IS〈インフィニット・ストラトス〉宿命を変える奇跡の双騎士   作:《陽炎》

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突如、IS学園に現れた少年。その目的とは……


第7話 黒き来訪者

ドイツ軍との戦闘を終えた後、目的地を目指して移動を続けている。憎消費するエネルギーへの考慮、出来るだけ戦闘を避ける為に、数日かけて、IS開発技術や戦力が発展している主要国を避けて遠回りをする事にした。道中、何度か船に忍び込んで移動しつつも着々と目的地に近付いていた。食事や水分は隙を突いて残飯を頂戴したり、水道から飲んだり、時には雨水などで済まし、風呂は海に入る事で済ましてきた。かれこれ1週間はこの生活だ。まぁ、この程度の暮らし昔に比べたら遥かにまともだが、残飯がご馳走に思える俺は末期なのかもしれない。

 

『もう少しだな……』

 

現在は目的地から約50km程距離のある小さな離島にまで来ている。此処まで来ればもう少しだ。俺も当初からISだけで目的地にまで辿り着こうなどとは端から考えてはいない。暫く移動していれば位置関係がわかり、最もマシなルートや移動手段を見つける事が出来ると考えてあの場所を後にしたのである。此方としては無駄な戦闘は避けたい、憎悪の進化という予想外の能力で悲劇の復讐者のダメージも回復こそしたが、何がきっかけで発動したのかわからない能力に頼る訳にもいかない。事実、憎悪の進化が発動したのはあの1回のみだ。

 

『それでも、無謀な行動だったな……』

 

戦闘がドイツ軍のみで済んだのが不幸中の幸いだったが、今回の行動はやはり無謀な物だったと改めて認識する。ISを動かせた浮かれとあの場所への嫌悪感から先急いで決行したのは反省すべきだろう。結果的には上手くはいっているが、それは偶々である。取り敢えず、此処まで来れば後は目的地まで一直線だ。最後の移動といこう。そして俺は悲劇の復讐者の全スラスターを吹かして島を後にした。

 

 

 

 

 

『やっと、着いたか』

 

暫くして俺は目的地に辿り着き、その上空飛来している。

 

『此処が……』

 

下を見下ろすとそこには1つの島が存在している。俺は一縷の望みを託して此処を目指したのだ。

 

「さて、どうやって……」

 

取り敢えず、内部に入らなければ、と方法を模索していると

 

ガシュッ!

 

「なっ!?」

 

突然スラスターの機能が停止し地上へと落下していく。何事かと思えば目の前のウィンドウにPIC機能に異常ありと出ていた。

 

「な、なんだと!」

 

PICとは、パッシブ・イナーシャル・キャンセラーの略称。全てのISはこのPICにより浮遊・加速・停止を行っている。無論悲劇の復讐者とて例外ではない。それに異常が出たという事は、今の悲劇の復讐者はこの落下を止める手立てがない。つまり……

 

ズドォォォ!

 

万有引力に逆らえず、何百メートルも下の地面に向かって真っ逆様である。途中何とか体制だけは無理矢理立て直し建物を覆う遮断シールドを蹴破る様に突き破りそのまま地面へと落下した。いくらISを装着してるとはいえ、足から頭までまんべんなく衝撃が全身を走り抜けていく。

 

『な、なんなんだ……一体……』

 

何故いきなりPICに異常が、と思ったが理由は大方の予想は着いた。此処に辿り着くまでの間、整備など出来ず、ほぼぶっ通しで悲劇の復讐者を稼働させ続けた結果、PICに予想以上の不可が掛かっていたのだろう。

 

『それにしても……』

 

落下した場所を軽く見回す。落下した場所はどうやらISを使用する場所らしい。ピットが見えた、あそこから此処へと飛び立つのだろう。

 

『此処が……IS学園か』

 

そう。俺が目指していた目的地とは、ISについて学ぶ学校、IS学園である。まさか落下して中に入る羽目になるとは、予想だにしていなかった。流石に気付かれただろう。見つかるのも時間の……

 

『……既に見付かっていたか』

 

問題かと思っていたが、既に此処の生徒である1人の女子に見付かっていた。

 

 

 

 

 

「あ、IS!?」

 

ちょ、なんでISが?って此処はIS学園のアリーナだから居ても問題ないか。って違ぁう!

