎ取ったと言えばよくやった方だろう。最も当の一季本人は大いに負け越しているこの結果に納得などしてはいないが。

 

「なぁ、箒」

 

「なんだ」

 

「もうすぐ代表決定戦だよな」

 

「何を今更、当たり前だろう」

 

時を同じく第3アリーナのAピット、同じく代表決定戦を間近としている一夏は一季がマリアと話している様に、箒と軽く話していた。トレーニングの甲斐もあって身も心も万全な状態だ。そう……『身と心』だけは。

 

「そうだよな。なのに……なんで俺のISが来てないんだよ……!?」

 

「私に聞くな……」

 

自分自身は万全なのに自身が纏う専用機が未だに、未だに来ていないのだ。戦闘を開始しても心身機体共に問題のない万全な状態の一季と違い、一夏は心身はともかく機体に問題大有りな状況下に立たされているのだ。ゴタゴタがあるのか知らないがこれでは話にならない、尋ねられた箒も自分に聞かれても解決しようがないので困ってしまう。これは打鉄で戦うしかないかなと一夏が考えていたその時、豊満な胸を揺らしながら慌てて駆け寄って来る真耶と何時も通りの落ち着きで歩んでいる千冬がやって来る。同じ教師だというのにこの落ち着きの差はどこから生まれてくるのだろうか。

 

「織斑、悪い知らせだ。お前のISは此処に到着するまでまだ少し時間が掛かる」

 

「えぇ……!?」

 

漸く自分のISが来たのかと思いきやこの悲報、一夏は思いっきり肩透かしを喰らっていた。もうこうなったら本当に打鉄で戦うしかないなという気持ちが本当に芽を出してくる。

 

「そう落ち込むな、後30分も掛からん内には来る。だから少しまて」

 

「はぁ……わかりました」

 

一応だが専用機で戦う事は出来るらしい。戦闘経験が皆無に等しい一夏にとっては専用機持ちの代表候補生相手に量産機で挑むよりは専用機で試合に臨める事実は機体の差だけは縮まったと思えて少しホッとする。最も実力差は縮まってはいないが。

 

「あれ?じゃあそれまで一季とセシリアはどうするんですか?」

 

まさか自分の専用機が到着するまで待たせるつもりではないだろう、アリーナの使用時間が限られているのにそれで時間を取ったらそれこそ本末転倒、一夏のこの疑問は当然と言える。

 

「それについては心配はいらん。見ていればわかる」

 

そう言って示されたピットに備え付けられているリアルタイムモニターを見てみると、山田先生が操作した事でモニターに蒼きISをまるでドレスを着こなす様に装着したセシリアと黒き装甲を纏った者がCピット・ゲートから飛翔して近付いていく映像が映し出される。

 

『……さぁ、行くぞ!悲劇の復讐者!』

 

「予定を変更して、先に一季とオルコットの試合を行うからな」

 

それが己の専用機を纏った一季であり、一季とセシリアが最初に戦うという事を千冬からの説明を聞いて一夏がその事実を理解するのに殆ど時間はかからなかった。しかし、自分と一季に纏わる衝撃の事実を直に知る事になるとはこの時一夏はまだ知らずにいた。




漸く代表決定戦に突入しました。と言っても本格的に始まるのは次回からですが、暫く戦闘シーンが多くなるので更新は送れると思います。

さて今回は一季がマリアと模擬戦を行いましたが、結果は敗戦。それから代表決定戦まで計40回もやるも勝率3割、でもいい方だと思いますよ。それまで殆ど戦っていないのに代表候補生相手に3割勝てれば。ラウラとクラリッサ相手に負けなかったのはラウラは専用機ではなかったのとワンオフ・アビリティーというイレギュラーのお陰で何とかなった物ですから。

さて、次回から本格的にクラス代表決定戦が始まりますが……最後の文章通り一夏が一季の正体を知るのはじきに訪れます。その話をやる前に戦闘話3話連続……と、取り敢えず下手でも頑張って書きます!

では、また次回。



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