IS〈インフィニット・ストラトス〉宿命を変える奇跡の双騎士   作:《陽炎》

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1ヶ月振りの更新です。体調不良やスランプやらで更新が遅れました、すいません。漸くオリジナル主人公と原作主人公の戦いとなりますが、今回出来は余りよくないと思います。


第26話 激突する黒白 一季VS一夏

「……………もう少しだ、もう少しすれば奴との戦いが始まる。織斑一夏との戦いが……」

 

アリーナ空中にて対戦相手である奴の飛来を待つ、俺の片割れでもあるかもしれない存在にしてISを動かした男との試合が直に幕を開ける。世界で2人しか存在しない男のIS操縦者同士の戦いとあってか、観客席のボルテージは今までの試合の時よりも高ぶっており、試合開始前だというのにも関わらずそのテンションは高い。

 

『奴にだけは絶対に、断じて負ける訳にはいかない、奴にだけは負けられないんだ……』

 

負けるのは好みはしないが、例え誰かに負けたとしても、その者の実力等の要因があれば敗北という現実は受け入れられる。だがしかし、奴にだけは……織斑一夏にだけは俺は絶対に負けられない。どんな理由があれど俺が俺として存在する為に、奴にだけは絶対に負ける訳には……いかないんだ!

 

「……来るか」

 

奴が使用するピットのゲートが開き、解放されたそこから除く白きIS。その名の通り白き外観の白式を身に装着した奴が飛行し此方へと飛翔して来た奴は、俺と面と向かい合う形で浮遊する。

 

「待たせたなっ、一季」

 

「……本当にその通りだ、待ちくたびれたぞ。漸くお前を」

 

このアリーナでお前が来るまでの間はさほど待ってはいないが、お前と戦う事になってから、否……俺がISを動かしたその瞬間からこの時が訪れるのを待ちわびていたのだろう。俺を絶望させた『あの日』、世界で初めてISを動かした男にして、俺の双子の兄弟であるかもしれない織斑一夏という人間を漸く……

 

「……叩きめせる瞬間が訪れたのだからな」

 

「……言ってくれるな、おい。そんな簡単にいくと思ってると痛い目見るぜ」

 

舐めていると思われたかもしれないが、別にどうでもいい。試合開始のブザーはまだなっていないので開始の鐘の音がなるまで待つこの僅かな時間すら煩わしい。

 

『この戦い俺はお前に必ず勝利する。絶対にな』

 

ブライトやオルコットと比較すれば奴は明らかに2人より実力も経験も劣る、あの相手に勝利しようとするよりもお前相手に勝つ方が容易いのはIS関係の人物ならば大抵そう結論付けるだろう。だがしかし、俺はそれを理由に気を抜き油断するなどという真似は微塵もしない、奴の白式には憎たらしくも姉さんの《雪片》と瓜二つの武器《雪片弐型》と『零落白夜』という力を継承している。武器を模倣するなら可能だがワンオフ・アビリティーまで同じ能力になるなど前例がない、第一形態でワンオフ・アビリティーが発動しているのは俺の悲劇の復讐者も同様だからまだしも何故能力まで同じに……奴が姉さんの弟だからだとでも言うのか!?忌々しい……!

 

『……落ち着け。こんな調子では試合中に足下を救われるぞ』

 

憤りを再燃させていき熱を持ち始めていく思考回路を深く呼吸する事でクールダウンさせる。冷静になれ、『零落白夜』を喰らおう物ならば此方の敗北も有りうる、目の前の奴を倒すその時が訪れるまで、この燃えたぎる感情が消え行く時は訪れはしないだろう。だが思考は冷静を保て、戦いで冷静さを欠落させればそれが隙を作り出し、敗北へと直結する。

 

『オルコットとの試合を見た限りでは奴の武器は恐らく《雪片弐型》のみ、ならば奴が試合開始直後に取る行動は……』

 

試合を観覧しての推測だが、奴の機体白式には恐らく近距離格闘専用の近接ブレード《雪片弐型》しか搭載されていない。現在の奴に次の試合まで武器を温存して戦う技量も余裕も有りはしない、推測にしか過ぎないが概ね合っているだろう。しかしその唯一の武器はその力により一撃でシールドエネルギーを大幅に削り取れる高い攻撃力を持ちし強力な刃。そんな武器を手にして、尚且つそれしか持たない人間がスタンスとする戦法など知れている。

 

ビー!