 

『問題は、あの黒ISがいきなり現れたって事だ』

 

一体何処から現れたんだい。明らかに学園にあるISじゃないのは確かだ。どっかの国のISが乗り込んでも来たのか?いや、そんな馬鹿な事しでかしたらどうなるかなんて馬鹿でもわかる。だけど、侵入者ってのはわかったよ、そしてこの状況が滅茶苦茶マズいって事も。

 

『あたしのトムキャットは米軍貸代備品、今は特別の格納庫に置かれいるから丸裸も同然だ。このままじゃ……』

 

生身の人間がISに勝つのも逃げるのも不可能。八方塞がり、絶対絶命、そんな言葉が脳裏を過ぎる。先生達が駆け付けて来るまで逃げようにも、IS相手じゃ無駄な抵抗にしかなりゃしないよ。

 

「なっ……?」

 

もっと早く帰っておけばこんな事には……後悔の念を抱いてたら、突如として黒きISは姿を消し、変わりにその操縦者が地に足を着けた。なんでISを解いたりしたんだい?意味がわからないよ。そんな侵入者は、一歩ずつ歩を進めてあたしに近付いて来た。ヤバ!早く逃げないと、人間相手なら逃げ切る自信は……

 

「っ!?」

 

逃げ出そうと立とうとした途端に右の足首に痛みが走る。ま、まさか転けた時捻ったのか?くっ、こんな時に……逃げようにも走れる痛みじゃない。立って歩くのがやっとだよ。こうしてる間にも侵入者はあたしとの距離を縮めている。

 

「くっそ、このままじゃ……ん?」

 

ホントに……何で初日からこんなトラブルに巻き込まれなきゃいけないのさ!と恨めしい気持ちで睨み付ける様に侵入者を見ると妙な違和感を覚えた。ISスーツは首から下の両手以外の全身を覆っているタイプ。何年も切ってないであろう長い黒髪、顔立ちはまだハッキリわからない。外見から見ると女でも別におかしくないけどさ……そして10メートル、5メートルと距離が縮まり、顔に掛かりまくってる前髪でわかりにくいけど顔立ちもハッキリ見えてきた。顔の左側や両手は包帯が巻かれていて、顔立ち自体は半分隠れてるけど、十分整っていて、前髪からの合間から鋭い切れ長の瞳がチラチラ覗いている。その髪や瞳の色は日本人のそれだった。

 

『ちょ、ちょっと、まさか……?』

 

その侵入者の身長は180はあろう長身、その割にはスラッとした無駄な物が一切ない体格がISスーツで強調されている。とても女の体格じゃない。おいおい嘘だろ?まさか本当に……?でも次の瞬間、疑念は確信へと変化した。

 

「……大丈夫か?」

 

耳に届いたその声は、間違いなく男の声だった。

 

 

 

 

 

「御苦労だった。悲劇の復讐者」

 

感謝を呟き悲劇の復讐者を解除する。出来るだけ早く整備をしたい所だが、流石にそうはいかないだろう。時期に俺を拘束しに来る。ならその前に、先程地に着けた足で一歩ずつ移動を開始し女子生徒に近付く。

 

「……大丈夫か?」

 

「……はぁ?」

 

俺のこの言葉に目の前の女子生徒は素っ頓狂な声をあげ、面を食らった顔をしている。

 

「……なんだ、その反応は?」

 

「なんだ……って、いきなり現れた侵入者にそんな事言われたら普通戸惑うよ!」

 

言われてみれば確かにその通りだ。今の俺は侵入者だった。そんな奴に木を遣われても反応に困らなくもない。それとは他に、目の前の女子生徒からは先程から右足を庇う素振りが伺える。十中八九、俺が此処に落下した際の衝撃のせいだ。その影響で足を痛めたのだろう。

 

「動くな!」

 

どうやら迎えが来たようだ。此処の教師であろうISを装着した女性を含む数名が此処に駆け付けていた。別に抵抗するつもりはない、その意志を表す為に両手を上げる。

 

「そのまま此方に来い!」

 

生徒を巻き込まない為に俺と引き離そうとしているのが簡単にわかる。そんなに大きな声をあげなくてもそうする。品が無くなるぞ。だが、その前に

 

「……すまない」

 

怪我をさせた事を謝っておきたかった。この謝罪の言葉を告げて、俺は女子生徒から離れて大人しく投降した。その謝罪の言葉を聞いた女子生徒が不思議な物を見るで俺を見ていた事が何処か印象的だった。

 

 

 

 

 

「はい。これでもう大丈夫よ」

 

侵入者が拘束されて連行された後、あたしは保健室で捻った右足の治療を受けている。幸いにも、3日位で直る軽い捻挫で済んだ。治療のおかげでさっきと比べると痛みも和らいでいる。

