IS〈インフィニット・ストラトス〉宿命を変える奇跡の双騎士   作:《陽炎》

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遅れてすいません。しかも遅くなった割には余り出来はよくありません。あぁ、文才が欲しい……


第4話 IS学園入学初日

あっという間に4月上旬、只今世間は春の陽気真っ盛り。桜咲き誇る木の下で花見でも出来れば楽しいんだろうが、今の俺はそう言っていられる状況ではない。

 

『……………見られている』

 

そう、今日はIS学園入学式があり、入学式が終了した現在は教室にて割り当てられた自分の席に座っている。だけならまだ良いんだが、クラスメート29人の左右2つの瞳から生み出されている58の視線が見事に俺を射抜いている。これがレーザー兵器とかならば俺の全身は蜂の巣みたいに風穴が出来ている。

 

『けどまぁ……入学式の時よりかはマシか』

 

先ほどまで行われていた入学式では新入生120名の中に男子は俺だけ、他の生徒は見渡すまでもなく全員女子だ。あれは居心地が悪いと言おうかなんと言おうか、兎に角挙動不審にならないように振る舞うので精一杯だった。例えるならあれだ。ハイエナを飼育している檻に放り込まれた餌の羊……いや違う、女性専用車両に間違って乗った男という方が正確かもしれない。生々しい比喩表現かもしれないが、女子生徒119名の中に男子生徒がポツンと1名、客観的にその光景を見たら俺でもそういう風に見えてしまう気がする。因みにだが、大体の学校は入学式後は教科書の配布等が終わると解散するのが普通だろう。しかし此処IS学園では入学式後直ぐに授業が始まるのである。ゆとり教育などと政治家や教育評論家があーだこーだ言っているこの日本で何とも教育熱心な学校な事だ。

 

「えーっと、全員揃ってますねー。皆さん始めまして。はこの1年1組の副担任、山田真耶です」

 

クラスメートから集中する視線に耐えていると先生が入室してショートホームルームが始まった。あっ、この人俺の入試での模擬戦で自滅した人じゃないか。副担任この人なのか……大丈夫なのか?

 

初陣をあんな結果にしてくれた人なだけに少しばかし不安が産まれる。やや低めの身長にサイズが合ってないのか、だぼっとした服が着ている本人を小さく見せている。黒縁眼鏡も少し大きいのか少々ズレている。何というか……子供が背伸びして大人の服を着ている様にしか見えないのは俺だけだろうか?尚これは余談だが、山田先生が自己紹介した際には教壇上で何か操作をした事で先生の名前が投影されていた。恐らくは教壇にキーボードか何かが取り付けてあるのだろう。今俺が腕を置いている机にもディスプレイと操作盤がある、液晶の大きさはノートパソコンやタブレット端末のそれよりも大きい。そして机も他の学校のと比較しても大きめのサイズであり、教科書や筆記用具を置いても充分ゆとりがある。物が落ちない様にか、座る側意外の机の端には、囲いが施された作りとなっている。いやはや、何とも手の込んだハイテク設備な事で。

 

「それでは皆さん、これから一年間よろしくお願いしますね」

 

「‥…………」

 

満面の笑みで挨拶をする山田先生だが、俺という異端者が存在する事から生まれている変な緊張感からか、誰一人として反応がない。俺だけでも何かしらの反応をすればいいのだろうが、生憎俺もこの状況ではそんな余裕はないに等しい。その結果、教室はシーン……と静寂で包まれている。芸人がスベってもここまで静かにはならんぞ、テレビだったら放送事故レベルの静けさだ。山田先生は芸人でもなければスベってさえないのに。

 

「そ、それじゃあ、まずは自己紹介をしましょう。えーっと、出席番号順で……」

 

この空気を変える為か山田先生は俺達に自己紹介を指示する。まぁこんな感じにならなくても自己紹介の流れだったんだろう。多少うろたえているのは当然と言えば当然か。自己紹介してあんな沈黙されれば俺だってへこたれると思う。気休めにもなりませんが心の中で謝ります。ごめんなさい。

 

『次は俺か……』

 

などと考えている間に着々と俺へと自己紹介のバトンは回り、次はいよいよ俺へとそれが回ろうとしていた。一応自己紹介は考えてきてはいるが、いざこの状況で本番を迎えるとなると緊張する。自己紹介で失敗しようもんなら暗い奴というレッテルを張られてしまう。それだけならまだいいが、下手な自己紹介してさっきの山田先生の時みたいな変な空気と静寂が漂うのだけは絶対に避けたい。第一印象はかなり大事だからな、うん。