 

そしてやっと試合の始まりを知らせるブザーが鳴り響く、しそれは此処にいる誰もが俺と奴との戦いが開幕した事を理解する音色であり、観客席にいる生徒達のテンションが更に増していく引き金となった。それとほぼ同時に試合も早速動きを見せる

 

ズガガガガガッ!

 

開始一番に先手を打たんと《悪魔の尾》をガンランスへと変え、奴という標的目掛け実弾を次々と打ち出していく。

 

「うおぉぉぉ!」

 

『やはりな……予想通りだ』

 

しかし奴はそんな事はお構いなしにスラスターを噴かせて此方へと接近し間合いに入ろうと企んでいる。しかしそれも計算通り、奴の現状では近距離戦しか行えない。それならば多少のダメージを糧にしてでも間合いを詰めて『零落白夜』によって絶対防御を強制発動させエネルギーを削るのが奴にとって最も勝利を近くに引き寄せる確実な戦法なのだ。だからこうして襲い来る弾幕によるダメージを、かわし避けながら最小限に留めながら接近してくる。

 

「ならば……これはどうだ!」

 

ガンランスから鞭へと変化したそれを相手の横っ腹を薙ぎ払う容量で横手から振り抜き、振り抜かれた鞭が奴を襲う。

 

「くっ!」

 

横からの攻撃に奴は接近を一時休止して、下降する事で鞭の一振りを避ける。すかさず鞭をガンランスへと変え、再び標的を打ち抜こうと実弾を打ち出していく。

 

「くそっ、見てた時も思ったけど厄介だな。ってか、ガンランスと鞭に変わる武器って有りなのかよっ!?」

 

「知るか、お前にとやかく言われる筋合いなどない!」

 

『憎悪の進化』が発動したらガトリングガン搭載のランスと鞭に変化するアンロック・ユニットが誕生していた、寧ろ俺が有りなのかと問いたい程だ。そんな再び鞭と化した《悪魔の尾》をうだうだ愚痴る奴目掛けて勢い良く振り下ろす。その攻撃を横へと移動し避けられ、鞭はアリーナの地面を強く叩いた。横に移動した事で鞭をかわしたつもりなのかもしれないが……

 

「それで避けたつもりなら甘いぞ!」

 

そのまま右腕全体でスナップを利かせ、奴が避けた左方向へと鞭を振り払う、地上から跳ね上がる蛇の如く勢いでしなりながら振るわれた鞭はそのまま奴の両足を払い飛ばした。

 

「うわっ!」

 

勢いの良い足払いを喰らい、そのままバランスを崩して地面へ転けるように倒れていく。そして倒れた相手目掛け、三度鞭を振るう、他愛のない。

 

「ぐっ……このっ!」

 

一撃鞭の一振りを喰らった後、その手に握る《雪片弐型》で襲い来る鞭を受けとめ弾き返すと、再び俺との間合いを詰めようと接近して来る。

 

「受け止めるか、ならばこれはどうだ!」

 

一度弾かれたそれを再び奴を薙ぎ倒そうと斜め上から振り下ろしていく。しかし臆する事もなく奴は振り下ろされ落ちてくる鞭の一振りを再びその両の手に握り締める刀で鞭の一撃を受け止める。

 

「はぁっ!さぁこっちも行く」

 

ズガガガガガガ!

 

「ぜ、うぁ!?」

 

振るわれた鞭を払いのけ接近しようと試みたらしいが、ガンランスから打たれた実弾の雨に素っ頓狂な声を上げて、その雨を避けていく。鞭を受け止められても、すぐさまガンランスへ変えて攻撃すればいいだけ。近付けさせない攻撃手段は此方にはある、貴様と違ってな。

 

「ふんっ。無様だな」

 

「うるせぇ!誰が無様なんだよ誰が?」

 

お前だ、お前。攻め込もうと決め込んでそれを遮断され素っ頓狂な叫びを上げるなど無様以外ない。……否、他にも例え方はあるか。

 

「無様でなければ、貴様など阿呆か馬鹿かマヌケだ」

 

「そこまで言うか!?俺傷付くぞ!」

 

「知るか!」

 

貴様が傷付こうが知った事ではない、俺はその何億倍も傷付け、痛め付け、苦しめられてきた。ぬるま湯に浸ってぬくぬくと生きて来た貴様に、釜茹で地獄の如き日々を強いられ生きて来た俺が負けられるか!