 

「それじゃあ、失礼します」

 

「まだ無茶しないようにね」

 

「はーい」

 

釘を刺された事に返事を返すとそのまま保健室を後にして部屋を目指した。やっぱまだ痛みはあるなぁ、歩く度にズキズキするよ。

 

『それにしてもあの男……』

 

あの侵入者を間近にして先生達も驚いていた。此処には男なんて1組の織斑イチカと用務員のおじいさんしか居ないからねえ、しかも男でISを動かせるって、一体どうなってんだ?それは織斑だけの筈なのに。先生達からこの事は口外するな、と念を押された。

 

『にしても、変な奴だったな』

 

いきなり侵入して来たかと思えばあたしを気遣ったり、謝ったり、ホント何しに来たんだ?

 

まさかISに異常が発生してそのまま落下する形で侵入する羽目になったなど知る由もないマリア。彼女が知れば笑い転げそうなオチだ。

 

『でも……』

 

とても、悲しい目をしていた。瞳の奥から、雰囲気からなんかこう、辛さや悲しさとかが滲み出ている、そんな感覚をあの男から感じ取った。

 

『ホント、なんだろうねえ。あの男は』

 

男でISを動かせるなら、織斑みたいに此処の生徒になったりして。そしたら世界中が大騒ぎだよ。なんて事を考えながら痛みを堪えて自分の部屋へと歩を進め続けた。

 

 

 

 

 

「なぁ、箒……」

 

「……………」

 

返事がない。某RPGならこの後ただのしかばねのようだ。と続いている。

 

「なぁ、何時まで怒ってるんだよ……」

 

「別に怒ってなどいない」

 

いや、明らかに機嫌悪そうじゃないか。まぁ、昨日の事まだ怒ってるんだろうな。

 

「怒ってない割には不機嫌そうな顔だぞ」

 

「生まれつきだ」

 

入学初日から一夜明け、現在時刻は朝7時40分。1年生寮の食堂で俺と箒は朝食を食べている所だ。昨日あんな事があったからか、まともに会話が成立していない。同じ部屋と幼なじみのよしみで同じテーブルで朝食を取ってはいるが

 

「箒、これ美味いよな」

 

「……………」

 

こんな感じである。因みに俺も箒も食べているのは、白米に納豆、鮭の切り身と味噌汁に浅漬けと和の朝食の王道ともいえるメニューだ。朝食はビュッフェ形式のバイキングなのに何故かメニューが同じである。味の方もかなり美味い。国立だからだろうか、俺は家の家事全般をしているが、こんな朝食は流石に毎日は作れない。国立万歳だ。

 

「ねえねえ、彼が噂の男子だって~」

 

「姉弟揃ってIS操縦者かぁ。やっぱり彼も強いのかな?」

 

そしてこれも昨日から変わってない。女子達が一定の距離を保ちつも『興味津々ですよ。でもがっつきはしませんよ』というむず痒い気配の包囲網。はぁ、もう1人男がいてくれたらなぁ。

 

「箒……」

 

「な、名前で呼ぶな」

 

「じゃあ篠ノ之さん」

 

「……………」

 

名前で呼ぶなと言うから名字で呼んだらムスッとされた。どうすりゃいいんだよ。我が幼なじみながら考えがわからん。

 

「お、織斑君、隣いいかな?」

 

「へ?」

 

ふと見ると朝食のトレーを持った女子3名が答えを待ちわびて立っていた。

 

「あ、あぁ。別にいいけど」

 

そう答えると声を掛けてきた女子は安堵の溜め息を吐き、後ろの2名はちいさくガッツポーズをしてた。

 

「あ~あ。出遅れた……」

 

「大丈夫よ、まだ2日目。焦る段階じゃ……」

 

「そういえば、昨日部屋に押し掛けた子もいるらしいわよ」

 

「なんですって!」

 

本当に女子達が多いだけあって姦しいな。本当に昨日1年が8名、2年が15名、3年が21名自己紹介に来た。それに対応している時箒が不機嫌そうに睨んでいた。

 

もう既にどう座るのか打ち合わせ済みなのか、3人はスムーズに席に着いた。

 

「わぁ、織斑君って朝凄く食べるんだね」

 

「お、男の子だね」

 

「あぁ、俺夜食べる量は少なめだから、朝これくらい取らないと持たないんだよ」

 

元々は千冬姉がしているのを真似したものなんだが、色々試行錯誤した結果、体型と健康維持に最も無駄がない。

 