 

「では次は、織斑一夏君」

 

「はい」

 

いよいよ回ってきた自己紹介のバトン。返事を返し席を立つ。

 

『なんか、視線が更に凄くなってるんだが……』

 

先程までの視線は興味や好奇心から来てる物で、例えるなら動物園で珍獣を見ているあれだ。が、今現在俺を射抜いている視線は漫画とかならば瞳に星が描かれているんじゃないかと思う程に輝きを帯びていた。明らかに過度な期待をしていると断言できる。正直言うと過度な期待されても困る、肩透かし喰らっても俺は一切責任を負いませんのでご了承ください。

 

『……えぇい、もうこうなったら勢いだ。男は度胸!』

 

別に女子に苦手意識もなければ話すのも問題はない、ただこの状況は普通と違うから戸惑いを拭えないんだ。だがここまできたら仕方無い、席を立つまでのほんの数秒で踏ん切りを付けそのまま自己紹介を始めた。

 

 

 

『……………増えた』

 

あれから自己紹介は終わりそのまま一時間目のIS基礎理論授業が始まった。それが終わった現在は休み時間。 授業が終わった途端、廊下に女子生徒達が集まり俺を凝視しており、俺を射抜く視線が増加した。気を紛らわせる為に次の授業の用意をしておこうと手を動かす。

 

『まぁ、自己紹介が失敗しなくてよかった』

 

自己紹介に関しては上手く出来たと思う。

 

「織斑一夏です。現状世界で唯一の男でISを動かせるけど、まだ経験や知識が不足しているし、迷惑を掛ける事も多い多いだろうけど、これからよろしくお願いします」

 

と、出来る限り当たり障りの無い自己紹介のお陰か、第一印象は悪くない物を与えられたと思っている。もう少し親しみやすさをアピール出来ればよかったかもしれないが。その後クラス全員の自己紹介が終わった辺りでこのクラスの担任が来たんだが、やって来たのは千冬姉であり、このクラスの担任との事だ。まぁ此処の教師というのは知っているから驚きはしなかった。姉が弟のクラスの担任になるというのには驚いたが。しかし千冬姉、俺達への自己紹介が

 

「諸君、私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。君達新入生を1年間で使い物になる操縦者に育て上げるのが仕事だ。我々教師の言う事をよく聴き、理解しろ。出来ない者には出来るまで指導する。逆らってもいいが我々の言う事は聞け。いいな」

 

学校の教師というより軍隊の教官だったぞ、ありゃ。強ち間違ってないけど。しかし教室に発生したのは戸惑いではなく

 

キャアァァァァァァァ!

 

「本物よ!本物の千冬様よ!」

 

「私お姉様に憧れて北九州から来たんです!」

 

それはご苦労様。千冬姉の変わりに礼を述べよう。心の中で。

 

「千冬様にご指導してもらえるなんて嬉しいです!」

 

「私、お姉様の為なら死ねます!」

 

命は大事に。あの国民的ゲームの作戦コマンドじゃないけど、命を大事に。

 

まぁ、黄色い声援が響く響く。我が姉の人気を侮っていた。まさかこれ程の物とは、余りの声援に耳がキーンとした。最も千冬姉は左手を頭に置いて

 

「……はぁ、毎年よくもこれだけ集まるものだ。逆に感心する。それとも私のクラスに馬鹿者を集中させているのか?」

 

ヤレヤレと鬱陶しそうにしてたが。人気は買えないんだから少しは有り難がればいいのに。

 

「あーお姉様ー!もっと厳しく罵ってー!」

 

「でも時には優しくして!」

 

「そしてつけあがらないように躾をして~!」

 

前言撤回、訂正します。明らかに危ない発言が耳に入った。そりゃ千冬姉も鬱陶しがるよな。というか毎年って、先輩にもそういう人が居たりするのか?大丈夫なのか?IS学園は……

 

これから本格始動する学園生活に言い知れぬ不安を覚える。そんな俺の心情への配慮など無く、そのまま授業へと突入したのであった。

 

そして休み時間となった現在、廊下には他のクラスの女子や2、3年の先輩ら詰め掛けている事で廊下は女子で溢れており、ざわざわと姦しい。この現状に置かれれば姦しいという言葉の意味をよく理解出来る。しかしいくら男が俺だけだからって……他にやる事ないのか?