 

『……やはり中距離戦では決定打に欠けるか』

 

白式と異なり中距離戦の武器も搭載されている悲劇の復讐者だが、ガトリングガンと鞭だけでは流石に高い攻撃力は望めず、シールドエネルギーも削れたとしてジワジワとジリ貧だ。しかも奴は実弾による攻撃も筋の良いかわし方で避けていき、鞭の一振りもその刀で受け止める確率が増していく。ガトリングガンと鞭以外の攻撃手段となると、ガトリングガン搭載のガンランスによる攻撃と高い攻撃力を誇るが接近戦に持ち込む必要のある《灰色の鱗殻》と、近距離戦の武装しかない。しかし俺が奴に接近戦を挑む必要などない。

 

『別に俺は攻め急ぐ必要などない、接近戦へ持ち込まなくても充分勝てるのだから』

 

近距離戦しか行えない相手と違い此方は近距離も中距離も戦闘可能、わざわざ大ダメージを喰らうリスクを犯してまで接近戦に持ち込む必要など此方にはない。しかも『零落白夜』は発動し持続させると己のシールドエネルギーを消費する両刃の剣、使えば使う程奴は己の首を絞める。

 

「ぜってー懐に入ってやる!」

 

「やってみろ、やれればの話だがな!」

 

貴様が間合いに入るまでに俺がこの試合を終わらせるのが先か、貴様が俺の間合いに入るのが先か、それは誰もわからないだろう。だが俺は強引に持って行く、貴様を敗北へと誘う未来へと。その思いを現実にしようと、接近を試みる奴目掛けて攻撃を行うのを再開さした。

 

 

 

 

 

「はあぁぁぁ!」

 

「一夏……」

 

イレギュラー同士の試合が開始してからその戦いを見る面々の思う事は十人十色、ピットでは一季の懐にどうしても入り込み攻め込もうとする一夏の姿を映し出すモニターを真剣な眼差しで食い入る様に見詰めながら、箒は小さな声でぽつりと思う男の名前を呟いていた。

 

「此処までは織斑君が劣勢ですね」

 

「当然だろう、白式には《雪片弐型》しか武器がない。それ故に接近戦でしか織斑はダメージ覚悟で相手に接近するしか攻撃を行う手段がない。それを見抜いているから一季は威力のあるパイルバンカーを使用する接近戦には持ち込まず、自分のみ行える中距離攻撃に徹する戦法を開始当初から取り続けている。幾ら高い攻撃力を誇っても武器の間合いへ入れなければ何の意味もない」

 

中距離射撃型で中距離戦の実力が自分より高いセシリアと戦った際には、中盤まで相手の戦闘パターンを観察・推測して確信を持ってからは、ビットを撃墜させて攻撃手段を潰しペースを乱す事で最終的に高い攻撃力を持つ《灰色の鱗殻》を『瞬時加速』を用いる事で一気に勝負を決めて逆転劇を生み出した。しかし一夏は白式の武装から近距離しか行えないという点について一季は試合を見る事で一夏の戦闘パターン、白式のスペックと武器について把握、そこから接近戦しか行えない相手ならば中距離戦に徹し続ければ自ずと勝利が見えてくるという結論を見いだし最初からガトリングガンと鞭に可変する《悪魔の尾》を駆使して徹底的に中距離戦を行っている。

 

「くっ、このぉ!」

 

「ふんっ、簡単に間合いに入れると思うなよ!」

 

その為一夏は一度もその刃の届く間合いへと入る事が出来ない、交互に襲い来る鞭と実弾のランデブーを避けつつ隙を見付けようとするので現状手一杯なのだ。

 

『キレた時はどーなる事かと思ったけど、ちゃんと相手を見て戦っているねぇ。イツキ』

 

箒達と時を同じく、別のピットのリアルタイムモニターにて試合を観覧しているマリアは一季の戦い振りを目にして感心し、うんうんと頷く素振りをする。特訓として短期間で模擬戦を積み重ねた事により理解した事だが、一季は元々のポテンシャルや成長スピードもさることながら、特筆すべきはその冷静な判断力だとマリアは感じている。相手の戦闘に置けるスタンス、機体のスペックと搭載されている武装、それらを用いてどの様な攻撃や戦法を行うのかを見極めて、自分がどう対処するべきか、どう反撃に打って出るかと考える判断力は自分より高いのではと考える。マリアの戦闘スタイルはその性格を表すかの如く最初から武器を駆使してガンガン攻めていく戦法、相手を見極めてそれに基づいた戦闘を行う一季とは真逆とも言える。週末の短期間とはいえ最初戦った時よりも実力と技術をグングン身に付けていく成長っ振りには正直驚いている、『瞬時加速』を習得したのがいい例だ。