「てか、女子って朝それだけで平気なのか?」

 

3人組のメニューこそ違うが、トレーに乗っているのはパン1枚と飲み物1杯、少な目のおかず1皿だった。

 

「えっ、わ、私達はは……ねぇ?」

 

「う、うんうん。これだけで平気だよ」

 

凄く効率的な燃費だな。まさかISが女にしか動かせない理由はこれか?……って、んな訳ないな。

 

「それにお菓子とかよく食べるし~」

 

間食のし過ぎは太るし体に悪いぞ。人間が老化するのって結構早いんだぞ。てか、なんなんだその服は?着ぐるみか?何処で売ってんだよ、それ。

 

「……それでは、私は先に行くぞ」

 

「ん?あぁ、また後でな」

 

朝食を済ませた箒は直ぐに席を立って行ってしまう。バイキングとあってか和食ばかり選んで食べていた。雰囲気が雰囲気だからまるで侍みたいだな。

 

「所で織斑君って篠ノ之さんと仲いいの?」

 

「お、同じ部屋だって聞いたけど」

 

「まぁ、そりゃあ幼なじみだしな」

 

そう、俺と箒は幼なじみ。小学1年から4年まで同じクラスだった。千冬姉に付き合う形で通っていた剣道場でも毎回顔を会わせていた。両親の居ない俺達はよく篠ノ之夫妻によく食事に招かれた物だ。あの頃は貧乏だったから助かった。ただ、最初から仲はよくなかった。いや、寧ろ悪かったな。次第に打ち解けた……筈。何せ昔の記憶だ、余りよく覚えていない。決して俺がボケている訳ではない。誰だって昔の事は余りハッキリとはしていないだろ。

 

「え!?」

 

「え?それじゃあ……」

 

俺にとっては別に意識する話でもないんだが、周囲の女子達にはどよめきを生み出す衝撃だったらしい。周りがざわざわしている。そんな中、そんなどよめきをピタリと止める手を叩く音が突如として食堂に響いた。

 

「何時まで食べている!食事は迅速且つ効率よく取れ!遅刻したらグラウンド10周させるぞ!」

 

千冬姉のよく通るその一声に全員慌てて食事を片付けにかかる。俺は今さっき食べ終えたからさっさと教室に行く事にしよう。

 

『ん?』

 

食器の乗ったトレーを片付けに行く際に千冬姉とすれ違ったんだが、なんか何時もの千冬と違う気が……心なしか何処か疲れて見えるし。確か寮長も務めてるんだったな、タフな千冬姉でも疲れてるんだろう。そう結論づけて教室に向かう最中も妙に違和感があった。千冬姉のあの感じ、俺は目にした事がある。『あの時』とそして……

 

 

 

 

 

「それではショートホームルームを始める」

 

時間は過ぎ、ショートホームルームが始まる。昨日とさして展開に差はない。だが相違点が1つある。ドア側の1番前の席が誰も座っていない。昨日そこに座っていた筈の子は列全体で席が1つさがっている。

 

「だがその前に、山田先生」

 

「あ、はい。えっと1日遅れではありますが、このクラスにもう1人生徒が増えます」

 

ざわつきが生まれる。席が空いている理由はそれか。だけどなんなんだ?入学翌日に転校生?あるのかそんな事が。

 

「そ、それじゃあ入って来てください」

 

「……はい」

 

山田先生のその言葉から凡そ2、3秒。返事とほぼ同時にドアが開く音が聞こえ、その後1人の生徒が入ってくる。

 

「えっ?え!?」

 

「う、嘘!?」

 

返事が聞こえた時点で違和感を全員感じただろう。明らかに女の声ではない。だが、まさか……そんな事を考える暇もあたえずに入って来た人物を見て先程のは聞き間違いではないと確信した。

 

今俺達の目の前に立ち、全員の目線をその身に浴びているのは、長く伸びた黒い髪に、掛かっている前髪からちらりと覗く刃の鋭く切れ長な瞳、顔や両手に包帯を巻いており、千冬姉より軽く10cm以上は高い背丈、そして男用にと作られた俺と同じ制服。

 

入学2日目、新たに男子がこのクラスの一員に加わった。

 

 




やっと少年に出番が出来ましたが余り台詞がないですね……

いきなりIS学園に現れた理由は少年以外知る事はないでしょう。あれは知られたくないですから。

そしてまさかのIS学園の生徒に、しかも一夏と同じクラス。波乱が起きるのは間違いないでしょう。



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