 

「ちょっと、あなた話かけなさいよ」

 

「まさか抜け駆けする気じゃないでしょうね」

 

そんな会話が聞こえた気がした。自意識過剰かもしれないがクラス内にはずーっとそんな緊張感が満ちている。

 

IS学園は世界で此処だけたが、此処に入学する為の事前学習としてIS学習を授業に組み込んでいる学校は結構多く、そういう学校はほぼ100%女子校である。つまり、この学園の殆どが男子に免疫がないのである。しかしそこに世界で唯一ISを動かせる男子、しかも元日本代表で生徒達憧れの的、織斑千冬の弟となれば当然好奇心は沸く訳だが、現状はこれだ。目が合うと視線をそらすのだが、『話し掛けて!』という雰囲気は思い切り醸し出している。正直言ってこの状況を打破する方法が見当たらない。友人の弾、数馬や中学時代の男子達は俺を羨ましがってたが、代わってやってもいいぞ。この環境に適応出来ればの話だが。

 

「……ちょっといいか」

 

膠着状態の中1人の女子が俺に話し掛けてくる。出遅れたというざわめきからすると、どうやら単独行動に出たらしい。声のする方を向き視界に入ってきた女子を俺は知っていた。

 

「……箒」

 

篠ノ之箒。今日6年振り再開した幼なじみ。昔通っていた剣術道場の娘。今も昔も黒き長髪をリボンで結ったポニーテールが特徴だ。因みにリボンの色は緑色。

 

「廊下でいいか?」

 

教室では話しにくい事なのか。この気まずい状況を抜け出せるならその提案に乗るとしよう。

 

「あぁ」

 

「なら早くしろ」

 

「お、おう」

 

了承するや否やすたすたと廊下へと移動する箒。身長は同世代女子の平均的なそれだが、長年剣道で培った体はどこか長身と思わせ、吊り上がった瞳も相まって日本刀の様な鋭さを思わせる。その醸し出している雰囲気からか廊下に集まっていた女子達がそそくさと道を空ける。そんな箒のやや後ろに付いて行く。それで廊下に出たんだが、俺と箒から4メートル位離れた距離で、女子達が包囲網を構築している。言うまでもなく全員が聞き耳を立てている。これじゃあ教室で喋っても変わらないな。

 

「久しぶり。6年振りになるな」

 

「あ、あぁ……そうだな」

 

小4の終わりに引っ越してからだからな。あれから6年、時が経つのは案外早いもんだ。

 

「本当に久しぶりだな。6年振りだけどすぐに箒にわかったぞ」

 

「えっ?」

 

「ほら、髪型昔と一緒だしさ」

 

ちょんちょんと俺が自分の頭を指すと箒はその長いポニーテールを弄る。何というかいじらしい振る舞いだ。

 

「よ、よく覚えているものだな……」

 

「そりゃまぁ幼なじみだしな。まぁ、目が合ったのにすぐ顔背けられたら忘れられてたかと思ったけど」

 

「あ、あれはその……」

 

教室で数回目が合ったがすぐに視線を逸らしたから、もしかしたら忘れられたかと思ったが覚えてくれていて何よりだ。

 

キーンコーンカーンコーン

 

どうやら時間切れのようだ。休み時間の終わりと2時間目の始まりを告げるチャイムが鳴る。チャイムと同時に遠巻きで俺達を見ていた包囲網も瓦解して各々教室へと戻っていく。

 

「俺達も教室に戻ろうぜ」

 

「わ、わかっている」

 

ぷいっと顔を逸らして廊下に出た時と同じくそそくさと教室へと歩を進めていく箒。そんな箒を追うように俺も教室へと戻る。

 

『さて、次の授業も頑張りますか』

 

まだまだ学び覚える事は数多い、この学園での日々は始まったばかりなのだから。

 




という訳で、今回は一夏の入学初日から箒との再会までの話でした。

少年はまたしても出番なし。しかも次回も出番が無いに等しく……

少年「……………」

ま、待て!もうすぐ出番増えるから!だから悲劇の復讐者展開するの止めて!

で、ではまた次回で!
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