 

「……凄いですわ。つい最近まで素人だったとは思えません」

 

そんなマリアの隣で自分と戦った2人の男の戦う様を目にしていたセシリアはそんな感想を漏らす。一季がピットを飛び立った後そのまま立ち去ろうとしたのだが、マリアに呼び止めれてこうして共に試合を観戦している。そして観戦という立場で戦う光景を目にしているセシリアはついさっき直接自分が戦った際よりも客観的に判断出来ていた。先程まで男であるからと見下していたが、いざ冷静に見てみれば自分と戦った者達のその実力を確認出来る。その実力が素人レベルでは無いのはセシリア以外のギャラリーも思う所であろう。

 

「そりゃあ当たり前だよ。短い時間だったけどイツキは少しでも自分を強くしてセシリアに勝つ為に必死に特訓したんだからさ」

 

たった数日とはいえど一季と一夏が今自分に出来うる己を高める努力を積み、代表候補生たるセシリア相手に僅かでも勝つ可能性を上げようと鍛えて来たのをマリアは知っている。そして試合に臨んだ結果一季は追い詰められながらも見事勝利し、一夏も敗れこそしたが最後の攻撃を躊躇わなければ勝利も有り得たのだ。

 

「随分詳しいのですね、マリアさん」

 

「そりゃまぁイツキはあたしが直接特訓に協力したし、イチカの事はホーキから聞いたりしたからね」

 

気付くと何時の間にか名前で呼び合っているマリアとセシリアだが、これはマリアのフレンドリーな態度によるのが理由だ。最初はブライトさんと呼んでいたが名前でいいよというマリアの要望通りこうして名前で呼び合っている。

 

「この戦い、どちらが勝つのでしょう」

 

「今んとこはイツキかな。イチカが近距離戦しか出来ないのを見抜いてこれでもかってレベルで中距離戦に徹しているからねぇ、でもイチカには一撃必殺のワンオフ・アビリティー『零落白夜』があるから断言は出来ないよ」

 

「つまり……どちらにも勝つ彼女らが有ると」

 

「その通り、イツキにもイチカにも勝つ可能性は充分あるんだよね」

 

代表候補生同士で現在の戦況を見て判断した結果、結論は両者同じ。一季と一夏のどちらにも勝利への希望の光は射している。

 

「まっ。この試合に限らず言える事だけど、相手を舐めて油断した方がこの試合負けるだろうねぇ。自分が有利だからって油断してたら、そこを突かれて負けるなんて話よくあるしさ」

 

グサッ

 

「相手の力を見くびったりして油断してると本当の実力なんて発揮出来ていないし、それが攻め込まれる隙を作る。舐めてる相手に追い込まれると尚更自分のペースも余裕も崩れて立て、それを直すのも難しいんだよ」

 

グサッ!

 

「まぁ。例えるなら、セシリアがイツキを見くびって戦って負けたのがいい例だね」

 

グサグサッ!

 

「み、耳と心が痛いですわ……」

 

マリアの述べた言葉は2人と戦った時の自分を見事なまでに表しており耳が痛いし、その言葉が一々心にグサリと刺さる。言い返したいのも山々だが一季を素人と決め付けて戦った結果、油断を突かれて敗北したのは紛れもない真実なので言い返せない。一夏には勝利したがそれすら一夏が自分の身を案じなければどうなっていたのかわからない。

 

「ちょっと言い過ぎかなぁとは思ってるけど、いくら専用機持ちの代表候補生だって相手を下に見て舐めて掛かったら負けても仕方がないよ」

 

「……そうですわね。今なら自分が負けた理由がよくわかりますわ」

 

今のセシリアには自分がどうして一季に敗北したのか充分理解出来る。試合が始まっているのにも関わらず余裕綽々としていた結果奇襲攻撃を喰らい、中盤は此方の弱点を見抜かれビットを全て落とされ一気に敗北に持っていかれた、確実に相手を舐めて掛かった自分の慢心が招いた敗北だ。

 

「別にあたしはアンタがイツキやイチカと揉めた理由も、男を見下す理由も詮索したりはしないよ。そんな風になるのも理由があるんだろうからさ。だけど」

 

女尊男卑の思想が世界に広まり染まりだし始めてから10年足らず、環境などによりその思想に染まってしまう人間が存在しても不思議ではない。それはマリアも把握している、元々祖国のアメリカは告訴社会でもあると同時にISが発表される前から女性優遇の社会であった。それを踏まえた上で言っておきたい事がある。

 

「戦いの中じゃ男だの女だのISが有る無いだの関係ないだろ。強けりゃそいつの方が偉いのさ、そこに性別なんて存在しないよ」

 

「ず、随分強引な意見ですわね……」

 

「そーかい?あたしは女はISを動かせるから偉いとか思ってないからね、強い奴が偉いって考えてる」

 

元々女尊男卑や男尊女卑の風潮自体マリアは嫌いだ、『強い人間こそ偉い』それがマリアの考えである。別に強い人間が何でもかんでも好き勝手な振る舞いをしてもいいというのを推奨している訳ではない。

 

「まー、兎に角。今度からは相手を舐めて戦うのは辞めなよ、そんな考え方は誰の為にもならないからさ」

 

人を舐めるというのは誰も得をしない。舐められた方もいい気分にはならないし、舐めている方もそんな事をしていては高みへと登れないならまだしも下手をすれば軽蔑の対象となってしまう。

 

「……えぇ。そうですわね」

 

そう簡潔に返事を返すセシリアだが、マリアはそれで充分だった。自分が目にしているその表情はモニター越しで見ていた傲慢の笑みではなく、高みを目指そうとする淑女のそれなのだから。

 

 

 

 

 

「……それにしても、織斑君と一季君、どっちが勝ちますかね?」

 

「現在の実力と状況から見れば一季なのは明らかだ。しかし織斑にはこの劣勢を覆す事が可能な切り札を手にしている」

 

「つまり……それは一夏にも勝つ可能性は残されているという事ですか?」

 

「そうなるな、お前も知っているだろう篠ノ之。あいつは黙ってやられる奴ではないからな」

 

時を同じくAピットで勝者を予想している面々も、一季が有利なのには変わらないがその状況を一撃でひっくり返す力が一夏にはあると認識している。

 

「えぇ。このまま終わる程一夏は柔ではありません」

 

鈍っていた感覚も自分との特訓で取り戻した、それに先程のセシリアとの戦いでも逆転への可能性を作り出したのだ。一夏ならばこの劣勢を打ち破ると箒は信じて疑わなかった。

 

「そうだな。男ならばこの程度の戦況、打破出来なくてはな」

 

そう、この試合の状況ならば何とかなる。後に待ち受けている事実と比べれば難しい事ではない。今の千冬にはそう思う答えしか浮かばなかった。

 

「一夏」

 

「イツキ」

 

「「頑張れ」」

 

互いに別の人物を応援している箒とマリアだが、偶然にも2人の少女その応援の言葉が同じタイミングに呟かれたのを誰も知らない。

 

「それにしてもマリアさん、随分とあの方の肩を持ちますのね?」

 

「そーかな?別にそこまで入れ込んでるつもりないんだけど」

 

「もしかして……お付き合いなさっているとか」

 

「なんでそうなるんだよ!?」

 

「さぁ?」

 

一季を応援するマリアに、先程言われたお返しにと言わんばかりに関係を勘ぐるセシリア。この問いにペースを崩されたマリアの様子を見て、してやったりと笑みを浮かべながらモニターに映る試合を見ている。唐突にそんな事を問われペースを乱されたマリアも試合意識を向けようとモニターへ目をやると、黒き復讐者と白き騎士の戦いは、まさに今動きを見せ始めていた。

 

 

 




ハーメルンに投稿してから1年が経って初めての投稿となった今回の話で、やっと一季と一夏の戦いが始まりました。とは言っても戦闘シーンは半分程度ですが、2人の戦いの決着は次回となります。

さて、前回マリアに自分の気持ちをぶつけてこいと言われた一季ですが、一夏を叩きのめすと物騒な発言を……自分の募り募った気持ちをぶつける=叩きのめす。になっても今の一季だと可笑しくはないっちゃないのかもしれませんが……かといって一季の場合本心吐露するとそれを聞いた人達の心にダメージがデカいという……

次回で恐らく代表決定戦は終わりを迎えます、果たしてどのような決着を迎えるのか?では、また次回。
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